日帰り難関の平ヶ岳
日本百名山のひとつに数えられながらも、山の奥地でアクセスに時間の掛かる登山口、その登山口からも急登と長距離の登山道で、「最難関」とも表現される平ヶ岳。
難しいとはいっても距離20キロを超えた程度、高低差も1500mに満たないほどで数字的には難しさも感じない。
ただ難関と言われるには、登ったひとがそう思うそれなりの理由があり、きっと厳しいのは確かなことなのだろう。
しばらく厳しい山へ行くことが無かった
しばらく厳しい山へ行くことが無かった。
体力的に厳しいことも我慢が必要な精神的に厳しいこともなかった。
久しぶりにそういう思いをしたいという気持ちが何日も続いていた。
登山口へ向かう前、検討していた山は20キロを越えるコースで2つ3つ。
天気予報を見て魚沼なら雨の心配は無いと知った。
それでも誰もが厳しいと言う山へ本当に行って帰ってこられるのかと不安ばかりで、前日車中泊をと思っていても家から出ることもできないずに布団の中へ。
![平ヶ岳登山](https://tozan100kei.com/img/route/hiragatake1-feelicon.jpg)
なんとなく
なんとなく不安で面倒くさい
なんとか家から出る気になって関越道小出ICを下りたのは午前3時40分ほど。
同じ魚沼エリアとはいえ、ここから登山口までは2時間。
朝早いため車が少なく、銀山平までは難なく通過、まっくらな奥只見湖の横を曲がりくねる道路に苦労しながら物思いに耽りつつ、清四郎小屋を過ぎたころにはすっかり明るくなっていた。
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そういえば会津駒ヶ岳へ行ったときに通っているのだと思うのです
記憶は無いのだけれど・・・
登山口のある鷹ノ巣の駐車場は、まだ朝が早いとはいえ満車に近い状態。
少し離れたところにも車が停まっているほど。
運良く1台だけ空いているスペースを見つけた。
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空いてて良かった
銀山平から1時間も車を走らせた
ケータイの電波が通じないほど、銀山平から1時間も車を走らせたことが山奥へやってきたと実感し、もうここへ来たということで満足できるんじゃないかとも思えた。
この満足度で帰って寝るのも幸せそうだと思いながら、登らなかったことで後悔するのかを天秤に掛けながら、車の外で次々と登山口へ入っていく人たちを見る。
しばらく見ているうち、あの後に着いて登ろうかという気持ちになってきたので、靴下を穿き、靴紐を縛り準備を整えた。
ここまで長く運転してきて寝不足感がある。
登っていないことや、そもそも体を動かしていないことの運動不足感もある。
これからの長丁場、急ぐことなくコースタイム通り、ネットで見かけた時間の通りに歩くことができればと考えた。
ゆっくりと登山道へと入っていくと、最初は林道のように広くなだらかな登りから始まった。
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ネットで見てると最初からけっこう登るように見えたけれどそうでもないのかな
明け方に降っていた霧雨のせいか、森の中はうっすらと霧がかかっているよう。
沢にかかった橋を渡り、なだらかに下りながら杉の間を抜けていく。
すると右側にクマ注意の看板と、いかにも先が長そうな雰囲気の登山道が見えた。
見るからに先が長そうだという先入観を持ったまま登山道を歩いて行くと、デコボコとしながらも徐々に緩やかに登り始め、と思っているうちに一気に勾配がキツくなり、階段のような登り坂が始まった。
階段のように踏み跡のしっかりした急登はキライでは無い。
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霧や雲に煙ったかんじの景色ってイイと思うのです
だからといって急な坂道を登りわけではないのだけれど、登り終えたあとの緩やかさはなんとも言えない心地良さ。
木々の濃い緑の中に赤い葉が1枚2枚と僅かながら見え、開けた景色は真っ白な雲だらけで、山影が水墨画のように見える。
登山道が緩やかになったのは一瞬だけで、また細く高い段差の登り坂に変わる。
木の根を踏んで段差を越えて坂を登ると、左右が切れ落ちた細尾根に出た。
序盤の細尾根
周りの景色が見えないのは運が良いのか悪いのか、足元の左右は深く落ちた谷のはずが、厚い雲で景色も谷底も見えない。
ただうっすらと間近にある山影が見えるほどで、それは幻想的にも見えて楽しめた。
一気に急坂を登った呼吸を整えるのと、雲の眺めを楽しみたいのとで足を停めて尾根の上に佇む。
気温は高くはないものの湿度は高めで蒸している。
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ココが・・・!
