北横岳 蓼科山縦走

2530m

八ヶ岳北端の縦走路

残雪期 2017年3月20日

北横岳 蓼科山 縦走 (3月)|500mの高低差を登り返す残雪の北八ヶ岳
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八ヶ岳の北端に位置する北横岳と蓼科山。
2400mを越える標高でありながら、アクセスの良さと程良い高低差で冬季登山においては初心者向けの雪山としても知られている。
北横岳はピラタススキー場で使われる北八ヶ岳ロープウェイを使えば、2200mまで一気に登ることができ、状況が良ければ1時間と掛からずに登ることができる。
蓼科山は最も高低差の少ない大河原峠、アクセスの良い七合目やスズラン峠など、様々な登山道を楽しむことができる。
八ヶ岳ということもあってか登山道の整備も進み、季節を問わず歩きやすい山のひとつとなっている。

北横岳と蓼科山はすぐ隣に並ぶ山とはいえ鞍部の天祥寺原は1980m。
2480mの北横岳から500m下り、2530mの蓼科山まで550mを登り返す。

歩いたコース

登り
北八ヶ岳ロープウエイ
下り
スズラン峠
最高標高
2530m
登山口標高
1771m
距離
11.92km
累積標高
1271m
1329m
平均斜度
12.3度
時季
2017年3月
天気
晴れ
日程
日帰り
歩行ペース
合計北横岳1:40・蓼科山4:00・合計4:50
平均の歩行速度
2.57km/h

この日のペース

  1. 北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅
  2. 坪庭(0:58)
  3. 北横岳(1:40)
  4. 亀甲池(2:09)
  5. 天祥寺原(2:26)
  6. 将軍平(3:36)
  7. 蓼科山(4:00)
  8. 幸徳平
  9. スズラン峠(4:50)

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山と高原地図 八ヶ岳 蓼科・美ヶ原・霧ヶ峰
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北横岳も蓼科山も隣同士で聳える八ヶ岳の山ですが、まるで独立峰に見えるほど鞍部は深い印象です。
どちらも冬季でも人気のある山なので、人が多く踏み跡も豊富で迷いづらいと思いますが縦走は大変でした。

今年は他の山でも同様の思いをしたのですが、シリセードの跡で段差が消えてしまい苦労することがあったので、登山道では滑らないようにして欲しいと思いました。
滑りたい気持ちも分かるのですが。

山頂からの眺めが良く樹林帯の景色もきれいで、また見たいと思える景色なのですが、この急勾配が延々と続くルートはまた通りたいかと思うと少し躊躇してしまいます。

使った登山道具

持って行った水の量

北横岳から蓼科山への縦走

スキー客と登山客で賑わう北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅へ。
山麓駅にある駐車場の傍らに登山口があり、目印に大きな看板が建っている。
雪が固く締まった登山道は序盤の100mほどは急な登りで、登り切ると緩やかな雪原のような状態に変わる。
踏みしめられた状態で、登山道を外れなければ踏み抜きも無く歩きやすく、営業前のロープウェイの試運転を見上げながらまずは山頂駅を目指して登っていく。

ゲレンデに沿って登っていくように登山道が整備されており、圧雪のゲレンデを横目に見ながら、良く固まった登山道を登っていく。
序盤はなだらかで登りやすかった雪の登山道も、山頂駅に近づくにつれて徐々に勾配がキツく変わっていく。

樹林帯に囲まれた中、1時間ほど登ったところでロープウェイの山頂駅に着いた。
ロープウェイの山頂駅は標高2200mを越え、北横岳と縞枯山の鞍部にあたる。

すぐ近くには坪庭と呼ばれる平原が広がり、夏季には熔岩石と高地ならではの低木や高山植物を楽しむことができる。
3月とはいえ積雪期では青空の下で雪が輝き、一面に眩しい景色が広がっている。

坪庭からは南アルプスへの眺望が良く、甲斐駒ヶ岳や仙丈ヶ岳が見渡せ、縞枯山の遥か後ろには南八ヶ岳の険しい様子が見える。

坪庭の中を散策するように北横岳方面へと進むと、10mほど下って急な斜面を登る九十九折りの坂が始まる。
すれ違えるほどの広さの登り坂で、右へ左へと折り返していく。
北横岳への登りの中ではここが一番険しい部分で、高さが増した分だけ眺めも良くなり、木の合間からは坪庭を一望して縞枯山を見渡すような景色が楽しめる。

