黒菱平から登る夏の唐松
唐松岳といえばゴンドラやリフトを乗り継いで、八方尾根の高い位置からスタートできる北アルプスの入門的な山というイメージがある。
その行程も序盤の八方池までは木道が整備された手軽なトレッキングコースといった雰囲気。
八方池を過ぎてからようやく登山口に着いたと言える。
その八方尾根もゴンドラに乗るか、乗らずに車で標高を稼ぐ事ができる。
黒菱ラインという林道を通ることで、八方尾根のゲレンデの中ほど、標高1600m付近にある駐車場まで行くことができる。
ただこの駐車場が使えるのは無雪期だけ。
雪が降ればゲレンデに変わるため、限られたシーズンのみとなる。
登山を楽しんでいると道具のほかにも交通費が嵩むところ。
唐松岳は手軽なだけに乗り物による交通費が他の山より嵩む。
そこで黒菱ラインが使われ、駐車場が賑わう状況が生まれる。
車中泊は行わないようになっているが、夜中から次々と駐車場が埋まり、明け方には停める場所がなくなるケースも多い。
駐車場から黒菱平へ向かうリフトですら、夏季は明け方から動き始め、朝4時前からアナウンスが響く。
リフトに乗って黒菱平へ
黒菱の駐車場ではレストハウスのトイレが開放され、朝が来る前から快適に過ごせるような配慮がされている。
8月下旬、リフトの営業開始は4時30分からで、その整備と安全確保のためのアナウンスがスピーカーから聞こえる。
前日から天候は良くなく、いつ雨が降り出しても不思議ではないほど。
ただ遅い時間になるほど安定した天候になるようだった。
それにも関わらず、まだ運航を始めていないリフト乗り場に大きなリュックを背負った登山者が並ぶ。
どこへ行くのだろう?
どんどん出発して行くひとたちを横目に、夜が明けるのを待ち、すっかりひとけがなくなったところで黒菱平へと向かうことにした。
明け方に賑わっていたリフト乗り場には誰も並ばず、めいっぱいに停まると思っていた駐車場には空きがあった。
駐車場から黒菱平へと登るには黒菱第3ペアリフトに乗る。
往復で1700円。
高低差もそう高くはないのでゲレンデを歩きたいところではあるものの、ゲレンデ内は立ち入り禁止で乗車が必須。
誰も並んでいないリフトに乗って、まっしろな黒菱平へ近づいてく。
すっかり冬の景色で見慣れた黒菱平。
夏の草木が茂った様子は記憶にも無く、思っていたよりも狭く寂れた雰囲気を感じる。
時期は外しているし天気もアレだし
リフトを下りた近くにある鎌池湿原へ。
入口で荷物を整えて石畳の中へ入っていく。
大きく曲がりながら斜面へ向かうと、右へ左へと折り返しながらの登り坂。
雨と雲の湿気で石で泥濘むところもあり、乾いている石を見ても滑りそうな雰囲気が漂う。
左右には盛りを過ぎた花が咲き、陽が射していれば華やかなのだろうと思いつつ、白い空と草とリフトしか見えない登り坂を折り返して行く。
20分近く登ったところで、雲の中に霞んでリフトの降り場が見えた。
とくに楽しめるものも見えない登りの中で、ようやく見えたという印象だった。
八方池山荘
リフトを下りたところは八方池山荘。
ここでリフトを下りた観光客と登山者と合流し、一気に人が増える。
晴れていれば左手に五竜岳、右手には白馬三山という贅沢な眺望が楽しめる尾根の登山道。
今回は足元しか見えない。
天気がイマイチでも人は多い
木道の左側通行を守り、人の流れに合わせて登っていく。
先を急ぐひとはすでに登ってしまったようで、歩き慣れない人が多いなかで、追い越さず流れに合わせて登るのは自分自身でも気楽だった。
天候は遅くなるほどに回復傾向で、早く登ったところで見える景色は無いことも慌てなかった理由のひとつだった。
そもそも出発を遅らせてるし
ときに行列に後ろについたり、先を譲ってもらい足早に木道を歩いたりしながら八方山に到着した。
山頂部は尾根のなだらかになった場所という程度の印象。
そこが八方山だと知らなければ、山頂とは思わないような形。
広い登山道が先へ続いていることを見ても、やはり山頂部という印象は無かった。
避難小屋小屋のような小さなトイレがあり、ケルンが建てられている。
八方池山荘からふたつめのケルンということで第2ケルンと名付けられているケルン。
この時点ですでに周りは雲で真っ白に覆われている。
八方池はもうすぐ。
少し登った先に見えるケルンを過ぎれば八方池が見える。
