大沼池から望む志賀山へ
広い志賀高原で最も賑やかなエリアといえる蓮池周辺。
山ノ内町から国道を上り、奥志賀高原と横手山方面との分岐するあたりで志賀山が見えてくる。
蓮池からはまだ高く、いかにも険しい山の様相で、厚く緑が茂っているあの山へまさか登ることなんてできるのだろうかと思える。
「北信州もみじわかばライン」を奥志賀方面へ。
トンネルがゲレンデの下を潜り、トンネルのなかを大きくカーブして出口でも大きく曲がる。
するとすぐに清水口の駐車場が見え、つい数分前に蓮池から見ていた高さとは思えないほど間近に志賀山が見える。
道から見る志賀山はほんとに高い
清水口と志賀山との高低差は400mあまり。
途中、青い水面で有名な大沼池を通る。
この「池めぐりコース」は志賀高原のトレッキングコースの中でも人気の高いもののひとつで、清水口から大きくカーブを描いて大沼池を過ぎ、四十八池へと向かって硯川へと抜ける。
時間と体力さえあえれば木戸池や田ノ原湿原などもあわせて周回できないこともないコース。
平日にも限らず駐車場にはたくさんの車が停まっていた。
混んでる
駐車場に空きを見つけて車を停め、数百メートル離れた登山口へと向かう。
林道の途中で行われている工事のためのガードマンが「大沼池はこちら」と声を掛けて林道へ誘導しようとするのを無視して近道の登山道へ。
歩きやすい林道も悪くない。
ただ往路ではだらだらとした登りは退屈だった。
ガードマンさんに「そっちじゃないとダメですか?」って聞いてしまった・・・
清水口から緑の中へと入って行くと、すぐに透明度の高い沢を渡る。
何度訪れてもここの水面には目が留まる。
底には大きなパイプが敷かれているのが見え、魚が泳いでいる様子は無い。
この沢はいつも眺めてしまう
まわりには背の高い笹が多く茂り、そういえば今年はクマと出遭うことが多いという話題を思い出した。
志賀高原はツキノワグマが多く棲む場所で、その中を歩き回っているのだから、そもそも出遭うことも珍しくはないのだろう。
登山道らしく露出した石と、前日までの湿り気で土が泥濘む。
久しぶりの登り坂と段差は膝に堪える。
キツい斜面ではなくても気になるところが多すぎる。
しばらく登っていくと斜面はなだらかになった。
歩きやすい角度と広さ、まわりの緑が深い。
雰囲気は八ヶ岳とはいかなくても、足元に茂っている苔や古木にはホッとする。
けっこう雰囲気イイと思います
とはいえ、歩き出しの膝の違和感を持ちながら、早くこの先の林道に合流したいと思えた。
なだらかでも距離は長い。
志賀山への登りも短いながらもキツい。
これまでにこのコースを歩いた経験から、どれくらいの時間で歩けるのかという想定はできるものの、想定の通りに歩けるかという不安もあった。
歩き出しから19分
歩き出しから19分が過ぎたころ、林道と合流した。
入口でガードマンの言うとおりに歩いてきたら、この林道をダラダラと上ってくることになっていた。
どっちが早いのか、楽なのかも気持ち次第だと思い、登山道らしい近道を歩いてきたものの、膝に違和感があるのなら林道も良かった。
意外と混んでる
林道を歩いていくと、擦れ違うひとや前を歩くひとが多い。
平日のこんな時間に・・・と思いながら追い越していく。
途中、工事をしているところがあり、関係者の軽トラックが林道を下りていった。
朝9時にガスや酸素濃度を測ったという報告が掲げられているのが物々しい。
施工会社や工事内容を見たものの、さして興味も無かったせいか忘れてしまった。
きっと何かが崩れているとかなのかなと。。。
大沼池
林道と合流して20分
林道と合流して20分ほどで大沼池に到着した。
ここでも工事をしているようで、大きなゲートとコンテナハウスが建てられ、ガードマンが立っていた。
その先にある大沼池の畔では写真を撮っているひともいる。
にしても、色が濃い
天気が良いせいか、今まで見た大沼池よりも青く感じられ、入浴剤のようにキツい色に見えた。
近づいて見ると水深の浅いところは透明度が高く、そこまで激しい色をしているわけでもないようだった。
ここでは足を止めず、レストハウスまで行ってから池を眺めることにした。
池から少し登り、大沼池を巻くように遊歩道を歩いて行く。
なだらかで段差も少なく歩きやすい。
途中、木々が開けたところでは大沼池が一望でき、少し足を止めて池の青さと森の緑をじっくりと眺めた。
10分ほどで赤石山との分岐点に着いた。
まっすぐに進むと笹の間を抜けて赤石山へと一気に高度を上げて行く。
今回は右へと曲がって大沼池へと下りていく。
今日の天気は赤石山も良いんじゃないのかなと思った
ここまで57分
