長野県の新潟県境に近い信濃町には黒姫山という美しい形の山があります。
円錐形に広い山頂稜線。
街からは見えない稜線の裏側には火山の名残で池と御巣鷹山という小さな山があります。
周りには妙高山や戸隠山といった有名な山があるので、若干地味な印象がありますが、二百名山のひとつで稜線からの眺めは間違いなく名峰といえます。
「信濃富士」と形容される黒姫山へ。同行するのはいつもの土屋。
数日前に合コンを無事に終え、若干テンションが高め。
このテンションが山へ向かうためのものなのか、数日前のできごとからなのかは本人しか知らない。
まだ序盤というところで、土屋の顔が曇り始めました。
だからあんなに「着込みすぎ」と伝えたのだけれど、いっこうに聞かなかった彼は汗だくで、速くもビシャビシャになったベストを脱ぎました。
のぼりに選んだコースは西新道。
稜線に向かって一直線に登っていく急登ルート。景色の見えない樹林帯と高い段差と滑る地面に体力を削られます。
ひたすら我慢の時間。
いつの間にか土屋はいない。
後ろを追ってきていたはずなのに、どこかから姿が見えなくなり、草に触れて揺れる音もしない。
迷うようなところではないと先に行くも心配になり、休憩も兼ねて足を止めてコーラを開けると、向こうから大きな影が近づいてきました。
土屋でした。
長い長い樹林帯と急登を過ぎて、やっと眺めの良い稜線へ。
ここから景色を眺めながらの稜線歩きが、黒姫山で一番楽しめるところ。これが醍醐味。
でも・・・真っ白。
いや・・・それは分かっていました。最初から。
真っ白な稜線を歩くんだから!と思って来ました。
山頂に着いて振り返ると、べちゃべちゃの土屋がいました。
開始前の記憶とは、姿が変わったようにも思います。
まともに目を開けることすらできないようで、哀れに思ったので、1本のコーラを開けることにしました。
これは登山口までの道中で土屋が自ら発見して購入したもの。
きっと自分の姿を予期していたのだと思います。
開封して一口。
違和感を持ちながら、飲み進めました。
結論:普通のコーラが良い。。。。
西新道があるおかげで、どちらかというと地味な存在の西登山道。でも登りと下りは違う道を通りたいというのはあるものです。
休憩ですっかり復活した土屋を連れて、深い緑の中を下りていきました。
土屋のことをアレコレと言いながら、彼が撮ってくれた自分の写真をもらいました。
人のことをいえないくらいに丸い背中が目立ちます。