苔の八ヶ岳を堪能する周回コース
最高標高2100mを越える国道299号線、麦草峠が八ヶ岳を跨いでいる。
佐久穂町から茅野市へと続く車道で、八ヶ岳の北側、北八ヶ岳の丸山と茶臼山の間を縫っている。
白駒池に近く、一帯は紅葉や苔の美しさで知られている。
北八ヶ岳の中でも高低差が少なく、比較的歩きやすいエリア。
盛りのシーズンとはいえない9月ながらも雨が降る日が多く、湿度の高い森にはちょうど良かった。
麦草峠にある駐車場に車を停め、ちょうど見回りを始めたばかりの係員に600円を払った。
平日の朝ながらも広い駐車場には車が停まり、中には前日から停まっているような雰囲気の車もあった。
準備整えて道を渡り、白駒池への入り口に立つと、薄暗い木道の先に苔や緑が綺麗そうな雰囲気が漂う。
この時点から期待値が高すぎるのだろうか。
天気が良くても悪くても足元の景色を見るのだからイイに決まってる
綺麗な木道を歩き始めると、その両側には深い森が広がる。
木々の下にはジュウタンのようにコケ類が茂っていた。
木の間から陽が射して、それを受ける苔のコントラストが美しい。
一面の緑のなかにも目を瞠るような何かがあるのではないかと、近づいて見たり離れて見たり、折れた木をランドマークのように見てみたり。
極小の苔の中に、なにか気が付かない世界のようなものが見えるんじゃないかという思いだった。
そういえば初めてココに来たときは白駒山荘までの散歩だった
5分
5分ほど歩いたところで、青苔荘と白駒荘との分岐に着いた。
右へ行くと白駒荘を経由して中山方面へ。
青苔荘はにゅうへと続く。
登りはにゅうへ向かい、下りで中山を経由して白駒荘のほうから戻ってくる予定だった。
分岐からなだらかに下って青苔荘に到着。
入口からは10分ほど。
白駒池の畔に出た。
清々しい
白駒池は陽の光を受けて水面が反射しつつ、畔に近いところでは波が穏やかなせいか黒く深く見えた。
ボートの桟橋に立って覗き込んで見ると、底から水草が伸びてきているのが見える。
水の流れに沿っているのか、渦を巻いたように丸く。
ぐるぐるの葉っぱが気になった
白駒池の向こうには、周回しようとしている中山が見える。
丸く穏やかな形で特徴的なものも見えず、特別な存在感のある山のようには感じられない。
ただあの高さまでは登っていくのだというのがひと目で見えた。
青苔荘をあとにすると、しばらく木道を歩いて行く。
陽の射す森の中、石の段差に合わせて作られた木道を渡って行く。
特に眺望はなく、池を覗き込んだり、木漏れ日を見たり。
剣ヶ峰との分岐があり東屋の手前を曲がると日影が多くなるようで、周りの苔の緑が増えて色も濃くなったように見えた。
湿り気のある木道は見た目に滑りそうで、それでいて石の間を縫うように作られているために高さがあり、足を踏み外したら1mくらいは落ちるか?と思うようなところも。
木道が滑りそうで、、、
たくさんの石が転がるどれもが苔を生しているようで、デコボコとした一面が緑に見える。
生えている木々もどことなく特徴的に見えて、どこに視線を集中したら良いのかも分からない。
ただ落ちないようにしようと歩いた。
苔の生した石は、たしかに石なのだけど、石じゃ無いものに見えるんじゃないかと思って
分岐から5分
分岐から5分ほど歩いたところで白駒池がよく見える場所があった。
池の畔に木道が敷かれ、池ノ形に沿って歩くような印象だった。
薄暗い木の陰から覗き込む池も良く、穏やかな水面が鏡のようだった。
意外と白駒池が良かった
池を覗き込んですぐに、池の周回とにゅう方面との分岐に着いた。
矢印の指すとおりに木道を左へ進み、緩く登っていく登山道を歩いて行く。
湿気て滑りやすそうな石が登山道を埋め尽くすように埋まり、その上を渡るように歩いく。
苔が生して表面が緑色になってしまった石も良い。
登山道脇の倒木や枯れ木には、びっしりと苔が生えて、近づいてみて小さな世界のような眺めを楽しんだ。
知っていたけど湿ってる
石と泥濘んだ土の上を5分ほど歩くと、また木道の上を歩くように変わった。
2枚の板が左右交互に置かれているようで、歩く場所を左右に振りながら渡って行く。
すると木々の開けた湿地帯に出た。
白駒湿原と書かれた看板が建っている。
9月という季節がらか、花が咲いているわけではなく、目を瞠る植生があるわけでもなく。
トンボが多く飛んで留まっている場所という印象だった。
白駒湿原はいつ来るのが正解なのだろう?
