高難易度の妙義山へ白雲山縦走
妙義山への登山口は妙義神社から。
上信越道松井田妙義ICから妙義神社へ向かう。
曲がりくねった登り坂を進み、妙義神社の手前に登山者用の駐車場へと進む交差点がある。
最寄りの道の駅の近くには登山者用の駐車場が設けられている。
100台は余裕で止まれるのではないかというほどの広い駐車場。
難点は道の駅まで長い階段を登らなくてはならないこと。
花の咲く土手を眺めながら階段を登り、道の駅を横切って妙義神社へ。
高速道路を下りてから妙義神社へってけっこう近い
鮮やかな彩色の社殿を横目に、石段を上がって登山口へ向かう。
奥にある社殿の横から中間道の登山道が続いていく。
妙義神社は色彩が華やかだった
大きな木に囲まれながら、枯れ葉でフカフカとした足元。
木の間からは金洞山の険しい岩峰が見える。
斜面を横切るように緩やかに登っていくと、ところどころに丸太の階段が整備されているうえに標識が多く歩きやすい。
中間道から大の字へ
登山口から10分と掛からないほどで白雲山へと続く大の字の分岐点に到着した。
ここまで歩いた調子の良さと天候の良さもあり、白雲山方面へ向かって足を進める。
足が軽い気がする
遠目で見た印象では標高の高い地点や日影では雪が多く残っているようだった。
この時点で、風の当たる稜線ではそれも少ないだろうと予想した。
春の暖かな陽気からも、固く締まり凍っているという可能性も少ないだろう。
中間道を真っ直ぐに進んでいれば、比較的難易度の低いタルワキ沢の登山道を登ることになっていた。
このまま登れそうだ
分岐からは九十九折りに斜面を登っていく。
山を巻くように登っていた登山道も、ここから東側へと戻っていく。
すぐに妙義山の象徴的な「大」の字が見えた。
葉の落ちた枝からは、群馬県が一望できるかのように眺めが良い。
足元は急な斜面で、気を抜いて足を滑らせれば妙義神社まで落ちていきそうなほど。
大の字が見えた場所からは、尾根のような狭い登山道に変わり、フカフカとしていた足元も岩の感触に変わった。
決してキツい勾配ではなく緩斜面の尾根が続いていく。
徐々に左右の幅が狭くなり、最初の鎖場がは分岐から20分ほど登ったところだった。
この鎖場は2mほどの高さだったため難なく越えると、目の前には1.5mほどの大きな岩が立っていた。
「見晴台」と看板の付けられた岩は、おそらくその上に立てば金洞山への眺望が素晴らしいのだろう。
見下ろせば高度感のある斜面。
丸みを帯びた尖塔系の岩の上に立つ勇気は無い。
見晴台からはいったん下り坂に変わり、下りきったところから一気に難易度が上がった。
2mほど鎖場を下り、その先へと続くのは岩壁のトラバース。
鎖が掛けられているものの足を掛ける場所が浅く雪も残っている。
慎重に場所を選びながら壁を渡ること約10mほど。
その先からは尾根ではなく落ち葉の斜面を登っていくルートに変わった。
大の字との分岐点にあたる辻には40分ほどで到着した。
中間道の分岐からは35分ほど。
木が茂って日の当たる場所も限られていたため、他の場所よりも雪が多く残っている。
石のサイズも大きい。
土質は崩れやすくもろい印象。
常に高度感のある斜面の上を歩いて行く。
どこまでも続く平野が見渡せ、反対に見上げれば高い岩壁。
不思議な景色に見とれながら登っていくと目の前には大きな岩。
長い年月で変形したのか、妙義神社の登拝用に削られたのか、岩が階段のように刳り抜かれた形になっていた。
奥の院から白雲山稜線へ
岩と岩が組み合わさった奥の暗がりに仏像が祀られている奥の院。
まさに信仰の場という雰囲気がひしひしと伝わるような佇まいで、その真横の岩壁に鎖が垂れている。
まさに岩壁と呼びたくなる鎖場で、目の前にしてどう登ろうか考えてしまう。
浅いながらも足を掛けるところは多そうで、3点支持もしっかりとできる雰囲気だった。
長さは30mほどはあるかと思われる長い鎖場。
足元を確認しながら慎重に登っていく。
登り切ると岩の隙間から奥の院の仏像が見えた。
まるで仏像の頭の上を歩いているようで申し訳ない。
難易度の高い鎖場をひとつ過ぎ、いったん気を休めて登っていく。
奥の院から登ってすぐに次の鎖場に出た。
こちらもなかなかの角度で、右側の高度感が凄い。
まるで奥の院の真下まで見えるような気さえする。
ただ右左と交互に窪みが作られていたのでリズムを刻むように登ることができ、そう難易度は高くない。
鎖場を登り切ると視界は枝よりも高く、これまでよりもさらに眺めが良い。
陽当たりもよく、これまで所々で見えていた残雪も無くなった様子。
目の前に続く岩と土が交互に続く登山道を上ると、目の前が青く晴れ、稜線に出た。
登山口から1時間ほどだった。
白雲山の稜線
見晴と看板の掛けられた白雲山の右端。
足場は決して広くは無いが、とても眺めが良く浅間山や上毛の山々、関東平野が眺められた。
これからの縦走路を見ると稜線上には雪が残っているようだった。
様子を伺うため稜線上を歩いてみる。
雪に埋まるのはソール程度の深さ。
凍っている様子も無い。
湿り気はあるものの土も見えているので問題は無さそうだった。
相馬岳と書かれた看板を目安に稜線を進んで行く。
