千曲川が湧き流れる甲武信ヶ岳
日本一の長さを誇る千曲川。
甲武信ヶ岳の北側斜面から湧き出て、長野県の東北部を流れて新潟県、信濃川へ名称を変えて日本海へ流れる。
千曲川の流域に長く住み、流れる様子を身近に見ていると、一度は湧出する様子を見てみたいという興味に駆られる。
長野市から上田市、佐久市から南佐久へと千曲川を遡上するように川上村へと向かった。
川上村の野辺山高原までやってくると、間近に八ヶ岳が聳え、金峰山や瑞牆山が近づいてきたのが見える。
まだ朝陽を迎える前、連なる山々の色が変わっていくのは楽しい。
ましてや11月下旬の雪をかぶって白くなった山頂部は、朝陽の色がそのまま映されるようで、飽きることなく見ていられる。
毛木平へ向かう道中
千曲川源流を目指す登山口は毛木平。
川上村を南下して辿り着いた駐車場は舗装されて50台ほどは停められそうなほど広い。
さすが百名山と思うのは、駐車場の横にはトイレがあったこと。
2020年から2021年と、登山らしい登山で百名山を訪れることが無かった。
毎度、山へ来るたびに「これを最後にしても良いと思えるように」と気持ちを込めているのだけど、この秋は特にその思いが強かった。
そんな思いを持ちながら悶々と迷いながら過ごすことも疲れてきていて。
辞めてしまえば楽なんだろうなって思うけれど、なかなかに辞められず、代わりになる何かを見つける気持ちにもならず・・・
「いっそのこと開き直って山へ行こう」と思わせて行動をさせてくれたのは、友人のひとりが言葉と行動で背中を押してくれたから。
山へ行けない環境じゃないのに、行こうとしない環境を作って、釈然としない気持ちでいました。
いわゆるいじけた感じ。
毛木平から甲武信ヶ岳へ
甲武信ヶ岳を登るハイシーズンは過ぎたといえる時季にもかかわらず、駐車場には数台の車。
朝早くに出発をしたのか宿泊をしたのかと想像を膨らませながら、久しぶりの百名山に気持ちを昂ぶらせて準備をした。
早朝の行動も久しぶりで、そのせいか途中でお腹を壊し、トイレを求めたために到着は予定より少し遅かった。
すっかり明るくなって、森の中を歩くには都合が良い時間になっていた。
登山口近くでお腹を壊したのは久しぶり
ゲートを避け、広々とした登山道を歩く。
車が通ることができそうな広さとなだらかさ。
そう思っているとすぐに車が停まっているのが見えた。
十文字峠からの合流地点。
何のための車なのか、何台かが停まっているのが見えた。
どうしてココに車が停まっているのだろう?
左側には沢が流れ、これがやがて大きな流れへ変わっていくのかと感慨深く眺める。
ずっと沢の音を聞きながら登っていくコースで、ときどき小さな滝を見つけて足を停めたり、足元で凍り付いた泥濘に寒さを感じたり。
ときどき大きな岩の段差や下りを過ぎ、1時間ほどゆっくりと標高を上げていくと、沢一面に凍っている中を水が流れていることも多くなった。
透明度が高いのか氷までキレイに見える
行く先にはいっこうに甲武信ヶ岳の山頂部らしいものは見えず、左右に高い稜線のある谷を縫っていく。
なだらかながらも歩く時間とともの標高が高くなっていくため、霜が凍っている程度だった登山道には、うっすらと雪が覆うようになっていた。
左側を流れる沢も徐々に狭くなってきている。
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うっすらと雪 -
雨の影響か崩れたところもあった -
水がとても綺麗だった -
ずっと同じ感じ -
唐突に緑の葉っぱが茂っていた -
左に高い稜線を見ていく -
斜面を横切る登山道 -
大きな石が多くなった -
沢もだいぶ細い -
登山道の横に大きな岩
ナメ滝
登山口をスタートしてから1時間36分ほどでナメ滝に到着した。
緩やかな沢の流れが滝のようになっている場所で、この寒さで一面に凍り付いていた。
あちこち滑るじゃないか・・・
氷の表面を流れる水のおかげで、さらに滑りやすく、足を乗せたバランスで滑らせてしまいそうになる。
登山道上の濡れていない石の角や土を選んで、なんとか凍った場所を過ぎた。
1時間半を過ぎてナメ滝ということは、以前にきたときよりもゆっくりなんだろうな
あっさりと着くと思ったのだけど、ここまで意外と長かった
氷と雪の季節は陽が当たらないこともあって寒々とした雰囲気で、きっと夏や水の豊富の時季なら趣も変わるのだろう。
建てられた標識によると、ナメ滝から千曲川の源流までは2.1キロ。
登山口から3割ほどの距離を歩いたようだった。
先は長い。
ナメ滝から源流へ
ナメ滝を過ぎてすぐに、段差の高い急登を登る。
足元はすっかりと固く凍みて、地面を踏みしめると霜柱の割れる音がする。
2度3度と折り返すと緩やかな登りに戻った。
濃い緑の葉を付けた木々に囲まれて、凍みた石が地面に貼り付いて硬くなっている登山道を登っていく。
登山口から2時間ほど経過したころ、登山道にも朝陽が当たり始めた。
木々の合間から差し込んでくる朝陽はキラキラとして眩しく、それまでの寒々しい雰囲気が変わっていく。
これが光の世界か!
