残雪期の万仏山
長野県の北部に位置する万仏山。
飯山市と木島平村の境にあり、脆い細尾根と急登が特徴的な山で、石仏が多く祀られていたりイワウチワが多く咲いていたりする。
細尾根と脆い急登が続く山でもあり、集落からも近い里山でありながら行程の短さに反した難度が楽しめる。
雪の多い地域ということもあり、整備が進められた春先から秋までの無雪期が登山適期といえる。
ただ雪が固く締まった残雪期になると、万仏山と繋がる尾根に沿って登れるようになり、雪深い地域の春の眺望を楽しむことができる。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
このルートは何年か前に積雪期だけってことで知った
飯山市の瑞穂福島にある登山口は万仏山へと尾根を繋ぐ城の峰へ登る大清水から。
雪が解けた季節なら何台もの車が停められるほどのスペースがあり、その傍らにある森に登山口があった。
小さな祠が建ち湧き水が流れる登山口。
日影には雪が残り、ところどころで雪を踏みながら杉の中を緩やかに登っていく。
城の峰へ
登山口から杉林の中を通り、10分あまりで林道に出た。
城の峰の山腹をぐるりと横切るように伸びていく林道で、ここから本格的に山の中へと入って行く。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
いきなり滑りそうな斜面
杉の葉が落ち積もった柔らかな斜面で、序盤はその急斜面を横切るように進む。
雪解けの柔らかな土は滑りやすく、しっかりと踏みしめながら。
5分ほどしたところで左に折り返して、尾根状の急斜面を登っていく。
登っていく途中で、この冬の積雪のために砕けるように折れた杉の木も見られる。
杉の木の間からは、山の斜面がチラリと見える。
思いのほか高く登ってきたような、まだまだ登りは長いような、そんな眺めだった。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
まだまだ低い
今回お声がけをくださったのは、万仏山の登山道を整備している地元の方々。
登山口付近での車が停められる場所や、冬の周辺の様子を聞かせてもらいながら。
方々が山頂へ向かう道中で木を払ったり落ちた枝を片付けたりしながら登っていくのを、後ろから見せてもらいながらの登山だった。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
声を掛けて頂くのはありがたい
登山口から城の峰への中盤ほど。
崩落した跡のようなガレ場に出た。
苔が生した巨石が多く転がった斜面。
そこまでの柔らかな土の登山道とは雰囲気が違っていた。
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雪解け後にありがちだけど枝で道が塞がれてるヤツ
石を踏みながら段差を越え、倒木を横目に見ながらガレ場の上にある急斜面を登っていく。
その上では雪の重みで木がもたれ掛かり、さらに細い枝が茂って道を塞いでいた。
枝を避け、笹を踏んで上へ。
倒木を潜り登山道へと戻り、雪の残った斜面をトラバースしていく。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
雪が滑りそうで。。。
里山とはいえ、固く締まった残雪のトラバースは注意が必要で、足を滑らせれば斜面の下へと滑り落ちる。
しっかりと踏み込み、足元に注意をしながら20mほどのトラバースを進んだ。
トラバースの先には高い段差があり、括り付けられたロープを手がかりにして、段差の上に足を乗せる。
あたりは倒木もあり眺望が開けていたため、麓や周辺の様子がよく見えた。
眼下に流れる千曲川や、新潟との県境に近く霞んで見える関田山脈。
雪の残る山の眺めは春らしいものだった。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
この眺めはひと息つける感じ
高い段差と急登が続き、場所によってはロープを掛けられたところを過ぎた。
折り返しながらの登り坂を過ぎて杉林へと入ると、城の峰の山頂部が見える。
特にどこが登山道ともいえないような、木々が疎らに生えた斜面で、草や笹も生えていない歩きやすい登り。
杉の合間からは妙高山が見えるようになった。
城の峰から馬曲山へ
登山口から56分ほど。
城の峰へ到着した。
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やっと着いた
城の峰には、いつ置かれたのか分からないほどに傷んだ看板と山頂標。
看板には鎌倉時代ごろに犬飼城があったことが書かれ、城の峰という山が万仏山と繋がる尾根の先にあることも書かれていた。
山頂部は円形で、まわりをぐるりと囲むように盛り上がっているあたりに、小規模ながらも城らしき施設があったことを覗わせる。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
