岐阜側からの白山日帰り
岐阜県から石川県、福井県と大きく裾野を広げる白山。
多くの登山者が訪れ、地名としても良く知られている。
日本百名山のひとつとして知られているのはもちろんのこと、日本三名山や三霊山、花の百名山としても白山の歴史や魅力を伝えている。
三県に跨がる山体は周囲の山々から見ても位置が特定しやすいばかりか、特に日本海側の石川県の平野部からでも山頂部を望むことができ、このエリアを象徴するような強い存在感がある。
北や南から繋がる信仰の縦走路、人里近い温泉地など登山口が多いのも古来から親しまれた白山ならでは。
特に比較的アクセスのしやすい石川県側は主要な登山口のひとつといえる。
街でお魚食べて翌日に登るとかもできるし魅力的
今回の平瀬道は岐阜県白川村から室堂平へと繋がる。
富山県へと流れる庄川の支流のひとつ、大白川の上流にある白水湖から登山道が続く。
白水湖はキャンプ場と温泉がある観光地とはいえ、車が擦れ違うのにも気を遣うような狭い車道で、山が迫ってくるような崖と、大白川の谷を縫って上流へと向かう。
ましてや白山登山へ向かうような早朝深夜では、なんの明かりもない状態でこの林道を走ることになる。
狭いけどアスファルトは綺麗だし整備は行き届いている気がします
平瀬道登山口
明け方の大白川、紅葉シーズンの週末ということもあってか車が次々とやってくる。
平瀬道の入口には30台ほどの車が停められるスペースがあり、白水湖ロッジ近くの駐車場には70台が停められる。
公衆トイレがあり室内灯が点くのもキャンプ地ならではというか、百名山ならではといった印象だった。
百名山的な有名な山へ来たのって、たぶん2018年以来だと思うのです
登り初める予定時間までは相当に早く駐車場に到着した。
まだ暗く、明け方まで時間があるため車のなかで過ごしていると、同じように早めに到着する人たちの物音が聞こえる。
車のドアを開け閉めする音、星空を見上げる嬉々とした声。
暗い車内で休憩を取るにはどちらも耳障りな音だった。
トイレに特級呪物が散らばっていたので、大きな音はそこに寄せられた呪霊だと思うんです
朝5時すぎ
空が白んで明るくなってきた。
登山道へ入ってゆく人たちも見えながら、荷物に詰めてきた朝食を食べながら準備を整える。
朝になれば駐車場が車でいっぱいになるかもしれないと思っていたが、まだ余裕がある程度だった。
駐車場の一番高いところには、登山口の目印にもなるような看板とゲート。
草が茂っていて、ここから入るよりは10mほど離れたところにある休憩所の横から入るほうが良いようだ。
登山口のあたりって、なんだか綿毛みたいなものが上から降ってて、とても不思議な感じがする
階段連続
登山口の休憩所の横を通ると、さっそくいっぱいの緑に囲まれる。
間近に白水湖や沢が流れていることなど、音が聞こえる以外は景色が遮られる。
ときどき葉の隙間から、青い水面が見えるぐらいで。
足元には延々と階段が見える。
登山口近くの標高は1300mにも届かない程度。
まだ紅葉には早く、一部の楓が赤く色づいている以外は深い緑ばかり。
ただでさえ歩幅が合わずに歩きづらい階段に、口からは悪態しか出てこない。
とにかく身体が重い。
毎年、山へ行く回数も時間も減っているし、年齢は積み重なるばかりだし。
なんなら40日振りぐらいだし、その間に新型コロナ感染しているし。
登山口から20分
登山口から20分以上が過ぎたところで、鮮やかな緑が多かった周りの樹木に、だんだんと黄色や橙色が目につくようになってきた。
遠く白山を見晴らすことができる場所もあり、周りの山々が見えるように変わったのも、色合いが見えるようになった理由のよう。
秋の冷たい空気には、やはり鮮やかな色の方が良い。
ただ足元には丸太の階段が続く。
さらに10分
さらに10分ほどの登山口から30分と経ったころ。
ようやく階段が減り、土と石の九十九折りが多くなってきた。
ブナの木が増えて、広葉樹が多くなったように見える。
赤く色の変わった葉が増え、木肌は白く、そのコントラストが美しい。
尾根道を九十九折りするような地形の登りになり、ときどき平坦で木々が開けている場所も増えてきた。
足元の斜面を笹が覆い、木々が眺望を遮ることもない。
ちょうど白山の東側にある高山市や北アルプスを見渡すような眺め。
乗鞍岳の巨大な山体や、穂高岳連峰の激しい凹凸が印象的な山並み。
高い場所から高い山並を見るのは久しぶり
右側のすぐ間近には、大きく山体が崩落した三方崩山。
山肌の木々も少しずつ紅葉がしているようだった。
1時間
登山口から1時間ほどかかって2km地点まで登ってきた。
平瀬道は登山口から室堂平近くまで、約1kmおきに標が建てられ、場所によってはベンチが置かれている。
足を休めるには目安になりやすくちょうど良い。
相変わらず階段が多く、足を上げて登るのに歩幅が合わずに辟易とする。
先ほどの標によると室堂平まで約5km。
まだ先は長い。
しばらく歩くと、斜面には笹が増えて登山道上にも刈り払われた切り口が多くなった。
谷側に傾いた登山道は、笹で滑りそうな雰囲気。
ただ背の高い木々がないおかげで左側の眺望が開け、別山から室堂平へと繋がる稜線からの山肌を間近に見ることができる。
華やかな色は見えないものの、秋らしい葉の色が嬉しい。
笹から10分ほどで唯一の鎖場になった。
高さ10mもないほどで、鎖を使わなくても登れる程度の傾斜。
ただ手を突いて何かに掴まるには脆い印象だった。
森林限界に出たの?
