霧ヶ峰高原の周回ハイキング
標高1500〜2000mほどの高地に、牧歌的な草原が広がる霧ヶ峰。
木々が少なく眺望の良いドライブが楽しめるため、グリーンシーズンには人気の観光地になっている。
間近にある白樺湖には遊園地などのレジャー施設に加えて宿泊施設も建ち、冬はスキー場がオープンするなど、季節を通じて一帯のエリアが楽しめる。
夏の霧ヶ峰といえば、エリアの西側にある湿原のハイキングに訪れるひとも多い。
高原の草花が楽しめ、木道などのコースも整備されているため、気軽にハイキングを楽しむことができる。
5月とはいえ街では気温28度予報の晴れた日、八島湿原にきた。
湿原をスタートして車山へ向かい、周回をして湿原に戻ってくる予定。
霧ヶ峰は昔から馴染みがある場所でコースの土地勘もあると自覚しているものの、時間を掛けて歩こうとするのは初めてだった。
たくさんの車を停めることのできる八島湿原の駐車場には、朝早いにも関わらずハイキングへ出かけるひとが多い。
駐車場の横にはドライブインがありベンチが置かれているため、早くも腰を下ろしているひとも見られた。
駐車場から道路の下にある湿原へと続く歩道を通って、八島湿原を見渡す場所に出た。
ここから車山が見える。
直線距離でだいたい5キロほどと記憶をしているものの、遮るもののないところでの直線5キロは遠い。
あんなところまで歩くのか?と思えるほどの距離感をまえに「そうはいっても5キロぐらいだから」と口に出す。
予定では湿原の木道を歩いて蝶々深山を経由して車山へ向かう。
できれば蝶々深山ではなく男女倉山を通りたいと思いつつ。
まずは湿原の間近へ木道を下りる。
左側には鷲ヶ峰が間近に見える。
そこに続く登山道も眺望が良さそうで楽しめそうだった。
きっと鷲ヶ峰へ登る道からは、車山方面の霧ヶ峰が一望できるのだろう。
木道を歩きながら右側に湿原を眺める。
まだ花には早く、緑が芽吹くにも早い。
ただエゾノコリンゴの白い花が多く見られ、長野の市街地でも見慣れたリンゴの花のような色形に目を奪われた。
リンゴは好きな花のひとつ
身近なところでは楽しめる景色が少なく、遠くに見える草原のような丘と、ときどき咲き乱れているエゾノコリンゴが歩く中での楽しみ。
さすがに花の季節のような華やかさは無かった。
八島湿原から20分
木道を20分ほど歩くと間近に池が見えた。
湿原のなかで水が溜まった場所かと思って眺めていたが、鎌池という名前があるらしい。
空を映した濃い青がとてもキレイだった。
鎌池を過ぎるとすぐに簡易トイレが置かれていた。
今では使われているのかも分からないような破損した建物があり、宿泊ができるのか休憩のための建物なのかといったところだった。
特に立ち寄るような興味も惹かれず、道にある案内板に従って物見岩の方へ進む。
ここからしばらく車が通れるような幅の道が続く。
直近の悪天候からか、泥や水たまりが多い。
足元を見れば、幅員の広さの通りトラックが入ったような轍が続いていた。
5分ほどで、山小舎の灯の歌碑があるところまできた。
ここで建物の解体工事が行われており、トラックが通ったような轍は、ここで作業中の重機が付けたものだった。
大きな機械音を聞きながら、あまり近づかない方が良いのだろうと、遠巻きに見ながら右へ。
左へ進めば男女倉山だったところを、解体工事に目を奪われたまま視界に入った右の道を進んでしまった。
左の男女倉山は行きたいところだったけれど、蝶々深山も行きたいし、さしてこだわりもないから良いのだけど、また来ないと
右へ進んだ道はますます湿気て、登山道が沢のように水が流れるところもあった。
泥や水を避けながら緩やかに登っていく。
湿原を見てみると、徐々に高く登っているのが分かる。
あまり存在感がなかった周辺への眺望も、ここまで登ってくると広く見えるようになってきた。
間近にある南アルプスや塊のような中央アルプス、ただただ大きな御嶽山と、さまざまな山が視界の中で主張してた。
今年は高い山に登れるのか?
