鉢伏山へ
松本市外から美ヶ原方面へ向かってアザレアラインを上る。
入山辺地区を通り抜け、冬季通行止めの表示から桧の湯へと入っていく。
桧の湯に車を停めると、沢を挟んで上を歩く道路と、沢沿いに歩いていく道路とがある。
登山口に簡単にいくことができるのは、下の道を歩いて行く。
扉温泉明神館を過ぎるとすぐに登山口の看板を見つけることができた。
沢の上を歩いていくと大きく迂回してしまうばかりか、登山口を見落としやすく、道路も落石や倒木などで歩きづらい。
通行止めの表示がいかにも登山口へ向かいそうに見える思い込みが紛らわしいところ。
よそ見をしながら歩いていたら登山口をスルーしてしまうという・・・
初めての山はコレだから・・・
登山口のまわりには何台もの車が停まっていた。
鉢伏山へ向かうための駐車場ではなさそうなので、やはり桧の湯を借りるのが良さそうだった。
桧の湯の駐車場を借り登山口まで10分ほど。
登山用の空きスペースじゃないから要注意
鉢伏山登山道の序盤
登山口に入っていくと凍結した急登を登る。
木が茂っているため陽が当たりづらく、しかも水が滲み流れているようなところで、固く凍っているうえにうっすらと雪が積もり、見るからに滑りそうな状態になっていた。
5分ほど登り、いったん下ると沢沿いに進む登山道になった。
凍結している地面がところどころで滑りやすく、沢の上に掛けられた橋は特に注意をしたいところだった。
サラサラの雪は踏むと滑る
沢を横目に登山道が続く
積雪量は少なく、ソールを隠す程度の雪が残っている。
落ち葉を踏みしめる音も乾いていて、葉がパリパリと割れる音と、沢が流れる音を聞きながらの登山道が続く。
差し込む陽と、針葉樹の影がとても綺麗で、歩きやすさもありじっくりと時間を掛けながら歩きたいところだった。
登山道には定期的に距離を示す看板が建てられ目安にしながら登っていく。
沢から離れ、傾斜の折り返しを登ると、別の沢が下に流れているのが見える。
右手側は山の傾斜、左手側は沢へ続く谷の傾斜で、雪と凍結した登山道がいやらしい。
だいたい1.5キロほど進んだところから急に雪の量が増え、沢に寄ったり離れたりしながら登山道が続いていく。
沢は毎日の寒さで氷は厚くなり、さらに水がかかって大きくなっているのが見える。
流れの全体が凍結しているような沢もあり、まだ道半ばで先は長いとはいえ、こういう景色を見ているのも楽しめた。
すっごく綺麗なのだけど・・・
某SNSには、こういう沢で時間を掛けて写真を撮る人が多いのだろうな。
沢の音を聞きながらの登山道は延々と続いていく。
陽が射してキラキラに見えていた時間を過ぎ、木の黒さと雪の白さしかない景色が続くと、その雰囲気にも退屈してしまい、手元のスマホや端末機器を見る。
それで登山道のすぐ近くに車道か林道かがあることを知った。
実はそっちを歩いた方が景色が楽しめるのではないかと思うところもあったものの、登山道として矢印が指しているのは今歩いている道。
九十九折りの登山道
扉温泉から2.9キロ歩いたことが書いてある看板を過ぎ、細くなった沢を渡ると、九十九折りの登山道に変わる。
この登山道上でもっとも勾配のある斜面で、積雪期は核心部ともいえる危険のある登り。
急な斜面のトラバースが続くため登山道は細く、何度も折り返して登るため登っていくほど谷側が深くなっていく。
他の登山者との擦れ違いでも避けるところを探さなければならないほどに歩きづらい。
しかも、そこが踏み固められて凍結していると滑落の危険も十分にあった。
滑る・・・
折り返しながら、徐々に高くなっていくのは周りの様子から見てとれた。
体感では長く続いているように思われた九十九折りの登りは、25分ほどで一息付けるところまできた。
扉温泉からは3.6キロという看板。
鉢伏山山頂まで2キロを切っていた。
林道のように広くなだらかな場所で、そこから林の中へ入っていくように登山道が続いていく。
登山道中盤から眺望が良くなる
5分ほど登ると急に周囲の眺望が良くなってきた。
落葉松の間から見える景色は、途中で端末で見つけた林道が走る尾根や、北側にある美ヶ原。
登山道の周りではまだ見ることができていない霧氷が谷を挟んだ尾根に見える。
あの霧氷が溶け落ちる前に、もっと高く標高を上げていきたいと思っていると、先には山頂部らしい丸みのある稜線が見えてきた。
落葉松の間から見える程度で、山頂かどうかを確かめるところまではできないものの、あの高さまで登れば景色が開けると思うと気持ちも高まる。
は・・・!