岩場を登り切ると、周りには高い木が減ったようだった。
森林限界か?と思えるほどの眺望の良さで、見下ろして紅葉を見て楽しめる。
東側の眼下には白水湖、そこから盛り上がった稜線の向こうには御嶽山が見える。
南側を振り返ると、山の斜面の向こうには別山の山頂部が見えてきた。
岩場から20分
岩の鎖場から20分ほど登ると、登山道は尾根上に出た。
右側の前方には白山の山頂部が見える。
まるで双耳峰のように御前峰と剣ヶ峰が聳え、その手前には赤くなった葉が見える。
いったん斜面が緩まると、そこから500mほどは狭く高い尾根上の登山道。
注意が書かれた標識を過ぎると、たしかにそこからは狭く足元に注意が必要で、深く切れ落ちた谷になっている。
そのかわりにこれまで以上の眺望の良さ、樹林帯に覆われた登山道とは雰囲気が変わってテンションが高まる。
これは良い
陽射しの柔らかな高曇りの空のせいか、紅葉はくすんで見える。
それはそれで良く、山肌の形を見ているだけでも楽しい。
ただ振り返った方向に見える白水湖は、ここまでの時間と実際の標高の割には近く見え、その距離感から室堂平までの遠さが思われた。
長く続く運動不足と山登り不足、夏の終わりに崩した体調が戻っているかという不安は感じ続けたまま気付かないフリ。
景色に目を奪われながら、尾根道を登っていく。
まわりには黄色が多く、白い木肌が映える。
右側に見える山肌は黄色と黄緑色の中にポツリポツリと赤が混じり、華やかな色合いになっている。
ああいう色のカビもあると思う
手前に見える紅葉と、まだ緑の濃い先に見える三方崩山が印象深く、とにかく立ち止まって振り返ることが多い。
夏の暑さからか枯れた色が多く感じられ、例年どおりの美しさとはいえない程度なのだろうが、やはり紅葉は美しい。
500mと書かれていた足元注意の地点も、周りの景色に気を取られているうちに終わってしまい、ふたたび左右は木々に覆われる。
笹や葉緑樹が間近になり、その中を比較的なだらかに登っていくと、大倉山山頂付近という標が建っていた。
大倉山
登山口から1時間46分
大倉山は登山口から室堂平への半分を過ぎたあたり。
特にこれといって目立ったものはなく、登山道を外れたところに山頂と思われるピークはあるものの、笹を分けてそこまで入っても、だからといって特に何もない。
ピークのひとつとしてベンチに腰を掛けるキッカケにしやすいというところだろうか。
このタイミングでは大倉山付近の紅葉がちょうど良かった。
どこを見ても華やかで、地面近くに茂っている笹の濃い緑が黄色の明るさを強調しているようでもあって、陽射しの暑さは嫌なのに青空を望みたくなるほど。
2・3分ほどで避難小屋を過ぎると、目の前には急登と階段が見えた。
もう室堂平までの高さは知れているとはいえ、ひたすらに階段が続く。
ただ高くなればなるほど、振り返って見下ろす景色が良く、つい先ほどベンチに腰掛けていた大倉山が華やか。
北アルプスの稜線や御嶽山の大きな影がそそる。
下を流れている沢が気になる
登山道は急な斜面を横切るようにして続いて行く。
背の高い植生もなくなり、どこを見ても景色が楽しめる。
南側の眺望が良いところでは、別山の山頂が見えるようになり、先ほどより一層存在感が増した。
黄色の強い斜面の形状がとても美しく、このコース上でもっとも印象が強かった。
どこを切り取って見ても、言い表せないような眺めで、もうココで帰っても満足ができるのだろうと思えるほど。
ここまで来られてありがたい
大倉山から見上げていた斜面は、登り切ってもまだ先が続いていた。
標高を考えれば当たり前のことで、そう簡単に登り終えるわけもなかった。
別山への眺めに気を取られながら、ゆっくりと登っていく。
そろそろ終わるだろうと思いながら、なかなかに終わらない階段にも慣れてきた。
室堂平
足を停めながら休めながら、御前峰が間近に見えてきた。
室堂平はどの高さどうかと、景色から期待することも飽きてきたぐらいで、なんとなく登りの傾斜が緩くなった。
これはきっと、ようやくの室堂平なのだろうと気が逸る。