たしか新潟県の山のグレーディングで、平ヶ岳の鷹ノ巣コースは上位になっていた。
それは行程の長さだけではなく、細尾根があるということだったと思い出した。
登り始めた序盤で、そのグレーディングが示す場所になったようだった。
急斜面と緩斜面を繰り返し、延々と細尾根が続く。
段差は高く、左右から枝が迫り出してトンネルのようになっているところも多い。
湿り気のある地面は滑るばかりか、深く抉れて1m以上の高い段差になってしまっているところもあった。
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登山道がキツいのか、自分の体がキツいと言っているのか・・・
登っては足を休め、また登って休みを繰り返していると、だんだんと雲が晴れてきたようだった。
左右の谷の向こうに尾根がうっすらと見え始め、登っていく先にも峰が見える。
右側の尾根の先に見え始めた岩が乱立する山は鷹ノ巣山。
もしかしてあっちへ巻くのか?と想像を巡らせながら、見え始めた景色を見て急登の辛さを紛らわせていく。
目の前に続く細尾根の急登は終わる気配も無い。
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景色が見え始めると、あのぐらいまで登るのかな?とか、あれに登るのかな?とか思う
緑の中に続く急登、足元は粘土質の茶色。
終わりの無さに気持ちが疲れてきたころに、いったん下りがあった。
ただ見える先には、まだまだ続く急登。
ここで下ったという事は帰りで登るということ。
通らないわけにはいかないので仕方が無いにしても、しっかりと記憶に残った。
ふたたび登りに差し掛かり、取り付けられたロープと、石などでできた大きな段差。
徐々に雲が晴れてきたのか、雲の上に出たのか青空が見え始め、背中からの陽射しが暑い。
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天気が良いのは良いけれど暑いのは嫌だ
標高1500mを越え
標高1500mを越えて、なんとなく目安のように見えていた鷹ノ巣山も、急登続きでいつの間にか存在を忘れてしまっていた。
そろそろ中間のなだらかな行程に入るだろうと期待を膨らませた。
そんなことを思っていると、登っている最中に何かに触れたようで、右手親指と人差し指の間がチクチクと痛む。
動かしたり触ったりするとトゲのような痛みがある。
虫や動物に咬まれたというわけでは無さそうだった。
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なんかね、手が引っ張られるような何かに引っかけたような感触はあったのです
きっともうじき中間のなだらかなエリア。
細かなアップダウンはあるにしても、ここまでの急登に比べたら歩きやすいに違いない。
時間を掛けて登ろうとは思っていたものの、ここまでの登りでは感覚的に時間を掛けすぎたように思えた。
ここからの行程で時間を巻きたかった。
台倉山
下台倉山まで1時間47分
下台倉山までは1時間47分をかけていた。
これが早いのか遅いのかといったら、きっと遅いのだろう。
駐車場の車の数、ここまでで追い越したひと、追い越されたひとを数えると、山頂までの最後尾に近い位置にいると思えた。
もしかして夕暮れまでに戻ることのできないペースなのではないかと。
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けっこうゆっくり登ったと思う
いったん腰を下ろして水分を補給する。
思っていた以上というか思ったとおりというか、太股の重さや呼吸の苦しさは以前よりも厳しかった。
だいぶ急登や長い行程から離れた山に行っていたことと、登山から遠ざかった生活をしていたことを感じる。
ただ、景色を見ることができなかったほど厚かった雲はだいぶ晴れて、左側の尾根下に雲をまとったような山肌が見えて惹かれた。
下台倉山をあとにして、アップダウンを繰り返す長い尾根道へ。
森の中へ入ったり、尾根の上へ出たりを繰り返し、そのたびに細かく登ったり下りたりを繰り返す。
まだ厚い雲が空を覆っていたためか変わり映えのない景色が続き、足元に見える木の葉や、草木ぐらいしか楽しめそうなものが見えない。
それでも予報通りに天気は好転しているようで、谷側には真下を流れる沢のようなものが光って見えた。
あんなにも登ったようなつもりで、実はそんなに高い場所まで登ったわけではない。
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下でキラキラして見える沢が近い感じがして、なんか苦労したけど大したことない高さだったのかなと・・・