ヘリコプター事故現場と霧氷
その景色が広がる中で、ヘリコプター事故の現場を見つけた。
事故現場への入口を示す標と立ち入り禁止の掲示物。
少し角度を変えて見ると、おそらくその現場だっただろう場所にテープが巻かれている。
こんなにも穏やかなところで、どうして事故が起きてしまったのかと思うほどに、景色も良く歩きやすい。
登山道の先を見上げると、落葉松の終わりが近いような雰囲気。
霧氷も急に真っ白で輝いているように見えるほどではなくとも、身の回りを囲むほどに増えてきた。
ヤバい。ここは綺麗だ。
序盤の樹林帯の綺麗さを忘れて、やはり霧氷が見えないと扉温泉から登る価値が無い思えるほど、周りを見渡すのが楽しめた。
少し歩くと落葉松の終わりが見え、草原のような山頂部が近いのが分かる。
落葉松を抜け、前の前にあるピークを巻くようにして新雪の斜面をトラバースする。
視界を遮るものがなくなった斜面からは、北アルプスの峰々と、美ヶ原の平坦な台地が見える。
あの黒さを見ると、やはり劇的に雪が少なく、冬らしい冬景色ではないことが改めて思われる。
松本市街から見ると前衛に見える前鉢伏山越しに北アルプスを見て、早く山頂から景色が見たいと気持ちが逸るようだった。
鉢伏山と前鉢伏山との分岐
扉温泉の登山口から2時間3分、鉢伏山と前鉢伏山との分岐に着いた。
どちらに進むのも数百メートル。
夏季に車でくれば遊歩道のような歩きやすさで山頂の景色が楽しめる。
山頂へ行くか、前鉢伏山に寄るか・・・
間近に見えるなだらかな山頂へ向かって、新雪の中を進んで行く。
雪に深く足を取られるというわけではなく、傾斜や段差がキツいというわけでもない、何でもない遊歩道。
風は冷たいものの、特に苦労するようなところもないはずの道が、ここにきて太股の負担が大きかった。
すぐ近くに見える山頂がなかなか着かず、ようやく登り切ったところで、特徴的なものが何もない山頂部に到着した。
鉢伏山山頂
扉温泉から2時間19分。
いわゆる山の頂といった雰囲気の突起や、盛り上がったピークもなく、緩い坂道の上に建てられた山頂標。
山頂到着に向けて気持ちを昂ぶらせる間も無いほどに呆気なく到着した。
風を遮るものはなく、冷たい風が西側から吹き付けてくる。
登っている間に空には雲が多くなり絶好の青空とはいかないまでも、楽しみにしていた北アルプスを一望することができた。
山頂から少し南側へ下りると展望台があり、そこまで移動すると南アルプスや八ヶ岳も見やすいのだろう。
登山道の傍らには、山岳信仰の山らしく小さな祠が置かれて西側を向いていた。
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御嶽山まで見えると思っていなかった -
乗鞍岳が大きい -
穂高岳がゴツゴツしている -
槍ヶ岳はあまり存在感が無い -
北アルプス後立山の方向 -
中央アルプスが見える -
少し山頂からズレると南アルプスが見える -
美ヶ原が相変わらず見え続ける -
浅間山も見えた -
祠があった -
松本市街を見下ろす
鉢伏山へ来るなら時間を掛けた方が楽しめそう
鉢伏山からの下山
山頂での景色を楽しんだあと、登りと同じ道を折り返して扉温泉へと戻る。
積もった雪は下りでは歩きやすく、どんどん標高を下げていくことができる。
ただ登りで苦労をした樹林帯の折り返しは、下りでも滑りやすさがあり気を遣うところだった。
下山の登山道は滑る
それ以上に気を遣ったのは、折り返しを過ぎての沢沿いの登山道。
登るときにはなんの苦労も無かったなだらかな道が、下りでは凍結しているうえに直下に沢が流れているという状況。
5mもないほどの高さでも滑り落ちたとなればケガもするし、打ち所が悪ければと思うところで、登りが楽だっただけに緊張感があった。
こわかったよ・・・凍結
登山口から入ってすぐにあった登り返しを過ぎると、凍結していた急な斜面は柔らかく溶けていた。
ここまでも凍ったままだったら下りるのも気を遣うところだった。
山頂からは1時間10分ほどで下りてくることができた。
距離や高低差などを歩く楽しさとは他に、景色や周囲の変化が楽しめる登山道だった。