沢と笹が美しい

奥三界岳

1810m

夕森公園 2020年11月21日

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奥三界岳は木曽川と付知川とに挟まれた阿寺山地に聳える。
北に御嶽山があり、東には中央アルプス、西には伊吹山地を望む。
大きくなだらかな山体を持ち、山頂部を境にして北に夕森山、東に飯盛山へと繋がる。
鋭峰などの存在感のある峰を持たず、周囲の街からは前衛に聳える山々に阻まれて山頂部を見ることもできないため、存在感の希薄な山といった印象が強い。

登山道は夕森公園から。
美しいエメラルド色の沢を横目に見ながら、現れる滝の迫力を楽しんで登っていく。
紅葉が終わり、緑も減った落ち葉が積もる季節。
序盤の紅葉樹、中盤の笹原や終盤の針葉樹など、ベストシーズンがいつなのかも分からないままに、変化していく視界を楽しむことができた。

11月下旬にもかかわらず、凍結や積雪も無く、季節を感じさせない温かな快晴。
予報から標高の高いところでは強い風が吹くことも想定できたところ、実際にはその心配も無く、ましてや厚い木々に囲まれて風の影響を感じることが無かった。

歩いたコース

登り
夕森公園
下り
夕森公園
最高標高
1810m
登山口標高
720m
距離
16.25km
累積標高
1104m
1098m
平均斜度
7.72度
時季
2020年11月
天気
晴れ
日程
日帰り
歩いた時間
登り3:20/下り2:35/合計5:55
平均した歩行速度
2.75km/h

この日のペース

  1. 夕森公園ゲート
  2. 吊り橋(0:29)
  3. 登山口(1:56)
  4. 奥三界岳 山頂(3:20)
  5. 登山口(4:29)
  6. 夕森公園ゲート(5:55)

Amazonや書店で買える地図

山と高原地図 御嶽山 小秀山・奥三界岳
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奥三界岳という山名を知ってから登りたいと思っていました。
樹林帯が多く眺望もほとんどない、ただ山深く行程が長いということも知り、どこに魅力があるのかとも思っていましたが、惹かれたことは変わりませんでした。
八ヶ岳やアルプスなどの魅力的な山々がある中で、なぜ奥三界岳へ登ろうと思ったのか、きっと登ってみれば惹かれたところが分かるだろうと思いながらでした。

笹の広がる尾根や中津川の街並み、沢の綺麗な流れ、山頂近くでも噴き出す沢など目を瞠る眺めは多くありました。

持って行った水の量

奥三界岳へ夕森公園からの登山

岐阜県と長野県の境に聳える奥三界岳。
その山深い位置は街のどこからも存在を見つけることができず、よほど詳しく知っている人でも無ければ、中津川市街から指すことも難しい。
中央道中津川ICから木曽方面へ向かい、馬込宿への分岐を過ぎた付近から、木曽川を渡って付知町方面へ向かう。
そう大きな看板や方向が示されているわけでもなく、夕森公園だけを目印しに、登山口のある川上林道ゲートを目指して行く。

奥三界岳登山

暗いし初めてだし。
ここで良いのか??

11月下旬、まだ陽が昇らないばかりか、山間のキャンプ場は朝陽が差し込む時間も遅い。
暗い中、対向車と擦れ違うことが難しいほどの狭い道を通ってキャンプ場を過ぎ、その行き止まりに車を停めるスペースがあった。
ゲート前には約10台ほど。
歩いて5分ほどの下にはキャンプ場向けの駐車場。

準備を整えているうちに明るくなった。
ゲートの横からアスファルトの林道へと入っていく。

川上林道

ゲートから先、林道の右側は水量の多い沢が流れている。
道路から見下ろして見ると、鮮やかなグリーンの流れが見える。
夏なら涼しさを感じながら水流を楽しめそうなほど。
その流れ溜まりに浸かりたいほどだった。

奥三界岳登山

夏に来たら楽しそうだ

左側は、今にも崩落しそうな高い岩壁。
落石防止のネットは梅雨が付いて苔が生していた。

ゲートから10分も歩いていないところで忘鱗の滝に差し掛かった。
小さな石に流れがぶつかって飛沫を上げている滝で、高さは5mほど。
岩肌を縫うようにして流れが分岐している様子は、たしかに鱗のようにも見える気がした。

車が通るのにも困らないほどアスファルトの状態も良く広い林道。
しばらくは歩きやすい道路が続いていく。
忘鱗の滝を過ぎてからは、落差の大きな一の滝があった。
東屋があり、ここを目当てに登ってくる観光客も多い。
涼しい雰囲気の流れは、晩秋よりも盛夏といった雰囲気だった。