なだらかに繰り返すアップダウンというつもり歩いてきたところ、振り返ってみると細尾根の急登が低く見えた。
一気に標高を上げるような登りではないものの意外と登ってきているようだった。
尾根上の小さな峰に登ってみると、平ヶ岳の方向は雲が厚く居座ったままで、灰色の塊で覆われていた。
ここにきて、いろいろなものが見えるようになってきて、体の重さばかりを感じていた気持ちもだいぶ前向きに変わった。
台倉山まで2時間36分
台倉山には登山口から2時間36分だった。
下台倉山までの時間を考えると、この区間は意外なほど順調に歩いてきた。
チェックのひとつとして腰を下ろして休憩を入れようとしたところ、アブが多くてとても座っていられる状況では無かった。
ひとくち水を含んで、早々に先へ。
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アブは嫌いです
台倉山からは台倉清水へ向かって下り坂が続く。
山影の樹林帯になり水気を含みやすいのか、ソールがしっかりと埋まってしまうほどの泥濘が続く。
足の踏み場も無いという言葉が、そのまま当てはまるような置き場の無さ。
敷かれた木道も滑る。
この先に水場があるんだという認識はしていただけで、台倉清水という文字を見たときには、意外とチェックポイントとしてマークしておくべきだった。
台倉清水まで下ると、なだらかな登りが続く。
笹や木々に囲まれていて何も見えない。
登り坂の勾配はキツくはないものの、ただ延々と変わらない景色が続いた。
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このあたりは景色は変わらないし無間地獄感があるけれど、でも歩きやすいし時間を巻くには都合が良いと思います
しばらく登ったところで、登りは緩やかに下り始めた。
景色が分からないために、なんとなくの間隔で池ノ口岳へ向かい、その鞍部へ下りていることは分かった。
ただ景色は変わらない。
登山道は湿った上を2枚の木道が敷かれ、その上を歩き続ける。
泥が付いているせいかとても滑りやすく、しかもそれが下り坂だと一度滑り出したら止まれない。
木道に出っ張りでもあって、ソールが引っかかってくれれば止まれるキッカケにもなるのだろうが、それもなく滑っていくスピードは増していくばかり。
なんならヘタに引っかかってしまうと、そこで躓いてバランスを崩しそうな気にもなってくる。
たまたま木道の切れ間や、角度が緩まったタイミングで止まることができ、運良く転ぶことも無く木道を通過した。
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この木道はナントカならんのか
木道で滑る下り坂を楽しんでいるのか、焦っているのかという時間を過ごしているうちに、平坦な角度で土の登山道に変わった。
水が溜まって泥濘むのは相変わらず。
ただ池ノ口岳への登りが近づいている雰囲気はありありとしていて、どこかで一息入れてから登りに取りかかりたいところだった。
なんとなく雰囲気で鞍部らしい場所を見つけ、登山道の脇でひといき入れる。
腰を下ろすにも泥濘んだ足元と、湿り気の残った草が躊躇わせる。
下台倉山からここまで順調に来ていた印象もあり、長く足を停めて休憩を入れる必要も無いだろう。
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ここからが登りでは一番キツいんじゃないと
池ノ口岳
平坦な登山道からゆっくりと登り坂が始まり、頭の上に広がっていた緑が開けたところで、急激な登りが目の前に近づいた。
高い段差や滑りやすい地面はあったものの、ここまで一気に登らなくても良いだろう。
左右には背の高い笹が茂り、足元には刈り込んだ笹の葉が落ちて滑りやすい。
笹の根も地面に張りだしている。
気が付くと持っていたストックの石突のゴムが取れていた。
どこかで根に引っかけて落としてしまったらしい。
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石突のゴムは大事だから・・・高いし
ここまで歩いてきた疲労からか元からの筋力不足からか、なかなか急登を進む足が上がらない。
振り返ると台倉山の稜線がなだらかに見え、ここまで歩いてきた距離を感じる。
見える景色はとにかく山深く、名前も知らない山々が並んでいる。
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たぶんあの奥が山頂ですって言うのだろうな
