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スノーシュー

雪の中を、長細い板を履いて歩く人たちを見たことがあるでしょうか。
「かんじき」だと思えば、その形や用途は想像しやすいかもしれません。主に「西洋かんじき」といわれるもので、雪上の移動手段や、遊あそびの道具です。
最近では、スノーシューを使って北八ヶ岳などの雪原を歩くスノーシューイングとして人気があります。クロスカントリースキーのように高価な道具では無く、持ち運ぶのにも難の無い大きさ。冬の自然を満喫するのに最適です。

  1. 雪に埋まらない浮力
  2. スノーシューの種類
  3. スノーシューの歩き方
  4. スノーシューに必要な道具
  5. スノーシューの価格
  6. スノーシューに適した靴
  7. スノーシューの選び方

雪に埋まらない浮力

雪が深い地域では、腰まで埋まりながら突き進むラッセルや、日本古来のかんじきで歩行することがあります。
ラッセルは力尽くですし、かんじきもどちらかといえば長い距離の移動には向かない形状です。スノーシューは、その点で歩行に適しており、長細い形状なので、雪の上でもしっかりと体を支えられるだけの浮力が得られます。

本格的なアウトドア用品店で無くても、スポーツ用品店、量販店でも見かけるようになったスノーシュー。
スノーシューなら、高い雪山へ行かなくても、冬の山や雪原を存分に楽しめます。

スノーシューの種類

スノーシュー

スノーシューには、大きく分けて2つの形状があります。外側にプラスチックなどで枠を作り、内側に浮力を得るための布など板状のフレームを作った物と、内側のフレームが無いものがあります。
機能面では、ゲレンデや緩やかな斜面で効果を発揮するタイプと、起伏の激しい軽登山に向いているタイプ、横滑りがしないような形状をしていたり、ランニングが出来るものなど、スタイルに応じて各種あります。

※雪原ではスノーシューを履いたまま、開放感から走り回ったりジャンプするなどの様子が見られますが、破損の恐れがあるので、専用の物で無い限り、避けた方が良いです。

大きなサイズの方が、雪上で浮力を得られる長所がありますが、対して重量が重くなるという短所もあります。市販のメーカーでは各モデルごとに適合体重が記載されていますので、自身の体重や持ち歩く荷物を加味しながら選ぶのが良いでしょう。
また、サイズが大きくなるほど踵部分が長く伸びるため、歩く際に自分の足を自分で踏んでしまうこともあります。大きい方が雪に対して強くなりますが、フットワークを考えるなら大きさを抑えるのもひとつです。

ウォーキングモデル
平らなところを歩くように作られたスノーシュー。爪先が一枚刃だったり、ヒールに何も取り付けられいないものもあります。シンプルな作りなので、勾配のあるところでは滑りやすくなりますが、軽く雪原を歩くのには向いています。また安価なモデルも多いので初心者向けです。
トレッキングモデル
山岳や長距離を歩くのに向いているスノーシュー。勾配を登ることを重視しているので、爪先は2枚刃で縦方向・横方向への滑りが無いように工夫されています。ウォーキングモデルより若干、幅が大きくなるので、歩き方に工夫も必要です。
ランニングモデル
固く締まった雪面やトラックを走るために作られたスノーシュー。軽量化を図るための素材が使われ、デザイン的にもランニングしやすいようになっています。

スノーシューの歩き方

雪で楽しく歩くことができるスノーシューですが、しっかりと歩くには少しコツが必要です。

スノーシューを着ける

スノーシューの歩き方

スノーシューは必ず雪のあるところで身につけるようにします。ゴツゴツの石の上や、コンクリートの上では、クランポンなどの金属部分ばかりか周囲の枠も傷つける原因になります。
締め付けるバックルが外側に来るようにスノーシューを置き、雪が入らないように注意しながら足を置きます。種類によっては左右が書かれたものもありますので、それに従うようにします。
足をしっかりと固定したら、爪先から順に締め付けるようにして、最後にカカト、足首を固定します。