九十九折りの登り坂を15分ほど、勾配や緩まり三ツ岳への分岐に到着した。
木々に囲まれながら進むとすぐに北横岳ヒュッテの前を横切っていく。

ヒュッテの前でアイゼンを着けながら様子を見ていると、さすがに八ヶ岳でも人気の高いエリアというべきか次々と人が登っては下りていく。

北横岳ヒュッテからは急な登り坂が始まる。斜面に切られたステップに倣って足を置き登っていくとすぐに森林限界に出た。
振り返ると南八ヶ岳の眺めが素晴らしい。

北横岳ヒュッテからは10分ほどで北横岳の南峰に到着した。

北横岳には北峰と南峰があり、標高の高い山頂は北峰になるが眺めは南峰の方が良く、南八ヶ岳やアルプスを眺めるのであれば南峰から楽しむほうがおすすめ。
北峰へは5分ほど。

ロープウェイの山麓駅から1時間40分ほどでの北横岳到着だった。

北横岳から蓼科山へ

北横岳は北からの風が強く冷たかった。
目指す蓼科山が目の前に見えるものの、それ以上に鞍部の天祥寺原が深く見え、その高低差が気持ちを萎えさせる。
北横岳から亀甲池、天祥寺原から将軍平へと登るルートを想定しているが、ここからなら天祥寺原から竜源橋の登山口へ出るというエスケープルートも取ることができる。

北横岳から見える北アルプスや長野県北部の山並みを楽しんだあと、亀甲池へ向けて北横岳を下りていく。

地図では細かく等高線が引かれた北横岳の北側斜面。
雪の斜面とはいえ、かなりの急勾配で下りていく。
しっかりとトレースが付いているところを見ると、この急勾配も良く人が通るのだろうと想像できる。
あまりの勾配のキツさからか、シリセードの跡やテープを無視して新雪を突き進むトレースがあり、その気持ちも分からないでもなかった。

2030mの亀甲池まで高低差450mを一気に下り降りるようなで北横岳山頂からは30分ほどだった。
池の水面は積雪で真っ白になり、陽の光で眩しく光っていた。

亀甲池からは左へ折れ、天祥寺原へと向かっていく。
緩やかな下り坂が続き、木も疎らで見晴らしも良く気持ちが良いが、正面に見える蓼科山の高さだけが不安を掻き立てる。
すぐ近くの左側には北横岳の急な斜面が聳え、穏やかな天祥寺原の様子とは裏腹に気持ちは不安いっぱいだった。

亀甲池から緩やかに標高を下げ、15分ほどで大河原峠への分岐に出た。
ここから将軍平への登り返しに向かう分岐へ。
まずは2350mの将軍平を目指す。

竜源橋へと向かっていく登山道を標に従って右へ。
樹林帯の中を緩やかに登っていく。
登山道に関係なく無数のトレースがあり、どれも新雪を楽しんだようで、何人もの足で踏みしめられた状態では無かった。
その中で歩幅が合い歩きやすいものがあったので、それに合わせて登っていくことに。

天祥寺原からの登りは、ただひたすらに樹林帯の中の急登を進んで行く。
序盤こそ歩きやすい緩やかな勾配で、このまま将軍平に着くのではないかと思えるほどだが、いつの間にか息が上がる急勾配に変わり、ところによっては枝が登山道を塞いで回り道も余儀なくされる。
登ってきたルートを振り返ると北横岳が見え、自分のいる高さを確認しながらも、すぐ近くの樹林帯の高さを見てまだまだ先が長いと知った。

ひたすら我慢を続ける登り坂。
将軍平へと近づくほどに急斜面になり、目の前の樹林帯からは青空が見えるのに将軍平にはなかなか到着しない。
ときどき足を止めて呼吸を整えながら。

天祥寺原の分岐から1時間10分。
ようやく将軍平へと到着した。

すぐ目の前には蓼科山の山頂が見える。
ここまで来れば山頂は近いという安心感。

将軍平にある蓼科荘でもう一度呼吸を整えて、装備を確認してから蓼科山の山頂へと向かう。

ここから山頂へは距離も時間的にもそう遠くはないが、もっとも注意が必要な斜面になる。
蓼科山への直登は風が強く吹き付けるばかりか、その急斜面から滑落の危険もあり十分に注意が必要な場所。
将軍平で一緒になった単独行の二人はいずれも引き返したようだった。