なんてキレイなんだ・・
登山道の左側を流れる沢は、ナメ滝あたりと比べてもかなり細くなった。
陽に当たって輝く雪と、影になって凍ったままのコントラストが楽しく、ハイシーズンとはいえないと思った登山道が美しく見えた。
やがて、細くなった沢を渡る丸太橋が見えた。
凍みて滑りやすさを感じながらも、沢の美しさを真上から見下ろして歩くのは楽しい。
数年前このあたりで「甲武信ヶ岳が見える」というような看板が掛けられていた記憶があった。
どこかでそれを見かけると思いながらも見つけることができないまま、沢の左側の斜面をトラバースするように登山道を歩いて行く。
ここまでのなだらかさと穏やかさに比べたら、斜面に作られた登山道は少し荒々しく登山道らしい雰囲気を感じるようで、高い段差と短い急坂、登っては下りることを繰り返す。
陽射しが当たらずに薄暗いなかを歩いて、いよいよ源流まで1キロを切る地点まできた。
なんか「遊歩道」って書いてある看板があるのだけど・・・
登山道は沢のすぐ間近を歩くようになり、しゃがむとその流れに触れるほど。
光が差してキラキラとしている透明な水と、氷が眩しい。
流れに近づいて眺めていると、寒さも時間も忘れてしまいそうなほどで、千曲川の深緑色の大きな流れとはまったく違う印象があった。
源流まで0.35キロという看板の横を過ぎて沢に掛けられた橋を渡る。
登り坂がまっすぐに伸びていく。
固く凍った石と段差を踏み、いったんは離れた沢が間近を流れるようになってくる。
沢はいつ流れが途絶えてしまうかも分からないほどに細くなっていた。
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斜面をなだらかに通過 -
なかなか森が長い -
かなり細くなった沢の横を歩く -
キラキラしてた -
水がとても綺麗 -
ずっと眺めていられそう -
いよいよ源流が近づいてきた -
足元が悪い -
左の沢の流れが細い -
ボールのように氷ができている
もう田んぼの用水路と変わらない
千曲川源流
登山口からなだらかに登り続けて2時間42分。
千曲川信濃川水源地標と書かれた標識を見つけた。
平坦なところで木々が開け、2mほどの大きな標識が建っている。
千曲川が湧き出ているところは、登山道から少し外れる。
土手を下りるように開けたところから下りて、貼られたロープの傍らにそれらしいものがあった。
霜柱がとても大きく育っていたため、滾々と湧き出る様子はなかったものの、置かれたカップと霜柱の様子から、きっとそこが水源なのだろうと感じた。
その数メートル下には、地面から染み出たような水たまりが点在し、どこからか流れに変わっていた。
前に来たときは雪の下で見られなかった
いつからか、どこかのタイミングで甲武信ヶ岳へ行こうと思い、それならば千曲川が見たいと思い。
甲武信ヶ岳よりも千曲川を優先する気持ちが強くなって、訪れた源流を辿るコース。
湧き出るところまで来てみると、意外にも簡単だったような、それよりもここまでの道のりで見た流れの方が感慨深かったというような気持ちだった。
それでも、ここから日本海へと流れていく壮大さや、ときには天候を心配しなければならないような大きな流れに変わることの不思議さは、一番の始まりを見られて良かったと感じた。
千曲川がみられて良かった
源流から続く急登
千曲川の源流からは、山頂稜線に向かって急登が続く。
長くなだらかなコースの中で、もっとも厳しい登り坂で、沢の流れも無く印象がガラッと変わる。
高低差にして150mほどでそう長くはないものの、長い距離を歩いてきたあとの急登は太腿に厳しい。
見上げると枝や葉に雪がうっすらと積もり、緑の葉との色合いがキレイだった。
木々が茂っているなかにも、空が見えて稜線の近さが分かるほど。
登っていくほどに斜面の角度が急になっていくようだった。
ちょっと太ももプルプルする感じ
ゆっくりと登りながら、木々の白さと空気の冷たさを楽しむ。
