八ヶ岳の日帰り周回登山
南北に30キロ以上連なる八ヶ岳。
険しい岩稜帯の南八ヶ岳と、緑が豊富な北八ヶ岳と、相反するような山容が広がる。
広く様々な面が見られるだけに、何度訪れても違う表情が見られるのが八ヶ岳の魅力のひとつで、季節によって、通る登山道の角度によって、楽しみ方が変わる。
関東からそう遠いエリアではなく、初心者向けのコースも多いことから人気も高く、50以上あると言われる登山道が八ヶ岳の楽しみをさらに深くしている。
その中でも八ヶ岳の東側から登る登山道は、どちらかといえば登山者が少なく、美濃戸や北八ヶ岳ロープウェイのエリアと比較すると、静かなイメージが強い。
静かに森を楽しむには絶好のコース。
稲子湯からの登山道
明け方、長野県小海町の稲子湯に車を停める。
まだ薄暗く陽の昇らない時間帯で、麓の小海町は千曲川から上る霧で雲海のように真っ白になっていた。
車の中で明るくなる時間を待つ。
車内でも風の音が聞こえ、まわりの落葉松が揺れている様子が分かる。
果たして、稜線上を安全に歩くことができるのだろうかと不安を覚えながらも、スマホで天気予報を確認し、準備を整えてゲートを入っていく。
秋が深まった季節とはいえ、稲子湯周辺なら落葉松がちょうど良いことを見込んでやってきたものの、すでに散った葉が多く足元は橙色になっていた。
それにしても風が強い
ゲートから橋を渡り、すぐに林道をショートカットする道へと入っていく。
平坦でフカフカとした歩きやすい道で、折り返している林道に出ては、またショートカットの道へと戻っていく。
10分ほど登ったところで、稲子湯へと続く分岐に着いた。
そういえば2年ぐらい前に来たときはここが通行止めだった
この林道は進み続けると、みどり池へ通じる旧道や、白駒池へと登る石楠花尾根、白樺尾根と、いくつもの登山道に行き当たる。
仮に下りるための登山道を間違ったとしても林道に出ることを知っていれば、道を辿って稲子湯や車道へと戻ることもできるので安心感がある。
林道からみどり池へは、しばらく車が通れそうな広さの道が続く。
傾斜がキツいため自動車が上ってくることは無さそうで、そのかわりに作業用の重機が通ることはあるのだろう。
周りに見えるものは枝分かれした作業用の林道と、葉の落ちた落葉松ばかり。
八ヶ岳らしい深い樹林帯は見ることも無い。
久しぶりだし不安で帰りたい
落葉松が積もってフカフカとした感触をソールに感じながら、見るものもなく黙々と登っていく。
ゲートから登り始めて30分ほど経ったころ、周りに生えていた木の種類が変わった。
まるで線を引いたように、その場所から急激に様子が変わっていく。
お・・・緑になった
葉の落ちていた周囲の木々は濃い緑に変わり、明るかった登山道も薄暗く変わる。
周りの様子が変わって10分ほど経ったところで、旧道との合流地点に着いた。
広く作業車両が通りそうな登山道は終わり、ここからは段差や石の転がる本格的な登山道が続く。
周囲に見える木々や、倒木に生した苔が青々とし、北八ヶ岳らしい雰囲気。
高くなってきた陽が差し込むのも周りの緑も、視界に入る様々なものが華やかに見え、紅葉のシーズンを過ぎたにも関わらず、このエリアは山の色が楽しめると感じられた。
ヤバいぞ。たのしい!
