僕は長野県の北信地域で生まれ育ちました。

山に囲まれた狭い盆地で、どこを見ても山だらけ。

空は山という壁に囲まれたドームのようにも見えました。

そんな地域柄か、山へ登るという行為は小学校の行事で体験しました。

小学校1年から全校で登る里山1日ツアー。

標高差は500mにも満たないと思いますが、1年の中でも大きな行事でした。

それ以外にも、山菜採りに連れて行ってもらったり、遊びで山に入ったりと、おそらく育っていく過程で山に入る機会は多かったと思います。

ただ、今のように登山を楽しむという思いは一切無く、山に登ることは辛いこと・大変なことと脳みそに擦り込むには十分でした。

成長するに連れて山へ近づくことも無くなり、山へ行くといってもスキーをするため、リフトやゴンドラがあれば、、、という状況でした。

登山を始めたのは30歳目前で

あるとき、プライベートでも仕事でも付き合いのある方に、涸沢カールの景色を見せてもらいました。

それまで登山にはまったく興味が無かったのですが、その景色を見たとき、その方が話す言葉を聞き、涸沢カールへ行ってみたいという気持ちになりました。

山へ登るのは嫌ですが、登らなければそれを見ることもできない。

ならば仕方が無いから登りに行こう。

連れて行ってもらえるし。

そんなことが僕の初めてのプライベートな登山でした。

初めての涸沢カールは、少し紅葉の盛りを過ぎていましたが、それでも十分に楽しむことができました。

幼い頃からの経験からか難なく山道を歩くことができましたが、まだ登山に慣れていないこともあり、行程は2泊3日と十分な時間がありました。

元気が余りすぎて下山時の横尾からは走って小梨平へ向かうことができるほど。

■2008年 涸沢カール

涸沢カール

https://tozan100kei.com/route/karasawa-yokoo.php

本格的にハマったのは数年後

楽しい思いをした初めての登山でしたが、山登りにハマるのはそこから数年後。

当時の僕は神社を巡ることに興味が向いていたため、神社の奥社を見に行くなどのついでに山へ入ることはあっても、山頂を目指すことや眺望を楽しむことはまったく興味がありませんでした。

それが何を思ったのか、ある日モンベルのツォロミを衝動買いし、その数日後に長野県飯田市の風越山へと向かいました。

目的はもちろん神社で、山頂下30分ほどのところにある白山神社奥社を見るため。

山に登るどころか運動もあまりしていない状況で、神社の写真を撮ろうとカメラと三脚を背負い、コースタイム2時間を越える登りは非常に疲れました。

ちょうどそのころ、仕事先でも山に登ろうという声がかかるようになりました。

僕が山に登ったことや、道具などの準備ができていることとは全く関係が無く。

あっという間にスケジュールが固められ、8月上旬に「南アルプスで打ち合わせをする」という名目のもと、鳳凰山へ連れられていきました。

歩き始めた山

スケジュールが決まり、登る山も決まり、僕はそこで足手まといになることがとても嫌だったので、自主的に足慣らしを始めました。

それが飯山市の鍋倉山です。

鍋倉山

https://tozan100kei.com/route/nabekurayama-sekitatouge.php

長野県と新潟県の県境に位置し、全長80キロほどにもなる信越トレイルの一部です。

もっとも標高差が少なく最寄りの登山口になる関田峠まで車で行き、そこから往復1時間半ほどの道のりを歩く。

標高が1000mほどで夏の暑い時季ということもあり、とても虫が多く、首にタオルを巻き、とにかく早く歩くということを繰り返していました。

ほぼ毎日。

道具は涸沢カールへ行く際に揃えていたので、いちおうそれらを持って。

ちなみに初めての南アルプス鳳凰山では、無事に打ち合わせを終えましたが、登りも下りも雨に打たれ、鳳凰小屋まで行くのが精一杯で、ボロボロな気持ちで下りてきました。

日課になった山歩き

鳳凰山以降、しばらくは山へ登ろうという声も掛からず、僕は日課のようになった鍋倉山を歩き回っていました。

他の山に興味を持つことも無く、ただただ樹林帯の中を虫に刺されないように早歩きで。

9月に入り南アルプス打ち合わせメンバーから、瑞牆山へ行こうと声を掛けてもらい、ふたつ返事で登りました。

山頂で「百名山」という響きにキラキラした気持ちになりながら、ガスだらけで金峰山も見えない眺望を楽しみました。

それから数日後。
乗鞍岳を畳平から。
乗鞍岳を畳平
https://tozan100kei.com/route/norikuradake-tatamidaira.php

志賀高原の志賀山
志賀高原の志賀山
https://tozan100kei.com/route/shigayama-onumaike.php

と登り続け、間を置かずに山に登り、予定が無ければ鍋倉山へ行き。
徐々に僕の中での信越トレイルの存在感が大きくなり、斑尾山へ登り、そこで浴衣で闊歩する年配の男性に会い。。。

本格的に登山へと入っていったのが8月の鳳凰山。
それから9月までの間に、瑞牆山、乗鞍岳、志賀山へと登り、合間に鍋倉山、斑尾山。
そんな状況でした。

鳳凰山以外は、初心者としても登りやすく、足を慣らすためにもおすすめしやすい山でした。
まだ山に慣れていない時期に、知名度や憧れを優先して、難しくて大変な山に行かなかったことも、今、登山を楽しめている要因だと思います。