秋の一夜山登山
戸隠連峰から峰を繋いだ西の端にある一夜山。
険しい岩壁の稜線が続く戸隠連峰の中で、樹林帯に覆われた穏やかさを感じさせる山容で、まるで独立した山のようにも見える。
山深い旧鬼無里村に聳え、鬼女伝説や遷都などの一夜山にまつわる逸話も伝わる。
登山口は戸隠西岳から繋がる西岳林道から。
品沢高原から戸隠連峰の東側直下を結ぶ林道は、数年前に災害のために通行ができなくなり、登山口までのアクセスが遠く遮られていた。
他に登山口へと向かう道も無く、財又地区から細く曲がりくねった道を向かうのが一般的。
途中、砂防堤の工事で狭い林道には重機や工事車両の往来もある。
その中を車で上り、間近に戸隠の岩肌が近づいて見えてきたころ、品沢高原からの分岐点に着いた。
ここまでの道路でけっこう満足した
分岐からは舗装が無くなり、窪みや盛り上がった石が多い車道が続く。
そのため道端にある10台ほどが停められそうな空き地に車を停めて登山口へと向かうことが薦められていた。
分岐からすぐの空き地に車を停めて準備を整える。
登山口の冷沢までは林道を登っていく。
すぐに一夜山の西側へと続く林道との分岐があり、看板に書かれているとおりに右側の道へ。
帰りは左の道から下りてくるっていうのもイイね
歩きはじめたあたりでは、まだ紅葉も目につくほどではなく、ときどき気の合間から見える山肌の上部で赤い葉がチラリと見えた。
車が通行するには窪みなども多く、大変なところも多いと思われ、だからといって道幅が狭いなどということでもなく、通れないこともないと思える程度だった。
ただ分岐から歩いても15分ほど。
ゲートが閉められた林道の終点、冷沢登山口に到着した。
林道の終わりが早かった
冷沢からの林道歩き
ゲートから先、ここまでの林道と変わらない広さで平坦な道が続く。
ゆっくりと標高を上げてきているようで、周りの木々にも紅葉が目立ってきた。
数日前までの雨のせいか、足元は泥濘んでいるところもあり、左右に折り返しながら山へと近づいて行く。
なかなか登らないな
林道を歩いて山肌の真下まで近づき、大きく道は折れて登りの傾斜がキツく変わって来た。
そこまでの穏やかな林道とは変わり、道幅はそのままでも息が上がるような急斜面。
楓などの木の葉や、落ち葉が敷き詰められたような登山道は鮮やかだった。
登ることは大変でも、見る目には華やかで気持ちが上がるような眺めが続く。
標高が上がって見える戸隠連峰も、山肌の荒々しさが増していくようだった。
坂が急だ
険しい山肌の真下から急登を登って5分ほど。
ここまでの林道のような登山道の終点が終わったようで、少し広く間が開いたところがあり、人の手で溝が作られたり土が盛られたりして、車両の行き止まりを表しているようだった。
斜度も車両が登れるほどとは思えず、重機などが通れそうな幅はあるものの、いっそうの急登が続いくのが見える。
これはなかなか良いのでは・・・
見上げると黄や赤になった葉が多く、曇天ながらも葉の色が鮮やかで楽しめる。
周囲の眺望は見通しが良いとはいえないものの、間近に見える山肌の鮮やかさも楽しめた。
5分ほど登ったところでの「山頂まで500m」の看板が建てられていた。
大理石の立派なもので、人工物が建っていたことで、まだ先の山頂が身近に感じられる。
真っ直ぐに続いていた急登を折り返すと、細かく右左へと登山道が曲がる。
幅はそれまでより細くなったようで、登りの角度も今まで以上にキツく感じられる。
キツい
残り500mの標から10分ほど登ったところで、山頂が近いような雰囲気で頭上が明るくなった。
崖のように切り立った尾根上に出て、周りを囲んでいた木々は北側が開けて景色が見えていた。
中西山や堂津岳、戸隠西岳から西側の稜線など、そこを彩っている紅葉が美しかった。
見渡す景色や真下に見える様子から、その場所は、ちょうど真下から山肌を見上げていたところだと分かった。
なかなか良いぞ
木々が開けたところから、山頂まではすぐ。
前方を見ると、こんもりと盛り上がったところが見え、木々からのぞく光がいかにも山頂という雰囲気を感じさせる。
そこまでの急登で傷んだ太ももが重く、景色にも満足してしまったところで、わざわざ山頂へ行かなくても良いのではないかという誘惑が浮かびながら、車を停めて58分が経ったころ、一夜山の山頂に到着した。
やっと着きました
一夜山の山頂
一夜山の山頂は木々が開け、周囲の眺望を楽しむことができる。
中心に鳥居と、石造りの祠が置かれ、鬼女紅葉伝説の記念碑と山頂標があった。
間近に見える北アルプスは、西側の木々が茂っていたことや雲が多かったもあり、白馬乗鞍が確認できるくらいだった。
山頂からの眺望で北アルプス以上に存在感があったのは、奥裾花に連なる山々だった。
高妻山の西側にあり標高は劣るものの奥地に聳える大きな山容の堂津岳、なだらかな稜線を繋ぎ奥西山、中西山、なだらかな黒鼻山などといった、なかなか意識して目にすることのない眺望が楽しめた。
奥裾花を見るなんて、なかなか無いと思う
雲の多い天候になったため、戸隠連峰の西岳や飯縄山を見渡すことはできなかったものの、鬼無里周囲の里山を見渡すことができた。
山頂でしばらく時間を過ごしていると、麓の小中学校からチャイムが聞こえ、里から近い山という雰囲気も感じられた。
下山
一夜山からは登ってきた道を折り返して下りていく。
登りで苦労をした坂道は、下りでも大変で、そう大したことのない山という印象でやってきたものの、意外と登るし下りるのもそれなりだと感じた。
気軽にきたつもりでいると、思いがけずしっかりと登らせられるというようだった。
登るの大変だったけど、下りるのも大変だ
ただ一夜山の紅葉は、見上げながら登るよりも、見下ろして歩いたほうが美しく見え、時間が経過したからか戸隠を彩る紅葉も鮮やかに見えた。
紅葉が楽しめたのは、登山道のなかの僅かな時間ではあったものの、季節ならではの景色で満足度の高いものだった。
良い山だと思います