紅葉の志賀高原へ
徐々に黄色が鮮やかになる10月の志賀高原。
標高2300mを越える横手山の山肌から、丸池付近まで華やかな森が広がる。
いくつものトレッキングコースのある志賀高原内で、一般的で歩きやすいコースのひとつに、大沼池や四十八池を歩く池めぐりコースが整備されている。
ほたる温泉付近の硯川からスタートし、発哺温泉近くの清水口まで。
平坦で長いコースで、その道中では深い森林や志賀高原の峰々が楽しめる。
意外と良いと思うのです。散歩的に。
今回のスタートは池めぐりコース起点の硯川から。
前山リフトを横目に渋池へ登り四十八池まで池めぐりコースを歩く。
四十八池からは鉢山方面への登山道に入り、分岐から忠右衛門新道を赤石山へと向かう。
下山は大沼池へと下りて四十八池を経由、池めぐりコースを硯川へ戻る行程。
日帰りとしては距離が長く、歩きやすく整備されたコースがほとんどとはいえ、所要時間は周到に想定をした。
意外と距離はあると思うのです。
硯川から四十八池へ
前山リフトの駐車場に車を停めて登り始める。
序盤は広く傾斜のキツい登りが続く。
振り返ると笠ヶ岳の険しい岩壁が見え、その山肌には黄色くなった木々が疎らに見える。
紅葉が目当てなら、ここまでで十分に満足度が得られる眺めだった。
眺めが良いと言いながら辛かった登り。
時間にして10分ほど。
リフト降り場のある方へ向かって遊歩道のような歩きやすい足元に変わる。
右手側には小さな湿原、左手側には笹が広がり、さきほどよりも笠ヶ岳が間近に見える。
振り返ると横手山、遊歩道の先には志賀山。
リフト降り場から
リフト降り場からの遊歩道と合流して池めぐりコースを進んでいく。
すぐに木戸池からの遊歩道と合流して、渋池の畔に差し掛かる。
渋池は水面に横手山を映す、このコースの見どころのひとつ。
風が少なく水面が落ち着いているときなどは、ここから景色を眺めるのも良い。
今回は目当てが赤石山の山頂で、それなりに行程を長く取っていたこともあり先を急ぐ。
横手山には雲がかかっていたことも、先を急ぎたくなる景色だった。
渋池からは頭上を木々に覆われた遊歩道が続く。
前日までの雨で湿った足元で、整備されているとはいえ見た目に滑りそうな状態。
硯川周辺の華やかな黄色に比べたら、緑の濃い木々が多く、夏と変わらない景色も広く見える。
ただ落ち葉が華やかで、見上げるよりも足元を見ながら歩きたいようだった。
慣れたせいか、ここまで意外と早かった
30分
30分ほどで志賀山と四十八池との分岐になった。
どちらへ進んでも四十八池へ行くことはできるものの、今回は志賀山へ向かわずに四十八池方面へ。
登り下りを繰り返しながらの遊歩道は、このあたりから泥濘が酷くなった。
空を見上げるとガスが流れていくのが分かるほどで、間近に見えるはずの志賀山も白い空が見えるだけ。
この先も同じような状況なら、展望台のような赤石山からの眺めは、何も期待ができない。
今回は引き返す方が良いのかと迷いながら、ひとまず四十八池までは進もうと考えた。
木々の間からチラチラと見えてきた四十八池。
すっかり草が枯れて茶色くなった湿原に木道が見える。
出直した方が良いか?
