紅葉の毛無峠から御飯岳へ
絶景が楽しめるポイントとして知られている毛無峠。
群馬県と長野県の境に位置し、特徴的なテーブルマウンテンの破風岳から御飯岳へと稜線を繋ぐ。
志賀高原の南方に位置し、間近に万座や白根山、南側には四阿山や浅間山を眺め、西側の眼下には嬬恋の深い緑が広がる。
以前、硫黄が掘られていた鉱山として使われていたため、廃鉱になった現在でも朽ちた鉄塔が残り、硫黄の影響から背の高い木々が生えていない。
この荒廃した雰囲気や、あまりに見通しの良い眺めのために、林道の通行が可能な季節には観光客が訪れ、登山や眺望、ラジコン飛行機が楽しまれている。
考えもしていなかったけれど、破風岳が絶好調なタイミングじゃないか!
林道の終点、車が停められるスペースがいくつもあり、その中の御飯岳登山口に近い場所に車を停めた。
雲の流れが速く、色づき始めた破風岳の紅葉をチラリと隠しながら雲が流れて行く。
御飯岳へは歩き慣れた道、何度も来ているところということで、最低限の準備を整える。
しばらく振りになってしまった登山靴と、いつもより少なめの水、行動食も控えめにした。
数年前にきたときと同じ軽めの持ち物で登山口から御飯岳へ向かってスタートした。
辛そうだ。
ココに来るだけで精一杯。
序盤の毛無山まで、このコースの中では比較的登りがキツい。
鉄塔の下を通り、右側に鉱山跡を見下ろしながら笹の間を歩いていく。
毛無山の山頂はすぐそこに見え、振り返ると毛無峠や破風岳が見下ろすように見える。
ちょうど見頃を迎えている周辺の紅葉も、毛無山のあたりでは笹が多く、そう華やかには見えない。
ただ破風岳側には色づく葉が多いようで、枯れ始めた笹の黄緑に混じって、真っ赤な葉が広がるところに目を奪われた。
満足感に包まれた
登山口から10分
登山口から10分ほどで毛無山に着いた。
この高さで、すでに雲の動きが早く破風岳が見えづらい状況になっていた。
間近にあるはずの白根山も見ることができない。
関東では台風が近づいていることもあり、群馬側の天気が良くないことは簡単に想像できた。
県境で天候を気にせずに歩ける時間帯があるだけで良いのかもしれない。
いちおう先へ行かないと来た意味ないから
御飯岳へと向かう登山道の先を見ると、雲が流れ込んでくるような眺めで、笹原に流れる風が気持ちよさそうにも見えた。
毛無山から下りていく途中、登り返しで樹林帯へと入っていく笹原の色づきが美しく、風の気持ち良さに何度か足を停めた。
ここまでで太ももに疲労を感じ始めたということもあった。
笹の濃く鮮やかな緑から、枯れ始めた黄色は、秋が始まった季節を表しているようで、派手さは無いものの四季を目で感じられる。
あの登り返しの傾斜は、それなりにキツいことも分かっていながらなかなか楽しみに感じられ、そんなところが疲労感以上の盛り上がりが湧いてきたようだった。
笹原の最低部まで一気に下り、毛無山や破風岳を振り返る。
先ほどよりも雲が多い。
それでも今まで見たことの無かった赤さがあり、こんなにも簡単に秋を楽しめてしまったという嬉しさを感じた。
良かった。
秋を見た。と思う。
ただ笹原からの登り返しはキツい。
振り返れば雲の流れが美しく、気持ちの盛り上がる景色が広がっているものの、少し登ったくらいではそんなに眺めが変わることもなく、何度か振り返って景色が変わらないことを確認しながら、ようやく樹林帯の入口へと登り切った。
何度も来て知ってはいるものの、来る度に登り返しがキツくなっているようにも感じた。
笹原から森へ入ると、足元には橙になった葉が散らばり、秋の登山道らしい雰囲気。
針葉樹が多く、紅葉の山ではないものの、色づいた葉が見えるだけでも季節を感じる。
急登の笹原から、木々の間を縫う平坦な道に変わり、木が開けたところでは背の高い笹の間の道を歩いた。
辛いけれどまだ大丈夫
平坦な道を5分
平坦な道を5分ほど歩いたところで、登山道らしい段差の高い登りに差し掛かった。
隙間がないほどに生えた木々の間を縫うようにして登っていく。
前日の雨か夜露のせいなのか、足元は濡れて泥濘む。
落ち葉が滑りそうな雰囲気を醸しながら、転ばないように慎重に登っていく。