歩き方

スノーシューを履いた分だけ、左右の足を開き気味にします。普段歩いているのよりも、足の幅が広がるので、踏まないように注意をします。また、カカトから後方も長く伸びているので、こちらも注意です。
通常の歩行よりも、足を前に出す感覚を持つと上手くいきます。

登り・下り

緩やかな登りでは、通常と同じように歩くことができます。急な雪面では、爪先を斜面に蹴り込むようにしてキックステップで登ります。急な斜面ではカカトを持ち上げて歩くことのできるヒールリフターを上げると負担を軽減できます。ただし緩斜面ではかえって負担が増すこともあります。
柔らかな雪の場合は、スノーシューで雪を踏みしめるようにします。

下りは雪面にカカトを差し込むようにすると滑りづらくなります。急な斜面では蛇行するように降りることもあります。

トラバース

雪面が柔らかい場合は、踏み固めながら歩くようにします。固く締まった場合はクランポンが刺さるようにして体のバランスを保ちます。

スノーシューに必要な道具

スノーシューに必要な道具

スノーシューを楽しむには「スノーシュー」以外にあった方が良い道具が幾つかあります。
スポーツ用品店へ行けばたくさんの道具が揃っていて、何が必要でどんなものを選ぶべきなのか、迷うと思います。店員さんや経験者の方に聞くのがベストですが、言葉や用途くらいは知っておきたいものです。

  1. 冬用の靴・靴下
  2. 下着や防寒着
  3. 降雪・雨を防ぐカッパなど
  4. 帽子
  5. 行動食・非常食
  6. ストック
  7. 地図・コンパスやGPS
  8. 携帯電話・無線機など

当たり前の道具ばかりが挙げられますが、場合によっては装備品の有無で遭難するかしないかに関わってきますので、持っていても不自由はないと思います。
いきなり全部を揃えるのも大変なので、必要に応じて少しずつ揃えるのがおすすめです。インターネットで探せば、レンタルを行っているお店も見つけることができるでしょう。

また「まだ自分には早いかも」と思っても、少し良い物を持つことで知識が身についたり、後々に技術が追いついてから2度買うことを避けられます。

スノーシューの価格

スノーシューの価格

一概にスノーシューといっても、種類や形状はざまざま。
用途や素材に応じて、価格も幅広くあります。特に登山用のスノーシューは、装備のしやすさや、急登での滑りにくさなど、かなりのハイスペックなものになっています。やはり価格もそれなりに。

毎年のように新しいモデルが発売されますが、定番のMSRでも数種類のものが販売されており、価格帯は8,900円から36,000円ほどになります。
楽天市場では3,000〜79,400円まで確認ができました。使用するシーンやレベルに合わせて、手頃なものを揃えるのが良いでしょう。

スノーシューに適した靴

スノーシューに適した靴

スノーシューには専用の靴がありません。
そのため、防水性と防寒性を備えた冬季専用のブーツが最適です。
くれぐれも長靴では履かないように気をつけて下さい。
長靴は冬季用のブーツに比べて、非常にゴムが薄くできており、防水性は高くても防寒性は劣ります。
しもやけや凍傷を起こす恐れがありますので、必ずスノーブーツなどを履くようにしてください。

理想的なブーツは、冬季に対応した登山靴です。
雪山でも耐えられる防水性と防寒性を備え、足の裏も非常に強固にできています。
履き心地も良く最適です。
とはいえ、冬季用の登山靴は高価で簡単に手が出せる物ではありません。そこまでいかなくても、ハイカットで濡れにくいシューズを選ぶことで、ある程度はスノーシューが楽しめます。雪が入りづらく、温かなものを選ぶことが大切です。
ただしスキーやスノーボード用のブーツは重く動きづらいので避けましょう。