八方山から階段のように整備された石の段差を登り、ケルンまでやってきた。
八方池
八方池の手前にある八方ケルン。
黒菱平からここまで52分の時間が掛かった。
夜遅くの到着から、昂揚感と睡眠不足と空腹感があったため、いったんケルンの影に腰を下ろす。
間近にとても早く流れて行く雲があり、青空が見えそうで見えない。
持ってきたパンを食べて少し景色を楽しんだあと、荷物を背負って先へ。
右には八方池へと下りる道があり、それを横目に見ながら尾根の上を歩いていく。
雲に覆われた白い景色は変わらない。
八方池が見える程度には眺望があり、その先で湧き上がってくる雲の動きに目を奪われた。
そもそも今日は八方池を見る天気じゃないから
八方池が見下ろせる八方ケルンまでは1時間。
池からの眺めは期待をしていなかったものの、この雲の動きはおもしろく、白馬三山が見えない眺望はまったく気にならなかった。
八方尾根登山口
八方池を過ぎると登山口がある。
すでに山に登っている気分にはなっているものの、登山口はどうやら八方池を過ぎてからのようだった。
ほぼ木々のない尾根を歩いてきたところ。
登山口の案内を過ぎると徐々に木々が増えてくる。
木が増えるのに合わせて花も増え、間近なところの視界が華やかになった。
八方尾根といえば白馬三山と鹿島槍なのだけど、意外と花も良いよねって感じの一帯
八方池までの歩きやすい斜度の登りと木道ではなく、登山道らしい起伏と段差が続く。
それでも登山道としては整備されてだいぶ歩きやすい。
尾根の肩のような斜面を横切るようにして、木々の間を登っていく。
斜面に花が咲いているところを見下ろすと、花畑のように見え、それもまた意外で楽しめた。
扇雪渓ではまだ雪が残ってヒンヤリとした雰囲気があった。
まあ、立ち寄らないのだけど
扇雪渓のあたりでは、雪のせいか何本もの木々が登山道の上に迫り出している。
頭を打ちそうな高さのものも多く、ピンク色のテープが長く垂れていた。
この雪渓付近が八方池と丸山ケルンの中間地点にあたるという。
扇雪渓から斜面を登り、木々の中を過ぎるとハイマツに囲まれた。
先には小高い丘のようになっている地形が見えた。
斜面を横切るようにまた尾根の上へ戻るように登山道は続いていく。
丸山ケルン
黒菱平から2時間が過ぎ、丸山ケルンに到着した。
ここまでで行程の6割ほど。
真っ白な雲に囲まれているせいか、ここで足を停めているひとはほとんどいなかった。
晴れてれば腰を下ろしてるひとの一人くらいは。。
八方池のあたりでは、厚い雲の中で見えることのなかった不帰のキレットが見える高さまできた。
山肌を眺めていると、あいかわらず湧き上がる雲が多い。
これはこれで良く、眺めていると時間を忘れそうだった。
丸山ケルンから尾根の上の登山道を歩いていく。
10分ほど登ったところで尾根が細く変わった。
足元が切れ落ちたことで景色が広がり、足を停めているひとも見られた。
高度感を持つほどに細いわけでもなく、不安定さもないため、景色を見るにはちょうど良いポイントだった。
景色を見るにはちょうど良い場所だけど、その景色が雲でモワモワしてる
尾根の周囲に見える植物はハイマツばかりになり、丸山ケルンより下で見られたようなダケカンバや花はまったく無くなっていた。
本格的に雲に覆われたようで、なんの景色も見えない。
ただ、丸山ケルンから15分ほど登ったところで登山道が塞がれ、尾根の上を歩くように登山道が作られていた。
まるで積雪期に尾根伝いに登る登山道と同じように登山道が作られているようだった。
きっと崩れたのだろうな
夏の唐松岳は干支ひと回りほど昔。
冬季には来ていても夏の道とは景色も歩く場所も違っていた。
どこかが変わっていても、知る機会も無かった。
ただ歩きやすいように手摺りが付けられ、階段が作られているところは、しばらく前から尾根の上を歩くコースに変えられていたと察した。
歩きやすいと考えていた唐松岳は、ここにきて北アルプスの岩稜帯のような雰囲気。
雲に覆われて景色が見えないから、なおのことそう感じるのかもしれない。
ときどき高い段差と、緩斜面と急斜面を繰り返して尾根の上を進む。
左右は細く切れ落ち、特に右側の斜面は深く高度を感じるようなところもあった。