すぐに息が上がってしまうため、登り終えて空が広がるところが待ち遠しく感じつつ、疲労度としてはまだまだ足が持ち上がるので心強い。
登って平らを繰り返すことは知っている
木々に覆われた登を追えると、また平坦で笹の間を歩く様子に変わる。
刈り払われたあとに沿って細かなアップダウンを過ぎ、ときどき木の間をすり抜けるような場所を歩きながら進んで行く。
すると10分と歩かないうちに急登が見えた。
まるでハシゴのように一気に登る。
核心部。。。
枯れた笹が登山道上に散らばり、踏みしめて高く足を上げようとすると滑る。
ただでさえハイペースで登ろうとして息が上がっているのに、歩きづらさでさらに疲れる。
斜面を登るための段差も、足が上がらずにつま先を引っかけそうになるほど。
急登を終えて平坦な道に戻り、ひといき付きながら笹の間を歩く。
木々の間からは御飯岳の山頂らしい膨らみが見える。
間近にあることは分かっていても、あの山頂まであと何分歩くだろうか。
そろそろ登ったり下りたりすることに疲れてきた。
紅葉で気を紛らわせたいのだけど。。。
平坦な道は2・3分ほど、また下りになった。
だんだんと色づいた葉が多く見えるようになり、山頂方向の山肌には真っ赤な木々も見えた。
下って平坦なところから登り返す。
そうキツくはない傾斜の登りでも、足が重く呼吸が苦しい。
間近に見えていた山頂には、そろそろ着いても良いころ。
平坦であっても時間的にも体力的にも山頂に着いて欲しい。
飽きた
御飯岳山頂
登山口から58分
登山口から58分、御飯岳の山頂に着いた。
笹の間を縫うように歩き、今の体力と歩くことのできる力を確認するつもりで、疲労感でいっぱいになった。
山頂は平らで休憩がしやすいほどの広さがあるものの、木々に覆われているために伸び上がって見える程度の眺望しか楽しめない。
間近なところでは志賀高原横手山、岩菅山。
スタートしたところから近い破風岳も木々の間から覗き見ることができた。
意外と岩菅山が良い感じに見えるのだなと知った
山頂直下の北側は万座道路があり、藪さえ無ければ歩いてみたい距離と高低差。
老ノ倉山も間近に見えるはず。
帰る
帰りたい
下山
御飯岳からは登ってきた道をピストンで戻る。
特に見どころもなく、湿って滑りやすそうな雰囲気の地面に気をつけて下りていく。
登りで流れ始めていた雲は、すっかり登山道上を覆うようになって、場所によっては霧のように煙って見えた。
あと下りるのだし霧を楽しみたい
東側はまだ雲の流れがなく、木々の間から山並みが見えたり、間近なところで色づき始めた葉が見えたり。
湿っていた登山道は、この霧でますます滑りやすそうな雰囲気。
段差や木の根で転ばないようにと気をつけながら、ようやく樹林帯を抜けて笹原に戻ってくると、景気は真っ白に変わり登りとはまったく違った様子になっていた。
これは・・・
笹原の先は霧の中に消えていく登山道、そう遠くはないところにある毛無山のピークは見えない。
登山道の終わりが間近になって、笹原を下りたら毛無山へ登り返して、鉄塔の下へと下りるだけ。
ペースは上がらなかったものの、今の自分なりの速さを意識して歩いたために太ももが張って、力を込めることもままならなくなっている。
ここまで来て、躓いて転んだなどとなるのも避けたいところで、体力が持たないことも分かったので、今さら急ぐこともない。
ひんやりとした霧の流れる風を受けながら笹原を下りて毛無山へ登る。
間近なところも遠くの景色も、なにも見えない。
考え方を変えれば、まるで北アルプスの森林限界でガスに包まれているようにも思えないこともない。
こんな真っ白でなにも見えないところを歩きたいと思ってた。
本当に。
荒れた地面とハイマツの間を下りて、毛無峠の鉄塔近くまで下りてくると、いくらか雲が晴れてきたようで陽が差し込む瞬間があった。
毛無峠から廃鉱へと下りる道路のカーブが、どこか幻想的にも思えて、少し足を停めて真下の景色を楽しむ。
登山口まで下りてくると、雲が広がる向こうに長野市街が晴れている様子が見えた。
間近な空は暗くグレーになっているにも関わらず。