この場所の歴史とかよく知らないのだよ
西側には木島平村から登ってくることのできる登山道、反対の東側には万仏山への登山道が続く。
ここから先はアップダウンのある尾根が続いていく。
城の峰の山頂からすぐに空堀へ下りる。
ひとつ過ぎて、またひとつふたつと空堀を過ぎ、笹の刈り払われた平坦な尾根へ。
左手側には木々の隙間から、麓の集落がチラチラと見えるようだった。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
チラッと景色が見えるのなら樹林帯の尾根も悪くないと思う
樹林帯で遠景の眺望を見ることができないとはいえ、涼やかな風が吹く尾根は気持ちが良い。
落ち葉の柔らかな感触と、しばらく続く平坦な尾根は歩きやすく楽しめた。
ほんの1・2年前までは、この尾根道は藪道で積雪期だけの登山道だった。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
藪の中を歩いたのは良い思い出
なだらかながらも徐々に標高は上がり、尾根の残雪量も増えてきた。
落ち葉の上を歩く登山道から雪の上を歩くように変わり、小さなピークをひとつ越えた。
緩く下って登り返す斜面では角度がきつく、なだらかなピークを踏んでからまた登り返す。
標高980m付近の片鉾の峰に着いたのは、城の峰から25分ほど経ったところだった。
片鉾の峰を下りて尾根の肩を歩くようなトラバースが続いたあとは馬曲山への登り返しが始まる。
140mほどの高低差で高さに差があるわけではないものの、この登りが意外とキツく堪えた。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
ここは地味なのだけどキツい
斜面の角度が山影の西向きになることもあり、急登には雪が残っていた。
足を停めて葉の落ちた木々の間を覗いて見ると、徐々に万仏山から北側の稜線が見えてくる。
どの山から続く稜線かも分からず、ただ残雪期らしい雪が疎らに残った眺めだった。
急登は20分ほど。
ようやく馬曲山の山頂尾根に登ることができた。
馬曲山は長細い板状の尾根で、なだらかな登りを歩いていくと、1本の大きなブナの木があった。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
どうしてこの木だけ大きいのだろう
登山口から1時間48分。
馬曲山では雪が多く、1m以上は残っているようだった。
山頂のブナの木には、他の木と比べても熊の爪の痕と思われる疵が多く、雰囲気を醸しているようだった。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
初めて来たときはここが山頂だと知らなくて、なんとなく雰囲気が山頂っぽいブナだと思った
馬曲山から万仏山へ
馬曲山の山頂でひといき入れて、鞍部へと下りて行く。
万仏山へは馬曲山を下りてからピークをひとつ越え、下りきってから山頂と南峰との間へ登り返す。
ここまでの登山道と同じような樹林帯の尾根道で、下り坂では先に万仏山が見えてきた。
積雪量が多くても陽が当たるせいか、尾根上の片側だけが雪解けていたり、雪の下にある笹で踏み抜いたりといったところもあった。
鞍部へと下ってからピークへ登り返し、万仏山との鞍部になる馬曲乗越へと下りる。
木々の間から見える万仏山の山肌は間近だった。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
下りながら眺める万仏山はけっこう好き
ピークを下りきった馬曲乗越は、麓の集落へと続く登山道との分岐点になっていた。
木島平村の馬曲地区から続く板入沢から、この場所へと通じているようで、整備はされていないものの歩くことができたと話しを聞かせてもらった。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
板入沢からの登山道はどこなのだろう?と思ってた
馬曲乗越から万仏山への登り返し。
落ち葉の急登がしばらく続いたあと、巨石の高い段差があり、万仏山らしい雰囲気の岩の登山道に変わる。
ロープが架けられた巨石の上に乗って先の急登を登ると、左側は深く切れ落ちた崖。
谷を隔てて万仏岩からの登山道が見える。
狭い尾根の肩を歩くようにして登り、木々が開けたところで振り返ると、先ほど通ってきた馬曲山と、その左側に高社山を見ることができた。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
この眺めはまだ序の口
左側が崖場になった細尾根は続き、尖った岩の上を渡ると再び急登に差し掛かった。
落ち葉が多く積もり柔らかく湿った土の質感が滑りやすそうにも思える坂で、石や木の根が多く張りだしているため、ソールが引っかかるところも多くあった。
急登を登り、いったん斜面が緩まると、雪の残った急登になった。
登り切ると万仏山の山頂稜線というところで、このコースの核心部ともいえる。