急登もそう長くはなく、10分ほどで稜線に出た。
山頂へ続く稜線は金峰山や国師ヶ岳との分岐点でもあり、長い秩父主脈縦走路上にあたる。
いよいよ山頂間近まで登ってきたという昂揚感と、そうはいってもまだ急な登りは続くという思い。
国師ヶ岳も大弛峠も行ってみたいところのひとつ
陽の差し込む稜線上。
木々に囲まれているため眺望はなく、代わりに風が吹き付けることも無く歩いていける。
ときどき巻くように少し稜線から下りて、また稜線の真上へと戻り、山頂へと近づいていく。
唐突に木々が開けると、見えていなかった山梨側の景色が広がる。
富士山ドーン
すげー
見えるのは連なる山々の向こうに一際大きく強い存在感を放つ富士山。
もう少し進めば、もっともっと富士山を見ることができる。
ここで立ち止まる理由は無いと話しつつ、山頂までの最後の急登に差し掛かった。
もうちょっと行けばもっとよく見えるから!
階段のような段差と細かく折り返す登山道。
上を見ると雪がかぶって白かった枝はしっかりと吹き付けられて霧氷になっていた。
稜線上の分岐点から20分ほど。
山頂がすぐそこに見えた。
間近に見える空には雲はひとつもなく、山頂標の周りに数人の人たちが見えた。
甲武信ヶ岳山頂
毛木平を出発して3時間22分、甲武信ヶ岳の山頂に着いた。
空は青く雲も見えない。
積まれた石の上に、甲武信ヶ岳の山名が書かれた丸太が建ち、ちょうど真上に太陽がきていた。
百名山らしく、こんな時季でも山頂には人がおり、寒い風の中で過ごしていた。
みんな温かそうな格好をしてるな
僕らのようなフリースでノーアイゼンって珍しいらしい
周囲を見渡すと、南側には雲ひとつなく、北側には雲が広がるといった空だった。
富士山や山梨周辺の山々を見渡すには絶好の天気で、八ヶ岳やさらにその先の山々を見るには少し雲が邪魔になるよう。
八ヶ岳の方を見ると、真下に千曲川源流コースがあると思われる谷間を見下ろす。
登ってきた稜線上から向こうを見ると国師ヶ岳や金峰山、南アルプスがよく見えた。
北側を見ると、山頂から繋がる三宝山。
離れたところには御座山、その手前には五郎山の険しい岩峰が見えた。
冷たい風と暖かな太陽を受けながら、20・30分、山頂に滞在して景色を堪能する。
ようやくきた百名山で、あっさりと下りてしまうのが名残惜しい気持ちがありながら、そう長居をしても退屈になる気もしていた。
ここから毛木平へ下りるには、登ってきた千曲川源流コースをピストンで戻るか、十文字峠を経由するかという選択肢。
千曲川源流コースはなだらかで、アップダウンも僅かで下山でも歩きやすい。
ただ懸念するとしたら、日影が多く凍っているところもあったこと。
十文字峠は三宝山と武信白岩山、大山といった3つの山を経由し、アップダウンが大きいばかりか距離も長い。
山頂までは苦労せずに登ってきた印象と、ここまできたという昂揚感とがあり、十文字峠へと下りることにした。
歩いた感じ意外と楽勝だったし行きたい気持ちも強いし
下山
甲武信ヶ岳から十文字峠を通って毛木平へと戻るコースは、このコースで最も高い三宝山を通り、武信白岩山、大山を通って十文字峠を経由する。
稜線伝いの下山路とはいえ、何度も下りと登り返しがあり距離は10キロ近く。
2475mの甲武信ヶ岳から一気に50mほど標高を下げて、なだらかに下りながら稜線を伝っていく。
途中、甲武信ヶ岳の山頂を巻いて甲武信小屋へと向かう分岐を過ぎる。
歩きやすさもあり、どんどんと下りていくと20分ほどで三宝山への登り返しが始まる。
甲武信小屋への巻き道があるってことは、十文字峠から登って小屋泊っていう選択肢もあるんだな
三宝山
甲武信ヶ岳との鞍部から三宝山へは80mほどの高低差。
狭く高い段差の登りで、千曲川源流コースの穏やかさと比べると、険しく感じるような登山道。
いわゆる登山道らしい登山道といった印象にも見えた。
千曲川源流コースのようなキラキラ感は無い