まるで砂浜のような砂礫が見え始め、橋を渡ると広々としたレストハウスの前に出た。ここまで57分、思っていたよりも少し時間が掛かっているようだった。
レストハウスは営業してなかった
大沼池の畔から遊歩道を歩いてくるなか、水面はとても濃い青に見えた。
それが不思議とこの場所では薄く透明度のある水面に見える。
岸から離れて行くに従って急激に青が濃くなっていく。
その先には登ろうとしている志賀山。
夏の晴れた日に来るのは初めてで、目に見える何もかもが濃い色をしていた。
予想よりも時間がかかっていたこともあり、レストハウスの前では景色を楽しむ時間も短く、早々に先へ進んだ。
いつもより遅い感じだから先を急ぎたい
大沼池のレストハウスから先は、それまでの林道のような広さではなく、人が並んで歩ける程度の遊歩道。
地面も踏み固められた感触ではなく、場所によって泥濘む柔らかな印象。
階段も多く、ぐんぐんと高度を上げて行く。
大沼池の中に建つ鳥居を過ぎると、右手側の笹藪の向こうに見える大沼池は意外なほど低く位置に見える。
けっこう階段がキツい
なだらかに進んでは、階段で一気に高さを稼ぐような歩道が続く。
くねくねと折れ曲がりながら標高が高くなり、北側に遠くの山々が見えてきた。
最奥でひときわ存在感のある岩菅山と、その手前に並ぶ寺子屋峰や東館山。
今日の青空のおかげで、きっと赤石山からは見る大沼池が存在感が発揮していただろう。
さらに進むと笹の間からは志賀山がチラリと見えるようになった。
厚い緑に囲まれて眺望はほとんどなく、木陰のなかを登っていく。
階段となだらかな登りを歩き、大沼池から40分ほど進んだところで四十八池との分岐点に着いた。
志賀山神社の鳥居が建ち、まっすぐに進むと裏志賀山を経由して志賀山。
左には四十八池があり、遊歩道の手前に置かれたベンチでは腰を下ろしている人も多かった。
そんな人たちを横目に見ながら、志賀山を目指して本格的な登山道へと進んで行く。
四十八池も楽しいのだろうな
鳥居からは高い段差と幅の狭い登山道を進む。
そこまでなだらかに登ってきたのと対照的に一気に標高を上げるような角度で雰囲気が一変する。
木々が開けたところでは周囲の眺めが良く、遮るもののない眺望は岩菅山や横手山、笠岳などの志賀高原の山々が一望できるようだった。
なかでも眼下に四十八池を見下ろしながら、その先にある鉢山と横手山の眺めは趣があった。
四十八池越しに見る横手山って意識したことが無かったと思う
一気に登る登山道に、ときどき足を止めて休憩を入れる。
半ばぐらいからロープが張られ、崩れやすく脆い段差の登山道に変わる。
木陰が少なく陽射しを背中に受け、暑さを感じながらの急坂。
間近なはずの裏志賀山の山頂部が遠い。
辛い
志賀山神社の鳥居から15分
志賀山神社の鳥居から15分を過ぎたころ、ようやく裏志賀山と志賀山との分岐点に着いた。
いったん山を下りて登り返すのが志賀山、少し登った先にあるのが裏志賀山の山頂部。
どちらかといえば裏志賀山の方が眺めが良く、しかも標高もわずかながら高い。
いちおう行っとくか・・・
裏志賀山からの眺めは何度か見ているので、あらためて見る必要はないと思いつつも、「晴れているのだし・ここまで来たのだし」という思いもあり、裏志賀山へ向かうことにした。
なだらかで眺めの良い裏志賀山の山頂部。
眼下に見える大沼池の青は濃く、その先に広がる赤石山の稜線。
岩菅山と裏志賀山も見える。
振り返ると横手山。
ドロドロ過ぎるだろうコレ
木々が開けて陽の射す暑さとは対照的に足元が悪く、足を踏み入れるとソールがそっくり埋まるほどに泥濘む。
泥が跳ねるのも、足を取られるのも嫌で、そっと足を置いてはゆっくりと足を引き上げる。
足早に通り過ぎたいところではあるものの、だからといって急いで汚したくもない。
1時間57分
すぐに神社の建つ裏志賀山の山頂に到着したものの、想定外の足元の悪さは長居したいところではなかった。
裏志賀山の山頂の先、笹原が広がる斜面になって眺めの良い場所になっている。
ただロープが張られて立ち入りは禁止されているようだったので、あえて先へ進むことはせずにチラリと見るだけに留めた。
入っちゃダメってところに無理して入る理由は無い
歩き始めてから1時間57分、しっかりと時間を掛けて辿り着いた印象だった。
目指す志賀山は分岐まで戻って裏志賀山を下りる。
木の根が張り出した滑りやすい下り坂で、木々と笹が斜面を覆っている。
左側の眼下には黒姫池が見える。
あの池の畔へ向かう道は無いようで、登山道上から眺めるだけ。
ただ空を映す眺めは志賀山一帯でも目を瞠る場所のひとつといえる。
派手では無いけれどキレイだと思うこのあたり
鞍部まで下りると急な登り返しが始まる。