深い樹林帯に覆われた登山道は、鬱蒼として薄暗い。
その中にも陽が射すと、倒木や岩に生えた苔がこんもりとして見える。
こんなにも苔が楽しめるなんて
旧道との合流地点から20分ほど、みどり池まで0.3kmという看板が経っていた。
整備された歩きやすそうな道との合流点のような場所で、そこからみどり池へは平坦な登山道が続く。
2・3分ほどで幕営地に出ると、テントがひと張り。
それを横目に進み、すぐにみどり池が見えた。
みどり池
稲子湯の登山口からここまで1時間ほど。
みどり池の手前には、しらびそ小屋が建ち、池の向こうに天狗岳が見える。
木々に覆われたしらびそ小屋は静かな雰囲気で、しばらく池の畔で眺めていたいようだった。
小屋から上がる煙突の匂いとか
小屋の前にはベンチと机が置かれ、ひと息付くのにはちょうど良い。
ここでザックを下ろして、おやつを軽く口に入れながら、天狗岳を眺める。
時間が早いこともあってか、しらびそ小屋には臨時休業と看板が掛けられていた。
ここいつか泊まりたいのだよね
みどり池を過ぎるとしばらく平坦な登山道が続く。
ちょうど朝陽が高く昇る時間帯になり、樹林帯の登山道が明るく変わっていく。
森の中いっぱいに生えた苔と、木の間から差し込んだ光が印象的だった。
やはり苔の森は良い
森と苔を見ながらしばらく進むと、中山峠と本沢温泉との分岐点に着いた。
右へと進むと天狗岳に近い中山峠へと進み、本沢温泉は硫黄岳へと続く。
本沢温泉方面へ進むと、しばらくは平坦な森の中を歩いていく。
朝陽と苔がとにかく楽しい
小さな沢や、倒木に生した苔、北八ヶ岳らしい眺めを見ながら歩くのが楽しい。
大きな登りもなく、平坦な横移動のような登山道は、周りの景色を眺めるのにも都合が良い。
みどり池から30分ほどのところで、徐々に登り坂が増えてきた。
斜面をトラバースするような登山道で、場所によっては大きな石も目立つ。
石の多い登りを過ぎると、えぐられたような登山道に変わった。
落ち葉が多く、深くえぐられた中にはフカフカと積もっていた。
平らなのに地味に疲れてきた
傾斜はそう急ではなく、登りもだんだんと平坦に変わっていく。
細かく曲がりながら、平坦から下りへと変わる。
ちょうど、このあたりで周りに生えている木々の植生が変わり、線を引くように落葉松が増えた。
下りになって陽の当たりやすい斜面に変わったということもあるのだろう。
生えてる木がガラッと変わった
落葉松が増えただけではなく、足を置く登山道上も黒土から赤茶色の土に変わって明るく華やかな雰囲気に感じられる。
みどり池から本沢温泉までの水平移動で、登った分だけを下りるように登山道が続いていく。
本沢温泉への登山道と合流すると、また歩きやすく広い登山道に変わった。
なだらかで広く、散歩のような気分で歩いていく。
木々に覆われている中でも、葉の落ちた枝の隙間からは硫黄岳の荒々しい岩壁が見える。
この場所からの高低差は700mほど。
そう時間がかかる場所とも思えないものの、見た目に高さが感じられる。
風も強そうで、不安が感じられた。
硫黄岳の荒々しい感じはテンションが上がる
木が揺れてるし音もする
本沢温泉
浅い沢に掛けられた橋を渡り、幕営地を過ぎて少し登ると、本沢温泉に到着した。
稲子湯からは2時間ほど、みどり池からは1時間ほどでの到着だった。
ここからは本格的な登りが続く。
いったん荷を下ろしてひと息。
本沢温泉では入浴のできる宿泊ができるばかりか、登山道を少し登ったところに野天風呂があり浸かることができる。