先ほどまで三方崩山に見蕩れていた記憶も失って、ハイマツが茂る先に見える別山に視線が向かう。
この景色を待ってた
きっと楽しみにしていたこの景色も、すぐに終わってビジターセンターに到着するのだろうと思い、足を停めながら同じ景色で違いの分からない写真を撮る。
何度も。
微妙に登ったり下りたりするような地形も、階段の連続の中では辟易としていたのが、ここまで来るとまったく気にもならず、何もかもが嬉しい。
山って楽しい
ハイマツの間を歩いて向こうにビジターセンターが見えると、登ってこられたことに安心したような、久しぶりにきた懐かしさのような不思議な気持ちだった。
歩いてきたのだから当然到着するしそれを目指していたのだし、久しぶりに見て懐かしいのも当たり前で。
ただ思うところは多く、それも頭のなかで散らかり放題でまとまらないような。
ここでそんなことを思うのも面倒だというような。
3時間8分
賑やかな山というつもりだったので、人がたくさんいるのも想像をしていた。
これも久しぶりに見た光景だった。
そしてビジターセンターのトイレが、大白川のトイレとは比較できないほどの清潔感で、なんなら水洗トイレになっていることに驚いた。
どうしてここまで差が出てしまうのか。。。というのは、やはり訪れるひとの多さの違いなのだろうか。
山小屋やの雰囲気は楽しい
御前峰へ登る
日帰りをするということで、休憩もそこそこに室堂平から御前峰へ向かった。
白山山頂にある3つの峰のひとつ。
白山比咩を祀る社殿が建っている。
祈祷殿の鳥居を潜って社殿を横切ると、御前峰へ向かって登山道が続いている。
整備された石畳と石段が続き、登っていくとだんだんと小さく遠くなっていくビジターセンターが楽しい。
ここにきて雲が晴れ青空が広がった。
福井から岐阜、滋賀に跨がる越美の山々が見渡せる。
このエリアの山々は山座同定ができないどころか、山の名前も知らない。
御前峰への石段は過去に1度登り、今回が2回目。
登ったという記憶は無くなってしまった。
祈祷殿の横を通ったことはうっすらと覚えていた。
古い写真で見ていた景色を、実際に目にして、蘇る記憶とまったく覚えてなくて新鮮に感じるところと。
下りて来るひとも多いため、狭いところでは道を譲り合うのが当たり前で、登りを優先してくれる。
ただ懐かしさに浸っていた身としては、大きなお世話とも感じられ、なんなら足も疲れていたので休ませても欲しい。
そのまま「休ませて下さい」と言うと、たいていは笑って下りてくれた。
景色とか空気感とか堪能したいのです
御前峰が近づく。
石積みのなかで社殿の前を横切り、白山の山頂に到着した。
白山山頂
御前峰
室堂平から38分
ようやく白山の山頂に着いた。
平瀬道の登山口からは3時間46分ほど、室堂平からは40分と掛からず登ることができた。
途中、足を停めて腰を下ろしていたことを思うと、実質的にさらに1時間は掛かっていた。
ちょう良いタイミングで曇り空が青空に変わり、これ以上ないと思えるほど。
やはり人気の高い山だけあって、山頂標の写真を撮るにも列に並び、撮ったらサッと場所を空ける。
邪魔にならなそうなところを見つけて荷物を下ろす。
ここは2度目の景色。
ただ前回はガスの中で、ここまでの眺めを楽しむことはできなかった。
同じ眺めとはいかなくても、とにかく懐かしい。
見たことのない景色のはずでも不思議と懐かしい。
山など元気であれば何度でも訪れて登れるつもりが、もう一度ここに来るまで10年かかってしまった。
白山の山頂部に立ち並ぶ峰は、最高標高の御前峰のほかには剣ヶ峰と大汝峰。
その三峰の合間に池ができ、それを巡り歩いて下りるのが定番コース。
上から見ると距離感がおかしいのか、遠くも高くも見えないが、実際はそれなりに時間もかかるという。
登ってくる道中、ずっと気になっていた三方崩山は山頂から再び見ることができた。
紅葉はやはりあの方向が良い。
向こうには北アルプスがくっきりと見える。
海岸線と海のような眺望は、野々市や小松の方向だろうか。
室堂平を眼下に別山方向を見て、反対に北側を見るとおそらく鳩谷ダムと合掌造りで知られる萩町。
