霧ヶ峰の周回
長野県の中央部、諏訪地域と東信地域を隔てる長大な尾根のなかに霧ヶ峰がある。
どの地点が霧ヶ峰の山頂ということもなく、いくつもの峰や湿原から形作られている高原といったところ。
それだけに登山よりも観光やハイキングのイメージが強く、登るためにわざわざ霧ヶ峰を訪れるひとも少ないだろう。
本気でトレランをするひとも観光客の多いところは来ないと思う
夏の花々や冬季の雪原など、季節ならではの目を惹くものはあるにしても8月は賑やかさの盛りを過ぎている。
やはり夏の霧ヶ峰といえばニッコウキスゲが見たいところ。
7月だけの景色は8月では跡形もなく、むしろ予報では雨が降り場合によっては雷が鳴るという、見るものが無ければ天候にも恵まれない、何のために行くのか分からないタイミングだった。
スタートは和田峠。
霧ヶ峰の北部に位置し、三峰山からの鞍部に位置する。
もっとも北の峠から細かくアップダウンを繰り返して鷲ヶ峰へ登り、八島湿原から車山へ向かい、霧ヶ峰の最高地点を経由して和田峠へと戻ってくる行程。
予報よりも早く雨が降ったとしても、後悔することの無さそうな景色と、雷が鳴っても逃げ場があることを意識した。
和田峠
朝の和田峠。
すでにバイクの音に混じって、ハイキングや本気のトレランのひとたちが道路を歩いている。
さすがに和田峠には観光で訪れた雰囲気がなく、霧ヶ峰らしさも感じられない。
和田峠茶屋が建つ広い駐車場に車を留めて手早く準備をする。
空腹で戻ってきてもすぐにお腹を満たすことはできそうだ。
トイレは無い
駐車場から少し車道を上ると、左側に霧ヶ峰へと続く入口がある。
美ヶ原まで尾根をなぞって続いている分水嶺トレイルの看板もあり目印にも困らない。
ガードレールの切れ目から森の中へ入ると、緩やかな登りが続いていく。
数分で木々の中を抜け、間近に鉄塔を見ながらの急な登り。
登り切るとテレビやラジオのアンテナのような鉄塔があり、そこへ通じるための道路が見えた。
人工物はわりと多めだと思う
アンテナを見たあとは、登ってきた斜面を下る。
高低差にして100mもないほど。
ただ周回して帰ってきたときの最後にこの登りは嫌だなと思いながら下りていく。
下ったらすぐの登りで、短いながらも急な斜面が堪える。
登ったところでは鉄塔が建ち、木々が開けていた。
相変わらず雲が多く、思っていたとおり景色は楽しめそうにもない。
見るところもなく足元を見ると、背の低い笹が多く生えていた。
登ったり下りたりがけっこうキツい
5分や10分ほどでの細かなアップダウンを繰り返す。
木々に囲まれて、ときどき開けた景色は雲と霧でなにも見えず、登り切った先の景色も知れていると思うと、苦行のようにも思える霧ヶ峰。
和田峠から歩いてみたいと思っていたのは自分ではあるものの、このコンディションでここを歩かなくても良いだろう。
30分ほど歩いて、いよいよ鷲ヶ峰へ取り付く急な斜面になった。
鷲ヶ峰は八島湿原の北側に位置する峰で、霧ヶ峰のなかでは外れた存在感。
登山らしい登山道が歩け、北側から霧ヶ峰が一望できる。
雲に覆われて先が見えない登り下りも、時間的にそろそろ鷲ヶ峰に近づいているはず。
風で雲が流れる霧ヶ峰も、景色としては楽しめそうだった。
この先に楽しみにするものがないと登山としては辛いだけだと思いました
ただ、斜面はなかなかの急勾配。
柔らかく脆い段差は、よく知られる霧ヶ峰の印象からは、まったく考えられない難路。