奥三界岳登山

陽気も暖かだったし水遊びしても良いんじゃないか?ってぐらい

林道での滝は、まさかここでこんなにも立派な滝が見られるとも思わず、序盤から気持ちの高まる眺めだった。

奥三界岳登山

滝だけを楽しみに来ても良いと思います

林道から登山道へ

ゲートから30分ほど歩くと、奥三界岳への登山道と、南木曽町の天然公園への分岐に着いた。
登山道へと進んでも、いずれ林道と合流するため、このまま林道を歩けば奥三階岳へと着くのではないかと思えるところ。
どっちが楽しめるのかと想像を膨らませながら、順当に登山道へと入っていく。

それまでの林道に比べたら一般的な登山道は狭く段差も多い。
2・3分ほど進むと、沢へと下りる急坂があり、設置された木段に足を置きながら下っていく。
この沢は林道脇を流れていたもので、沢の岸を歩いて行けば、多少はショートカットをしたり気分転換にもなるのかと思えた。

奥三界岳登山

沢の岸を歩くなんていう道は無いのだけれどね

沢に掛けられた吊り橋は、ワイヤーの伸縮が大きいのか、一歩足を踏み出すたびに大きく弾んだ。
少し湿った吊り橋の板が滑りそうで、手摺り代わりに貼られたロープは隙間が大きく、揺れを楽しみながらも油断がならない。
長さは30mほど。
吊り橋を渡るといよいよ急坂が始まる。

奥三界岳登山

びよんびよんする

林道への急な登り

ゲートから約2キロ。
吊り橋を渡ると、ここから水平距離500mほどで標高を一気に上げていく。
標高差は約300m。
折り返しながらも段差が高く、急斜面をトラバースする狭い登山道が続く。
急な場所では40度を超える斜度で平坦な場所も無く、息つく暇も無い。

奥三界岳登山

とにかくぐいぐい登る

厚い樹林帯は特に眺望も無く、淡々と標高を上げていく。
木々の間から西側の山並みが見え、付知川から立ち上ったと思われる霧が雲海のように広がっていた。

標高1000mを越えたあたりから、一気に笹が増えた。
それまで落ち葉と枯れ木が覆っていた斜面は、急激に緑に変わった。
斜面を見上げた先も青空が明るく見え、ひたすらに登ってきた急斜面の終わりが近いことが伺える。

いったん斜面が緩まり、また急斜面を登ると林道に出た。
ここまでで1時間13分ほどだった。

奥三界岳登山

ついに!

奥三界岳登山口まで続く林道

奥三界岳の登山口まで、ふたたび林道を歩いて行く。
未舗装で落ち葉がいっぱいに積もった状態。
フカフカとした感触と、カサカサという音の気持ちが良い。

この林道はゲートを通ってきた川上林道ではなく、夕森キャンプ場の案内所付近にある道路と繋がっている。
そのため、急な登りを通らずに歩くことはできそうな反面、折り返しが多く距離が長い。
どちら良いかといえば、やはり急で大変でも距離が短く短時間な方を選びたい。
ただ何かしらの理由で急斜面が通ることができなかった場合、この林道が続く場所を知っていることで安全に戻ることもできる。

奥三界岳登山

夕森山を奥三界岳だと思いたいくらい立派に見えた

林道は右手側に1500mを越える峰、そこから伸びる平坦な尾根が、正面右側の夕森山へと通じる。
奥三界岳の北側にも夕森山という山名の山があり、麓の付知からはよく見えるが、こちらの夕森山は別の山。
ただ林道から見える姿は美しい笹と枯れ木の白さで存在感があり、これが奥三界岳だろうと思えるほどだった。

手前には深い谷があり、林道の橋からは急激に切れ落ちる崖が見える。
奥三界岳と思えるほどに存在感のある夕森山も、登ろうとするには無理があるようだった。

どこに奥三界岳があるのかと地図を見ながら、この林道をどこまで進むのかと思いながら歩いて行く。
途中、大型の車が何台も停まれそうなほど広い空き地があった。
砂利も敷き詰められて、遠足向けのバスでもやってくるのかと思えるほど。
左には落石が起きそうな岩壁で、右は下りることもできなければ只事では済まなそうな崖。
ただ正面へ進む林道だけはなだらかに続いている。

奥三界岳登山

きっとキャンプと遠足とセットで、マイクロバスが来るとかあるんじゃないかな???