固い雪に爪先を蹴り込んで、雪にステップを作りながら登っていく。
急登は足を滑らせることのできない緊張感があり、すぐそこに尾根の到達点が見えるものの、なかなかに力の抜けないところだった。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
これは気をつけないとヤバい
尾根上に出たのは、登山口から2時間29分。
馬曲山から45分ほどで、そう長い距離を歩いたわけではなかったとはいえ、山頂近くまできた昂揚感があった。
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ついに・・・
眺望のない山頂部へは向かわず、いったん眺めの良い南峰へ立ち寄って周辺の景色を楽しむ。
残雪のせいで狭い尾根はさらに狭く南峰へ向かうにも注意が必要だった。
踏み抜くことのないようにできるだけ地面が見えているところへ足を置きながら南峰へ近づいた。
西側に先ほども見ることのできた高社山と馬曲山。
振り返ると雪解けを迎えた山の斜面が見える。
その真下に林道のような開けた道を見つけることができたのは新しい発見だった。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
知らないのだけど、この周りって作業道や林道が多い?
馬曲山から北側へ視線を移すと、飯山市とその向こうに見える妙高山。
高妻山などの戸隠連峰の山々、遠く霞んで見える北アルプスは五竜岳の武田菱までも見えた。
中でも特に戸隠連峰の北側にある地蔵山の三角錐が見えたのは印象的だった。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
地蔵山も教えてもらった
南峰からは尾根を伝って山頂へ向かう。
両側が切れ落ちた細尾根なうえに雪が多く残っているところもあり特に注意をしたところだった。
南峰から下って山頂への登り返しは、雪解け水で滑りやすい段差を登る。
万仏岩からの登山道と合流すると、山頂はすぐそこだった。
万仏山山頂
登山口から2時間38分。
万仏山の山頂に到着した。
木の周りでは雪が解けて穴が開き、積雪量も数十センチほど。
木々に覆われているために眺望は楽しめるほどではなく、妙高山が僅かに見える程度。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
景色は南峰で満足してる
下山路は北峰を経由して、この山塊の最高地点の三界峰から九巒乗越へと下りる。
北峰から三界峰へ
万仏山の山頂から北峰へは2・3分ほど。
山頂から下りてわずかに登り返してすぐといったところだった。
山頂からのあまりの近さに、特に立ち寄って見るべきものもなく、さらに深い鞍部へと下りてく。
無雪期でも北峰から鞍部への下りは急斜面で下りづらい。
特に雪が残るこの季節は、雪質によって難しさが大きく変わる。
この日は暖かさもあって足が埋まるような柔らかな雪だったため歩きやすく、下りるのも難しくは無かったものの、もし固く締まった日や深く埋まる日だったら、かなり難しいのだろうと想像をした。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
けっこう急な下りだから
鞍部からは尾根の登り。
木々の間を縫うような登りで、雪が解けた落ち葉の上と、雪の上とを交互に踏んでいく。
つい先ほど下りてきた北峰と同じくらいの高さまで登り返して、見下ろすような長めになったくらいで登りは終わり、雪の斜面のトラバースに変わった。
溶け始めて緩まった雪は崩れやすく、斜面を横切ると下へと流れ落ち足を取られやすい。
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転んだら転がって雪だるまになる感じ
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
この雪原は良かった
トラバースが終わると、岩岳尾根からの登山道と合流地点に着いた。
ここから右へと折れて三界峰へ向かう。
少し進むと左側に三界峰が見え、そのピークに向かって雪の上を歩いていく。
三界峰の手前まではなだらかで歩きやすく、急斜面を一気に登って三界峰に到着した。
三界峰と水ヶ沢山
登山口から3時間7分、万仏山から30分ほどでの三界峰到着だった。
三界峰は木々に覆われたピークで特に眺望はない。
ここから先へ続く尾根のブナ林と、まだ残雪のある周りの景色を楽しめるぐらいだった。
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この先、登山道は無いのに、続いていきそうな雰囲気がある
水ヶ沢山はここから尾根伝いに山伏コースを下りていく。
いったん下りてから細尾根を歩き登り返す。
細尾根でも雪が柔らかくなっているおかげで適度に足が埋まり歩きやすい。
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ここは・・・!