硯川からは45分
相変わらずガスが濃く景色が期待できない。
だからといって、四十八池に夏ほど魅力的な景色があるようにも思えず、しばらく迷い考える時間が続く。
硯川からは45分ほど。
迷ったけど行く
忠右衛門新道へ
四十八池にある分岐から、登山道へと入った。
先には横手山、その手前に鉢山があり、仮に赤石山へ向かわなくても硯川へ戻る行程も考えられた。
四十八池と志賀山では気持ちが消化できそうになかった。
鉢山へ向かう登山道は、それまでの遊歩道とは変わり、急登を折り返しながら一気に登っていく。
作られている木段も濡れて滑りやすい。
振り返ってみれば、ここで見た景色で気持ちが変わったと思う
四十八池分岐から5分
四十八池分岐から5分ほどだった。
鉢山と赤石山への分岐に着いた。
硯川へは鉢山を越えて戻ることができる。
赤石山は尾根伝いの忠右衛門新道を歩いていける。
空は相変わらず白く風が流れて、すぐに好転するような雰囲気も無い。
ただ頭上を木々に覆われていた中とは違い、この分岐からは笹に囲まれながら空を見て歩くことができる。
どちらにしても眺望が得られないことには変わりがないものの、木にあるかないかというところだけで、先へ進もうと思う気持ちが大きく違った。
忠右衛門新道いくぞ
分岐から迷わず赤石山に続く忠右衛門新道へ。
登山道の両側には背丈を越えるほどの笹が茂り、熊が生息しているエリアとしては気に掛かる。
見通しがなく、笹が風に揺れてガサガサと音を立てている中に、黒く大きな影が見えるんじゃないかという。
熊?
忠右衛門新道は左右に蛇行しながらも比較的平坦で、細かなアップダウンが連続する。
落ち葉や笹が積もってできたフカフカとした感触も心地よく、天気が良ければ横手山や、これから向かう赤石山への稜線が楽しめただろう。
ただ紅葉樹が無いため、秋ならではの眺めは楽しめず、ただただ青い笹のなかを抜けていく。
鉢山分岐から15分
鉢山との分岐から15分ほど進んだところで登山道は急な下り坂に変わった。
ここで先の眺望が開け、赤くなった山肌が間近に見えた。
ほとんど紅葉らしいものが見られなかった登山道で、おそらくここが最も紅葉が楽しめるポイント。
下りながら目の前に近づいてくる紅葉に期待値が上がる。
あれ紅葉じゃないのー?
5分ほどの下りの中で、ふと左手の谷側を見ると、真下に大沼池を見ることができた。
まったく予期も期待もしていなかった大沼池。
枝の隙間を縫っての眺望とはいえ、気持ちの上がる眺めだった。
おそらく葉の茂る季節では見ることのできない眺めで、葉が落ちたからこそ見ることができるものだった。
現在地の確認もでき、短時間ながらも忠右衛門新道を進んだことが分かった。
まさかの大沼池は良かったです
登り返しは紅葉を見上げながら。
下りながら見たような華やかな色づきは登山道近くではなかったようで意外と笹が多い。
登り切ったところからは、また背丈以上の笹が周りを囲む。
足元は湿気が多く泥濘む。
細かなアップダウンもこれまでと変わらず、落ち葉と泥の登山道を歩いていった。
硯川から1時間半
硯川から1時間半ほど、鉢山からは35分ほど進んだところで大沼池からの合流地点に到着した。
忠右衛門新道分岐と看板が掛けられ、ベンチも置かれている。
地形図では長く見えていたコースが、唐突に到着した思いだった。
あれ?もう??
赤石山
合流地点からは赤石山へ向かっての登りが続く。
忠右衛門新道のなだらかさと比べると、ようやく本格的な登山が始まったかのような登り。
木段や木の根が張った段差に、足を上げて登っていくとすぐに息が切れた。
なんだか一気に疲れました
忠右衛門新道分岐から10分
大沼池と合流した忠右衛門新道分岐から10分ほど。
赤い土のザレ場出た。
木が無いため周囲を見渡すことができるものの空は相変わらず白い。
ザレ場の木段を上がると石の段差を登った。
その先に見えるのは赤石山山頂部の岩場。
岩場の少し先には、山頂の標が立てられていた。
硯川から1時間51分での到着だった。
赤石山山頂から大沼池を見下ろす
赤石山は野反湖へと続く分岐点で、東館山へ通じる3つのコースが合流している。
もっとも高いところは岩場の上で、標があるところは分岐点になっている。
傍らに小さな祠があり、地元の酒造場の「渓流」が置かれていた。
岩場に座るのは定番