しかも、この後に降ると予報されている雨の影響なのか、とても湿度が高く、加えて樹林帯の中は風も通らず暑さがこもる。
きっとアルプスや八ヶ岳へ行っていたら、段差や急勾配がこれ以上に長く続いていたはずと思うと、霧ヶ峰で音を上げてもいられない。
ただ先に待っている景色に心が揺さぶられるかどうか、アルプスと霧ヶ峰では期待値が大きく違って、足取りへの影響も大きい。
まるでスチームサウナです
和田峠から50分
木々に囲まれた急登を登り、和田峠から50分近く経ってやっと景色が開けた。
なだらかになった斜面の向こうには山頂標。
蒸し暑さに苦労しながら、鷲ヶ峰に着いた。
やっと
鷲ヶ峰
鷲ヶ峰は霧ヶ峰の北端の峰。
天候が良ければ美ヶ原や、和田峠を挟んだ先にある三峰山が見え、鉢伏山も大きく見える。
麓の下諏訪町や諏訪湖も見渡せる好展望の峰で、八島湿原からなら高低差も少なく登りやすい。
ただ和田峠からは想像していたよりも大変な行程だった。
なによりも蒸し暑い。
思っていたより急だしアップダウン多いし暑いし蒸してるし
雲に覆われて見えるものも見えず、楽しめる眺望も無いため、水を入れて早々に先へ進んだ。
山頂部から少し下りると、尾根の肩を歩くようななだらかな登山道が続く。
このあたりではウグイスが賑やかに鳴き、足を止めて声の方を見ると姿を見ることができた。
ちゃんとウグイスの姿を見たことある人ってどれくらいいるのかな?といつも思う
僕は知らなかったから
鷲ヶ峰の山頂部から八島湿原へ向かう下りの登山道は、今回の行程でもっとも眺望が楽しめるポイント。
ウグイス探しに飽きたところで先を見渡す。
尾根の先には少しだけ高くなったピークと八島湿原。
八島湿原を見下ろし、先には車山をはじめとした霧ヶ峰らしい峰々を見渡せるはずの小高いピーク。
流れていく雲が幻想的に見え、出発前に思っていた雨はまだ気配が無さそうで、むしろ湿原には陽が射していた。
晴れてるじゃないか
鷲ヶ峰の尾根は木々が少なく、雲がなければ眺望の楽しめる場所。
霧ヶ峰らしくない急峻で尖った尾根の斜面を見ることができる。
今日は雲が流れ、景色が遮られるからこその美しさもあるようだった。
カッコ良かったよ鷲ヶ峰
しばらく進んで見えてきた八島湿原の駐車場は、朝早い時間にもかかわらず車が停まり始めていた。
湿原の方から登ってくるひととも擦れ違う。
こんなに早くからどうして?と思い、聞いてみると鷲ヶ峰に登ったら折り返して霧ヶ峰を周回するのだという。
きっとそれがオーソドックスな楽しみ方だろう。
見知らぬ人と話してしまったけれど、きっと僕は汗だくのテカテカ顔で無精髭でヒドかったろう
尾根から少し下りるとすぐに木々が身の回りを囲む。
なぜか下りていくほどに天候が回復していくようで、白かった空は徐々に青く見えてきた。
鷲ヶ峰を振り返って日曜朝8時半ごろに見られるCMを思い出しながら獣除けのゲートを潜ると、青空の面積はかなり多くなっていた。
WashiONのアレ
木々が迫り出して狭くなった登山道をさらに下り、八島湿原まで一気に近づいていく。
まわりには夏の花が多く見られるようになっていた。
八島湿原
1時間26分
和田峠から1時間半近く歩いて八島湿原の木道に出た。
鷲ヶ峰の下りは40分近くかかっていたことになるが、体感時間は早くあっという間だった。
覚悟していた天候も悪くなるどころか青空が広がり、車山までも明るく見える。
八島湿原周辺を歩く人も多く、このあと天候が崩れるとは思えないような雰囲気だった。
花!
