長野市のブランド薬師
間近を通りかかるたびに「ブランド薬師」と書いてある看板を見かけて、それがいったい何かと疑問に思いながらも、回数を重ねるたびに気に留めなくなった。
偶然、薬山という山名を見つけ、それがブランド薬師が建つ山だと知ったことで、歩いてみたいという興味が沸いた。
現地を見ている記憶からも長い行程ではないことは分かり、身近で歩いてきたという話しも聞いたことがあった。
山を登る道を歩く機会が減ってはいるものの、気負わずに散歩のような気持ちで向かうことにした。
気軽な感じで歩きたい
長野市側からループ橋の手前にあるチェーン着脱所に車を停める。
ちょうどブランド薬師の社殿が見上げられる。
高度感よりも岩壁の険しさが見てとれる。
車で通って社殿が目に入っているひとは多いと思います
準備を整えて車道を歩きながらループ橋の下を潜る。
数分歩くとブランド薬師へと登っていく石段の前に着いた。
路上駐車ができそうなぐらいの道幅があり、ここまでの幅員が広ければ石段の近くに停めても良さそうだった。
車の通りが少ないなら、間近に停めても良いんじゃないかと・・・・
入口の鳥居には「八櫛神社」と書かれた扁額。
ブランド薬師という呼び名であっても、少彦名を祀った神仏習合の神社だという。
807年ごろの創建で、1847年の善光寺地震で崩落したあと1861年に再建され、現在残っているのがこの当時のものだという。
岩壁に材木を三本打ち込み、崖に張りつくように建てられた懸造りという建築様式で、ぶらんぶらんと揺れやすいお堂のために「ぶらん堂」から転じてブランドになった。
ブランドって謎だと思います
鳥居を潜って石段を上ると、すぐに登山道のような九十九折りの登り坂に変わった。
登っていくと脇には十三仏の石仏が祀られている。
もともとは別の岩場にあったようで、公園の東屋を整備する際に移してきたそうだ。
十三仏があるのは知らなかった
はじめに見える役行者の石仏から、不動明王、釈迦如来と十三仏が次々と現れる。
ひとつひとつに謂れが書かれた看板が建てられており、歩きながらの十三仏参りを楽しめそうだった。
急な斜面に作られた登山道は、道から足を踏み外したら転げ落ちそうなほどで、そんな斜面を折り返しながら登っていく角度はなだらかで歩きやすい。
間近にある浅川ループ橋はどんどん低く見えていく。
役行者から数えて4番目の文殊菩薩の石仏まで登ると、景色が開けて市街地が一望できた。
この木々の中で景色が開けて見えるのは、足元が高く切れ落ちているからと思うと、そうノンビリと景色を眺めている気持ちにもならなかった。
知ってはいたけれどけっこう高い
登り始めて8分ほどが経って尾根の上に出た。
ついさっき見た市街地の眺めが、ここからも同じように開けて見える。
20mほど進むと秋葉三尺坊が祀られる岩場との分岐があった。
この小さな石仏は薬山の見どころのひとつのため下山時に立ち寄ることにして、まずは社殿と山頂方向へ。
地蔵菩薩を過ぎると、近くに社殿が見えてきた。
間近に見上げる社殿は崖から突き出ている様子がよく分かる。
道路から見るよりも間近で見た方が良いなと思いました
次の弥勒菩薩で、社殿と同じ高さまで登った。
山頂方向からは少し外れて、ブランド薬師に立ち寄ってみる。
古めかしい木造の社殿は見るからに不安定そうで、つい数分前に不安定な岩場の上に建っているのを見たばかりで、なおさらに不安が募る。
そういえば揺れている気がする・・・
社殿の中は長野市街への眺めが良く、涼しく風が吹き込んで清々しいものの、なんだか足元がソワソワとして落ち着かない。
周囲を見渡して、社殿の中を見回して、そうそうに登山道へと戻った。
高い場所は苦手なので・・・
登山道へ戻ると、すぐに東屋が建っていたのが見えた。
まさかこの場所に建物があるとも思いもよらず、公園と呼ばれているのはこのことかと知った。
見渡すと水道の蛇口まであり、どこから水を引いているのだろうと気になった。
東屋はあとでゆっくり見る
さらに驚いたのは、ここから上はコンクリートで舗装されており、今までの九十九折りはなんだったのかと・・・。
ここに舗装があって、東屋などがあるということは車が入ってこられる道があるのだろうと想像をしながら、それがきっと浅川ダムのほうから続く裏参道なのだろう。
尾根上の舗装路は、木々に覆われているものの葉が落ちているために明るく風の通りが良い。
ただ山の周りにはめぼしい眺望もなく、立ち並ぶ石仏を数えていくだけ。
薬山山頂
鳥居から20分ほど、こんもりと高い場所に着いた。
阿弥陀如来の石仏が置かれ、先を見るとなだらかに下っている。
まわりにはこの場所より高いところもないようで、地形図を見るとどうやら阿弥陀如来のある場所が最も標高が高く山頂と呼べるようだった。
山頂がどこか分からなくて少し通り過ぎた
十三仏はまだ3体残っており、虚空蔵菩薩は裏参道へ向かった先にあるのだろう。
木々に覆われて見えるものもなく、山頂だからといって石仏の他には目に留まるものはなかった。
下山
薬山からの下山は登ってきた道を折り返して鳥居へと戻る。
コンクリートの道路は滑りづらく歩きやすい。
明るさと陽の温かさが長閑だった。
東屋まで戻って、水道が気になり見回してみると、少し下に貯水槽のようなコンクリートの塊が埋まっていた。
蛇口を捻っても水は出なかったが、公園として本格的に整備をしたのだろう。
5分ほど下って、普賢菩薩の置かれた分岐にきた。
この分岐を右に下りて秋葉三尺坊の岩場へ向かう。
急な斜面をトラバースして50mほど下りる登山道で、狭いうえに落ち葉が積もって歩きづらい。
土の色に落ち葉の色が同化して、どこまで下りるのかも判別がしづらかった。
唐突に登山道が分からなくなり、岩の影に踏み跡が続くようにも見えるし、歩くには難しく道ではないようにも見える。
数歩下りて振り返ると、岩場の影に小さな石仏が見えた。
どうやら行き止まりだったようだった。
岩の窪みの中にある秋葉三尺坊は、大きさが70センチほどの石仏。
背伸びをして見上げるような高さの場所に置かれており、存在を知っていなければ見つけるのも難しいだろう。
ブランド薬師を火災から守るために置かれたものだそうで、三尺坊は蔵王権現十二坊のうちのひとりで近くに位置する戸隠の生まれだという。
秋葉三尺坊から登り返して登山道に戻る。
下りで分かりづらかった落ち葉の踏み跡も、登りは難なく戻ることができた。
戻ってきた