長野県の北部エリアでおすすめの山
長野県を4等分するエリアのなかで、北側の北信エリアから10の山をまとめました。
登山百景では主に長野県の1000m付近から3000mを越えるアルプスまで掲載をしています。
目に見えるすべての山に登っているわけではありませんが、少なからず登っている中から自分なりに印象的な山、おすすめできる良い山が増えてきました。
長野は日本アルプスに囲まれているおかげで、日本百名山に数えられる山も多くあります。
その中にあって、北信には百名山と呼ばれる山は多くはなく、代わりに特長的な山が多くある印象です。
たとえば戸隠連峰の険しい峰々。
たとえば冬季の観光で有名な志賀高原などなど。
あまり一般的ではないにしても、日帰りを中心に楽しむことができます。
関東や関西からはちょっと遠く、長野の奥深いエリアですが、アルプスとは違った趣の山たちです。
山体が崩壊しはじめた、いつか登れなくなるかもしれない山。
というかロードが長くツキノワグマに出会うんじゃないかという山。
秘境とも呼ばれる長野県栄村の秋山郷。
北側には苗場山があり、中津川を挟んで鳥甲山が聳えています。
この中津川を掘ると温泉が湧き出て楽しめるところもあり、最近ではテレビで紹介されることも多くなりました。
でも秋山郷といえば紅葉ドライブを楽しむ場所でした。
もともと多くの観光客が入るようなところでは無かったと思うのですが、奥志賀からの林道が走りやすく整備されたり、某情報誌で紹介されたりしているうち、車やバイクの往来が増えたように思います。
ただ木島平村から栄村へと抜ける道路が災害で通行止めになっている期間が長く、冬季閉鎖で半年ほどは閉ざされるため、なかなかにドライブのハードルが高い場所でもあります。
鳥甲山といえば、そんなイメージのある秋山郷を代表する山のひとつです。
大きく翼を広げたように東西へ尾根が延び、東側は脆く崩れた崖、西側はなだらかに木島平へ続くゲキヤブです。
コースは2本ですが、ムジナ平からの登山道は、カミソリのように擦れ違うのも難しいほどの狭い尾根と柱の抜けた鎖など、アスレチック的な要素と度胸が試されるようなところです。
いわずと知れた長野県北部の有名峰。
戸隠そばと戸隠神社で賑わう人の中を登山装備で歩く山。
戸隠山は長野市街の北側、旧戸隠村にある長細く岩岩しい山です。
西側から岩板が迫り上がったように伸び、いくつも峰を作りながらアップダウンを繰り返し、長く細い連峰を形作っています。
戸隠連峰の最西端は一夜山、最北端は乙妻山で、20キロほどはあるかと思います。
中央部の戸隠山から西側は破線になり、その行き着いた先、西岳とも弁慶岳とも言われる峰から先はハイマツが茂った痩せ尾根で、人が立ち入ることができません。
ネットにある情報には、過去に分け入った人もいるようで、山頂標が掛けられているとか。。。
一般的には西岳以西はとても危険で、ツキノワグマも棲息しているエリアなので、まったくオススメすることができません。
ただ戸隠神社奥社から登る八方睨みコースは、戸隠山へ登る最もポピュラーなコースで、鎖場が連続するスリルと、蟻の塔渡りという「二度と来ない」と言わせる迫力のある細尾根が楽しめます。
コース名にもなっている八方睨みが、もっとも眺望の良いポイントで、間近に見える西岳の迫力と、飯縄山の大きさ、黒姫山の富士山っぷりが楽しめます。
ウィンタースポーツで有名な志賀高原も夏山ではちょっと地味な存在。
でも整備されて安心して歩けるコースと、豊富なバリエーションは時間を掛けて楽しみたい。
志賀高原は2000mほどの峰々が乱立する高原地帯です。
草津白根山へと通じる国道と、その最高地点の渋峠があり、登山や山に親しみが無くてもドライブなどで訪れる人も多くいます。
むしろ登山よりも多いと思います。
そして冬の楽しみが一般的な志賀高原の楽しみ方だとも思います。
6月から10月、夏の志賀高原を楽しむ最高のシーズンです。
特に6月から7月にかけては、点在する湿原でワタスゲが見られたり、ニッコウキスゲが咲いたりと楽しめるところが多いのですが、登山としては岩菅山が最高潮を迎えます。