有料のトイレもあるため、いったんここで荷物を改めて、十分な準備をするのにちょうど良い。
天狗岳へ向かうには根石岳との鞍部に出る白砂新道があり、硫黄岳へ向かうには夏草峠へと登っていくことができる。
見た目に雰囲気が良く、一度は宿泊してみたい山小屋のひとつではあるものの、これまでも通り過ぎるばかりで叶わないでいる。
本沢温泉に泊まりたい
本沢温泉からは折り返しながらの登りが続く。
だんだんと振り返った眼下の景色も見えるようになり、麓の小海町には千曲川から上る霧が溜まっている様子がチラリと見えた。
ただ、それ以上に目に前に迫ってきた硫黄岳の険しい崖に迫ってくるような迫力がある。
本沢温泉から10分と経たずに、野天風呂の看板が建ち、まわりには硫黄の香りが漂っていた。
息を上げて登っていくにはガスの臭いがきつい。
水気を含んで、柔らかくなっているのも歩きづらく、足を置くとソールまで埋まってしまうようだった。
硫黄が臭い
さらに5分ほど登ると、景色が開けて間近にある硫黄岳が見え、登山道の右下には野天風呂の湯船が見えた。
登山道上から見える温泉は難易度が高そうなものの、この開放感と硫黄岳の絶景は、一度はのんびりとしてみたい気持ちになる。
このへんも苔があるのだね
樹林帯に覆われた登山道は、右左へと折り返しながら緩やかに登っていく。
すっかり葉の散ってしまっていた紅葉樹や、落葉松の印象が強かった本沢温泉付近。
夏草峠へと登って行くにつれて、緑の鮮やかさや葉の豊富な場所も目につくようになった。
まるで晩秋だという季節感のない夏のような景色にも感じられ、そう思うと風の肌寒さも暑さしのぎのようで心地が良い。
夏みたいに葉っぱが鮮やかだから夏草峠なのか???
-
また苔が増えてきた -
足元は小さな石で段差が少なくて歩きやすい -
緑が鮮やかになった -
緑がいっぱいでまるで夏のよう -
きっと昔、崩落したのだろうな。という雰囲気 -
小海町を覆っている雲の向こうには御座山が見える -
ずっと緩やかに登っていく -
場所によって苔の生えた大きな石もあった
徐々に標高は高くなり、木が開けたところでは硫黄岳が近く見え、眼下の景色も遠く見えるように変わった。
決して急勾配ではない登りも、1時間ほど続くとちょっとずつ疲労を感じてくる。
ときどき足を停めて周りの景色を見渡し、麓を多う雲の向こう側に御座山が頭を出しているのを見て楽しんだ。
御座山ってこんなに目につく山だったんだ
夏草峠
夏草峠に着いたのは、本沢温泉から50分ほど登ったところだった。
天狗岳へや箕冠山へと北上する登山道と、桜平や夏沢鉱泉へと下りていく登山道と、これから向かう硫黄岳へと、4つの登山道が交叉する。
夏草峠にあるふたつの山小屋は、営業が終了してシャッターが閉められていた。
稲子湯からは2時間52分、ここで改めてひといきつき、硫黄岳への急登に備える。
風が強く吹いている音が聞こえ、すぐ近くの木々は大きく揺れていた。
小屋の影に座ったため、風が当たることはなくても音や空気の冷たさを感じ、気が引けるのと気合いを入れ直すのと。
ここから上は寒そうだ
がんばる
それまでの服装にパーカーを羽織り硫黄岳へ。
夏草峠の近くは、まだ樹林帯のため風が吹いていても、さほど吹き付けるような強さは感じず、音だけが聞こえてその強さが感じられる。
徐々に頭上の木々が無くなっていくと、それまで見えていた麓の景色は一気に雰囲気を変えていくよう。
小海町や南佐久への眺めも良い。
樹林帯が切れて森林限界に出たのは突然で、身の回りの木々が一度に無くなったような印象だった。
