経ヶ岳への登山
中央道伊那ICから権兵衛峠方面へ向かい、伊那市考古資料館へ。
経ヶ岳から続く尾根を背にして仲仙寺があり、考古資料館はその手前にある山門の左に建っている。
バスが停められる駐車場が山門の手前にあり、考古資料館には10台ほどの車が停められる。
敷地の端には登山口の案内板があり、登山口は仲仙寺を過ぎた先にあった。
陽が昇り始めた時間帯、仲仙寺前の考古資料館からは伊那市街の先に南アルプスが見渡せた。
周囲が朝陽の赤い色に照らされている中、準備を整えて登山道へと向かって行く。
登山口で南アルプスを見ていたら、なんだか満足してしまった
仲仙寺から登山道へ
仲仙寺の境内へと続く階段の前から登山道へと入る。
落ち葉が積もったなだらかな登山道で、周りには杉と背の低い笹が広がる。
山の斜面をトラバースして行くように尾根の形に合わせて、右左へと蛇行をしながら、なだらかに登っていく。
もう満足感もあるし帰っても良いような気がする
20分
20分ほど登り、「もうすぐ1ピット」という看板を目にすると、徐々に登山道の斜面がキツく狭く変わっていく。
それまでのハイキングのような歩きやすさから、笹の茂った狭いトラバース。
フカフカとした落ち葉は歩きやすく、笹に囲まれた斜面の中で登山道を赤く示しているようだった。
こんなに笹があるのか?
「もうすぐ1ピット」から10分ほど登ったところで、笹は厚く茂った状態に変わった。
笹の背丈は膝下程度。
びっしりと茂っていても見た目に踏み跡が分かる程度。
それでも登山道を覆っていると、足元の段差や木の根が見えず、歩くのには注意が必要だった。
足元が見えない
登りはだんだんとキツく変わっていき、さらに15分ほど登ったところでは、笹を掻き分けながら高い段差と急な勾配を登るようだった。
右手側に茂っていた木々の間からは八ヶ岳への眺望が良くなった。
蓼科山は見事な三角錐で、北横岳から南へ八ヶ岳の峰々が連なっていた。
蓼科山がカッコイイ
4合目
1時間足らず
登山口から1時間足らず、4合目に着いた。
4合目は大泉所ダムからの登山道との合流地点になる。
そこまでの狭く笹の茂った登山道から、林道のように広く明るい登山道へ変わった。
笹で足元が覆われていることもなく、ひたすらに尾根をトラバースしていく。
周りは落葉松の厚い樹林帯で特に眺望が得られる場所もなく、ただ葉の落ちた木々の間から7合目のピークが見え隠れしている。
4合目を過ぎたところからは7合目は高く、それ以上の高さまで登ることを思うと気が重い。
7合目、、、なんて高いんだ
5合目
4合目から25分
4合目から25分ほど、5合目に着いた。
5合目は尾根上の鞍部のような場所で、なだらかな斜面が広がる。
傍らにベンチのように丸太が置かれ、「3ピット」の標識が置かれていた。
このピットが何を意味するのか分からないまま、いったん腰を下ろして息を整える。
経ヶ岳へ来るたびにココで腰を下ろしている気がする
木々から見える尾根は、4合目よりは登ったもののまだ先は高く登っている。
樹林帯で眺望も無いままに我慢の登り坂が続く。
なかなか気持ちの上がらない状態というどころか、登るほどに眺望の無さに気持ちが滅入っていきながら5合目をあとにした。
6合目
5合目を過ぎると登りの傾斜がキツく変わる。
しばらくは尾根に沿ったなだらかな登りで、突然、尾根上の急激な登りに差し掛かり、そのまま一気に標高を上げていく。
段差が高く、草の影には直近で降ったと思われる雪が残っていた。
風が冷たい
5合目から20分ほどで6合目を通りかかった。
4合目と5合目のような穏やかな斜面ではなく、巨石の段差がある急坂だった。
巨石の段差は腰掛けやすそうな雰囲気はあるものの触った感触は冷たく痛い。
ましてや葉が落ちているせいか風の通りが冷たく、なかなかに休もうという気にもならない。
急斜面と緩斜面とを繰り返し、なかなかに息をつくところが無かった。
7合目に向けて一気に登り詰めていくような印象で、眺望を楽しむところも無ければ、上部に広がる青空をめがけていくような楽しみも無い。
登っていくほどに、徐々に登山道上の雪が厚く残っているのを踏みしめながら6合目から15分ほど。
7合目に着いた。
7合目
1時間58分
登山口から1時間58分。
7合目は東側が切り開かれ、伊那市街を見下ろすことができた。
数年前に訪れたときには木々が茂っていたために眺望を得ることができなかった。
その印象からは大きく変わっていた。
もっと何も見えない印象
眼下に見える木々の濃緑は大芝高原で、その先に白く霞んだ高遠の街。
南アルプスは甲斐駒ヶ岳を中心に、左に鋸岳、右には仙丈ヶ岳の大きくなだらかな稜線が見えていた。
木刈った?
