残雪の爺ヶ岳へ南尾根から登る
大町市街から扇沢へ向かって県道45号線を進む。
黒部ダムへの入口になる扇沢総合案内センターの手前500mほどのところに車10台ほどが停められるスペースがあり、この駐車場がいっぱいな場合は橋を渡ったところに広い場所がある。
登山口は道を挟んだ反対側。
鹿島槍ヶ岳への登山にも使われる扇沢の柏原新道の入口から南尾根へと入っていく。
登山口からうっすらと雪が積もり、しっかりと踏み固められている。
柏原新道は急な斜面を九十九折りに登っていくルートになっているので、雪が積もっているところはトラバース気味に進むことになる。
雪の積もり方によっては谷側へと足を滑らせることも考えられるので注意が必要。
南尾根への分岐
登山口から40分ほど。八ツ見ベンチに到着。
下には黒四ダムへと続く扇沢の駅が見える。
少し進むと南尾根へと進む案内板が掲げられている。
ここから種池山荘へと続くの柏原新道は雪に埋まって使用できないため、南尾根を利用するようにとのこと。
雪が積もった急斜面を尾根へと登っていく。
南尾根へと続く斜面は樹木も疎らなところがあり、足を滑らせると真下を流れる沢まで落ちていきそうに思える。
雪が緩んでいるので、しっかりと爪先を刺して登っていく。
斜面を登り切って尾根に出ると、木の根がビッシリと張った土の登山道に変わる。
木の間を縫うように進む南尾根は、雪のある春先ということもあってか木をかき分けるような場所や、どこを登っても良さそうな場所などルートが分かりにくいところもある。
その反面で雪の上であれば歩きやすいところを選んで歩ける楽しさも。
木の間からは後立山の絶景が見え隠れし、進む方向には種池山荘の橙色の屋根がチラチラと見え、左側を見れば鳴沢岳、振り返ると針木岳が見える。雪のかぶった後立山の稜線は美しい。
登山口から2時間半ほどで幅10mほどの雪庇の上を歩くルートに変わった。
ステップを踏みながら歩けるので、雪の急斜面でも歩きやすい反面で、滑りやすくところどころには窪みもあった。
雪の無い季節ならば崖になっている場所なので、くれぐれも踏み外さないように足の置き場には気を遣う。
爺ヶ岳へガレ場を登る
急な斜面を登り切ると、遠くに爺ヶ岳が見えてきた。
ここまでもかなり急な尾根だったので、この地点での山頂までの距離を見てひと息付けない登山者もいたのではないかと思う。
ここまでの時間を思うと、目に前に見える爺ヶ岳は大きく遠かった。
しばらくはアップダウンのある雪庇の上を進んでいく。
爺ヶ岳への斜面に近づいたところで、ルートは雪庇の上から尾根側に変わる。
ハイマツに覆われ、歩くべき場所も枝が迫り出し、歩くのにも苦労をする。
服に松ヤニの匂いを付けながらハイマツを抜けると、足元は岩の転がるガレ場に。
上を目指してガレ場を登っていく。
目の前に見えるピークに辿り着くと、またひとつ目の前に高いピークが現れる。
ガレ場の登山道はなかなかに急で、ルートも分かりにくいので登るのにもひと苦労。
2つ目のピークを越えて見えるのは、さらに遠く高い爺ヶ岳。登山道から南峰が見えないため、登ってくる人にとっては目の前のピークが南峰に見え、山頂が近いと感じられる。
実際、下山時にすれ違った数人に「南峰はアレですか?」というような質問をされた。
視線より低い場所に種池山荘が見えるようになり、爺ヶ岳への斜面はますますのガレ場になっていく。
登山口から4時間ほど。ようやく南峰へ到着した。
この場所まで登ってやっと爺ヶ岳の山頂と鹿島槍ヶ岳が見える。
爺ヶ岳山頂へ
いったん南峰を降り中峰へ。
剱岳や鹿島槍ヶ岳を見ながら歩くのは気持ちが良い。
鹿島槍への分岐から中峰へ登っていく。
南峰から約20分、山頂の中峰に到着した。
登山口からは4時間20分での到着だった。
下山
爺ヶ岳からの下山は、登りと同じコースをピストンで下っていく。
途中、樹林帯の中で踏み跡を間違いやすいところがあり、どちらを下りても同じところには行きつくものの、仲間で歩くときには距離を置くとはぐれるような雰囲気だった。
登りでは一辺倒で、なかなかに大変だと感じた南尾根コースも、下りでは歩きやすく思っていた以上に短時間で下りてくることができた。