標高1300mを近く。
なだらかながらも林道で150mほど登った。
林道は続いているものの行き止まりで、この先は本格的な作業用道路になっているようだった。
ただその道路脇からは落差の高い滝があり、水量も多いようだった。
これだけの高い場所、稜線から近い地点で多くの水量が吐き出されるところを目の当たりにし、どれだけ水の蓄えがあるのかと驚いた。

奥三界岳登山

立派な滝が見えました

奥三界岳登山口

林道から土手のような急斜面を登る。
階段が作られ、高さ1mほどの土留めには踏み台が設けられて越えられるようになっている。
上がると崩落し使われなくなった林道のような道に出た。
緩やかな斜面にガレた多くの岩場が続く。
眺望の良くなった左側には歩いてきた林道を見下ろせた。

奥三界岳登山

きっとここも林道だったのだと思う

車が通れなくなったせいか、役割を終えたからか、広かっただろう道の脇には草木が多く生え、その真ん中を整備された踏み跡が続いていく。
山の斜面を大きく巻くようにして続いていく登山道を歩いていくと、谷を挟んだ西側に一面に広がる笹原が見えた。
なだらかな斜面と眺望が良さそうな広い笹原。
その斜面には登山道と思われる一筋の踏み跡があるようだった。
下山してから地形図を確認すると、この踏み跡は付知川の支流を上流に向かって上っている東股谷から繋がっている林道だった。
行き先は無く、ちょうど見えている笹原が終点のようだった。
奥三界岳の山頂へと続いていくのではないかと思える美しい笹原で、今歩いているこのコースよりも向こう側を歩きたいと思えた。

奥三界岳登山

あの道まで行くの??って思ってました

崩落した後のガレ場を過ぎ、平坦な道を歩いて行くと作業用の小屋が見えた。
入口は朽ちて窓が破れ、中は散らかっている様子はあるものの、林業などで使われていたのだろう。

奥三界岳のもともとの登山口はここだと思われる。
コンクリート製の標が作られ、山頂方面を指していた。

奥三界岳登山

地図を見るとここが登山口らしいです

山頂への笹原と針葉樹林帯

小屋の後ろから階段を登る。
日影になっているせいか湿度を含んで滑りやすい雰囲気。
階段から森へと入り、緩斜面と急斜面を繰り返して登っていく。
2度3度と折り返すと真っ直ぐな緩斜面を過ぎ樹林帯を抜けた。

奥三界岳登山

なんて綺麗な笹原なんだ

周りには笹原が一面に広がる。
左手側になる西側には小屋の手前で見た林道の筋がある笹原。
南には雲の広がった恵那山方面。
東側の笹の向こうに見える稜線の先には中央アルプス。
雲に隠れた南駒ヶ岳付近、荒々しい雰囲気のキレットが見えた。

奥三界岳登山

このとき、中央アルプスを南アルプスと間違えてました

本当に水の多い山だ

陽射しは暑くもなく、足元の良い緩斜面は長閑な雰囲気すら感じる。
このあたりでも水気が豊富で、10分ほど歩いたところで登山道は沢に沿って登っていくようになった。
尖った巨石の沢。
水の流れがあちらこちらにあり、窪んだところは靴がすっぽりと水に浸かりそうなほどの深さ。
沢沿いに登って笹原へと戻ると、林道から見上げていた夕森山付近の稜線が見下ろせた。
この稜線には登山道はないものの、藪漕ぎを覚悟で歩いてこられそうなほど。
とても気持ちの良い眺めだった。

奥三界岳登山

どうも笹の稜線が好きみたい

笹原から少し登ったところで針葉樹の森へ。
標高的には山頂まで400mを切った。
あと400m近い標高差も、横への距離の長い緩斜面で、しっかりと登っている印象が薄い。

あと10分か
500m進んだはずなのに時間が同じ

森の中で木を縫うように折り返し、木の根の段差を越えて標高を上げていくよう。
山頂までの残り所要時間の表示を見つつ、日影でたっぷりと湿度を含んだ登山道を歩いて行く。
ただ、ところどころで水たまりがあり、迂闊に足を踏み入れるとソールがすっぽりと泥に埋まるようなところもあった。

奥三界岳登山

とにかく登山道で靴が埋まりました

奥三界岳の山頂

なだらかな樹林帯を登り、唐突に前方が明るく開けた。
そこだけが木が伐採されたのか、もともと木が生えずに眺望が開けていたのか、笹が一面に生えていた。
登山を始めたゲートからは約3時間20分。
最も高い場所には三角点、その傍らに建てられた木製の展望台。
風雪が厳しいのか、かなり朽ちてしまっているようで、階段は細く削げ落ち、床は場所によって10センチほどの隙間が空いていた。