鮮やかな黄緑の笹が広がって見える。
足元には大きな石が多く段差が高い。
まるで階段のように太ももを上げながら急斜面を登るといったん急な勾配は緩くなった。
1・2分の緩斜面があり、ふたたび山頂へ向かっての急斜面に変わる。
そう長い距離ではないものの、ここにきての勾配のキツさと登山道の狭さ、段差の高さは堪えるものがあった。
足が辛い
志賀山の山頂
登山開始から2時間13分
登山開始から2時間13分、志賀山の山頂に到着した。
駐車場でも車の数が多く、林道を歩く中でも人が多く感じられた。
志賀山へ登る途中、山頂でも擦れ違う人が多く、静かに緑の中に埋もれる場所というイメージを持っていた志賀山が、意外にも人の賑やかな場所になっていた。
けっして眺望が良いわけではない志賀山など来ずに、下にある地塘で楽しんだ方が景色を堪能できるんじゃないかと思いつつ。
腰を下ろして水を補給する。
特に見たい景色があるわけでもなかったので、早々にリュックを背負い直して下りることにした。
このまま登ってきた道を戻るか、硯川方面へ下りて四十八池を越していくか。
どちらも時間は大きく変わらないだろう。
裏志賀山へ登り返すよりは下りる一辺倒でいきたい。
裏志賀山の登り返しが嫌で・・・
硯川方面へ志賀山を下りることに決め、山頂からなだらかに歩いて行く。
数分のところで山頂標が建ち、そこからは周辺の山々が見える。
ただ決して眺望が良いわけではなく、なんとなく木々の間から景色が見えるという程度。
麓の山ノ内町が見える。
なるほど
下山
木々に覆われ、なだらかな山頂部からは急激な段差を下りていく。
湿度の高い地面は滑りやすく、石が埋まった段差は高い。
途中、足を滑らせて尻餅をつきかけると、かなりの段差から身を投げてしまいそうだった。
乾いた地面を見つけながら、張り出した木の根に気をつけながら、高度を下げていく。
途中、志賀山の東側にある、お釜池が木々の中に埋もれるようにして見えた。
あの池に近づくには道が無い。
お釜池が見えたところで、この激下りもあと少しで終わると思えた。
下りていくほどに木々に覆われる場所も多くなり、見えるのは地面と森ばかり。
早く平らな道が歩きたい
山頂から25分
山頂から25分ほど、硯川との分岐点に到着した。
狭く段差の高い登山道は終わり、歩きやすい遊歩道に戻ってくることができた。
あとは大沼池を目指して歩いていくだけ。
まずは四十八池を目指して緩やかに登っていく。
硯川の分岐から15分
硯川の分岐から15分ほど歩いていくと、左側に志賀山が見え、過ぎていくと四十八池が見え始めた。
木々の間から覗く四十八池は趣があって良い。
すっきりと見えるよりも志賀高原らしさを感じられるように思える。
イイ
四十八池
四十八池の手前では横手山や赤石山へ通じる分岐があり、公衆トイレが建っている。
いよいよ四十八池へ入ろうというところには東屋もあり、志賀山から下りる滑りやすさを思うとこのあたりは人工物だらけで安心感が違う。
四十八池は木道の上を歩いて行く。
木道のところどころで損傷が激しく、乗ってはいけない板には印が付けられていた。
そこを避けて2本の板を渡っていくものの、歩幅が合わず、ましてや景色に目を向けるような気が抜けない雰囲気だった。
晴れた四十八池はこれまでにも見たことがあり、点在する地塘越しに見る志賀山と裏志賀山は志賀高原らしい景色のひとつ。
ただ絶好の景色だったのは梅雨のワタスゲが綿毛を点ける季節。
霧のなかに浮かぶ緑と地塘、水面に映るワタスゲが美しい。
今まででは7月に来たのが一番良かったかも
この夏空もあと40日ほどで黄と赤の草木が広がる景色に変わる。
それも志賀高原と四十八池を堪能できる待ち遠しい季節。
5分ほど掛けて木道を渡りきった。
清水口へ戻る
四十八池を渡るとすぐに志賀山方面の木道と合流する。
登りではここで裏志賀山へと向かった。
大沼池へ向かって同じ道を戻っていく。
繰り返しの階段も、下りていくのなら登りほどの辛さもない。
ただ、木々の間から大沼池が見えると、意外と低い位置にあるように見えて、その距離感に力が抜ける。
意外と遠い
四十八池と志賀山の合流地点から30分ほど掛けて大沼池まで戻ってきた。
だいぶ陽の向きが変わって水面がキラキラと見える。
予定よりも時間が押していることもあり、景色を見るために近づくこともなく先へ向かった。
大沼池の畔を歩き工事が行われている林道へと戻ってきた。
もう見るべきものも、楽しみにして見るものも無く、早く下りてしまいたい。
時々アサギマダラが舞っているのが見え、目の前をパラパラと羽ばたいていくのと、しばらく行き先を眺めていたいようだった。
最近覚えた蝶々の種類がアサギマダラ