木道の周りにはたくさんの花々。
群生している場所があると、必ずといっていいほど名前を書いた板が立てられている。
ふだんなら目を留めても、名前のひとつも分からないと通り過ぎていたものが、名前が分かるだけで足を止めてみようと思えた。
前から人が来ていても夢中になって視界に入らず進行を妨げるという弊害がある
すっかり歩みが遅くなっていると、いつの間にか車山は雲に覆われていた。
そうなるとは思っていても現実を見たような気がして、花を見ている場合ではないと我に返る。
遊んでいる場合じゃない
八島湿原の東側まで歩いてくると野鳥を観察しているカメラマンがいた。
話しを聞くとノビタキを撮影しているという。
そういえば以前、霧ヶ峰へきたときにもノビタキを見ることができたが、今回は鎌ヶ池に浮かぶカモだけが見え、肉眼ではノビタキを見られなかった。
花も良いけれど鳥も良いよっていうのは、以前に耳にしていた
バイオトイレが置かれた建物の横を通り、車が通れるくらいの道を進んでいく。
獣除けのゲートを潜ると、男女倉山と展望石との分岐に着いた。
2ヶ月ほどまえに来たときには、解体工事が行われて重機が動いていた場所。
跡形も無くなってすっかりキレイになっていた。
膝ぐらいの高さで男女倉山を示す看板が建っている。
笹の中に埋もれるように立っている看板は、知っていなければ見逃してしまいそうだった。
1時間46分
男女倉山へ向かう。
平坦だった八島湿原から、徐々に標高を上げていく。
木々は疎らで、右手側には草原の丘のように盛り上がった物見石が見える。
このへんからが気持ちの良い霧ヶ峰
おだやかなのは景色だけで、男女倉山へ向かう登山道は急激に角度がきつくなる。
木々の間を縫うような斜面は5分ほど。
振り返ると八島湿原が一望できた。
鷲ヶ峰のような厳しさが訪れる前に、なだらかで足にも優しい登りに変わった。
男女倉山
2時間4分
物見石との分岐から20分ほど。
八島湿原からでも30分ほどで男女倉山に着いた。
考えていたよりも速いペースで、天候も思っていたより良い。
男女倉山の山頂からは八島湿原を一望できる。
北側へ視線を移すと長和町の男女倉地区が見え、東側にはこれから向かう山彦山のふたつの峰。
男女倉山じゃなくてゼブラ山って書いてあるところが意外
山頂標には「ゼブラ山」と書かれていた。
男女倉山と書いてないのが不思議で、後日、語源を調べてみると「積雪期にシマウマのように見えるから」だという。
積雪期にそのことを意識して見たことがなかったので、いまいちピンとこないのが正直なところ。
しばらく景色を楽しんだあと山彦山へ向かった。
いったん男女倉山を下り、すぐに登り返しになる。
木々がないために風の通りが良く、序盤のような暑さも感じられない。
振り返って見ると青空が広がり、天気の心配など考えるのも無駄に思えるほど。
登りはなだらかで歩きやすかった。
18分
男女倉山から登ってくると、姫木平へと下りる分岐に出た。
分岐の先はスキー場を下りて別荘地から登り返すコースで、霧ヶ峰の西端を廻るコースといえる。
ただ200m以上の高低差があり、気軽に周回したいと思える高さではなかった。
それよりも山彦山へ向かい主要な峰を踏みたいところだった。
霧ヶ峰を外周でぐるっと回りたいっていう気持ちもあって
山彦山
和田峠から2時間23分
山彦山は北と南にふたつの峰が並ぶ。
どちらも稜線上に位置する小高い丘のような形をし眺望が良い。
男女倉山からは北の耳に繋がり、西側にゲレンデの急斜面を見ながら南の耳へ。
木々がないため霧ヶ峰を一望できて気持ちが良い。
北の耳
男女倉山から山彦山を見たときには距離がありそうで、それなりの時間が掛かることも考えたが、実際に着いてみると20分足らずで北の耳に到着していた。
ただ北の耳から見える南の耳は、ピークの直前に急登が見え、いかにも息が上がりそうだった。
実はあの急登を巻くコースがあるんじゃないかと眺めていても、どう見ても真っ直ぐに登山道が伸びていた。
南の耳のアレ急すぎないか?
