万仏山へ
集合は集落の上部にある福島神社。
そこから乗合で林道を進み、登山口へ向かう。
細い林道を進むと万仏山への登山道がある。
道路の右側には万仏山と白岳尾根の看板が建ち、数台の車が停められる程度に路肩が広くなっている。
8月の台風災害により、登山道は激しく荒れた。
登山口からも大きく残った爪痕のように、今まで歩きやすかったところが深くえぐれてしまっていた。
小さな沢を渡って緩やかに登っていく登山道も、深く掘られて露出した巨石を避けるようにして、路肩を選んで歩いていく。
8月の台風って被害もなかった印象だけど、ここでは凄いことになっていたんだな。
落ち葉や土が積もって柔らかだった登山道が、ここまで荒れてしまったことに自然のすごさを感じながら登る。
10月には長野県各地で台風被害があったものの、8月の台風では特にそういったことは無かった。
それが万仏山ではここまでになっているとは思いもしないことだった。
まるで用水路
登山口から5分ほどで行者尾根への分岐を過ぎる。
さらに登山道へと登ると掘られた深さも増し、26番目の石仏では直径1mを優に超える巨木が倒れて登山道を塞いでいた。
これが流れてきたのか??
上部を見ると前日までに降った雪がうっすらと積もっている。
予報では午後から天候が崩れる。
頭上も空が真っ白で寒々とした雰囲気だった。
万仏岩
万仏岩へと近づいていくほどに、登山道の傾斜は増していく。
もともと落ち葉の積もった柔らかな登山道だった上に、うっすらと雪が降ったこともあって脆く滑りやすい。
落ち葉もあるし、けっこうズルズル
万仏岩まで2・3分ほどのところにある最初のロープを外し、そのまま手に持って万仏岩のお堂まで登った。
登山道の様子を見たり足を停めたりしながら登山口からは30分ほど。
雲の多い天候ながら、西側には妙高山を見ることができた。
万仏岩から細尾根へ
お堂で20分ほど足を停め、山頂を目指して登っていく。
万仏岩の左手側にある斜面にロープが架けられ、急斜面を登っていく。
このコース上の難所のひとつで傾斜がきつく長い。
そこに加えて軟らかな土なうえに高い段差があり、ロープに頼らざるを得ない。
この登りは大変
前を登るひとの様子を見ながら、ロープを握るタイミングと後続するタイミングを見計らい、傾斜に手を掛けて登っていく。
右手側には岩壁が高く迫り、振り返ると谷を挟んで馬曲山が見える。
気が抜けない
ロープを辿って這うようにして急傾斜を登り尾根上に立った。
万仏岩上の尾根は、行者尾根からの合流地点で、擦れ違うのが難しいほどの狭さ。
木々が茂っているため実感は少ないものの、足元には切れ落ちた深い谷で、明らかにただ事では済まない高さ。
うっすらと積もった雪が、さらに緊張感をそそる。
ここはちょっと苦手な場所
尾根上の合流地点から、折り返しの急坂を登っていく。
足元は50センチほどで、踏みしめた足の裏には軟らかな土の感触。
踏みしめる場所を選ばなければ、登山道を崩して足を踏み外してしまいそうにも思える。
ここも木が茂っているために、そう高さは感じられないものの、明らかに緊張感が高まる。
架けられたロープを手がかりにしながら、木の根や段差に手を掛けて尾根を登っていく。
下山時にはこれを外しながら下りてくる予定で、その大変さや苦労を思うと頭が下がる。
ロープがあるから緊張感を抑えて登ることができるのだと、つくづくありがたく感じる。
尾根を外れて、10mほどの岩壁をトラバースする箇所を過ぎると、尾根はいよいよ細くナイフリッジ状に変わっていく。
足元の雪はソールの厚さほど。
深くない程度の雪が、踏みしめたときの滑りやすさを連想させ、腰が引けるような用心深さをそそる。
ちょっとだけの雪がかえって滑りやすさを助長する気がする
細尾根の斜面を登り切り、いったん斜面が緩まると、先には蟻の塔渡りが見える。
登山道上に岩が露出していることもあり、土の柔らかな脆さがない分、安心さは感じられる。
蟻の塔渡りの手前から尾根を外れ、ロープに沿って歩くと、石仏の置かれた窓岩を見ることができる。