ルート上は緩やかなアップダウンが続き、ふと西側へと巻いた。
さすがに西側は日が当たらずに雪が残っている。
これまでどおり狭く高さもあるため、慎重にゆっくりと歩いて行く。
するとすぐに2mほど登る鎖場になった。
雪も付いているし、あまり良い雰囲気では無かったが2mほどならば登ることもできると判断して取り付いた。
想定通り、難なく登ることができたその先に危険地帯があった。
5mほど続いている鎖場。
スラブ上の岩の上には10センチほどの雪が積もり、風が当たっていたせいか固く締まっていた。
場所によっては雪の下に氷もある。
鎖を持ち強く揺らせば、付いた雪も落ち、合わせて氷も取り除くことができた。
慎重に足元と手元を確認しながら少し登ってみる。
これぐらいならば登れると判断して進むと、想像以上に続く鎖場。
5mほどに見えていた先に、まだまだ10m以上は続いていた。
さすがにマズイので、振り返るととても戻れる状況には思えない。
雪の付いた岩場は、登ることはできても下りるのは難く見えた。
記憶の中でルートを反芻しながら、最悪、登ることも降りることもできずにいることを想像した。
救助のための保険にも入っている、手続きもできる、ただそれは無事だった場合。
雪のために手が冷え、さらに濡れた手袋が滑る。
手が外れることだけは避けるため、腕に鎖を巻く。
体重が掛かった場合、鎖が絡まって腕が折れる可能性はあるが、すぐに落ちることはないだろう。
巻き位置をずらしながら、足元を確認し、雪の状態を確認しながらとりあえず上へ。
上へ行くほどに足を掛ける場所がなくなっていく。
ようやく稜線の真上、鎖場の終わりと思われる場所が見えた。
その場所からは足を掛けることも難しかったため、体を起こし、鎖を握る手に力を込めて、足の裏全体で登ることにした。
運良く氷を踏むことが無かったため、足を滑らせることもなく登り切ることができた。
稜線上は足首ほどまでの雪が残っていた。
右手には長野との県境の景色、左手には視界の遮るもののない関東平野。
これ以上ないほどの眺望が広がる。
足元は1mも無いほどの幅のため、ゆっくりと景色を楽しむ余裕も無く、滑らないようにと気を遣う時間が続く。
次の難所は大のぞきの手前、ナイフリッジの登りだった。
鎖が1本あるが、左右とも切れ落ちて幅は50センチとないほど。
登り切ってもナイフリッジが続く。
かろうじて右側に木が生えているので、そこに安心を感じながら進んで行く。
大のぞきから相馬岳へ
登山口から1時間30分ほど。大のぞきに到着。
少し広い足場に、ようやく安心して腰を下ろせる場所に到着した。
大のぞきには2つの石碑が建てられ、そのうちの大きな方には「御嶽三社大神」と掘られていた。
浅間山をバックにした石碑は、そこから見える山々を祀っているようにも見える。
大のぞきからのルートを確認して、さらに先へ進むことに。
大のぞきからは、3つの鎖場が連続していた。
雪の付いた鎖場で、下りの場合は足を掛けるところが見えづらい。
岩に靴を当てて雪を払いながら下りていくとちょうど鞍部の最深部になった。
ここからは古いトレースが残っていた。
稜線上にあった寝袋の持ち主か、タルワキ沢からのピストンか。
次のピークの天狗岩を目指して鞍部からの登り返し。
西側の斜面に回り込んでいるので日の当たりが悪いせいか雪が多い。
足首まで埋まるような状態で、湿気を多く含んだ雪質だったので、ステップを踏んでいけば難なく登ることもできる。
ピョコとした感じの天狗岩を過ぎていくと、目の前に最高峰の相馬岳らしい影が見えてきた。
距離はそう遠くないが、そこまでにタルワキ沢の鞍部と登り返しがある。
木の間から見ると、鞍部はなかなかに深い。
天狗岩から西側の斜面を下り、15分ほどでの鞍部到着だった。
タルワキ沢はからの登り返しもそれまで通りの雪のルート。
ココからは雪が残っていても比較的登りやすく、おそらく雪の中を歩いた人も多いのだろうと思う。
新雪の下に固い感触が残っていた。
足を滑らせることも少ない。
ルートが鮮明では無いので、ところどころで迷うところはあったものの、無事に相馬岳に到着。
登山口からは2時間半。
稜線で1時間半の苦戦だった。
妙義山最高地点の相馬岳
1104mで妙義山で最も高いピークの相馬岳。
白雲山から金洞山への通過点のような尾根上に三角点があった。
標識が立てられ、まだまだ続く妙義山の縦走ルートと、八ヶ岳や蓼科山、荒船山が一望できた。
この周辺の超自然的な岩の形状が凄い。
木が多いせいか風もあまりあたらずに温かく、縦走路の険しさを忘れるような長閑さだった。
妙義山の下山ルート
相馬岳からはタルワキ沢を通っての下山。
登ってきたルートを戻り、天狗岩と相馬岳の鞍部にあたるタルワキ沢から下りていく。
両側に高く岩壁が聳え、ときどき落雪がある。
ここは落石にも注意をしたい。
急な斜面が続き、一度に高度を下げていく印象のルートだった。
鎖場は数カ所あり、そのうちのひとつは高さもあり、このルート上では唯一の難所だった。
中間道の分岐までアップダウンもなく、一定した斜面が続くので落石にさえ気をつければ気軽に妙義山に登ることのできるルートだった。