強く吹いているように聞こえていた風の音も、そのときには止んでいたようで、まったく気にすることも無く樹林帯を出て、登山道に沿って折り返して登っていく。
風が・・・
ちょうど正面から太陽が顔を出し、進行方向を見ると眩しく、冷たい風が目を乾かして沁みるようだった。
振り返ると木々に覆われた箕冠山と、その先に頭を出した天狗岳。
松の目峰や諏訪の街なみも見渡すことができる。
眺めが良い
木々が無く石ばかりのガレ場に変わった硫黄岳への登山道。
一時、安心していた風も強く吹き付けるようになり、前方右手側からの風が邪魔をする。
なによりも風が吹くことで夏草峠までに汗をかいて登っていたのが、一気に乾かされて体温まで奪われて行くようだった。
じんわりかいた汗が一気に乾いた気がする
硫黄岳の肩のようになっているところまで登ると、ケルンが2つ3つと建っているのが見える。
山頂まではすぐそこに見える。
ただ風が強く冷たい。
間近なはずのひとつひとつのケルンが、なかなかに遠く、山頂も近づいてこない。
右前方から風が当たるのです
緩やかに登ってきただけの太ももが、ここにきて疲労を感じ始め、冷たさもあってか、足が持ち上がらない。
足元に生えている草は、撫でられた髪の毛のように靡いている。
登山道の間近で爆裂火口も見ることができ、その迫力が感じられる。
景色を楽しんで気持ちを紛らわせながら、なかなか近づかない山頂へ歩みを進め、たった5分が20分30分のように感じながら、ようやく硫黄岳へと到着。
夏草峠から45分ほど掛かっての到着だった。
最後の最後がキツかった
硫黄岳
稲子湯から3時間38分。
硫黄岳は南八ヶ岳の南端に位置する山で、丸みを帯びた広い山頂が特徴的。
その丸さの反面で、北側は爆裂火口となっているために大きく崩れ、立ち入り禁止のロープが張られた物々しい雰囲気。
南八ヶ岳の展望台ともいえるほど眺めが良く、周囲360度の眺めは時間を忘れて景色に見とれる。
ただ、風が強く、なかなかに佇んでいることもできないのが難点だった。
風が冷たくて落ち着かない
南側には赤岳をはじめとして、阿弥陀岳や、その間に見える権現岳が印象的で、東側には横岳から硫黄岳へと続く登山道越しに金峰山が見える。
西側には眼下に茅野市や諏訪市を見下ろし、真っ赤になった落葉松の紅葉が華やかだった。
硫黄岳山頂からの行程は、いったんオーレン小屋へと下り、箕冠山へ登り返したら天狗岳を越えて下山をしていく。
硫黄岳からは天狗岳を見ることができるばかりか、その先にある北八ヶ岳の森、北端の蓼科山までしっかりと見渡すことができた。
硫黄岳から見る秩父方面が意外と良いなと思いました
硫黄岳の山頂からは、いったん美濃戸へと続く方向へ向かって山を下りる。
間近に赤岩の頭と呼ばれる赤い土の尾根が見え、そこには分岐を示す標識が建てられていた。
見通しの良い南八ヶ岳への眺望を惜しみながら、分岐からオーレン小屋へと下りる。
赤岩の頭の影になるようにして樹林帯へと下りていくと、間近に見えた南八ヶ岳は見えなくなり、周りを深い木々が覆っていく。
すっかり葉の落ちた白樺や、背丈より高い石楠花に囲まれ、日影では降った雪が固まって凍っていた。
ところどころに氷がある状態で、階段のような段差のあるところでは、凍結で滑りそうな足元に用心をした。
氷が滑る
このへんも苔が良い
20分ほど歩き、松の目峰との分岐あたりまで下りると、周りは北八ヶ岳で見たような鬱蒼とした苔が目につくようになった。
登山道にまで張り出してくるような枝葉は視界を遮るようで、登山道の先がまったく分からない。