窓岩は、まるで岩を刳り抜いたように橋状になっている岩で、この真上には細尾根の蟻の塔渡りがある。
蟻の塔渡りは高度感があり、なおかつ傾斜もあるために登りで使う方が楽ではあるものの、やはり窓岩も登りで見ておきたい。
ロープがあって手を掛けることもでき、こちらも登りの方が歩きやすい。
窓岩を過ぎて尾根上に戻ると、もっとも眺望が楽しめる展望台はすぐ。
展望台に立つと周りを囲む山々を見渡すことができ、特に西側に見える妙高山や、白くなった火打山の存在感が強い。
眼下には、10月の台風で水が流出した河川敷が茶色く見え、序盤の登山道の様子も思うと、単に眺望が良いということだけではなく考えさせられるものがあった。
カメラの電池が終わった・・・
そんな気がして予備も持ってきたのに。
まさか予備の電池は壊れているなんて。
しばらく眺望を楽しみ、間近になった山頂へ。
まるで橋のように続く細尾根。
狭い。
この細尾根を渡りきるとようやく安心感のある登山道に戻ってきたような印象もあり、最後の急斜面、梯子岩へ取り付く。
木の根や段差が、まるで階段のように続く梯子岩の急登。
夏場よりも、枝葉が落ちた季節の方が登りやすさを感じる。
梯子岩を登ると山頂は近く、南峰への登山道と分岐する。
実はこの稜線上も落ち葉があって滑る感じ。
山頂へ向かう前に南峰へ。
滑りやすい斜面を鞍部へ下り、うっすらとした雪の登り返しを過ぎると、雪の着いた細尾根を渡る。
その先から見る景色は、万仏山では最も眺望が良く、間近に見える高社山、志賀高原の笠ヶ岳などが南側に見える。
南から西へと目を移すと、黒姫山や間近に見える斑尾山。
その背後には妙高山が見える。
うっすらと雲がある感じが、雰囲気良く見えた気がする
万仏山南尾根は、木島平村の城の山や馬曲山と尾根を繋いでいるため、尾根上を歩くことでの万仏山へのルートを見て楽しんだ。
やっぱり話題になるのは城の山から尾根を歩くルート
万仏山山頂
南尾根から登山道を5分ほど戻り分岐から山頂へ。
今年3回目の万仏山山頂だった。
万仏山の山頂は木が茂って眺望は良くない。
僅かな枝の隙間から妙高山が見える程度。
登山道はここから北峰へと進むこともでき、この山塊の最高峰の三界峰へ続く。
大きなブナには何周にもピンクテープが巻かれ、これが山頂の特徴的な目印になっている。
この日も新しくテープが巻かれていた。
やっぱり万仏山といえばテープグルグル巻き
ロープを外しながらの下山
山頂からピストンで万仏岩へ下りる。
雪の残る梯子岩は滑りやすく、手がかりが無ければとても下りられそうにない。
トラロープていどの細いロープでも設置してあることがありがたく、梯子岩を折り終え、細尾根を渡って行く。
展望台まで戻ると、そこからはロープが連続していることもあり、外しながら下山していくことの難しさが思われる。
こちらは山頂へ登って下りるだけの登山で、作業をするために登ることに比べたら明らかに難易度も大変さも低い。
片付けながら下りるのは作業的にも登山技術的にも負担が大きい。
どうやって下りてくるのか想像も付かなかったけれど。
見るからに大変な作業で。
積雪でロープが切れてしまうことも聞いた。
ロープに手を掛けながら下りていくことができる立場であることが、申し訳がなくもありがたいという思いを持ちながら、雪で足を滑らせないように下りていった。
とりあえず滑って落ちないことも大事。
行者尾根との分岐を過ぎると、細尾根の登山道から変わって急斜面を下りる。
ここが最後のロープになり、もっともロープが長い場所にもなっていた。
外されたロープは、万仏岩のお堂の中に来年5月まで仕舞われる。
雨で削られた登山道を下り、改めて台風の凄さを目の当たりにしながら登山口へ。
登るために使っているロープを外して片付けるという様子は、間近で見ながらということは稀で貴重なものだった。
ふだん何気なく握る鎖やロープは、こういう作業があってのものだと、改めてありがたく感じる万仏山だった。