急登の終わりが近づいてきたころ、ようやく平ヶ岳の山頂部が見えてきた。
その山名の通りに丸く平らで、山頂としての印象が薄そうなサイズ感。
見えているあの向こうに山頂部が遠く続いているのだろうと思いながら眺め、きっと雄大なのだろうという期待感と、それはそれで疲れそうで嫌だという思いと。
池ノ口岳最後のザレ場のような花崗岩の段差を越えると、ようやく平坦な山頂部に着いた。
平ヶ岳とは別の山頂ではあるものの、同じように地塘が点在し、平坦で丸みのある穏やかな山頂部。
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平ヶ岳じゃないけど山頂着いた
姫ノ池に4時間28分
姫ノ池という山頂部に着いたのは登山口から4時間28分だった。
先行していた登山者が畔のデッキで足を休めている。
ここは腰を下ろすのにも良さそうで、昼寝ができたらどんなに良いところだろう。
ここにいる人たちに混じって休んでいたいのはやまやまで、とはいえ山頂が近いことも分かっているので、仕方なく立ち上がって足を向けた。
姫ノ池からはなだらかに下りていく。
途中、玉子石との分岐があり、鞍部の湿地帯までなだらかな下りが続く。
池ノ口岳から平ヶ岳山頂へ
湿地まで下りると水場と玉子石への分岐があり、山頂への登り返しが始まる。
段差は高いところもあるものの、木段が整備されていたり、傾斜もそうきついものではなかったりと、比較的歩きやすい登山道が続く。
周りを覆う厚い樹林帯から、すぐに草木の少ない高さに出て、つい先ほどまで腰を下ろしていた池ノ口岳が見えた。
木道もなだらかな上に滑り止めとして桟木が等間隔に打ち付けられていた。
なによりも乾いていたことが滑らなかった要因だった。
左右には草を分けるようにして小さな地塘が点在し、水面に空が映っている。
きっとこの木道は延々と続いて、なかなか山頂が着かないと辟易とするのだろうと思っていた矢先、木道の脇にデッキが作られ「三角点」と書かれた標が建っているのが見えた。
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お?
矢印の方を見ると、木々に囲まれた中に山頂標が建っていた。
ここまでの苦労して登ってきたことを思うと、あまりに拍子抜けするような山頂部だった。
平ヶ岳山頂
4時間53分
序盤の急登に苦労しつつ延々と登りながら4時間53分。
山頂はあっけなかった。
三角点のあるところではゆっくりと腰を下ろすような雰囲気でも無く、眺望も無いため、ひとまずデッキまで戻った。
この先にも木道は続いて展望台のようになっているという。
だいたい5分ほど。
どんな様子なのか行ってみることにした。
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なんか山頂としては魅力を感じないというか・・・
もう少し何かドーンっていうヤツがあるかと・・・
特別、見えるものが大きく変わることもなく、道の行き止まりといったところだった。
新潟県の通行止めという標識、なにか踏み跡だったかのようなスジが草の中に見えた。
敷かれた木道が広いというわけでもないので、人が来て場所に困っても厄介だと思い、山頂近くのデッキへ戻ることにした。
しばらく腰を下ろして景色を眺める。
目の前に見える大きな山体は燧ヶ岳。
雲の流れが速く、時間ごとに山頂部が見え隠れする。
長い行程の中で方向音痴になってしまったようで、方角が分からず、燧ヶ岳以外には何が見えているのかも分からない。
きっと会津駒ヶ岳が近く見えるのでは無いかと想像だけが膨らんだ。
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昼寝とかテント張るとかしたいようなところ
でも幕営はダメって書いてあった
しばらくデッキで腰を下ろした後、玉子石を見ておこうと思い、山頂を後にした。
玉子石
山頂から木道を下りて湿地の分岐点へ。
玉子石と水場への案内が建っている。
矢印に沿って下っていくと、沢に出て橋を渡る。
-
池ノ口岳との鞍部の湿原まで下りてきた -
水場のほうへ下りていく -
沢があったので渡る -
朽ちた木道を登り返し -
名前は分からないけれど咲いてた -
名前が分からないのでGoogleに聞いたら「アジョワン」と言っていた
登り返すと姫ノ池からのコースと合流、ここからが意外と遠く、案内の矢印を見ただけで間近にあるような錯覚をしていたのだけど、実際にはアップダウンもあり、なかなかに遠い場所だった。
丘のような高い場所から、下った先に玉子石があるのが見えたときには、見に来たことを軽く後悔した。