蓼科荘から登山道へと入るとすぐに急な斜面が始まる。
シリセードの跡があり、せっかくのステップが潰されていたこともあり、つま先を蹴り込みながら登っていく。
10分ほどで森林限界を超え、一気に眺望が広がって冷たい風が当たるようになった。
直登していく雪の斜面にはシュカブラがデコボコと育ち、よく見るとその中に踏み跡のステップが見えた。

踏み跡を利用しながらつま先を差し込み、蓼科山の山頂へと登っていく。
振り返って見える浅間山や、左手側に見える八ヶ岳と遠く秩父の山々。
右側には霧ヶ峰が見えた。

蓼科山山頂

将軍平から20分ほど。
蓼科山の広い山頂に到着した。
北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅からはちょうど4時間での到着だった。
北横岳からは2時間20分で、やはり天祥寺原からの登り返しが最も難関だった。

蓼科山は比較的穏やかで、風は吹いているが冷たさや風の強さを感じなかった。
東には浅間山、南には八ヶ岳。西側には南アルプスと乗鞍・御嶽。
北アルプスは白く霞み始めていた。

広い山頂も残雪期になって雪が減ったようで、歩きやすそうな状態に見えた。

スズラン峠へと下りる

蓼科山からの下山はスズラン峠へ。
見渡すと北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅が遠く、よくあの場所から登り下りを繰り返しここまで来たと感慨深かった。
スズラン峠へと続く蓼科山の登山道はかなり堅い状態に雪が締まり、しかも適度な水分があるせいかシリセードには最高の状態だったようで、ただでさえ滑りやすい状況の中、均されてしまっていた。

急勾配の下りが続くのでステップが残っていると歩きやすいところ、ただの堅い雪の斜面になってしまっており、太腿にはグッと力を込めて下りていく。
幸徳平を過ぎ、雪が減ってところどころで岩が露出している登山道を下りていった。

蓼科山から下りる眺め

蓼科山から下りる眺め

「蓼科山ばかり登っている」と最近は言われるようになってきました。
数えてみれば記事を書いているだけでも7回の登頂をしていて、そう言われても当たり前だろうと思うようになりました。
実際には他の山には7回以上行っていることもあるのですが、写真を取ってネット上に公開している情報が目につきやすいですし。

何度も登っている蓼科山の中でも、この眺めが好きです。

山頂から下りようとする際の眺望。
スズラン峠へと下りるルート上の眺めです。
山頂から山小屋へ少し下りて、そこから山頂を巻くようにして西側へ下ります。
夏季ならば岩場が続く場所、冬季なら雪が踏みしめられているか岩の上で踏み抜きがあるかという場所です。
視界を遮るものは何もなく、まるで空を飛んでいるかのような眺めで、南八ヶ岳と南アルプスが見渡すことができます。
風の強い蓼科山ですが、ここなら山頂ほどは風の当たりが強くも無く、座って休憩ができるような場所ではありませんが足を止めて眺めたくなる景色です。

蓼科山に何度登っても登山道上からの眺めは素晴らしく、登るほどにこの景色が好きになっていきます。
この写真は霞がかかった3月。
空気が乾燥してパキッとした厳冬期や、緑の豊かな季節にもきっとここからの景色は素晴らしいと期待をしています。

下山後に立ち寄った温泉

長和温泉 やすらぎの湯

南側に蓼科山を望む長和町の温泉施設。
町の西側には美ヶ原、東には旧中山道の長久保宿がある。
大門峠から上田市方面へと進んだ道沿いにあり、道の駅が隣接し、駐車スペースが広いため立地的にも立ち寄りやすい。
内湯の他に露天風呂があり、露天風呂の浴槽の横には掛け流しの羽釜風呂が置かれている。

上信越道方面から美ヶ原や蓼科方面へ向かうにはとても便利な入浴施設です。
入浴料も高くなく温泉と食事、休憩ができるので登山後にはのんびりとできると思います。
色も香りも少ないお湯ですが、ナトリウム硫酸塩温泉という泉質で血圧の低下や痛みを和らげる効果があるそうです。
外には公園があって休日に立ち寄ったせいか、家族連れが多く見られました。

お世話になった山小屋

蓼科荘

七合目登山口と、大河原峠登山口からの合流地点にあたる将軍平にある山小屋。比較的登山口からも近いため、宿泊よりも休憩での利用が多く見られる。

七合目登山口から木々の間を歩いて登ってくると、目の前が開けて建物が見えます。入口の看板は趣のある文字でホッとします。立ち寄ったことは無いですが、メニューにある山菜ラーメンが気になります。

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