ここまで34分ほど。
あと1時間とかからずににゅうに着くだろうか。
白駒湿原から先の登山道は、さらに湿度が増していた。
湿気ているというレベルを超えてソールが埋まるほどに泥濘んで、場所によっては水たまりの中を歩くほど。
この上を歩けとばかりに丸太が倒れていても、表面に泥が付いているために滑りそうな見た目。
しかも足を載せると不安定に揺れる。
心なしか苔も減ったように見える。
たぶん一番退屈なエリア
石と木の根を踏んで、水の少ないところを選んで歩き、「にゅうの森」と看板が建っている付近まで来ると、石の上を多く歩くような地面に変わった。
泥濘が減ったのは良い。
ただ石の上を歩いて足を滑らせようようものなら、打ち付けたときの痛みはきっと想像を超えるのだろう。
少なくなったように見えていた苔も、このあたりではだいぶ青々として見えた。
苔を目当てに歩いていると、遠目に見ても、近づいて見ても緑の中が楽しめる。
同じに見える緑の中に、見慣れないものが混じっていたり、茸が生えていたり。
石が増えるとスネをぶつけて傷めそうで怖い
なだらかだった勾配は、このあたりからきつく変わって、にゅうへ向かって登っていく。
2・3分ほどで登ったところで、稲子湯方面との分岐に着いた。
にゅうに近づくほどに、「にゅう」を指す名称のバリエーションが豊富なのに気が付く。
この分岐では「ニュー」になっており、あわせて指されている中山が、さながらNEW中山と書かれているようにも見える。
NEW
-
登りが一番厳しいあたり -
木の根元の苔を見る -
髪の毛のようになってる -
小さい茸がいっぱい -
小さな苔も近づいて見るとおもしろい -
この葉っぱもきっと大きな木になる -
登りは石と木の根がいっぱい -
苔のないところが登山道
石と段差の斜面を横切るような登り坂を進っていく。
湿った石は滑りやすそうで、木の根もすべすべとした質感が漂う。
先を見ると木々の向こうに明るさが見え、この登りももうじき平坦になるのだという雰囲気だった。
そういえば夏はイワカガミが咲いているあたり
入口から1時間10分
入口から1時間10分ほどのところで、稲子湯からの登山道と合流した。
ここでも「にゅう」は「ニュー」だった。
登山口はすっかり平坦で歩きやすい。
にゅうまではもう一息といったところで、岩場の登りを残すだけ。
10分ほどで樹林帯から抜け、目の前に岩の積み重なった峰が見えた。
にゅう
1時間20分
歩き初めて1時間20分ほどでにゅうに着いた。
雲は多いながらも天気が良く、にゅうの上からは北に蓼科山、南は間近に稲子岳、その先に天狗岳と硫黄岳、金峰山などもうっすらと見える。
硫黄岳からの斜面の向こうには、富士山も見ることができた。
にゅうから見る白駒池はけっこう好きです
この先、周回して登ろうとしている中山は東側の間近に見える。
なだらかでどこが山頂部かという存在感も薄い。
景色と暖かい陽射しを堪能してからにゅうから下り、登山道の続く樹林帯に戻った。
何度目かだけど景色は堪能できた方だと思う
中山峠
にゅうからの森は左側が切れ落ちた崖になっているせいか、木漏れ陽が射して気持ちが良い。
木々が多く茂っているおかげで、高いところを歩いているという高度感もない。
なんとなく緑の広がる尾根を歩いているような安心感。
ときどき急な登りがあったり、緩やかに下ったりしながら、中山峠へと近づいていく。
地味に急な登りがあったりして。。
にゅうから25分
25分ほど歩くと登りは緩やかで一辺倒な雰囲気に変わった。
尾根というよりは山の際を歩くような広さで、登山道の右側には木々が広がっている。
苔も多く、緑が綺麗だったり茸が楽しめたり。
それでいて序盤のような泥濘んだところは無かった。
たぶんこのあたりが一番静かに楽しめるんじゃないかなと思え
にゅうから40分
中山峠と中山の分岐に着いたのはにゅうから40分ほど。
この分岐を左に曲がると中山峠があり、天狗岳や南八ヶ岳へと入っていく。
今回の周回は右へ曲がって中山へ登って高見石小屋へ下りていく予定。
右へ行きます
中山
中山峠への分岐からは木々に囲まれて平坦な道が続く。
頭上を覆うような木々は無く陽が射しているにもかかわらず、森の中よりも足元が泥濘んでいるのが不思議で、丸太がいくつも埋まって足の置き場所ができていた。
それでも序盤よりはマシで歩きやすく、足元に気をつけなくて良いというのは気分にも余裕が持てる。
シマガレ!