奥三界岳登山

踏み抜き注意

東側は一面の樹林帯で展望台に上がっても眺望は無く、覗き込むようにして御嶽山の南面を望むことができた。
御嶽山の西側には山々が連なり、間近には井出ノ小路山や夕森山。
この夕森山は登山中に見えた夕森山とは別の街から見上げることのできるものだった。

奥三界岳登山

夕森山って近い場所にふたつあるみたい

西側は景色が開け、雲に隠れた白山などの北陸の山々、伊吹山地を見渡せた。
間近にある雨乞棚山は尾根と谷が繰り返された山肌が印象的だった。
南側は木々が眺望を覆っているものの、中津川市街地が遠く見渡せた。
木々の間からは恵那山を見ることもでき、特徴的で大きな山体を眺めた。

山頂では展望台から望む景色以上に目を瞠るものはなく、同じように山頂にいた人たちと代わる代わる展望台に上って景色を楽しみ、下りては山頂での時間を楽しんだ。

奥三界岳登山

楽しめる場所は少なかったけれど良い山頂でした

奥三界岳からの下山

泥に足が埋まるじゃないか
ドロドロだ

下山は登りと同じ登山道を折り返して下りていく。
登りで振り返って見ていた景色が、下りでは正面に見ることができる。
針葉樹の森まで下りて笹原へと抜けたときには、恵那山と神坂あたりの景色が見え、遠く山深い印象だった奥三界岳が少し間近なものにも感じられた。
中央アルプスを覆っていた雲も無くなり、稜線をすっきりと見渡すことができる。

奥三界岳登山

同じ景色でも登りとは違って見える

ガレ場の沢を下り、笹原から小屋まで下りてなだらかな林道へと戻っていく。
ところどころであった木段は滑りやすく注意が必要で、急斜面なだけに転倒しないようにと心がけた。

奥三界岳登山

ずるっとする場合もあるし

沢で靴を洗ってみた

林道へと戻ってくると安心感が一気に湧き上がってくる。
なだらかで広く歩きやすい。
そして長い。

奥三界岳を振り返りながら、長い林道を下る。
ここまで下りてくると、登りで見た眺めにも新鮮差は無く、ただ道路に落ちた枯葉を眺めていく。

奥三界岳登山

こういう退屈そうな道も時には良い

約30分ほどで急な登山道との分岐に着き、ここから林道を離れて一気に標高を下げる。
登りで苦労をした登山道は、下りでは違った意味で苦労をした。
体を持ち上げる辛さではなく、バランスを取りながら体を下ろす力が必要で、やはり休めるようなところもなく下りていく。
登りでは見えなかった登山道の狭さや落ちていく斜面の角度が、下りでは視界に入って気を遣う。

深く積もった落ち葉を踏み散らし、その下に隠れた小石に滑りながら、どんどんと沢へと近づき標高を下げていく。
沢の音が大きく近づいて水の流れが見えると、吊り橋のある川辺に着いた。

奥三界岳登山

ひたすら下りるのは大変でした

往路と同じように吊り橋の大きな弾みを楽しみ、湿気が無くなって歩きやすい橋を過ぎていく。
吊り橋からは林道へと戻るために斜面を登り、30分ほどで急な登山道を終えることができた。

奥三界岳登山

意外と観光客が多い

夕森公園への林道

緩やかで舗装された林道は歩きやすく、直前までの急斜面のせいか安心感が大きかった。
左手に沢を見つつ、登りの時間とは対照的にすっかり高くなった日を指す山肌を眺めて歩く。

一の鳥居までは観光客も多いようで何組かと擦れ違う。
スタート時点では、たくさんの人が訪れるような雰囲気も感じられず、なかなか人の来ないマニアックな場所という印象でいたものの、ゲートへ近づくほど賑やかさがあり、戻ってきたときにはたくさんの車が停まっていた。

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使った登山道具

下山後に立ち寄った温泉

付知峡倉屋温泉 おんぽいの湯

岐阜県中津川市から高山市へと通じる国道沿いにある日帰り温泉施設。
周囲は集落に囲まれた山間の街で、東側には夕森山、南側には恵那山を望むことができる。

泉質はアルカリ性単純泉で香りが無く、トロミのあるお湯が楽しめる。
神経痛や筋肉痛、関節痛などに効くとされている。

裏木曽の温泉があるとは思えないような街の中にありました。
とても涼やかな場所で、お湯で温まりながらも、ほどよく体が冷やせるので、じっくりと楽しめそうです。

駐車場は広く、温泉の他に休憩スペースもあり、長居をしたくなるような落ち着いた温泉でした。

奥三界岳周辺の山

    同じ時季に登った山