扇沢から柏原新道を登って爺ヶ岳へ
柏原新道は、標高1350mの扇沢から始まる。
雨が降る中、駐車場のある橋から目を凝らせば、稜線には標高2,450mのところにある種池山荘を見ることができる。
登山口にある注意喚起の看板に目を向け、濡れた足元を確認しながら登山道へ。
ダラダラのろのろとスタート
登山道へと入っていくと序盤は緑に囲まれた九十九折りのルートが続く。
狭く勾配のあるルートで、足元には石が敷き詰められたように埋まっている。
濡れた登山道は滑りやすく登山道の狭さと相まって緊張感が高まる中、ところどころに木段もあり比較的歩きやすい。
左側は山、右側は谷と、一人が歩く程度の広さになっているがとくに危ないところも無く高度を上げていくことができる。
ひとつめの目安、八ツ見ベンチには約40分ほどで到着。
今回は天候が悪かったため周囲には何も見ることができなかったが、良いときには麓の大町市と八ヶ岳が見えるという。
なんにも見えない
ベンチを過ぎて50分ほどでケルンに到着。
足元には岩場が増え、木の合間からの眺めが良くなってくる。
下には黒四ダムへと通じる扇沢駅。
見上げれば目指す稜線が見える。
登山道はまだ半ばともいえないほど長く続いていることは分かっているが、あまりに近く見える稜線に気持ちが高まるようだった。
周囲を見渡すと山肌には雪渓が多く残り、緑との色合いがとても綺麗だった。
雪渓すげーなと思う
柏原新道は変化の無い淡々とした登山道が続く。
ほとんどが樹林帯に覆われ、木の葉の間から真っ白な空が覗くだけ。
ケルンから30分ほどで到着した一枚岩が柏原新道のほぼ中間地点。
ここを過ぎると大きな石が敷き詰められた石畳に入る。
雨に濡れた石は滑りやすく、石畳も見た目に注意が必要な雰囲気。
あとで知ったが、この石畳の岩は並べ直してあるらしく、歩きづらさは感じられなかった。
石畳を過ぎると、だんだんと勾配はなだらかに。
水平道という平らな地点を過ぎ、水平岬、石ベンチ、黄金岬と進んでいく。
黄金岬から少し歩くと、柏原新道の危険箇所とされているガラバに到着。
登山道の幅が狭く、右側からの落石や左側の谷に注意。
ガラバの先には雪渓が残り、30mほど雪の上をトラバースして行く。
アイゼンやピッケルは必要無いものの、山側からの落石が発生しやすい場所で、とくに猿などの自然動物が起こす落石にも注意が必要とのこと。
ガラバから雪渓を過ぎ、富士見坂、鉄砲坂と続く。
距離は短いものの勾配がきつい地点になっている。
いよいよここからが核心部だろうか。
名前の付いた地点を過ぎて、稜線まではそう遠くないことを知りながらも、雨の中でなかなか着かないことがもどかしい。
まだか。。。
扇沢から柏原新道を上って約3時間50分。
稜線に建つ種池山荘に到着。
ここで一泊をして、明日の天候が良ければ爺ヶ岳へと登る予定。
初日はとりあえずココまでで。
激しく降っていた雨は少し弱まったようで、湿度が高く涼しい風が吹いていた。
種池山荘の周りを見渡すと、蓮華岳から針木岳、立山や真砂岳、種池山荘から少し離れると鹿島槍ヶ岳と剱岳を望むことができる。
少し離れたところにあるテン場の脇には小さな池があり、その中にはイモリのような生き物が群がるように泳いでいた。
見慣れないその様子を少し物々しく感じながら、雲の多い種池からの眺めを楽しんだ。
あのイモリみたいなのは何だろうか。
翌日、雨が上がり青空が広がる。
初日とは正反対の清々しい天気になっていた。
種池山荘から爺ヶ岳は約1時間ほど。
ハイマツに囲まれたガレ場をまっすぐに登って南峰へ。
景色が素晴らしくて気持ちが高まる。
登山道の周りには花が咲き、周囲の山並みとともに目を楽しませてくれる。
ハイマツの中に雷鳥が見られるのではないかと期待をしながらも、それよりも角度を変えながらだんだんと近づいていく鹿島槍ヶ岳に心が躍り、標高を上げていくに連れて見えてくる槍ヶ岳や穂高岳に目を奪われた。
爺ヶ岳の南峰へは種池山荘から約30分。
いったん下って鞍部を過ぎ、本峰へはさらに10分ほど登っていく。
爺ヶ岳2,669mの山頂へ到着。
登山口の扇沢からは昨日からの累計4時間28分だった。
結構長かった
山頂からは立山から真砂岳、剱岳の険しい岩稜や、大きな双耳峰の鹿島槍ヶ岳、遠くに見える槍穂高。
爺ヶ岳そのものも麓からの存在感があり、その頂きに立ってみたい山ではあったものの、周りに見える山々を見ると、次はどこへ行くかと気持ちが移る。
数々見える山の中でも、何よりも針木岳の存在感が印象に残った。
後立山南部って地味な印象だけど、けっこう良い山ばかり
下山
爺ヶ岳山頂からは、再び種池山荘へ戻って柏原新道を下りる。
激しい雨の後とはいえ特に登山道が傷んでいるところもなく、快適な山歩きをすることができた。
徐々に近づいてくる扇沢駅や、前日は見えなかった鳴沢岳の稜線など、また歩いてみようと思える登山道だった。
また来よう