積雪期の妙徳山へ
長野市と須坂市の境に聳える妙徳山。
里山ながら大きな存在感は印象的で、特に須坂市街から見上げる北側の山壁には山頂からの尾根が伸び、登山道があるであろうという想像を掻き立てられる。
山頂へは複数の登山道があり、八町から尾根を登るコース、若穂太郎山と登山道が分岐する馬背峠からのコースなど。
なかでも主要な登山口のひとつが馬越峠の登山口で、山頂に市側の尾根に沿って山頂へと向かっていく。
山新田で車をデポ
馬越峠へは長野市の山新田から向かう。
枝が迫り出した細い林道で、乗用車で乗り入れることもできなくはないほど。
登山口まで車で向かいたいところでも、ボディを傷だらけにしてしまうため地区上部の路肩に車を停めた。
ここから登山口まで歩く
うっすらと雪をかぶった林道を歩いて登山口へ。
ソールが埋まる程度の浅い雪でサクサクとした感触が伝わってくる。
山側を見上げると霧氷が期待できそうな青白い眺め。
真下に山新田地区があり、その先には長野市街と飯縄山も見える。
なかなか眺めが良い
着いた
林道を歩いて馬越峠に着いた。
この先の車の乗り入れ禁止の看板と登山口の標識が見える。
のっこしコース登山口の先には道路の土留めの上へ登山道が伸びている。
道を挟んだ反対側は大洞山への登山道。
峠を挟んでふたつの山への登山口があった。
のっこしコースを登る
いきなり土手を登るような・・・
林道から擁壁の上へ登る。
うっすらとした雪が滑りやすく、いきなりの段差と急斜面に気をつけながら、登山道へと入っていく。
まわりに生えている背の低い木々には雪が玉のように付いていた。
その様子がかわいらしく、枝の隙間から朝陽が当たって印象的だった。
擁壁を登り切っていったん緩まった斜度は、2・3分歩いただけで急な斜面へと変わった。
乾いた雪が滑りやすく、前方から差し込んでくる朝陽が眩しい。
登山道に沿って斜面を折り返しながら登っていき、5分ほどでまた緩斜面に変わる。
急斜面と緩斜面を繰り返しながら尾根の上を進んで行く。
登ったり平らになったりの繰り返し
15分ほど登ったところで、徐々に周りの雪が増えてきたという実感があった。
枝の上には雪が残り、場所によっては氷が着いたままになっている。
うっすらとした印象だった登山道の雪も、このあたりでは足首に近いところまで積もっている。
ちょうど30分ほど登ったころ、それまで厚く枝葉に覆われていた視界が開ける場所に出た。
葉が落ち、山頂方向の尾根が見える。
陽の光が当たっているところは白く、影は青く見える。
きっと山頂はあの先に続いていくのだろうけれど、あの中を通るかもしれないと思うと、気持ちが高鳴るようだった。
霧氷だ・・・
三峰権現を過ぎる
馬越峠から35分ほどで三峰権現の祠を過ぎた。
ここは明徳社コースから合流した地点になるようで、祠の先にある尾根を見下ろすとピンクのテープが巻かれているのが見えた。
こっちから登るのも良いなと思う
登山道上の目印をひとつ過ぎて、ふたたび登山道を登っていく。
ここからは山陰に入るようで、一度に積雪量が増えて、雪の質も乾いたものになった。
深いところでは太ももまでも埋め、股下ほどの高さのラッセルになる。
しかも踏んだ地面には、折れた枝や石があり、雪の下で見ることのできない段差に足を取られて苦労をした。
雪の下に木があったり石があったり。すべる。
完全に日影に入ってしまっているために風が吹くと肌寒く、乾いた雪はサラサラと舞ってくる。
朝陽が当たっていた尾根上の暖かさはなかった。
左側には眼下に須坂市街が見え、その向こうには小布施町、高社山の山影も見えた。
街の眺めが見えても感動はしない
日陰に入ったおかげで周囲には霧氷が多く見られるようになった。
木の枝に霧が凍り付いて真っ白になり、光が当たってキラキラしている。
