雨の志賀高原「赤石山」へ
標高2000mを超える峰がいくつも並ぶ志賀高原。
観光地なだけあって歩道が整備され、車で高い標高まで登ることもできるため、気軽に自然を楽しむことができる。
その中で、赤石山は展望台のような眺望が得られる。
南側に樹林帯が開け、眼下には大沼池の青い水面、横手山や志賀山といった志賀高原を代表する山々。
そして赤石山から登山道を繋ぎ、群馬県の野反湖までと、見どころの多いところとなっている。
主な登山道は東館山から花を見ながら歩くことができるもの、硯川から四十八池を経由して忠右衛門新道から赤石山へ至るもの、そして最寄りの大沼池を経由する清水口からの登山道とある。
今回は天候が悪化する予報もあり、安全と体力的な負担を考えて清水口を選んだ。
歩くのも久しぶりだから
清水口は丸池から発哺温泉方面へと続く道沿いにある。
30台ほどの車が停まれそうな駐車場があり、傍らには公衆トイレ。
100mほど舗装の林道を下ると清水口がある。
1年前の台風被害で、林道の一部が崩落し通行ができない状態ではあったものの、清水口からの近道は影響もなく歩くことができた。
すぐに透明度の高い沢を渡り、雨露で泥濘んだ中をゆっくりと登っていく。
傾斜はゆるく、石もどちらかといえば滑りづらく歩きやすい。
木々に囲まれて陽の光が遮られているため、薄暗く、そんな雰囲気も雨の樹林帯では清々しい。
雨が降っているわけではなく、レインコートが必要な天候でもないため、蒸し暑さも感じず、緑の鮮やかさが目につく。
清水口から歩き始めて20分ほど。
樹林帯の近道を抜けて林道と合流した。
ここから大沼池までは車が通れるような広い林道を歩いて行く。
右側の斜面を切って作られた林道は、通行止めになるほど大規模な崩落があり、立ち入り禁止の看板を見ながら状況を知ると、影響の無い林道も落石や崩落が起きるのではないかと視線が向かう。
空は厚く曇り、足元に咲く花も僅かで、林道は特に見るものもなく、ただただ大沼池へと歩く。
退屈。
大沼池
清水口から43分、大沼池の看板の前に着いた。
真っ白な空の下に広がる大沼池は、思っていた以上に青かった。
大沼池の透明度と空の青さが、その青い水面を強調しているものと思っていたところ、陽の光の当たらないガスの中で一層青く見えるようだった。
池を見下ろすようにして、歩道は巻いて行く。
車が通れそうなほどの幅は、人が並んで歩けそうな程度に狭まった。
それでも大沼池の水面に見蕩れながら歩くには十分で、神秘的な雰囲気を感じながら存分に大沼池の眺めを楽しんだ。
霧の大沼池がこんなに良いなんて知らなかった
大沼池の畔に出てから、右手側に池を見ながら平坦な道を歩いて行く。
15分ほど歩くとレストハウスがある池の近くへと続く道との分岐になり、真っ直ぐに赤石山方面へと向かう。
緩やかに下りながら、切り開かれた笹の間を進んでいくと、レストハウスの裏側に回り込んでいくようだった。
そこでまた大沼池と赤石山との分岐があり、赤石山方面へと進む。
ここから先は初めて
つい1日・2日ほど前に刈り払われたように見えるほど、切り口の新しい笹が登山道上に散らばり独特の香りが漂う。
雨露も多く、笹の上から踏み込む足元が少しだけ土の中に沈む感触があった。
刈られた笹を足で掻き分けて緩い上り坂を進む。
大沼池の分岐から5分ほど進むと、段差の高い急な階段があった。
ここから赤石山への尾根まで階段が連続して高度を上げていく。
濡れた土と木段は、見た目に滑りやすく、ところどころで崩れてしまっている部分も目につく。
とはいえ、張られたロープは新しく、これからのシーズンに向けて整備している途中といったところなのだろう。
階段は好きじゃない
いくつもの階段を連続しながら登り、標高が高くなっていくと、周囲の霧も濃くなってくるようだった。
木々の合間からヒンヤリとした湿度タップリの空気が流れる。
いよいよ雨が降り始めるかといった雰囲気も漂う。
ふと木に取り付けられた看板に目をやると、赤い三角の板に「30のうち」という文字。
大沼池と赤石山との間をカウントアップして取り付けられているようだった。
その数字の小ささに、まだ先が長いことが思われ、そこまで距離があったのか?という疑問も浮かんだ。
まだ20もあるのか
平坦さと階段とを繰り返しながら、登山口から1時間半が過ぎたころ、尾根の分岐点に到着した。
忠右衛門新道分岐というこの場所は、野反湖へと向かう赤石山方面と、四十八池や横手山へと、大沼池からの三叉路になる。
東館山から赤石山といった長く平坦な尾根上の登山道でもあり、遠くから見た際に志賀高原の穏やかな景色を形作っているような場所といえる。
樹林帯に覆われているため眺望はなく、ましてや雨が降り出したところで、何も見えるものはなかった。
雨は分かっていたけれど実際降ると嫌だな
雨が降る中の登山道では、足元や身の回りの緑が美しい。
滑りやすくなった段差に気をつけながら、葉に落ちる水滴や苔を見ながら、間近になった赤石山の山頂へ。
雨の中を歩くこと約10分ほど、突然木々が開けた。
赤石山という名を表すかのような赤いガレ場が見える。
そこだけが木がなく、晴れていれば志賀高原を一望するような眺望が得られるのだろう。
階段が作られているが、登りの傾斜は緩やかで歩きやすい。
いったん木々の間に潜り込み、岩の高い段差を登ると、再び赤い地面の上を歩く。
目の前には大きな岩壁がそそり立ち、おそらくアレが山頂だろう。
ただ近づいてみたところで、その標はなく、山頂部では無いのかと先へ進んだところ、5mほどのところで山頂の標を見つけた。
まさかこんな地味だとは・・・
赤石山の山頂
山頂は野反湖と東館山との分岐点になっていた。
腰掛けるような広さも無く、ましてや木々に覆われているために眺望も無い。
手前の岩壁へ戻って、岩の上に足を置いてみたところで、何も見えるものは無く。
おそらく見えるのだろうという想像と妄想だけを広げてみる。
真下に大沼池が見えたはず・・・
ただ雨の樹林帯を楽しむ志賀高原のコースとしては十分で、満足度の高い登山道だった。
赤石山からの下山
下山路の選択肢はふたつ。
来た道を戻るピストンか、東館山へ向かいそこから折り返すように清水口へ戻るか。
距離や高低差を考えるとピストンで戻ることが無難で、天候的にも安全だと思われる。
ただ、7月の東館山はニッコウキスゲが群生し、雨霧の中に浮かぶ黄色い花も魅力的ではあった。
地図には花畑って書いてあったし
後ろ髪を引かれる思いもありながら、悪天候で冒険をするのも気が留めるため、ピストンで戻ることにした。
安全策をとるつもりではあっても、やはり濡れた登山道は滑りやすく、登りで苦労した階段の連続は、雨の泥濘で滑りやすいことが想像される。
大沼池までは気を抜くこともできず、足元に注意しながらの下山路だった。
大沼池まで戻ると、安心感のある平坦な林道が続く。
霧の中の青い水面は、天候が荒れてきたことで、また少し違った印象に変わっていた。
大沼池は良いけれど林道は退屈