中山峠から2・3分
2・3分歩いたところで、縞枯れになっている一帯があった。
短い間隔で枯れ木と緑が入れ替わっており、その景色を背にして写真を撮りまくっている女性達のグループもいた。
きっとあの人たちはInstagramでウェーイしてる
分岐から平坦で歩きやすい登山道を5分ほど。
縞枯れの一帯を過ぎて、徐々に登りが見えてきた。
大きな石が階段のように積まれて、一直線に登っていく。
すると周囲には背の高い木が無くなり、ハイマツとシャクナゲが広がる。
周りを一望するような登山道で、右側にはにゅうが見えた。
トリ!
野鳥の声が多く聞こえ、石の段差を踏んでいる最中にも、目の前をジョウビタキらしい色が横切っていく。
街の中では見かけることの少ない色に、足を停めて観察をしたいところ、飛んでいった先を見てもどこにいるのかも分からない。
ただグレーっぽかった、オレンジ色が見えた気がする、というような印象だけが残った。
中山って地味だなと思う
6・7分の登り
石の登り坂は6・7分ほど。
また厚い木々の中に戻って、平坦な登山道に戻ると中山の標が建っていた。
今回の最高地点で標高は2500m近い。
蓼科山と似たような高さでありながらも、山頂部の雰囲気があまりに違うところがおもしろい。
ただ景色にはおもしろみを感じるところもないため、さらに5分ほど進んで展望台へ行くことにした。
以前、展望台に来たときは風雨が酷かったです
中山展望台は大きな石が多く、木々が生えていないために周囲の眺めが良い。
雲が多い空ながらも北側に蓼科山まで見渡すことができ、南側は天狗岳のふたつの峰がよく見える。
西側に見下ろせるはずの茅野市街は雲の下だった。
陽の温かさがちょうどよく、適度に風が吹く陽気は気持ちが良く、景色も開けているため長居したいところだった。
昼寝したい
高見石小屋
展望台からは樹林帯へ戻り標高を下げていく。
白駒池へ戻る途中、高見石小屋へ立ち寄ろうと考えていた。
登山道には石が多くあり、段差が高いために歩きづらく、膝にも優しくなかった。
見える景色も変わり映えがないうえに現在地が分からないために退屈で、なかなか思ったところに到着しないという歯がゆさがあった。
ときどき足を留めて緑を見るにしても、そう何度も見たいというような思いでもなく。
トリ!
途中、イカルらしい色の野鳥が数羽、登山道上に留まっているのが見え、足を停めてゆっくりと近づこうとしたものの、すぐに飛び立ってしまった。
特徴的なクチバシと羽の色だけが印象に残った。
展望台から40分
展望台から高見石小屋には40分ほどかかった。
延々と木々の中を下り続けるのは体感時間が長く、小屋の手前での登り返しは想定していなかった。
この下り、長かったです
高見石小屋に来たら、揚げパンを食べるというのを今回の目的のひとつにしていたため、順番を待ってお願いをした。
平日にも関わらず、昼近い時間ということもあってかたくさんの人が訪れていたところで、小屋番さんがひとりで切り盛りしている姿が大変そうだった。
お客さんが多すぎるし、対応できるようにできていないのだろうなと思いました
白駒池
高見石小屋からの下山路はここまでと同じように段差が高い石の下り坂。
深い緑に覆われているところも同じで、ときどき水たまりがあったり泥濘があったり。
相変わらず野鳥の声が多く聞こえる。
まさかの!
小屋から10分と経たないあたりでは、ルリビタキの雌が枝に佇んでいるのが見えた。
渋めの羽は木々の中で見立って見えなかったものの、角度を変えたときに青々とした尾が見えて存在感が増した。
高見石小屋から白駒池へは思いのほか近く、25分と掛からすに下りてきた。
木々の間から水面が見え、明るく光っている。
気になっていた「にゅう」を指す看板は、ここでは「乳」になっていた。
乳がどこかにあると思っていたけどココだったとは
白駒山荘の前まで来ると、木々が開けているところもあり、白駒池を一望して見ることができた。
しばらく池を眺めたり、身近な水面を見たりして白駒池の景色を楽しむ。
あと少し季節が進んで紅葉が始まると、もっと賑わうのだろう。
登山口はここから10分ほど。
青苔荘との分岐まで登り返して、木道を下りていく。
おつかれさまでした