南の耳
北の耳からなだらかな斜面を下り、南の耳に向かって登り返す。
高低差を実際の数字にしたら、たいした高さではないのだろうと思いつつも、斜面の角度を見たら気持ちが萎える。
すぐ間近に見えるのが救いで、大変だと思いながらも数分で登り切ってひと息をついた。
北の耳から南の耳には10分ほどだった。
実はちょっと景色に飽きてきた
眺めの良い草原のような場所を歩いてきたことや、そもそも北の耳から距離が近いこともあって、南の耳にきても景色の新鮮さはない。
殿城山が近く、その先には真っ白く雲に覆われた八ヶ岳が見られた。
後日、あの雲の中に知人がいたことを知った
南の耳から車山へ向かう先には、穏やかな草原が広がり蝶々深山がこんもりとしている。
風もほどよく陽が射しても暑さを感じない。
左側にある斜面はエコーバレースキー場で、その昔よく遊びに来たところ
正面に見える車山が近いような遠いような印象を持ちながら、右側に広がる霧ヶ峰の広さに感心し、左側に見えない八ヶ岳や間近に見えるゲレンデと別荘地を懐かしく思いながら歩いていく。
霧ヶ峰を歩く楽しさを知らなくても、ここに来ることの気持ち良さを感じていたことを思い出した。
北アルプスや南八ヶ岳のような刺激的な岩稜帯はなく、あくびが出そうな長閑さと気持ち良さを感じながら、徐々に車山へと近づいて行く。
車山乗越を挟んで見える急激な斜面は、観光地のような穏やかさとは雰囲気が違っていて良い。
山彦山をあとにして20分ほどで殿城山との分岐に着いた。
車山
2時間55分
分岐からは車山を正面に見ながら、車山乗越へ向かう。
このあたりまで来ると、車山から歩いてくる人と擦れ違うことも増え、中には日傘を差していたり軽装で歩いているひとも見かける。
汗だくで口を開けて歩いているのも、なかなかに場違いのようにも思える。
10分と掛からずに蝶々深山からのコースと合流すると、すぐに車山スキー場のゲレンデに出た。
向こうには蓼科山が雲の中に隠れ、間近に白樺湖が見える。
ゲレンデから上がってくるリフトが羨ましく、ここから階段を登って車山の頂上へ行くのが億劫だった。
特に難しいところや危ないところもない車山。
ただこの階段だけは核心部と呼べるところで、一段ずつが高く歩幅にも合わせづらい。
擦れ違う人もそれなりに多く、たいていの場合はキレイでオシャレな格好をしている。
そのなかで汗だくでおそらく臭っているであろう中年男性が通り過ぎるのは申し訳なく、できるだけ足早に通り過ぎたいのだけど一段ずつが高くて足が上がらない。
車山の階段が嫌いです
なんとか階段を登り切り、リフト降り場の近くから振り返って白樺湖を見下ろす。
このあたりではリフトを乗って上ってきたひとも多く完全な観光地の雰囲気。
さらに2・3分登って山頂に到着すると、さらに人が多く景色を楽しんでいた。
汗だくの汚い人がやってきて申し訳ない
山頂部にはレーダー観測所が建ち、八ヶ岳の方向に車山神社が建つ。
少し離れたところで斜面に迫り出したようにデッキが作られ、この日は演奏会のようなイベントが行われているようだった。
山頂標は車山神社とは反対側の西側にあり、八島湿原を見下ろす位置に建てられている。
ここを訪れた人が代わる代わる記念写真を撮っていた。
ワイワイキャッキャしてる後ろに、汗だくの汚い人が写真を待っている
車山肩
車山で少し時間を過ごした後、西側の車山肩に下りた。
ビーナスラインがすぐ横を通っていたり、人気のあるコロボックルヒュッテが建っていたりと、車山周辺でも人の多い場所のひとつ。
車山からは大きな石ばかりで、足元の悪い道を下りていく。
車山からの下りは意外と長い
車山の人だかりと、コロボックルヒュッテの行列を見ていると、この道を歩く人はいても誰もが通るというわけでは無さそうだった。
高低差は少ないながらも、大きく迂回をするように曲がっているため、下りて行くには思っている以上に時間が掛かる。
ただ諏訪地域を見下ろしながらの下り坂は気持ちが良く、雲がなければ中央アルプスや南アルプスが見え、御嶽山や北アルプスも見渡すことができる。
車山から27分
のんびりと歩いたつもりがなくても、それなりに時間を掛けて車山肩へ下りてきた。
7月ならここからニッコウキスゲの群生が見事だったろう。
いまはとにかく花よりも人が多い。
なんでこんなに混んでるんだ
霧ヶ峰の草原歩きはここまでで、車山肩からは沢渡へと下り、八島湿原へ戻っていく。
見晴らしの良い草原はだんだんと視界よりも高くなり、足元に見える樹林帯が近づいてくる。
風の気持ち良さもなくなってきた。
突然のアサギマダラにフィーバーした
和田峠へ戻る