ゲイターやレインスパッツをお持ちの方は、併せて着こなすと雪を防ぐことができます。

スノーシューの選び方

スノーシューの選び方

スノーシューには様々なタイプがあります。見た目からしてその形が違っていたり、裏返してみて、違いが分かったりするものなどなど、その種類は多彩です。
冬山登山用にスノーシューを履く場合や、雪原や森を歩くために履く場合など、用途によって選び方を考えるのが良いでしょう。履くシーンが平らな場所が多いのか、急な坂道や新雪を踏みながら登るのか、それによってサイズやクランポン、ビンディングが変わります。
また、それに適したメーカーもあります。

特に気をつけたいのがサイズです。
見た目の可愛らしさ、格好良さで選びたくなりますが、体格の良い人はそれだけ雪に荷重がかかるため、面積の大きなスノーシューが必要です。
女性であればさほど大きなものは必要はありませんので、歩きやすさを重視して軽いものを選ぶのがおすすめです。

スノーシューの服装

寒い冬のスポーツとはいえ、動いていると汗をかきます。意外と暑さを感じるかもしれません。速乾性のあるものを着用するのがおすすめです。
例え汗をかいても、体を冷やさないように注意をしましょう。高い物で無くてもスポーツ用品店で販売されているものでも大丈夫です。

また、汗をかかない工夫として脱ぎ着が簡単にできることが大切です。フリースなども便利です。

アウター

一番外側に着るアウターは、防水や耐久性がある物がおすすめです。スキーウェアなどでも便利に着こなすことができます。また、登山用のレインウェアやウィンドウブレイカーなど、ゴアテックスが素材に使われたものもおすすめです。
ホームセンターなどで売られているカッパやジャージ、トレーナーは耐久性に乏しく、耐水性にも劣ることがありますので、アウターとしては使用しない方が良いでしょう。

また、ダウンは保温力が高いため汗をかきやすくなります。水にも弱く、たとえば解けた雪で水を吸ってしまうと大変です。寒いときの予備として、ザックに入れておくのがお薦めです。

スノーシューの時期

基本的には雪があればシーズンインです。
そうはいっても、いつがベストなのか、どんな条件が良いのか、などなどあると思います。

積雪量

降雪量が多くなるのは年末から1月下旬にかけてになります。もちろん標高の高いところでは雪が降るのも早く、10月にもなればチラチラと降り始める地域もあると思いますが、そういった場所はスノーシューイングというよりも、どちらかといえば雪山登山に近くなり、アイゼンやピッケルを持って出かけるといったものになります。
雪がフカフカと積もりだし、つぼ足では埋まってしまって歩きづらいような量がある季節が良いでしょう。

天気が安定する3月

そうなると年末年始から3月下旬にさしかかるまでがスノーシューの時期といえます。特に3月になれば天候も安定しやすくなり、晴れた日も続くので気軽に出かけられるようになります。さすがに降雪の中、雪原に出かけるのは慣れた場所であってもキケン度が増します。
温かくなればなるほど、昼間の雪は解けて湿り、夜の寒さで凍って締まります。その時季にはスノーシューの浮力が増して歩きやすく感じられると思います。

スノーシューの片付け

雪のシーズンが終わったら、スノーシューの片付けも必要な季節になります。
冬の間、楽しく遊んで使い込んだスノーシューですから、大切に片付けたいですね。

スノーシューの片付け方に、特に決まりはありません。素材に応じてサビ等に気をつけながら、風通しの良い日影に仕舞うのが良いでしょう。
日の当たる場所に置いてしまうと、オフシーズンの間に日光によって劣化が進むことになります。柔軟性が失われ、雪に乗った際に割れてしまう原因になりますので、注意が必要です。
またクランポンなどの金属部分は、一度水洗いをして泥などの汚れを綺麗に落としてから、完全に乾かします。こちらもフレームと同様に大事な部分ですので、履かない間に傷まないように気を配ります。

足の下に置く物ですから、体重が掛かり、スノーシューそのものへの負担はとても大きくなります。春から秋はスノーシューの休息期間ですので、大切に仕舞って保管をしてください。合わせてスノーシュー用の靴も丁寧に仕舞うのが良いですね。