15分ほど登ったところで、登りの傾斜は緩やかになった。
周囲への眺望も良くなって、先に見える峰も近い。
木々の中を抜けてから野鳥が多くなったように感じ、声が聞こえる方を見るとホオジロやウグイスが飛び回っていた。
なかでもノビタキが多く、枝の留まったり離れたところへ飛んで行ったりと、右を見ても左を見ても姿が見えるようだった。
物見岩
八島湿原から55分
緩やかな登りから、ガレ場のように石が転がる峰の上に着いた。
この物見岩という峰は特に山頂標などもなく平坦で、北には男女倉山、東には山彦山があり、登山道は蝶々深山へと続いている。
遮るもののない眺望で、霧ヶ峰一帯を見渡す高台のような場所だった。
物見岩からは蝶々深山へ向かって、下ってから登り返す。
どこを見ても草原と丘の景色で、これから向かおうとしている車山へ向かって、踏み跡が続いている様子は長閑でありながら雄大な印象だった。
ただ日射を遮る物もなく、風は冷たいものの陽は熱く感じられた。
ダラダラ歩いていたら、目の前を鹿がダッシュして行くとか
蝶々深山
八島湿原から1時間19分
ノビタキを見つけてカメラを向けたり、どこか身近に見えるんじゃないかと周りを見回したりしながら登り返し、蝶々深山に到着した。
物見岩からは25分ほど歩いたようだった。
景色が広く距離を感じなかったなかで、歩いてみたら意外と遠かったと感じた。
蝶々深山も物見岩のように周りを見渡すことのできる平坦な高台で、蓼科山が間近に見える。
蓼科山の手前に見える丘は霧ヶ峰東端の殿城山との分岐で、北へと視線を向けると山彦山の南の耳へと繋がる。
その間でリフト降り場が見えるのが印象的で、姫木平のエコーバレースキー場の最上コース。
エコーバレーは仕事帰りに遊びに行った懐かしい場所だし、姫木平は八ヶ岳のポスターを見て赤岳行きたい!となった場所
蝶々深山でしばらく足を停めて景色を楽しんで車山へ向かう。
鞍部に向かって段差の大きな坂道を下っていく。
この場所から見る車山がなかなかに高く、霧ヶ峰らしからぬ険しさが感じられる。
車山の右側にはビーナスラインから立ち寄れるドライブインが見え、車山に登らなくても木道を辿ってドライブインへ向かうこともできる。
この周辺だけでも霧ヶ峰ハイキングを楽しめる網目のような道が、観光地らしさを感じさせる。
途中「ここから○○へ行けますか?」と言われたり
急坂を下りきると、車山乗越へ向かって登り返す。
近くに車山の急斜面が迫って見えるだけに、まるで谷の中を歩いているようにも感じられる。
ただ歩きやすい傾斜と、擦れ違うひとの楽しそうな表情は良いものだった。
ノビタキ多い
車山乗越
蝶々深山から20分
蝶々深山から下りて車山へ向かって登り返すと、20分ほどで車山乗越に着いた。
山彦山へと向かうことのできる分岐点で、車山へ登ることができるほかにも、車山スキー場を下りてビーナスラインに出ることもできる。
スキー場併設のレストハウスや駐車場があるため、ここからリフトを使って霧ヶ峰高原の最高峰を楽しむひとも多い。
車山へ登る道を見ると、広く砂利が敷かれていたり階段が作られていたりと整備がされているものの、一見してなかなかに急な登り坂。
山頂部はすぐそこに見えるとはいっても、最後の登りが厳しいのはどの山でも同じことで、気軽なつもりの霧ヶ峰のハイキングでもこの登りが厳しい。
階段を登っていくほどに、白樺湖を挟んだ蓼科山の存在感が強くなっていく。
蓼科山行きたい眺め
乗越から13分
10分以上かかって、階段を登り終えた。
リフト降り場は展望台が作られて、白樺湖周辺が一望できた。