ただ明るさがあって、そう遠い場所でも無いことは硫黄岳からも見えていたため、オーレン小屋までさほど心配をするほどの距離もない知っていた。
結局、赤岩の頭からは30分ほどでオーレン小屋へ到着。
硫黄岳からも40分ほどだった。
惜しかった・・・休み
オーレン小屋から箕冠山
オーレン小屋は11月3日に営業を終えシャッターを閉めていた。
ここでベンチを借りて早めの昼食を取り、建物の影から箕冠山へと向かう。
オーレン小屋は、下りてきた硫黄岳と夏草峠への登り、夏沢鉱泉への下山路、箕冠山への登りという分岐点になっている。
硫黄岳への登り以外は、急な傾斜ではないため歩きやすく、比較的気軽に登って行ける。
つらい
ただ硫黄岳からオーレン小屋まで下り、そこから箕冠山へと登り返すのは太ももには辛い。
ここまで来る前は樹林帯のなだらかな登りだと決め込み、オーレン小屋からは気軽に登りを楽しめると思っていたところ、これがなかなかに辛く、天狗岳まで行けるのだろうかと不安になっていくばかり。
等高線はなだらかでも、実際に歩くと段差が作られているところも多く、雨などの流水を登山道脇へ流すための20センチほどの板も立てられていたため、意外と太ももを持ち上げるところが多い。
つらい・・・
特に景色も変わらず、ただ樹林帯の中を登っていくのは、キツいと感じているときには退屈ばかり。
ときどき足を停めてひと息付いて、また歩みを進めることを繰り返し、徐々に空が明るく、山頂が近い雰囲気を感じるようになった。
オーレン小屋から登ること40分。
ようやくといった印象で、箕冠山の山頂に着いた。
とっても長かった
箕冠山
箕冠山は夏草峠からの登山道と合流し、根石岳へと続いていく。
合流地点の真ん中に三角点が立てられている。
ここから根石岳への鞍部まで下っていくと、それまでの厚い樹林帯が終わり、まったく草木の無い稜線に出た。
根石岳の直下は、箕冠山までの樹林帯から急に森林限界に出たようで、景色や風などの気候の変わり方が激しい。
稜線の西側には根石岳山荘があり、こちらもオーレン小屋と同じようにシャッターが閉められていた。
どうしてこのあたりから木が無いのだろう?
根石岳の鞍部からは、山頂に向かって登りが一直線に伸びている。
高低差や距離は長くないものの、箕冠山を下りてからの登り返しがきつい。
樹林帯に隠れて気にしなかった風も、ここでは硫黄岳のように強く吹き付けていた。
オーレン小屋で脱いでいたパーカーを着込み、冷たい風に耐えながら根石岳へ。
箕冠山から10分ほどで到着した。
登り返しキツい
根石岳
小さな山頂標があるだけの根石岳。
草木がなく、高い山家近くにあるわけでもないので眺望は良く、登って下りてきた硫黄岳が遠く見え、これから向かっていく天狗岳はなかなかに高く見えた。
風は強く冷たいものの、陽射しが当たっているため、短時間なら山頂で腰を下ろして景色を楽しむ余裕もあり、少しの間、休憩を兼ねて周りの景色を眺めていた。
根石岳を下りると、白砂新道との合流地点になる。
天狗岳との鞍部で、そこの地面だけが真っ白になっている。
東側にはみどり池から本沢温泉へと歩いた森が見え、一部では縞枯れになっているところもあった。
本沢温泉から硫黄岳へ登る時間帯に見られた雲海はすっかり消えて、落葉松の赤い森が見えていた。
ここから見える東側の眺めはけっこう好き
白砂新道と合流して、ふたつある天狗岳の山頂のうち、東側の峰、東天狗へ。
ガレた岩場を折り返しながら登っていく。
何度か繰り返す登り返しが、ここでもやはりキツく、なかなかにペースが上がらない。