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遠いじゃないか・・・
それでも変わった角度から見える平ヶ岳の山頂部や、燧ヶ岳は歩き回って良かったと思え、玉子石よりも周辺の山を見るために歩き回るという意味では良かった。
分岐点から20分
山頂下の分岐点から20分ほど、玉子石に着いた。
下りてきてからの登り返しで、緩やかながらも想定外に大変な行程だった。
登山口からの行程を思えば、間近に見えたとしても決して気を抜いてはいけないのだろう。
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なんか・・・
玉子石は広々としたところにポツンとあるイメージだった。
意外と周りは背の低い木々で囲まれ、少し離れて眺めて見るという状況では無く、だからといって近づいてみたり触ってみたりというのは崩落の危険があるという。
行程のわりに満足できた眺めではなかったものの、いちおう見るべきものを見たといった印象だった。
下山
玉子石を見ることができたので、姫ノ池へ戻ることにした。
少し下って登り返すと、中ノ岐登山口との分岐があった。
プリンスルートといわれる中ノ岐登山口は登山道自体は短く済むものの、林道歩きが12キロほどになるという。
しかも一気に800mほどを下りる急斜面で、登山道が短いからといって決して楽な道とはいえない。
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プリンスルートって楽して登れるイメージだったけど、けっして楽じゃないのだなと思いました
中ノ岐登山口の方向を見て、水場との分岐まで緩やかに下り、姫ノ池へと登り返す。
傾斜はキツくないため、すぐに池の畔にあるデッキに戻ってくることができた。
平ヶ岳の眺望はここで終わり、登ってきた急な坂道を下りていくことになる。
いったんデッキで腰を下ろして水分を摂り、荷物を整えて下りることにした。
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もしかしてココから3時間切るとかできるんじゃないのか????
急な登りは下りになると眺めが良い。
とはいえ、見える景色は深い木々の山々ばかり。
一際高い燧ヶ岳が印象的に見え、これから下りていく台倉山の稜線が長く見える。
周囲の山々も名前や特徴が分かっていれば、この眺めも違った思いで見られたのだろう。
段差の高い岩の下りを過ぎ、深く抉れた土の登山道を下りていく途中、ストックを滑らせて体勢を崩した。
右足のスネを打ち付けるようにして転んでしまい、しばらく足が痛んだ。
石突のゴムを無くしていた方のストックが滑ったようで、骨を打ったわけではなかったので動くのに問題は無かった。
ただ痛む。
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石突のゴムは無くすと滑ります
そういえば登りで何かに触れてしまった右手は痛みが引くどころか、益々気になってしまう。
きっと下山中にも同じように触れることがあるだろう。
そうなるまえに手袋をしたほうが良いのだろう。
ただ暑い。
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登りで傷めた指がチクチクするから手袋したのだけど・・・
指先とか手先とかって手袋するだけでだいぶ暑いのだね
厚い樹林帯に戻り、眺望は無くなり、勾配は緩くなった。
なだらかな登山道は登りであっても下りであっても歩きやすい。
濡れて滑りやすかった木道は、すっかり乾いて歩きやすくなっている。
この調子なら3時間ほどで下りられるのではないだろうかと淡い期待を抱いた。
台倉山へ戻ると、まだ午後の早い時間にもかかわらず、まるで夕方を迎えたかのような陽の色をしていた。
日没には余裕があるにしても、少し慌てた気持ちになる陽射しの角度だった。
順調に下りてきたつもりではいたものの、池ノ口岳の姫ノ池からは1時間20分ほどかかっていた。
ここからのアップダウンを下りていくのに、水を摂るちょうどいい場所だったため、いったん荷物を下ろした。
登りで飛び交っていたアブはいなかった。
間近に見える燧ヶ岳は相変わらず強烈な存在感。
登りでこの景色が見えていたら、気持ちも少しは違っていただろう。
ただ暑くてヘバる時間が早く訪れていたかもしれない。
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疲れたけれど足の調子はイイし、これはけっこう歩けてると思う
台倉山を後にして、樹林帯の稜線を下りていく。
