くろがね小屋を経由して安達太良山へ
スキー場として営業している駐車場に車を停めて準備を整える。
ゲレンデの入口には登山口を示す標も立ち、それを横目に見ながら登山口へ。
平坦なところからゲレンデの斜面が始まる手前で登山道へと進む標識があり、矢印に従って樹林帯の中へと入っていく。
登山口の標識には、くろがね小屋や薬師岳など複数の登山道への距離が書かれていた。
東北なんて馴染みが無いから緊張感高め
ゲレンデの音を横に聞きながらの序盤の登山道は、緩やかに登ってすぐに平坦になり、橋を渡ってからは再び緩やかな坂を登る。
馬車道と書かれた矢印とは違う方向へ。
歩きやすい程度の広さに踏み固められた雪道を登っていく。
蛇行している馬車道をショートカットしていくようなイメージで登山道は続いていて、ときどき馬車道に合流しては登山道に入り、少し登るとまた馬車道に合流するようなルートになっていた。
天候に恵まれたおかげで、背中に受ける朝陽が温かく、樹林帯の中では風も当たらずにとても暑い。
汗を滲ませながら40分ほど登ったところで、頭上にあった木の枝が減って青空の面積が広くなった。
枝の隙間から山頂らしき稜線が見え、雲ひとつない青空が気持ち良い。
登りはなだらかで、雪もほどよく湿っているため滑り止めが無くても歩きやすかった。
勢至平
登山口から1時間とかからないうちに勢至平へ。
山頂を一望するような登山道が続き、青空の下に真っ白な稜線が見えてテンションが上がる。
稜線に連続している峰を眺め、ときどき足を停めて写真を撮りながら、くろがね小屋との分岐をそのまま直進していく。
登山道は相変わらずのなだらかさで、眺めの良い勢至平から斜面の日影に入り、サラサラとした雪のトラバースに変わっていく。
正面には鉄山が大きく聳え、ごつごつした岩の斜面の迫力と、青空と雪のコントラストが美しい。
振り返ると蔵王山が見える。
山並が見えても何が何だか分からないのが正直なところ
くろがね小屋へと続く平坦なトラバースがただただ美しく、何度も足を停めて景色を楽しみながらゆっくりと小屋へ近づいた。
登山口から1時間28分、くろがね小屋に到着した。
まわりには温泉の香りが漂うところもあり、宿泊時には入浴もできるという話しを聞き、景色の美しさもあって宿泊してみたいという気持ちでしばらく周辺を眺めた。
ここはとっても綺麗なところだった
くろがね小屋の左側にある急斜面を登っていく。
滑りそうな急斜面もしっかりと踏み跡があって登りやすく、数分で登り切ると一面に広い雪景色が広がった。
障害物が無く、冷たく風が吹き付ける。
緩やかなアップダウンと距離感が感じられないような雪原が広がり、先に山頂部の乳首がポツリと見える。
前を歩く人のサイズと続いているトレースと遠近感を失いながらの雪原が気持ち良く、登山口方向にある木々の黒さや近さを不思議に感じた。
雪の砂漠みたいな感じ
勢至平で分岐した登山道との合流地点にあたる峰の辻には、くろがね小屋から40分ほど。
間近に見える乳首にはいったん下って登り返すように登山道が続いている。
木々が無く真っ白な斜面とそこに続くトレースは、2000mに満たない山とは思えないほど迫力のある景色に見えた。
辻が峰は、爆裂火口のある牛の背方面から乳首に向かうことのできるルートとの分岐点にあたる。
今回はまっすぐに乳首へと向かうため、まずは下り山頂へ向かって登り返していく。
徐々に近づいて行く尖塔系の山頂と、振り返ると広がる雪の斜面に気持ちを昂ぶらせながらの登りで、尾根上にある薬師岳からの合流地点に着くと風が強く吹き付けた。
山頂の乳首はすぐそこで、突起の下にある標の近くで準備を整えて最後の登りへと取り付く。
安達太良山山頂
登山口から2時間24分での安達太良山の山頂に到着した。
山頂には小さな祠が置かれ、西側からの風で雪が付着していた。
南西方向には磐梯山が見え、そこから右側に視線を移すと吾妻山、北側の鉄山へと続く安達太良山の稜線が見え、遠く蔵王山、二本松の市街地が見下ろせた。
午後から雲の多くなる天候のようで、西側には雲が厚く見えたものの安達太良山山頂では天候も良く、冷たい風の中で景色を堪能することができた。
それにしても風が強くて。
牛の背からの爆裂火口
山頂でしばらく時間を過ごしたあとは山頂を下り、安達太良山の爆裂火口を見るため稜線を北へ進み牛の背へと向かう。
乳首の急斜面をトラバースすると広い稜線上を歩くルートになり、大きく育ったエビの尻尾が雪のモニュメントのようにも見えた。
ゴロゴロと転がっている岩の全てに雪が付着した不思議な様子を見つつ、なだらかな稜線上を歩いて行くと20分ほどで火口の上に着いた。
右も左も分からないから、ただ着いてくだけ・・・
このエビの尻尾の塊を「蟹の剥き身」と名付けたい
見下ろすと真っ白な中にも大きく弾け飛んだようにえぐれた地形が見え、その大きさと迫力にしばらく景色を眺めた。
火口の向こうには吾妻山があり、雲の中に続く山の景色も奥深さを感じさせるようで、雪の中にある安達太良山からの景色の何もかもが美しく見えた。
下山
火口からの景色を見たあとは、再び山頂方向へと戻り、薬師岳へと下りていく。
ただひたすらに下っていくルートで、十分に踏み固められていない足元は歩くづらさもあり、スノーシューやワカンを装着しての登山者も多く見られた。
単純な下り坂が続き、薬師岳からしばらく下りるとゲレンデの上部に出た。
スキーヤーとボーダーの邪魔にならないように端を歩き、途中から矢印に従って登山道に入ると、登山口へと戻ることができた。