ガレ場を過ぎると橋のように掛けられた鉄の網の上を歩き、山頂までひと息のところまでやってくる。
ここまで登ると右側は切れ落ちた崖になっており、みどり池周辺の森が真下に広がっている。
意外と高い
20分ほど掛けて、鞍部から東天狗へと登り返した。
根石岳からは30分ほど、稲子湯から5時間40分だった。
登り返しがキツかった
東天狗岳
東天狗岳はふたつある峰のうち、険しい岩場の尖った山容が特徴的。
西天狗岳は対照的に丸みがあり、優しい雰囲気が感じられる。
どちらも眺望が良く、これまで歩いてきた硫黄岳からの稜線を一望できるばかりか、ここから下山路として予定している中山峠から北八ヶ岳の森も一望できる。
東側の眺めが良く奥秩父の山々や、そこに広がる落葉松林の赤さが楽しめた。
新鮮だったのは硫黄岳の岩壁の地層で、縞模様のように見えるのは、何度目かの東天狗岳での発見だった。
硫黄岳の岩壁に大きな縞模様がある
西天狗が山頂だけど行くのが面倒くさい
東天狗から西天狗へと向かう気力もなく、西天狗へ向かったところで東天狗へと戻る行程になるのも億劫に感じたため、今回は東天狗から中山峠へと下りることにした。
大きな岩がいくつもあり高い段差を下りながら、一気に標高を下げていく。
ここを下りるのは初めてかも
下りるには難しい岩の急坂は、足の置き場と、濡れた土の滑りやすさに気をつけながら、樹林帯が広がる標高まで下りてきた。
樹林帯の中でも岩の多さは変わらず、落ち葉が積もっていたり、苔が生えたりした登山道が続く。
木々の間を抜けて石ばかりが広がる場所へ出ると、周りの眺めが良くなり、正面には中山、振り返ってみると天狗岳のふたつの山頂を見ることができた。
中山峠
東天狗から中山峠へは30分ほど。
中山峠は、渋ノ湯へと続く黒百合平と、みどり池へと下りていく分岐で、登山道を真っ直ぐに進むと白駒池へと行くことができる。
すっかり樹林帯へと戻ってきたために周囲の眺望はなく予定通りに行程を進んで行く。
ここからは緩やかな登りのハズ
中山峠からは、にゅうへ向かって登山道を直進する。
樹林帯の尾根道が続き、登りは緩やか。
ただ右手側は深く切れ落ちた崖で、木々が茂っているために高度感はないものの、明らかに高く脆い様子だった。
右側がずっと崖
中山峠から5分ほどで見晴らし台に付き、振り返って天狗岳と硫黄岳を眺める。
見晴らし台からは深い樹林帯の中へと進んでいく。
登山道は平坦で、見晴らし台までが少し登った程度。
にゅうと中山との分岐近くまでくると、湿った登山道に板が敷かれ、その様子が北八ヶ岳らしい雰囲気に感じる。
中山峠から分岐までは10分ほど。
にゅうへと進み、陽が遮られて薄暗い森の中を歩いていく。
北八ヶ岳の森の中は、遠くの眺望はない代わりに、足元やすぐ近くに楽しめる植物が多く、紅葉が散ったこの季節でも苔が多く楽しめるのは良かった。
大きな石が多く、高い段差を下りるようなところがあったり、平坦な中にも登り返しがあったりしながら、森の中を進んで行く。
右手側に見えていた稲子岳を過ぎ、わずかにだけ木が開けているところがあり、遠く離れた硫黄岳を見ることができた。
やっぱりここの森は美しい
薄暗い森の中で、にゅうの標識が見えたのは唐突だった。
矢印の指すとおりに森から出て、岩の積み上がった峰へ。
岩の段差を越えて、その上に立つと三角点が埋められていた。
にゅう
中山峠から50分、稲子湯を出発してから7時間近く掛かっての到着だった。
にゅうの上に立つと、眼下には森に囲まれた白駒池、その先には縞枯山や北横岳。
蓼科山の頂上部分が見えた。