7合目は尾根上の小ピークで、いったん下ってから8合目に向けて尾根を登っていく。
尾根の先を見ると木々が開けた8合目がチラリと見え、その先には9合目のピークが見えている。
20・30mか下りたところで左右を笹に覆われた登り返し。
尾根を登っていくと左右の眺望が良く、左側には木曽駒ヶ岳が見えるようになっていた。
右側には八ヶ岳、序盤よりもさらに山容が良く見えるように眺望が変わった。
調子が良ければ、ここで霧氷なんていう期待もあったのだけど
登りは変わり映えのしない急斜面と緩斜面の繰り返し。
ただ高い段差は多くはなく、笹が登山道を隠すようなところもほとんど無い。
いったん登りから平坦に変わり、緩やかな下りを過ぎると、ふたたび急斜面の登りに差し掛かった。
その先には木々が開けた青空が見えている。
8合目まですぐといったところだった。
8合目
2時間28分
登山口から2時間28分、経ヶ岳へ向かう登山道の8合目。
「望郷」と書かれた道標が建つほどで、山頂を含め、この登山道上では最も眺めが良い。
東側の伊那市や南アルプス、八ヶ岳はもとより、さらに南の聖岳などの南アルプス深南部、そして西側に御嶽山を望むことができる。
登山道の先を見れば、落葉松の影に隠れた9合目のピークが高く聳え、尖った先は見えないものの、木々が厚く茂った様子はそれはそれで見応えがある。
ついにいちばんの眺望が得られる地点まで来た
登山道の急激な登りは8合目までが最も長く、ここから9合目と山頂まで細かくアップダウンを繰り返す。
8合目と山頂までの標高差は大きくなく、水平に移動しながら稜線に沿って登山道が続いていくようで、樹林帯の中で目を瞠る景色も期待はできず地道に歩みを進めていくよう。
いったん荷物を下ろして景色を楽しんだ後、いよいよ9合目へ向けて登山道を進む。
高いな9合目
8合目から9合目へ笹を掻き分けるようにして下りる。
日影になっているおかげで、うっすらと積もった雪がサラサラとして滑りやすい。
鞍部へ下りてからの登り返しは、下から見るとなかなかに急で高く、9合目というより山頂を目指しているようだった。
実際に鞍部からの登り返しはそうキツいものでもなく、高く見えていたということと急な登りだったことぐらいで、意外と簡単に登ってしまった。
登り返してからは平坦なトラバース。
そこでも木々が開けていたため、8合目を見下ろしながら伊那谷の眺望を楽しむことができた。
改めて樹林帯の中に入り、黒沢山との分岐点に差し掛かる。
黒沢山は廃道になっているようで、道標も建たずに、経ヶ岳だけが指されていた。
分岐からすぐ、大きな岩と急な段差の坂を登った先には9合目があった。
この間まで、この石仏はいったい何だ?と思ってた
9合目
9合目は登山口の仲仙寺の奥の院があったいう場所で、今も石仏が残っている。
周囲は樹林帯に覆われているために眺望はない。
うっすらと雪が積もり空気も冷たいため、特に立ち止まって見るようなこともなく、山頂へ向かうための通り道のひとつのような印象だった。
時間を見ると8合目から20分ほど。
登山道はここからいったん下って登り返しへ。
ちょっと笹が多すぎやしないか・・・
笹が厚くなり、腰ほどの高さでも細やかな抵抗が感じられ、足を上げづらく歩くのにも力を込める。
登山道も笹に覆われてはいたものの、見失うほどの不明瞭さではなく大した藪ではないと思ってはいても、いちいち足に引っかかる笹が厄介だった。
なによりも露の付いた葉がズボンをびしょ濡れにした。
濡れても冷たくないズボンを履いてきたけど
そういえば、ふたつめの9合目は大泉山だった
なだらかなピークへと登り返すと、改めて9合目の標識が掲げられていた。
山名が書かれていたものは見えなかったものの、ここは大泉山で経ヶ岳の東側に位置する。
前衛に聳えるように伊那市側からは経ヶ岳を隠している。
笹の茂った登山道を進むと、なだらかな下りから登りへ変わる。
足元の段差や斜面の角度が見えず、ときどき足を滑らせながら山頂へ。
立木の向こうに山影が見える。
笹の茂った緩斜面から急斜面に変わると、周りの様子が一気に変わった。
枝には僅かながら霧氷が残り、邪魔だった笹は減った。
整備されたのか、まわりには伐採か倒木かの木々が多く、心なしか明るく眺望も得られるようになっている。
こんなに明るい場所だったか?