10分ほどで水ヶ沢山に着いた。
木々が開けて左右の眺めが良い。
右側には野沢温泉村の毛無山。
左側には飯山市と妙高山が見える。
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イイ!
毛無山は三界峰から伝っていく尾根と、溶け始めて疎らに土が見える斜面が見えた。
霞んだ空の色が春らしく、雪解けの季節らしい眺めだった。
万仏山から標高と角度が変わったおかげで、妙高山への眺めも変わり南側に並ぶ黒姫山や、その手前にある斑尾山がよく見えた。
斑尾山から南へ視線を移すと万仏山南峰から見えた高社山があり、その手前には馬曲山と岩岳尾根があった。
城の峰からの登山道の中で、眺望ポイントとしては万仏山南峰が最も楽しめると思っていたのが、水ヶ沢山でこの眺めが楽しめるとは思いも寄らず、意外なところで楽しみを見つけたような気持ちだった。
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意外なほど景色が楽しめた。
ここはイイ!
下山
水ヶ沢山から九巒乗越へ向かって雪の尾根を下りる。
右側には野沢温泉の山々を見ながら、ブナの森へ向かって下りていく。
ときどき尾根の上で、スキー場のゴンドラが反射して光っているのが見えた。
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向こうの尾根はゲレンデなのだね
左側には木々が多く茂りながら右側は深い谷になっているところもあり、その高さを楽しみながら、深く残っている雪の感触も楽しむことができた。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
油断したら落ちるヤツ
九巒乗越からの急な下り
水ヶ沢山から50分ほどの尾根を下って九巒乗越に到着した。
だいぶ雪の量が減り、地面の落ち葉が見えるところも多くなっていた。
九巒乗越の尾根を真っ直ぐに進むと小菅山へ登り返していく。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
小菅山は紅葉とか新緑がいいと思う
尾根から左川の斜面を入ると杉の間を縫うような急な下りになった。
土は湿って滑りやすい。
左右に折り返しながら斜面を下り、杉の林の中へ入っていく。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
大変でした
杉林の下りは踏み抜きが多かった。
斜面の角度が急で体重を乗せて下りていくと、迂闊に足を雪に埋めて雪の下にスネなどを打ち付けるようなところもあった。
林の中では倒木も多く見え、砕けるような折れ方をしているものや、真っ二つに折れているようなものもあった。
こんなにも多くの木が折れていることや、折れ方が一様ではないことは雪の怖さを見るようだった。
30分ほど杉の間を下りて九巒の登山口に到着した。
登山口の林道には積雪も残りここでも杉の倒木があった。
杉の葉を踏みながら林道を下りて集落にある棚田の上に出た。
![万仏山登山](https://tozan100kei.com/img/route/manbutsusan6-feelicon.jpg)
こんな場所に出るのか。