景色が見えないから雰囲気で山頂近くにきたことを察し、見覚えのある地形から、唐松岳山荘が近いと期待を込めた。
細尾根から岩を横切り、高い段差を越えると、何も見えない真っ白な風景と下り坂が見えた。
唐松岳山荘の上に出たのだろう。
見覚えがある
ここまで2時間38分。
左へ行けば唐松岳山荘や五竜岳へ向かう。
右は唐松岳の山頂といったところ。
冬はここで腰を下ろしたと思い出し、景色も見えない中、山頂へ向かうことにした。
雲が流れる中で、うっすらと見えてくる山小屋の屋根。
富山の方から雲が流れてくるせいか、山で雲が止められて長野県側の崖下はよく見える。
鞍部まで下りて、山頂へ向かっての登り返し。
北アルプスらしい黄土色の土と、大きな石の段差。
10分と少しの登り坂だった。
唐松岳山頂
黒菱平から2時間55分。
唐松岳の山頂に到着した。
八方池まではたくさんの人がいて、そこからは多いながらも、そう気にするほどではないと感じていた。
でも山頂に来てみて、やはり人は多かった。
山頂標の写真を撮るにも順番を待ち、どこにいても人が視界に入る。
そのうえ、景色は雲の中で見えない。
一瞬、雲が切れて大空が見え、このまま富山側のどこかの山が見えるかと期待をしたが、期待ができたのは本当に一瞬だけでそれだけだった。
唐松岳山荘へ
唐松岳で人の多い山頂の雰囲気を楽しんだあと、唐松岳山荘へ向けて山頂を下りた。
太ももにも股関節にも辛い登りも、下りは足早に進んで行く。
3分ほど下りたところで人だかりができていた。
この天候と人だかりで期待をして近づいたら、ライチョウが数羽。
ハイマツと岩の間を彷徨っていた。
大声で喋りながら近づく人とかやめて欲しい。
気持ちが大きくなるのは分かるけど。
動物を見るときは、ある程度の距離をとって、身を屈めながら観察をしたいところ。
写真を撮りたい気持ちも共感できるところとはいえ、こちらから近づいて怖がらせては距離を詰めることもできない。
鞍部まで下り、唐松岳山荘へ向かう。
足元には盛りを過ぎて枯れ始めたコマクサがいくつか咲いていた。
唐松岳山荘
山頂から下りて14分ほど。
唐松岳山荘には人が多かった。
ちょうど昼に近い時間帯ということもあってか、玄関で受付をしている行列ができ、外で腰を下ろしているひとも多かった。
座る場所を間違えると、いろんな香りが漂ってくるのは山小屋らしいところ
八方尾根を下りる
唐松岳山荘からは、登ってきた登山道を下りる。
細尾根の登山道は段差が高く、登りでも苦労をしたところは下りでも気を遣う。
だいぶ多く、思っていたのと違う場所があって、思い込みじゃなくてそのときの状況に合わせたいなと思いました
下りは比較的、気持ちの余裕があり、登りで見逃してきた花を良く見ながら下りた。
どこで多く咲いていたのか、どんな花があったのかというぐらいは、息を切らせてチェックをしてきた。
見覚えがあって名前の分からないものばかりの花が、期待していた以上に多く見られた。
八方池まで下りて来ると、午後になっているにも関わらず、登ってくる人も見られた。
やはり観光地
リフトが近づくほどに、黒菱平へ下りるのが億劫になってくる。
1本分のリフトに乗って下りたい気持ちが高まりつつ、乗って下りていく人たちを見ながら、鎌池湿原への九十九折りを下りた。
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下山後に立ち寄った温泉
白馬八方温泉 おびなたの湯
猿倉荘から下ること5分ほど。白馬岳の登山口から最も近い場所にある温泉。浴室は露天風呂のみ。積雪のある時季は雪を見ながらの入浴も楽しめる。駐車場は約20台。温泉の入口には東屋があり、腰を掛けて休憩ができる。
下山してきてすぐに汗が流せる距離なのでとても便利です。ただ近いだけに混み合うこともあり、とくに洗い場は3人分しかないので待つこともあります。
また男湯に限ってのことかもしれませんが、洗い場は排水の能力が低いようで溢れてしまっていることもあり、洗い流したお湯に足を入れながら身体を洗うようなこともあります。
ベンチのある東屋は、アイスクリームや冷たい飲み物を楽しむのにはちょうど良いですが、アブが飛んでいることもあるので注意。
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