経ヶ岳山頂
登山口から3時間11分
登山口から3時間11分、経ヶ岳の山頂に到着した。
山頂部には標が立てられ石仏が置かれている。
なんか思っていたのと違う
木々に覆われて薄暗く周囲は何も見えない山頂だった経ヶ岳。
今回は頭上の木々が払われ、南には木曽駒ヶ岳を見ることができた。
山頂から少し移動すると、木の合間を縫って北アルプスを見ることができ、穂高岳や後立山南部の山並みを見ることができた。
前はこんなにアレコレ見えなかったと思う
新しく開かれた権兵衛峠から登ってくる登山者も多く、山頂でしばらく時間を過ごしていると、仲仙寺からの登山道では出会わなかった人たちが次々と山頂へやってきた。
権兵衛峠からは北沢山を経由して稜線上を歩くコースで、8合目から御嶽山の手前に見えた尾根を歩く。
小さなアップダウンはあるものの笹の登山道や、眺望の良さ、所要時間を思うと、経ヶ岳へ登るのなら仲仙寺よりも楽しめそうに感じられた。
下山
権兵衛峠へ下りたかった・・・
経ヶ岳からの下山は登ってきた登山道をピストンで下りる。
細かなアップダウンを繰り返してきたことと、笹に覆われた登山道を下りるのが億劫で、登りの序盤と同様に気持ちが上がらない。
特に目を瞠る景色を見ることができないのも含め、下りては登りを繰り返すことは疲労感も大きい。
登山口まで長いことにも辟易としながら山頂から下り、笹の中を進んで行く。
大泉山へ登り返し、下りてから奥の院跡へ。
下りては登ってを繰り返して黒沢山の分岐を過ぎると、登りでも見た眺望が広がった。
間近に8合目があり、そこから伸びる尾根。
落葉松の先には伊那谷を一望するよう。
同じ景色でも登りで見るのと下りで見るのとで印象も変わり、改めて景色を堪能する。
落葉松のモシャモシャした感じがイイじゃないか
8合目までは35分
山頂から下りて8合目までは35分ほど。
アップダウンを繰り返しながらもサクサクと下りてくることができた。
7合目の登り返しも近く見える。
甲斐駒ヶ岳の眺めをチラリと見て足を止めず下りていく。
さらに20分ほどで7合目まで下り、いよいよ長く眺望の無い樹林帯の登山道を下りていく。
登りで踏みしめた雪はだいぶ溶け、湿度の高い落ち葉の地面が続く。
4合目を過ぎるころには、登山道は尾根の影になり陽の光が当たらず、まだ陽が高い時間にも関わらず夕方のような雰囲気でもあった。
ここでも膝下まで茂った笹は登山道が見づらく、登りよりも段差が見えないことが厄介で、足の置き場にも注意をしながらの下山だった。
ココに来ての笹はなかなかヤバい
「もうすぐ1ピット」の看板を過ぎて、ようやく安心感のある登山道へ戻ってきた。
笹がなく登山道は広く、なだらかで歩きやすい。
木々の間からは、なんとなく仲仙寺の周りにあった家々が見えるようで、ようやく登山道を下りてきたという安心感があった。