なかなかに終わらない登りと、深くなっていくばかりの新雪。
視界は楽しめるものの、太ももには厳しい。
霧氷の急斜面
ようやく登りが緩まったと思うと、もっとキツい急斜面が目の前に見える。
ただ霧氷は綺麗で、青白い景色に吸い寄せられていく。
どこを見ても青白く、木が黒く見える。
風が冷たく、ここまでの登りで汗をかいた体が冷えた。
寒い
積雪は膝の高さほど。
乾いた雪のため、ノートレースでも歩いても重さを感じないのが助かった。
登っていくと徐々に陽の当たるところも多くなってきた。
尾根の向きが変わったことと、斜面の角度が変わり、ようやく明るさを感じるようだった。
青い霧氷も綺麗ではあったものの、やはり太陽が当たると安心感があり、陽で光って見える霧氷も良かった。
いつの間にか見下ろしても霧氷ばかりが見えるようになっていた。
霧氷が綺麗だ
いったん角度が緩やかになった霧氷の中、新雪を踏みしめて進んで行く。
なだらかながらも少しずつ登っている。
この登りの先には見える木々の間からは光が漏れて空が近く感じられる。
ようやく山頂かと思えるほど。
もうじきラッセルの登りも終わりだと、冷たくなってきた太ももを持ち上げる。
光が近くなっていくほど、緩やかな斜面は急登へと戻っていく。
ピンクのテープはハッキリと見えるものの、登山道らしい踏み跡は雰囲気で急斜面を直登していく。
まっすぐに登るので良いのか?
急登の終わりが見え、そこは丸みを帯びた雪野原のようにも見える。
もうじき山頂だと意気込んで急登を登り切ると、そこには見覚えのある山頂らしいものはなく、別の尾根が合わさって広くなっているだけだった。
ここじゃない
雪野原には間違いがなく、だからといって山頂ではなく、ピンクのテープが垂れ下がっているのが見えた。
ここで山頂に着いたことにもできないので登山道を先へ進むことにして、テープの方へと雪を踏んでいく。
見上げると快晴の空に霧氷が美しい。
ときどき風が吹いて、パラパラと崩れ落ちてくる。
そこに光が当たってキラキラとしているのも良く、満足度の高い景色が広がっていた。
斜面はしばらく緩やかで歩きやすい。
陽も当たり明るく、雪が眩しかった。
足を停めて見上げると、霧氷が散り落ちてくる。
これが見たくて林道から見上げていたような気もした。
満足した
霧氷を見上げながら、尾根はゆっくりと下っていく。
緩斜面と急斜面を繰り返して登ってきた尾根は、ここで少しだけの下りと、細く狭いものになった。
真っ白に凍った雪の向こう側には、同じように霧氷で凍り付いた雪の山が見える。
見えるもの全てが霧氷になっているような眺めだった。
頭上には青空を覆うような霧氷。
細く狭かい尾根は周囲が霧氷の木々で囲まれていることや、尾根の左右が角度のキツい斜面ではなかったため、細く狭いことに緊張も感じずに渡ることができた。
細かったです。尾根。
霧氷ばかり見ていたけど。
細尾根を過ぎたら、再び登り坂に差し掛かった。
相変わらずの雪の深さ。
霧氷に囲まれて山頂がどこにあるのかも見えない。
ただ、そう登ることもなく、そろそろ着いても良いころだという推測だけはできる。
ほんの5分ほどの登りも体感では長く感じ、「まだか」と繰り返しながら思い、ようやく登った先が明るく見えてきた。
妙徳山山頂
馬越峠から1時間47分、妙徳山の山頂に到着した。
ほとんど眺望はなく、枝の間から僅かに周囲の様子が見える程度。
それでも四阿山がチラリと見え、北アルプスのような形が遠くに見えると、景色を見たような気にもなる。
ここまでの登山道と同じように踏み跡は無く、新雪が深く積もっていた。
もうひとつの山頂へと向かうには、同じ状況の雪の中を5分ほど歩く。
あっち側行くけど、なんだか面倒くさい
南側の峰
眺望の無い山頂でひと息入れ、もうひとつの山頂へ向かう。