陽当たりが良いせいか、日影の寒々とした雰囲気がなく、薄く積もった雪も柔らかい。
三宝山への急登を10分ほど登ると、唐突に平らで開けた場所に着いた。
傍らに山頂標があり、その反対側には大きな石の上から甲武信ヶ岳が見えるようになっていた。
ちょうど富士山を背にしているようで、なかなかに印象深く美しかった。
意外と富士山堪能
まずは十文字峠までの一つ目の峰に着いた。
甲武信ヶ岳からは30分ほどが経っていた。
次の武信白岩山へ三宝山を下りていく。
武信白岩山
三宝山を北へと下りていくと、日影になるためか寒々とした雰囲気が戻ってきた。
凍みた地面と乾いた雪。
千曲川源流のような厚い氷はなく、ただ踏みしめると霜柱が軋む音がする。
下りきって鞍部に着くと、大きく割れた巨石が佇んでいた。
終始ケータイの電波が届かなくて、ちょっとそのへんが不安になる
尻岩と書かれた標識と、その傍らに割れたような巨石。
苔が生しているどころか木が生えているところも、長い年月が感じられるよう。
ただ尻岩という名前が見た目のイメージを固定させてしまうようで、石の割れた様子は、もうその割れ目にしか見えない。
建っている標識によると、尻岩は十文字峠と甲武信ヶ岳の中間地点に当たるようだった。
三宝山から300mほどの高低差を一気に下ってきた。
すっかり下ることに慣れた足で130mほどを登り返す。
見るからに急な登りで、高い段差も見える。
ここで長めの休憩を取ることにしました
寝不足だと言うから寝てもらって
白岩山という名前のとおり、登山道から見える岩はどれも白い。
読んで字の如く長野と埼玉の県境上にある岩の山で、登山道上のなだらかな山頂部と、高く険しい岩峰の山頂部があるようだった。
ただ岩峰の方は大きく×印が書かれており、登って良いものかどうかは分からなかった。
武信白岩山はまったく知らなくて、前に歩いたときにもノーマークだったと思う
尻岩から登り返し、岩の段差を跨いでようやく下りが見えた。
このあたりでシャクナゲが多く見えるようになり、秩父らしい雰囲気を感じ十文字峠を思い出す。
そこで登山道の傍らにあった十文字峠を差す標識を見ると、藪にも見える方向に登って行けそうな踏み跡が見える。
踏み跡に沿って中へと分け入ってみると、シャクナゲに囲まれた中に三角点が置かれ、武信白岩山とマジックで書かれた看板が建っていた。
ここが山頂部か?と思いつつも、あまりにひと気のない様子で疑わしくもあった。
尻岩からは20分ほど、三角点を確認したため、登山道へと戻って十文字峠へと下っていく。
まだ登り返しが待っている。
先は長い
2・3分ほど下ったところで、その登り返しがあった。
急な登りで高低差は少ない。
ただ日影で凍り付いた見た目と脆そうな様子が躊躇われる。
リボンがどこにあるのか、目を凝らしながら登山道を探して進むと、目の前に見える岩壁を巻くようにして、その上に向かうことができた。
石の上に乗りハシゴを登ると、登山道の進む先に尖った岩峰が見える。
三角点が建っているのが見え、これが武信白岩山のもう一つの山頂だった。
ハシゴで登った石の上は眺めが良く、ここにきて埼玉の街並みを見ることができた。
間近に見える秩父市と武甲山。
長野から登っているというつもりで、間近に埼玉県が見えるというのも感慨深い。
振り返ると埼玉県最高峰の三宝山と埼玉百名山の武信白岩山南峰。
残すはあとひとつの山頂
大山
武信白岩山を過ぎると、十文字峠までは2kmあまり。
あと2kmなのか、まだ2kmもあるのかと思うか・・・十文字峠から毛木平まで戻ることを思うと、「まだ」が正しいように思える。
下りながらもところどころに登り返しがあり、秩父への眺めが良いところもところどころで見られる。
葉を畳んだシャクナゲもあちこちに生えている。
なかなかに終わりが見えない下山路を黙々と進み、また登り返しがあるのかと辟易していたころ、登っているピークが大山だと知った。
間近に見える空の高さまで登れば、ここから先は下りばかりが待っている。
来たぞ!
