北沢峠から双児山を経由して甲斐駒ヶ岳へ登る
ルートも長く、黒戸尾根からは7合目に七丈小屋があるものの、北沢峠には登山口に小屋があるだけで、通常は登りで4時間ほどかかる。
伊那市戸台口からの往復バスの時間を考えると、通常時間より余裕を持って下山しなければならない。
11月連休の戸台口バス停
南アルプスへは一般車両の乗り入れが禁止されているため、登山者の多くは戸台口からのバスを利用する。
バス乗り場には無料駐車場があるため、そこで夜を明かす登山者もいるほど。
始発は朝6時。
バスが出る前の戸台口は、まだ陽が昇らない真夜中のような景色で、バスを待つ車の上にはたくさんの星が出ていた。
徐々に明るくなるに従って、待機していた登山者が並び始め、出発10分前には50〜60人ほどは並んでいたと思われる。臨時で3台ほどのバスが出発。
戸台口から北沢峠へと進むバスの車中、運転手さんが景色を都度説明してくれる。
北アルプスや中央アルプスの眺めだけでは無く、すぐ近くに切り立った鋸岳に見える鹿の小窓や、これから向かう甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳への眺めやルート状況なども話してくれる。
バスに揺られるおよそ50分、退屈することは無かった。
北沢峠から双児山へ
北沢峠は仙丈ヶ岳への登山口にもなっており、こもれび山荘、長衞小屋で宿泊し、ふたつの縦走を目指す登山者も多い。
甲斐駒ヶ岳へのルートに選んだ双児山はこもれび山荘の横からの登山開始。
九十九折りに続く坂道をどんどんと登っていくと、木の間から仙丈ヶ岳がチラチラと見え始める。
坂尾折り返すと北岳。
11月の南アルプスは仙丈ヶ岳も北岳も雪を被っていて寒そうだ。
斜面を登り続けること約30分。
尾根に出たようで風が一気に冷たくなった。
樹林帯とはいえ11月の風は寒い。
北沢峠と双児山との中間地点まで来ると西側には北アルプスや中央アルプスも見え、仙丈ヶ岳と比較してもだいぶ高度が上がったように感じる。
木々を抜けて眺望が開けると双児山に到着。
北沢峠からは1時間10分ほど。
通常2時間掛かるとされているので、この区間で時間を稼ぐことができた。
双児山まで来ると背の高い植物は無いので、視界も一気に開けて目指す甲斐駒ヶ岳も大きく見える。
甲斐駒ヶ岳山頂の白い岩肌がまるで雪のよう。
双児山を越え、いったん標高を下げてから駒津峠を目指して登っていく。
仙水峠との合流地点「駒津峠」
双児山を越えると土と落ち葉の足元は、岩と砂利のガレ場に変わる。
振り返れば仙丈ヶ岳が何の障害物も無く見え、北岳はますます尖っている。
ハイマツに囲まれたガレガレのルートを上り双児山からおよそ30分、駒津峠に到着した。
駒津峠からは甲斐駒ヶ岳山頂がよく見えるばかりか、周囲の景色も良く鳳凰三山の奥に見える富士山は大きく迫力がある。
甲斐駒ヶ岳山頂へ
駒津峠からはいったん標高を下げてから再び登りに。
鎖があっても良いんじゃ無いか?と思うような岩場を降り、大きな岩を巻いて、甲斐駒ヶ岳頂上の直下へやってきた。
この分岐から直登するパターンと、巻き道を上っていくパターンがある。
直登はまさに岩場をまっすぐ登るようになるらしく、160センチくらいの身長が無いと厳しいとのことで、今回はしっかりと巻き道を踏みしめて登ることに。
岩を越えて下ってきた足元は、ますますと細かな砂のような雰囲気になり、岩も丸みを帯びた白っぽいものに。
この山頂一帯が花崗岩でできているのか真っ白で上を見ても下を見ても、不思議な景色が広がっていた。
ただ、この砂地のようなジャリジャリとした足元は、あまりグッと踏ん張れる感じでは無いので、足への疲労感がゆっくりとやってくる。
ところどころで見える岩の走るラインは、同じような形をした細かな石が食い込んだように並んでいる。
岩の色も含めて、とにかく不思議な山だと感じた。
直登と巻き道との分岐から40分、黒戸尾根との合流地点を過ぎ、さらに登ること5分。
甲斐駒ヶ岳山頂に到着。
登山口から2時間55分。
山頂は広くて、砂地の足元に丸みのある岩が埋まっている。
格子戸の石造りの祠と、石碑がいくつもあって、信仰の山という雰囲気がする。
山頂から5分ほど降りたところには駒ヶ岳神社本社があり、大己貴尊が祀られ石碑と社殿が建てられていた。
さらに下り、山頂へのルートから横にそれること15分ほど。
摩利支天峰に辿り着くと、こちらにも石碑が多く置かれ、甲斐駒ヶ岳の山頂を一望することができた。
摩利支天峰
駒津峠から仙水峠への下山ルート
仙水峠へのルートは双児山からのルートに比べて距離が長く、緩やかに下って行けそうな雰囲気があるが、実際には仙水峠まで一気に高度を下げ、そこから長衞小屋まで緩やかに下りていく。
駒津峠からハイマツに囲まれながら下り続け、樹林帯の中を進むこと1時間。仙水峠に到着。ここは熔岩石のような黒い石が多く転がり、ところどころに積み重ねられている。
仙水峠からはコケと落葉松に囲まれたルートに変わり、仙水小屋を過ぎると川を横目に進むようになる。
ここは歩きやすいルートで、危険な箇所や体力や技術が必要なところも無い。
およそ6時間半ほどの行程で、バスを利用した日帰りルートとしても余裕が持てた。