霧ヶ峰高原の最高峰の車山
八島湿原から1時間58分
車山の山頂には気象観測所があり、その周りを囲んで遊歩道が作られていた。
富士山が見える南側には展望台、山頂部の傍らには車山神社が祀られている。
まずは車山神社に立ち寄ってから、展望台に向かい山頂を見回した。
記憶に残る車山山頂には遊歩道なんぞ無かった
展望台のある南側からは富士山と南アルプス。
存在感のある間近の山並みは八ヶ岳。
特に赤岳と阿弥陀岳は尖った形がとても印象的だった。
展望台から離れて観測所の裏手側にまわると、車山の山頂標が建っていた。
八島湿原が一望でき、こちらが霧ヶ峰で見るべき景色なのではないかと感じた。
高くて有名な山も良いけど、霧ヶ峰にきたのだから霧ヶ峰を見たら良いんじゃないかと
下山
車山からは車山肩へ向かって西側へ下りる。
大きく左へ曲がりながら車山の斜面を下りる登山道で、石のゴロゴロとした道は歩きづらい。
直下に見える車山肩のドライブインから、大きく逸れていくようにも感じられて、本当に下りるのか?と思えるほど。
ビーナスラインを真下に見ながら車の排気音を聞きつつ、左に曲がった登山道を右へと折り返して車山肩に近づいた。
車山肩からは、蝶々深山へ近づく木道と、車道を跨いで踊場湿原へ下りる登山道、大きなドライブインのある強清水へ続く登山道など、各方面へ分かれている。
自分が向かう場所を確認しながら、沢渡へと通じる登山道へ分かれた。
沢渡へ急斜面を下りると、林道を通りながら八島湿原へ戻ることができる。
徐々に樹林帯の中へ入り、そこまで見えていた景色が枝葉の中に景色が沈んでいくようで、霧ヶ峰らしい景色が見えなくなった。
ただ一気に下ったことで沢渡までが思いのほか早く、車道のような広い道を歩くようになったのは意外だった。
すぐそこにビーナスラインがある舗装の道路から、砂利道に変わり八島湿原へ向かっていく。
車が通れる幅は序盤で解体工事をしていた車は、この道を通ったのだろうと想像をしていると、きっとどこかで分岐を曲がるのだろう。
旧御射山遺跡
車山肩から30分ほど、旧御射山遺跡を通りかかった。
もともと諏訪大社の神事のひとつ御射山祭が行われていた場所だという。
近くにある祠に建っていた看板によると、五穀豊穣を祈るだけではなく、鎌倉時代や室町時代には全国から武士が集まって武芸を競ったり、御小屋呪師なども集まって賑わっていたという。
諏訪の祭神といえば建御名方命で戦いの神ではあるものの、こんな山奥に集まって神事が行われているばかりか、かなりの賑わいだったということに驚いた。
遺跡の下にある祠はこのエリアらしく周りを御柱で囲んだスタイルだったものの、盛大に神事が行われていた様子が感じられるような規模ではなかった。
下社といえば御舟祭ぐらいしか馴染みがないけれど、そういえば霧ヶ峰は下社エリアだなと思った
江戸時代の中ごろには秋宮近くに祭場が遷り、この場所は「旧(もと)御射山」となったという。
この祠も本御射山神社といい、諏訪神社と同じ祭神を祀っている。
八島湿原へ戻る
旧御射山遺跡から小さな沢を渡るとヒュッテ御射山があった。
まだオープンしていないようで戸は閉まっていたが、建物の中には灯りが点いているのが見えた。
ここから先は木道に変わり、木々の間から徐々に湿原が見えてくる。
車山からは遠く見えた鷲ヶ峰も間近になってきた。
八島湿原を起点にして車山を経由した周回は約10キロほど。
湿原が近づくほどに車山に似た賑わいがあり、駐車場に戻ると中学生らしい軍団が昼食のために座り込んでいた。
本気の登山の格好で近づくと申し訳ない感じがしてくる