南側には稲子岳に隠れた硫黄岳と天狗岳が、逆光になってシルエットのようだった。
にゅうからの眺めは初めてだけれど良かった
いよいよ八ヶ岳を下りる
しばらくにゅうからの眺めを楽しみ、ここからは白駒方面へ下り、石楠花尾根を下りて稲子湯へと戻っていく。
石楠花尾根
にゅうをおり、10分ほど白駒池のほうへと下りる。
看板が建てられた分岐で、稲子湯と指された方へと進み、森の中を折り返しながら進んで行く。
鬱蒼とした森は、背の高い木の根元にまだ若い小さな木がビッシリと生え、倒れた木には苔が一面に生していた。
-
標識に従って右へ -
このあたりは陽が射すからか苔は控えめに感じる -
背の高い木の下には、背の低い木がたくさん -
いっぱいの緑の中を下りていく -
倒木は緑にいっぱいになるくらい苔が生してる -
なかなかに鬱蒼として湿度がいっぱいな雰囲気 -
稲子湯の矢印に従って石楠花尾根へ -
狭い登山道に枝葉が張り出している
初めての石楠花尾根
15分ほどで白樺新道との分岐になり、看板の通りに稲子湯方面の石楠花尾根へと下りていく。
分岐に近いところでは平坦で狭く、枝葉が登山道上にも覆いかぶさっていて歩きづらい。
石楠花尾根は下りていくほどに森が厚く、薄暗く湿気ていく印象だった。
-
緑の中を下りながら、ときどき登り返す -
登山道は落ち葉で赤くて森は苔で緑 -
白い木肌も映える -
でこぼこした様子も苔が生していると印象的 -
積雪期は不明瞭という注意もあったのだけれど矢印はあった -
ようやく尾根らしい地形の登山道
下りながら、山の形状に合わせて登り返しもあり、色褪せた苔色の地面が続いていく。
30分ほど下りたところで、ようやく尾根らしい登山道になり、急激にシャクナゲが登山道を覆った。
こんなにシャクナゲあるの?
それまで何の気配もなかったシャクナゲが、2000m付近まで下りたところで増え、登山道の名前に付けられているのを感じさせられた。
この近隣の山では、御座山や甲武信ヶ岳などでシャクナゲが多く見られるところで、石楠花尾根もそれと同じくらいかそれ以上に咲くのではないかと思えた。
シャクナゲの群生は登山道の至るところにあり、終わったと思っては塊があり、トンネルのように覆っていたり、何度か群生しているところを通りかかった。
向こうの白樺もなかなか
シャクナゲの群生地から下っていくと、谷を挟んで白樺尾根が見える。
葉の落ちた白樺が濃い緑の中では印象的に見えた。
石楠花尾根を下り続けて70分ほどで林道に出た。
狭く厚い森の中を歩いてようやく林道に出た安心感があった。
未舗装でカーブミラーも建っているほどで、そのまま林道を歩いて行くとみどり池への登山道へと通じる。
この林道を歩いて行くのも良さそう
林道との合流から5分と歩かないうちに、稲子湯という標識と脇へと逸れる道があり、それに従って下りていく。
林道をショートカットして駐車場へと戻る登山道で、落ち葉が積もってカサカサと音のするフカフカの道だった。
木々は疎らで明るく、石楠花尾根のような鬱蒼とした雰囲気はない。
離れたところで葉を踏むような音がすると思ったら、大きな鹿が一頭、坂を駆け上がっていくのが見え、それも八ヶ岳らしいと感じられる出来事だった。
鹿を見ながら坂を下り、何度か折り返していくと沢の音が近くなってきた。
すると、すぐ近くに見覚えのある橋とゲート。
車が何台も停まっているのが見えた。
鹿と遭ったときはどうしようかと
にゅうから石楠花尾根を下りて1時間20分ほど。
稲子湯の登山口へ戻ってきた。
もどってきてひと安心