数メートルほどの高さを下ると、吹きだまりのようになっているのか、雪の柔らかさと足の埋まり方が深い。
間近に見えるピークへ向けて雪を掻き、山頂から6分ほど掛けて到着した。
こちら側も山頂と同じように平坦で広く、雪が無ければ腰を下ろして落ち着けるようなところになっている。
どこも踏んでいない新雪で、歩き回るような気にもならず、とりあえず長野市街が見下ろせる場所まで移動して景色を眺めた。
霧氷越しに見える市街地は暖かそうで、立ち止まっていると冷えてくるつま先が気になる。
薄く雲が張っていたため、長野市街の奥にある戸隠連峰はハッキリとは見えなかった。
足が冷えました
下山
妙徳山からの下山は馬背峠へ。
山新田から若穂太郎山へのトレッキングコースに合流する予定で、登ってきた方向とは逆へと向かう。
妙徳山の西側の斜面を周回するようなコースになる。
ただ登りで付けてきたトレースを踏まないため、山を下りるのもやはり新雪の中を歩いていくことになる。
雪の下に段差があって、左右は転んだら滑っていきそうだし
山頂部から少しの急斜面を下りると尾根の上を平坦に移動していく。
両側は切れ落ちたような急斜面の樹林帯で、笹が茂り滑りやすそうな雰囲気が感じられる。
5分ほどで馬背峠への看板を見つけて尾根を右手側へ下りていく。
テープは明瞭で急な下りということと、雪に埋まって見えない段差があるぐらいで、歩きやすい登山道になっていた。
ただ、時間を掛けて下りても周りには樹林帯が広がるばかりで、踏み跡のようにも見える場所が点在している。
目標にする林道は見えず、谷を挟んで山頂から続いている尾根が見えるていど。
今下りている尾根は、たしかに若穂太郎山へと向かっているのかと疑問すらも感じる。
テープはあるものの、そのテープが登山道を示しているのか林業用のものなのかも定かではなく思えてくる。
ただ境界の印が木々に貼り付けられているため、尾根は間違っていないと思いながら、外れないように歩いていく。
下りていくほど不安になるパターン
30分ほど下りたところで、ピークをひとつ越えた。
左側には保科温泉、右側には長野市街が見える。
仮に保科温泉へ下りても戻ることはでき、右が近そうに見えるものの定かではない。
どちらにもテープらしきものは見える。
山の形や尾根の続き具合を見ると、保科温泉側の尾根へと歩いて行く方が正しそうにも見える。
保科温泉へ下りても良いのだけど、できれば下りたくない
ピークの上で景色を見ながらしばらく考え、左の尾根に続いているテープでは無く、右の斜面に見えるテープを追っていくことにした。
崖の上に出なければ、間違っていても集落のどこかには着く。
木々が切り倒された跡も古いものには見えないため、林業のための踏み跡もあるはず。
斜面を蛇行しながら尾根から外れないようにして下りる。
時間にして20分ほどの下りだった。
道っぽく見えたけど、実はそうじゃなかったのだなと反省
急な斜面を下りていくと林道が見えた。
木々の手入れがされている斜面を過ぎると完全に藪になってしまい、考えていた踏み跡も見つけることはできなかった。
ただ獣の道か水が流れた跡かがあり、斜面を下りていくことができた。
行き当たった林道は、若穂太郎山の登山口へと続くもので、その登山口もすぐそこにあるのが見えた。
下りる先を考えたピークから、少しだけショートカットをしてしまったようだった。
後で地形図を見ながら登山道を確認したところ、このショートカットに破線が引かれているのを見つけることができ、歩けないわけではない斜面のようだった。
別の地図では、歩いたところが正解だよって感じでした
林道に出てしばらく下りていくと妙徳口という看板を見つけ、ここでようやく山新田へと続く林道に出たと確認ができた。
妙徳口の分岐を右へ登れば山頂へ。
下りていくと馬越峠へと続く山新田へと戻る。
林道を歩くの面倒くさい