いったいいくつの峰を登っては下りていくのか分からないほど下台倉山が遠い。
振り返ってみると木々の間からは平ヶ岳が遠く見えた。
あの山頂からココを見ていたのだと思うと感慨深く遠い距離のように見えた。
そして台倉山を過ぎたころからようやく細尾根が見えてくる。
あの急登を下りれば、あとは林道を残すのみ。
まだ太股も膝も元気で登り返しも元気に体が動く。
目論んでいた時間通りに順調に下りていけそうだった。
台倉山から35分
台倉山から35分ほどで下台倉山に到着。
いよいよ下り一辺倒の急坂で、きっとこれは1時間ほどで下りることができる。
長い行程の終わりを迎えると思うと心が弾むようだった。
周りを眺める余裕もあり、特に鷹ノ巣山に乱立する巨岩が印象的で、あの山に登ることはできるのか?と考えながら、周囲の尾根を見回していた。
そして位置的には遠すぎて見えるはずのない荒沢岳や裏越後三山が、もしかしたら見えるんじゃないかと思いつつ、周囲の山が思いのほか崩落しているのにも目が向いた。
![平ヶ岳登山](https://tozan100kei.com/img/route/hiragatake1-feelicon.jpg)
鷹ノ巣山にぴょーんと立ってる岩がちょっとアレな感じだった
下山の細尾根
下台倉山から急激に標高を下げていく。
こんな所を通ったのか?と思うほどに石が大きく段差が高い。
ロープも思いのほか目につき、まったく記憶に残っていない。
ましてや晴れて眺望が良くなっているため両側の谷下が見えて、足を滑らせたら落ちていくのだろうという恐怖心すら沸いてくる。
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なんか膝の踏ん張りが弱い気がする
ここまでで失敗をしていたのが、下山時から身につけていた手袋だった。
下るだけにもかかわらず、手元が暑く異様に汗をかいた。
下山を始めたときには2リットル持っていた水が、一カ所の登り返しの時点では空になってしまい、顔や頭の暑さを感じながら体が動かなくなってくるのを感じた。
たとえば3年ほど前の北アルプス笠ヶ岳の下山時にも水を切らして体が動かなくなる経験をした。
あれに似ていたように思う。
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顔が暑いし、なんなら体中が火照ってる
急激な下りの中で木の根でできた段差に腰を下ろして、少し体を冷やそうとした。
もう汗は出ない。
口に含む水もなく、チョコパンとおにぎりがふたつ残っているだけだった。
このまま日没を迎えれば、気温が下がって体が動くようになるか?という思いと、この細尾根と自由が利かない状態で動くのは危ないのか?という思いと天秤に掛け、判断が付かない状態でしばらく時間を過ごす。
下りで快調に抜いてきた人たちに先を譲りながら、残りの行程と気力とを考えながら、それでも何も口に入れないよりは良いと思い、チョコパンの封を開けた。
これを食べたら口じゅうの水分が持っていかれて、パサパサしながらチョコの甘さに耐える時間がやってくるのだろう。
ところが、それはそれで唾液が出るきっかけになり、しかもパンに持っていかれた唾液が体に入ってノドが潤うというミラクルな体験をし、チョコの後味は良くないものの元気が戻ってくるキッカケになった。
太股が上がらないのは相変わらずで、膝の踏ん張りも弱いけれど、歩くことはできる。
細尾根と急坂を下りるくらいのこともできる。
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無いよりは食べた方がエネルギーも水も取れるのだと思った
荷物を背負って、追い越していった人たちに追いついた。
まだかまだかと心待ちにしていた林道は、下台倉山から1時間以上かかってのことだった。
なだらかな登り坂を戻っていくのは案外楽で、沢を渡るときに頭から水をかぶってやるんだと思いながらも、元気に水浴びをしている人たちを見て気持ちが萎えて、そのまま登山口へ急いだ。
ここからがなかなかに遠く、時間的にはそう長くは無かったのだろうが、体感時間は30分以上歩いたような印象だった。
あの立っている木の陰には登山口があるはず・・・と2回も3回も考えながら。
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おつかれさまでした
やっとの思いで登山口に着いて時計を見ると、登山届に書いていた予定よりは少し早かった。
それはそれで良かったのかもしれない。
ただ寝不足と運転疲れと、なによりも行程の長い登山から遠ざかっていたこともあって、平ヶ岳を選ぶには相応しいタイミングではなかったのかもしれない。