座るほどのスペースがあり、眺めの良い岩場へ戻りしばらく見下ろした。
大沼池と周囲の紅葉の上を、早い速さで雲が流れていく。
このまま白い景色しか見えないかもしれない中で、たまたま山頂で一緒になったひとと会話をしながら待ってみる。
ひとりで待つよりも遥かに気持ちの余裕もできた。
5分ほど待ったころ、雲が切れて大沼池が見えた。
思っていた以上に青く、紅葉は黄色かった。
その色の差が想像以上に良く、雲の間からチラリと見える程度なのが憎いくらいだった。
良かったですよ。雲多いけど。
いつまで見ていても飽きない雲の流れと、鮮やかな色で、風もちょうど良く時間を忘れるほど。
ただ、その場で見ている眺めの場所まで下りていく予定でいるため、あまり長居もできず、名残惜しく思いながらも山頂を後にした。
大沼池へ向かう
赤石山山頂からは忠右衛門新道の分岐に向かって下りていく。
登りでは見えなかった葉の色づきが、また違った登山道のようにも見え、気持ちの弾む登山道。
そのせいか分岐まではすぐで「気が付けば」というような印象だった。
登りで歩いた忠右衛門新道はなだらかで細かなアップダウンの登山道だったが、分岐から大沼池への登山道は急傾斜一辺倒のようで対照的。
ましてや地面が湿っている中では木段が滑りやすく転倒にも気を遣う。
急激に標高を下げていくようで、赤石山の山頂方向を見ると、雲に遮られて見えなくなっていた。
あっちゅうまに下ってきた
急な下りは15分ほどだった。
周りは志賀高原らしく、厚く笹が茂った状態。
下り終わってなだらかになった中を大沼池へ向かった。
大沼池からの池めぐりコース
分岐から20分ほどで大沼池まで下りてきた。
このあたりでは気軽な格好で楽しみに来ている人も見られ、長閑な雰囲気が漂う。
みんな楽しそう
透明度の高い大沼池の水面は、曇った空を映しているせいか黒く、特徴的な青さは見られなかった。
池の向こう側には裏志賀山が見え、ここからの下山路で回るのも楽しそうに見えた。
大沼池から四十八池へ
大沼池をあとにして遊歩道をを四十八池へ向かって行く。
硯川からのなだらかさに比べたら、大沼池から四十八池へは標高差があり木段が置かれているものの登り返しもキツい。
相変わらず、遊歩道の周りには笹が多く茂っているものの、白樺などの黄色が見られた。
登り返しがキツい
大沼池と四十八池の間の遊歩道は、なかなか眺望の得られないところが多く、序盤はときどき大沼池が見える程度。
延々と森の中を歩き続けるようで、なかなか着かないという印象ばかり。
山の形に合わせて遊歩道が何度も曲がり、ようやく志賀山が見えるようになったところで、ようやく近さを感じることができた。
大沼池から35分
大沼池から35分ほどで志賀山と四十八池との分岐に着いた。
鳥居の建つ右へ進めば志賀山を越えて硯川へ。
左には四十八池があり、登りでも歩いた分岐点へと戻る。
大沼池からの登り返しですっかり疲れてしまったので、志賀山へ向かう元気も無く、四十八池の木道を歩いて戻ることにした。
もう登りはいらない。。。
四十八池から硯川へ
四十八池は小さな地塘がいくつもある湿地帯。
その中に木道が作られ歩いて渡ることができる。
ワタスゲや紅葉のシーズンには賑わう場所にもなっている。
すでに午後になり、帰り始める人の多い時間帯。
池の周りにあるベンチで歓談しているグループも見られる。
鉢山は雲が流れて山の形を見ることもできず、木道を渡りながら振り返って見る志賀山も雲で霞んでいるほどだった。
秋の四十八池もいいと思います
5分ほど歩いて四十八池を渡り、登りと同じ遊歩道を硯川へ向かっていく。
午前中の雲が多かった物々しさとは変わり、陽が射した遊歩道は輝いて見える。
特に眺望がなく緩やかなアップダウンは、上高地と横尾の長い長い林道のようにも思え、このコースを今年一度も行かなかった上高地になぞらえながら歩いた。
ココは上高地だ!と思いたい
渋池まで戻ると、横手山に掛かっていた雲が無くなり、池周囲の紅葉と一緒に眺めが楽しめた。
リフト降り場へ向かって遊歩道を進み、駐車場へ向かって急な坂を下りていく。
車道が近いこのあたりまで来ると視界に入る黄色が多く、景色の華やかさが増した。
長い行程を想定しての忠右衛門新道を通っての周回は、天候に恵まれなかったものの、季節ならではの眺めも楽しめた。