飽きない
お池巡り
山頂標から東側へと下りる。
白い地面を踏みしめながら巨岩の露出した間近を歩くのは、樹林帯の豊かな登山道を歩いてきた印象とはまったく景色。
ここだけを切り取ればアルプスか?ぐらいの。
段差の高い岩場の下りで、踏み跡に沿って斜面を下りていく。
日影になっているところでは雪が残り固く凍っている。
振り返って御前峰を見ると、室堂平から見る穏やかな山容とは真逆の、岩が荒々しく露出した風貌。
だんだんと池が近づいてきた。
油ヶ池は水たまりのよう・・・
油ヶ池を見て下りる。
山頂からは平坦に見えていた場所も、一番低いところまで下りると登り返しが目につく。
エメラルドグリーンの紺屋ヶ池。
横目にしながら登り返して翠ヶ池。
おそらく翠ヶ池がもっとも華やかで、眺望としても楽しめる場所。
どこから見るのが水が綺麗に見えるのだろうかと、コースに沿って池の周りを歩く。
入浴剤が入ったかのような・・・
天候がいいからか、どこを見ても景色に目を奪われる。
ゆっくり歩きながら池の景色を楽しみ、大汝ヶ峰の高さを確認しつつ、室堂平へ戻る道を辿る。
見覚えのある景色が目の前に広がり、戻るのが惜しい。
石畳まで戻ってくると、お池巡りの一帯よりも人が多いようだった。
時間は正午近く。
下りる人も、まだ登る人もいる。
下山
お池巡りは50分
室堂平戻り時間を見ると山頂から50分ほどお池巡りを楽しんでいた。
ビジターセンターへ戻り、昼食を取って下りることにした。
昼時でも比較的空いていた。
固い豆腐のカレーを頼んで、少し微妙な味わいを感じながらお腹は満たされた。
あとは登ってきた道を折り返して下りる。
つい2・3時間ほど前にやってきたばかりで、この景色から離れることは名残惜しく、できることなら明日まで過ごしたり、その先の道を歩いたりしたいところ。
天候も自分の予定もそうはならないから、なおさら名残惜しく思うのだろう。
山小屋でのんびりできる山登りって良いね
室堂平を後にして、階段の多い下りに差し掛かる。
登りでは曇りだった空が、青空に変わって紅葉が明るく色が映えて見える。
黄色が鮮やかな大倉山とそこへ繋がる尾根は、やはり今が絶好のタイミングで、標高を下げて角度が変わる度に新鮮な景色に見えた。
景色を見るのって楽しい
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大倉山を見ながら下りる -
三方崩山も見える -
青空になったので赤い実も映える -
紅葉の向こうに白水湖 -
別山からの紅葉も華やか -
黄色が強い -
三方崩山の方向はやはり色が良い -
ぽつぽつが密集した感じの黄色が良かった -
大倉山が一番黄色かったと思う -
笹の上にある黄色が印象的だった -
近づくと木肌の白が映える感じで -
大倉山避難小屋に戻ってきた
大倉山
室堂平から57分
室堂平を後にして1時間と掛からずに大倉山避難小屋まで下りてきた。
若干の登り返しを過ぎて大倉山付近へ。
考えていた以上にペースが速い。
景色を楽しむ余裕もある。
とにかく景色が良かった
大倉山付近から1キロほどのところまで下りた。
おそらく遮る物のない白山山頂を見る最後の場所。
願い続けてやってきた白山を見納めにするつもりで振り返る。
ここからは山影になるところも多く、ブナの森に囲まれて眺望が得られる場所は少ない。
大倉山付近から30分
大倉山を過ぎると木々が多く、樹林帯の九十九折りが続く。
遠くに見える北アルプスの眺めは朝と同じ。
下りていく方向には、間近に白水湖が見えるもののなかなか近づかない上に、数字的にもかなり遠い。
陽射しが高くなって木々に影ができたぶんだけ、森の中の景色も楽しく、木肌の色や形が印象深く見えた。
ただ、なかなか登山口が見えない。
近くに見える湖面は遠いまま。
ブナの木肌って綺麗だなと思って下りてた
室堂平から2時間15分
ようやく平瀬道の登山口まで下りてきたのは、室堂平から2時間以上が過ぎてからだった。
出発前の駐車場と比べてだいぶ車も減っていた。