甲武信ヶ岳から約2時間、大山に到着した。
見晴らしの良い岩峰の上に道標が建っている。
三宝山と武信白岩山が高く見える。
東側には両神山が間近に見えていた。
両神山の反対側を見ると冠雪した八ヶ岳。
両神山と八ヶ岳の間には浅間山が雲をかぶって見えていた。
ここからはひたすらに下りていく。
景色が良いしあと少しだし興奮する
十文字峠
大山の山頂部を離れると、すぐに急峻な鎖場に出た。
3つの鎖場が連続する岩崖。
日影になって、岩の窪みには氷が溜まっている。
鎖を掴んで岩に手を掛けていても、窪みに差し込むつま先が滑ってしまいそうで力がこもる。
なんとか手足を滑らせることなく鎖場を下りた。
大山からの鎖場を過ぎると、登山道は落ち葉の積もったフカフカとした感触になり、格段に歩きやすくなった。
ただ下り坂の角度はキツく、登るとしたら辛いものになるだろうという想像ができるほど。
この下りは楽勝だ!
大山から30分近く下りたところで、登山道のまわりには急にシャクナゲが多く見られるようになった。
おびただしいとも思えるほどのシャクナゲ。
きっと梅雨前のハイシーズンには、たくさんの花が見られるのだろう。
栽培しているんじゃんコレー
すると十文字小屋の屋根がシャクナゲの中に見えた。
長かった下りの終わりが見えてきた瞬間だった。
まだ先はあるとしても、ここまで下りてきたことで、ひと段落した気持ちになった。
毛木平へ下山
十文字峠を訪れたのは8年振り。
あのときの小屋のやり取り以外、ほとんど記憶も残っていない。
展望台や三国峠などへの分岐の中で、毛木平へ進むにはどこを下りるのかと迷ったほどだった。
標識を見つけて、毛木平へと下りる登山道を進み始めた。
おや?
ただ2・3分進んだところで、緩やかに登り始める様子を見て、果たしてこれが正しいのか?と疑う気持ちになり、もしかしたら外れてしまったのではないかと藪へと下りようとしてしまった。
たしかに藪を下りても沢に出て毛木平へと通じることができるのは間違いなさそうで、とはいえ明らかに登山道外。
わずかに踏み跡らしき様子は見られても、それがどこまで続くかも分からない。
標識が正しいコースを指しているので素直にそれに従えば間違うことはないところで、それよりも早く簡単に下りてしまいたいという逸った気持ちもあったようだ。
ここで意図的に正しい登山道から外れてしまったこともあり、時間をロスしてしまった。
夕方まで時間があるとはいえ、刻々と日没が近づく時間でもあった。
アマノジャクですみません・・・・・
気を取り直して登山道を戻り、矢印に従って下りていく。
木々に囲まれた斜面をトラバースするように緩やかに標高を下げたあと、尾根を九十九折りに進みながら、急激に下っていく。
延々と続くような九十九折りは、上からは終わりが見えない。
ただ確実に沢の音が近づき、それは毛木平の近くを流れる川の音にも聞こえた。
九十九折りの急坂を下ってからも、なかなかに毛木平が見えてこない。
まだ明るさが残っているように思えた登山道も、あっという間に暗くなり、前を見通すどころか、どこが正しいコースかを探しながらという状態にまでなってしまった。
幸い固い踏み跡と開けた木々のおかげで、暗い中を歩くのも難しくは無かったものの、ときどき染み出した水が凍っているのには気付くことができず、足を取られたこともあった。
いろいろ申し訳ない。山へ行こうと思うのも終わりにしようかと思う。
なんとか沢を渡る橋にまで辿り着き、登山口近くで駐車している車を見かけた分岐まで戻ってくることができた。
林道のような広さと、明らかに車が通った轍のようになっている登山道は、見間違うこともなく歩きやすい。
毛木平へ戻ってきたのはすっかり暗くなってから。
日没が早い時季とはいえ。。。
反省をしなければならない1日。
準備はしていても暗くなるまで遅くなることも想定はしていなかった。
理由があったにしても、そういった事態になったことはアウトドアを楽しむという点ではNGで、迷惑を掛けるだけでは済まないこともある。
自分だけではなく、同行する仲間の体力や山慣れ、行程に過信と無理があって招いた想定外の事象になってしまっていた。
途中、体調不良からの回復のために取った休憩と、大山を過ぎてからの速度が上げられなかったことが直接的な原因だった。