南アルプスの前衛に聳える日向山
山梨県白州町、南アルプス北部の甲斐駒ヶ岳や鋸岳を西側に持ち、東には八ヶ岳や金峰山を望む。
酒所としても知られる街で、国道沿いには酒蔵やウィスキー工場が見られた。
日向山は町のほぼ中心部。
とはいっても、市街地や住宅地は町の東側に集まり、中心から西側は南アルプスからの深い森に覆われている。
標高2500m以上の険しい稜線が壁のように広がり、そこから派生した尾根の先が日向山となっている。
山頂部は南北に広く、山体全部を樹林帯が覆ってなかで北側の一部だけ花崗岩が露出している。
その真っ白で砂浜のような様子は「天空のビーチ」と表されることもあり、近隣の山を眺める絶好の展望台になっている。
有名な場所だと思うけど行ったことが無い
今回の登山口は山頂へ最も近い矢立石。
北杜市観光協会では、日向山の登山には駐車場の広い尾白川渓谷のほうがおすすめされているものの、1時間ほど行程が短縮できる矢立石の方が登りやすく気楽にスタートできる。
幅員が狭く、ところどころで石が突き出た林道を上り、路肩に数台の車が停められる登山口に着いた。
駐車場と呼ぶには狭く、ここまで上ってくるにも擦れ違うことに気を遣うような林道で、車の運転だけを考えれば尾白川から歩いた方が気は楽そうだった。
タイヤがパンクするんじゃないかと・・・
登山口近くに車を停めて準備を整える。
比較的楽なコースとはいえ、登山靴に足を通すこともここ数年でだいぶ減った。
無理なく登って、ケガをしないことが一番の目的。
景色は肉眼で見なくてもウェブでも見られるのだから。
登山道は緩やかで九十九折りに登っていく。
横から朝陽を浴びる青葉がキレイで、ところどころで咲くヤマツツジが鮮やかで目を惹いた。
花はまったく期待をしていなかったため、群生と呼べるほどでは無くても序盤で多く見られるとは、まさかの思いだった。
緑の中の赤い花は良かった
15分
15分ほど登ったところで、白くザレたような石を踏んだ。
花崗岩のある山だと思うと、これも山頂のあの白い景色の一部なのかと。
登山靴のソールで擦ると、脆いように見えて意外と硬い感触だった。
登山道上の景色は特に変わりもなく、厚い緑の中を登っていく。
ときどき、緑の中で鮮やかな朱色の花が見える程度。
柔らかな足元は、前夜の雨で泥濘む心配をするほどでも無かった。
歩きやすい
30分
登山口から30分と経たないあたりで、登山道の横に小さな祠が経っていた。
細尾根のように両側は深く落ち、茂った葉の間から、ちらりと栗沢山と甲斐駒ヶ岳が見えるようだった。
5分ほど進んだところで石仏が置かれており、そこには天保十三年の文字。
日向山の謂れを知らずに登りにきているものの、こういったものを見かけると趣があるようにも感じる。
唐突に足元にいるの辞めて欲しい
緑が綺麗で上を見たり、木々の間から南アルプスが見えるんじゃないかと覗き込んだりしているばかりで、間近なものが見えていなかった。
徐々に周りには笹が増えてくる。
序盤には見られなかった地面を覆うような笹のおかげで、登山道の趣もだいぶ変わった。
緑の鮮やかさや、陽の柔らかさが感じられない。
花も少なくなった。
山頂着いた??違うか・・
しばらく登ると登りは緩やかになり、だんだんと平坦になって下るように変わった。
笹の茂る斜面と、木々の間からは甲斐駒ヶ岳の影が見える。
身近なところでウグイスが大きな声で鳴いていた。
9/10の案内板
緩やかに下ったところで、雨量計が建つ鞍部のような場所に着いた。
登山口近くからカウントをしていた案内板は9/10。
先を見上げると空が間近に見えて、明らかに山頂が近い雰囲気。
高い段差の坂を10mほど登ると、三角点を指す矢印があった。
お?
日向山山頂
1時間7分
登山口から1時間7分、日向山の山頂に到着した。
木々に囲まれたなだらかな場所で、眺望はまったくなかった。
有名な砂浜のような景色を想像して登ってきていたので、この山頂は意外な思いだった。
ココが山頂だったかー
山頂標と三角点を確認して、ふたたび登山道へ。
矢印が示す先へと進む。
ほとんど高さが変わらないような平坦な登山道を5分ほど。
緑のトンネルを抜けるように、一気に眺望が広がった。
トンネル感!
雁ヶ原
山頂から5分
雁ヶ原という真っ白な砂礫の広がる場所は、山頂から北側へ5分ほど歩いたところだった。
砂浜やビーチといった見かけたことのある表現のそのままの眺めだった。
ただ見えるのは海ではなく、眼下に見える街や森であったり、高く険しい甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳であったりだった。
砂浜のような眺めであっても地形は山そのもので、平坦なところはなく、景色を楽しめるなだらかな坂の先は、転げ落ちそうなほどに切れ落ちた急斜面が続く。
険しい山の迫力を間近に感じられる眺望の良いところだった。
周りの山の良さが分かる感じの眺めだった
下山
雁ヶ原からの下山は登ってきた登山道を下るピストン。
山頂付近で10時を回り、これから登ろうという人たちと擦れ違うことも多くなった。
光を透かして見えた新緑は、陽が高くなったぶんだけ光を反射して見え、また違った緑のようだった。
1時間以上かけて登った日向山は、下りでは1時間足らず。
駐車スペースの車も増えていた。