長者の森から残雪期の御座山へ
北相木村を東へ。
御座山を見上げながら集落を過ぎ、ぶどう峠へと差し掛かる途中に長者の森がある。
キャンプ場として使われ、関連施設の並ぶ中に広い駐車場があり、その横から登山道は始まる。
コテージやマレットゴルフ場などを横目に、アスファルトの道路をなだらかに登っていくと、じきに未舗装の林道に変わり、道路の両脇には雪が見えるようになっていく。
樹林帯に囲まれ落ち葉の豊富な林道は湿り気もあり、寒さの残るこの季節は凍ってカチカチに堅くなっていた。
20分ほど歩いたところで林道は終わり残雪の登山道が始まった。
20センチほどの雪は固く締まっているので埋まって足を取られることも無く登っていくことができる。
まっすぐに続いていく登山道に、踏み跡は途中で折れて続いていた。
序盤は正しい登山道が分かりづらいところがあり、見るからに広く続いているように見える場所も実は登山道では無いこともあった。
一度歩いているか踏み跡が見なければ正しいルートは分かりづらい。
斜面を横切るように登山道は続いていく。
堅い雪は斜面に倣うように斜めになり足が滑りやすいため、先に続く踏み跡を強く踏みこんで登っていく。
尾根を巻くように回り込んでいくと陽当たりが良く雪は無くなり、落ち葉が積もったフカフカとした登りに変わった。
木々の間からは遠く高い場所に御座山と思われるピークが見える。
雲の中に隠れているそのピークを見て、あんな遠くまでと思うと気持ちも下がっていく。
登山道の脇にシャクナゲが生えているのを見ながら坂を登り切ると、緩やかな下り坂に変わった。
深く登山道に積もった落ち葉は、その下に氷を隠しているようで、フカフカしていると思って足を乗せると思いがけず滑るところもあった。
登山道に建つ鉄塔
登山道を下りていくと大きな鉄塔に出た。
長者の森からは約50分ほど。東京電力と書かれた大きな鉄塔の下を潜った。
身の回りを囲む木々の高さに見慣れているせいか、唐突に鉄塔が見えるとその高さに驚く。
鉄塔を過ぎてからは再び雪の残る登山道に戻る。
目の前に見える小高いピークへ、登山道には階段が作られ雪に埋まっている。
落ち葉と雪を繰り返しながら階段の急坂を登り切ると、白岩からの登山道と合流した。
白岩からの合流地点からは緩やかな下り坂の尾根を歩く。
東側の斜面だけに雪が残り、朝陽を受けて眩しく見える。
いったん下るとまた斜面を横切る登り坂が続いた。
見晴
序盤の斜面のトラバースとの違いは、この辺りまで登ると凍結場所が増えたことと、幅がかなり狭くなり両足を置ける程度になっていること。
積雪が多ければ滑落しそうな場所でもあり、足元の氷りに気をつけながらトラバースをして行く。
斜面を過ぎ尾根に戻ると、今度は西側の斜面をトラバースするルートに変わった。
陽が当たりところどころで土が出ている斜面から、雪とその下に氷のある斜面に変わりさらに気を遣う。
ほんの5分と経たない西側のトラバースを過ぎると、尾根を跨ぐようにして東側に戻り、柔らかな雪の斜面に変わった。
勾配が急なところでは雪が残らず、氷だけが張っているところも増えてきた。
鉄塔からは30分ほど登ったところで、だんだんとシャクナゲが周辺を覆うようになってきた。
周りに見えている木と緑は全てシャクナゲではないかと思うほど。
登山道を覆うばかりにシャクナゲの頭を垂れた葉が茂っている。
シャクナゲの全盛期であればきっと花のトンネルになるのだろう。
登山道から1時間半ほど。見晴台に到着した。
大きな岩の上にある見晴台は、部分的に植物が無く、行き先を見渡すことができる。
見晴台から見えるピークは御座山の前衛峰で、残念ながら山頂を望むことはできない。
前衛峰
見晴台からはしばらく狭いやせ尾根のような登山道が続く。
周辺のシャクナゲは相変わらず豊富で、残雪期の惜しい景色が続く。
進むほどに雪は深くなり、登山口付近では固く締まっていた雪質もサラサラとした状態に変わった。
シャクナゲが群生する尾根の急登を登り、見晴台から40分ほど掛けて前衛峰に到着した。
前衛峰のピークは樹林帯のため何も見えず、少し下ったところで景色が開けた。
標高は1992m。御座山までの高低差は残り120m。
ただここからは本峰との鞍部へと100mほど下ることになり、前衛峰から望む御座山よりも鞍部の深さが目に入る。
下新井からの登山道との合流地点になる。
岩場と急な斜面を鞍部へと下りると、雪は一層深く膝下ほど。
鞍部から山頂への登り返しがこのルートの核心部で、最も長い急登が続く。
陽の当たらない北側の斜面になるため、残雪が深く乾いてフカフカとした状態のままだった。
踏み跡に沿って歩いてもところどころで踏み抜き、両手のストックも深く埋まる。
鞍部から山頂へ。樹林帯の急登を登り切るのに20分ほど。
振り返って見える前衛峰の高さが視界より上なのか下なのかを確認することもなく、ただ我慢の登り坂だった。
急登が終わり、緩やかな勾配に変わると木々の向こうに避難小屋が見えた。
避難小屋は南相木村の栗生からの登山道との合流地点になる。
御座山山頂
避難小屋を巻くようにして過ぎると、御座山山頂の岩場に入る。
左側が高く切れ落ち、御座山登山道の中では最も危険な場所。
若干の雪は残るものの氷も無いため難なく山頂に到着。
長者の森からは2時間24分。
期待した八ヶ岳の眺望は無く、周囲を真っ白な霞と雲が覆っていた。
小さな祠と山頂の標を見、登ったきた尾根を見下ろすと高かった鉄塔は遠く下に見えた。
御座山の下山ルート
御座山は南北に登山道が続くため、できれば一直線に登り下りたいところ。
長者の森の反対側に当たる栗生に下りたい気持ちにもなるのところをピストンで下りることに。
登りで気を遣った雪の下の氷は、下りの方が危険度も高く、木に掴まり枝を掴み氷結ポイントを過ぎた。
急な勾配はグリセードにも都合が良く、状態が良ければ下山はアップダウンを楽しめる。