行動時間にして20分と掛からずに沢渡へ下りてきた。
途中、蝶を見て足を止めていたために動いていた以上に時間は過ぎていた。
車が通れるような広さの道を歩き、沢渡から旧御射山神社へ。
小さな祠と4本の御柱が建つ神社を見つつ、案内板に書いてあることを目にしながら八島湿原へと戻っていく。
沢を渡ったらヒュッテみさやまが営業中で、外のベンチで食事や珈琲を楽しんでいる人たちが目に入った。
陽が高くなって暑さを感じる時間帯と、穏やかな風しか吹いていない中で歩いていると、あの涼しげな様子は羨ましかった。
暑い
前回、訪れたときは営業期間前だった
ヒュッテみさやまを過ぎると木道に変わり、木々の中を歩いていく。
獣除けのゲートを潜り、木々の合間から八島湿原を眺める。
序盤の八島湿原では花を楽しむ余裕があったものの、ここに来て暑さのせいか、花を見ても思うのは「咲いているな・さっき見たな」ぐらい。
擦れ違うひとがいるたびに、2本ある木道の板のうち、あの人はどっちを歩いてくるのだろうと考えていた。
暑いし、きっと疲れて面倒そうな顔をしていたと思う
八島湿原
車山肩から48分
暑い暑いと思いながら、ようやく八島湿原の入口にきた。
車道に近く、駐車場から直結している場所で、ベンチやテーブルも置かれている。
八島湿原からは鷲ヶ峰へ登り返し、和田峠へアップダウンを繰り返す。
いったんここで水を入れる。
鷲ヶ峰の登りは、木々が少なく背中から陽を浴びるため暑さも厳しいだろう。
暑い
案内板に書かれた矢印の通りに鷲ヶ峰へ向かっていく。
登山道の両側には草木が壁のように茂って、霧ヶ峰らしからぬ雰囲気。
視界いっぱいの緑は5分ほどで登り切り、獣除けのゲート前に着いた。
ここからは序盤と同じコースの折り返し。
まずは目の前に高く見える鷲ヶ峰へ登り返す。
おもえば朝は、この鷲ヶ峰を歩いている時点で天候の心配をしていた。
どこかで雨が降っても仕方がないと考え、想定外に晴れていることに驚きも感じていた。
それが戻ってくる頃には青空が見え続けているばかりか、陽射しと暑さに苦しんでいる。
ただでさえ、登山道を歩くのが久しぶりで体の重さを感じているのに、想定外の天候の良さは堪える。
暑い
鷲ヶ峰
八島湿原を振り返りながら、やっとの思いで登りを終える。
見えていなかった諏訪湖は、ここにきて見渡すことができた。
序盤ならテンションが上がったかもしれない眺望の良さは、ここにきて暑さを助長するだけで何の嬉しさもなかった。
雨はどうした
ゆるやかになった登りの尾根を歩き、八島湿原を見渡すピークにきた。
朝に見た雲が流れる幻想的な景色は無かった。
ただ暑そうに霞んでいる車山が見え、それよりも鷲ヶ峰の山頂へ続く尾根道の方が心を動かされる。
ウグイスが鳴く声も聞こえるが、それどころじゃないくらいに暑くて汗が流れ出る。
水を口に含んだら、そのぶんだけ流れ出ているようだった。
汗が出ているけれど、水よりも塩とかミネラル的なものも消費していると思う
八島湿原から33分
登りを長く感じながら鷲ヶ峰の山頂部に到着した。
陽が射して暑いのか体が火照って暑いのか分からず、水を入れれば良いのか飲んだところで足りないのかも分からない。
それよりも先へ進んだ方が良いようにも感じられる。
ここからアップダウンを繰り返しながら和田峠まで下りていく。
目印になる鉄塔は遠い。
暑さが籠もってるかんじ
和田峠へ
鷲ヶ峰の北側は急激に標高を下げる。
山頂への登りが穏やかだったと思えるほどに角度がキツく段差が脆く崩れやすい。
ただの登山道以外のなにものでもなく、ハイキングや遊歩道のようなイメージとはまったく違う。
霧ヶ峰でありながら、霧ヶ峰らしい雰囲気がまったくない。
霧ヶ峰は厳しい
何よりも木々に覆われて風がまったく通らない。
風が通らないほど木々に覆われていて、陽が差し込まないはずなのに暑いという、どんな嫌がらせを受けているのかと思える。
そして眺望も無く、山彦山などで視界が贅沢に甘やかされていたことを思う。
出発したとき、何度登って下りたのか数えもしなかったものの、最後の最後に高い登りがあったことだけは覚えていた。
高低差にして100mもないほどで、最下部から登り返してすぐに登り終えるところが見える。
ただ足が上がらず、体には暑さが籠もる。
運動不足から体力が足りていないのか、筋力も足りない上に暑さにも弱いのか、水を飲もうにもすぐに流れ出て満腹になるだけ。
もう和田峠が近いと分かっていても、なかなかに遠く思えた。
暑い
やっとの思いで鉄塔が建つところまで登り切り、和田峠まではあとは下るだけ。
ガードレールに向かって森の中を歩くも膝に力が入らず、大変な霧ヶ峰になった。