志賀高原はウィンタースポーツを楽しむところなので、どこを見てもゲレンデが広がっていますが、岩菅山にはゲレンデが一切ありません。
逆に言うと、山頂に登るとゲレンデが見えます。
そんなゲレンデばかりの眺望ですが、志賀高原で最も見るべき眺望が岩菅山の先にあります。
志賀高原最高峰の裏岩菅山と繋がる稜線。
緑がいっぱいに広がり、その先には苗場山や鳥甲山、上信越の山並みが広がります。
裏岩菅山を越えてこのまま稜線を歩いていけば秋山郷へと下りられるのも魅力的で、観光がメインの志賀高原だからといって甘く見ることのできない楽しみがあります。
戸隠連峰の最高峰で十三仏を祀る山。
ひときわ高い標高が存在を感じさせる。
戸隠連峰の北側にある峰のひとつが高妻山です。
もっとも標高が高く、日本百名山のひとつでもあります。
尖った形はカッコ良く、歴史的な謂れなどは詳しく知りませんが、きっと戸隠という地理上、それなりのことがあり、百名山に相応しいのだろうと思います。
特に長野市街の南側や、長野道の姨捨付近から眺めると、尖った山の形が際立って見え、場所によってまったく違った山のようにも見える形が魅惑的です。
いくつもの峰が連なる戸隠連峰にあって、高妻山は信仰の様子や雰囲気が違っているところが特長的で、山伏が歩いていそうな険しさではなく、ひとつひとつの峰に祠が置かれ、丁寧に祀られているような雰囲気があります。
戸隠山から九頭竜山をこえ、大きな峰をひとつ越えてから鞍部に辿り着きます。
その傍らに一不動と呼ばれる祠がひとつ。
登り返した峰には二釈迦、次の峰には三文殊と、高妻山の山頂付近まで10の祠が並びます。
これは十三仏という北信特有の信仰で、高妻山の先にある乙妻山の十三虚空蔵まで続きます。
高妻山付近では飯縄山に十三仏があるほか、高社山にも祀られ、仏教の影響を伺わせます。
神仏混淆の歴史の中で、はっきりと仏と名称が書かれているのが印象的なところです。
そして九勢至から十阿弥陀の間、山頂稜線に辿り着くまでの激急登は登るのも下りるのも思い出に残るような険しさです。
夏場のトウモロコシが美味しくて、そんな時季には暑くて登っていられないけれど、山頂稜線は気持ちが良いので晴れた日に登りたい山。
戸隠連峰と飯縄山、妙高山に挟まれた位置ながらも、大きな存在感を示している山が黒姫山です。
火口を思わせる池と、その中に聳える御巣鷹山、意外と周りを囲む外輪山のようなところが最も標高が高い山頂という特徴があります。
主な登山口は山の南側にある西登山道と西新道、東側の表参道。
マニアックな登山道としては、スキー場のトップから黒姫乗越へと登って樹林帯の山頂尾根を歩くコース、笹ヶ峰から西登山道へと至るコースがあります。
中でもオススメは西新道。
富士山のような登り一辺倒の急登が楽しめるほか、急登のあとに続く山頂稜線は絶好の眺望で、晴れていればこれ以上ないほど黒姫山が楽しめます。
そして、地味に楽しめるのが山頂から見える雨飾山。
あまり見ることのない角度で、しかも木々の間を縫って覗き込むような眺望ですが、笹平に突き出た山頂を見ることができ、なかなかにレアな角度です。
黒姫のある信濃町は、夏になるとトウモロコシが多く売り出され、甘みが強く、焦がし醤油との相性が抜群に良いです。
もう黒姫山に登らなくても、トウモロコシを食べるだけで登頂した気分になれるほど。
なんなら、一面に広がるそば畑の花を見ることで、山頂稜線よりも確実で満足度の高い眺望が得られるかもしれません。
長野市の西側にある木々に覆われた1300mを越える山です。
北アルプスにも戸隠連峰にも近く、とにかく眺めは最高な山です。
虫倉山という地味で全国区になりそうもない山は、登山口から1・2時間で登ることのできる里山です。
里山といっても、百名山のような整備はされていないので、コースによっては難易度が高かったり、危険があったりするのが難しいところで、虫倉山はそれに当てはまる山でもあります。
虫倉山の魅力といえば、山頂から見える北アルプスで、特に鹿島槍ヶ岳や五竜岳が間近に見えるところにあります。
北側に目を移せば奥裾花の中西山などのマニアックながらも特長的な山が並び、すぐ右側には戸隠連峰と高妻山の大きな山体が見えます。
そしてなによりも、眼下に見える集落の長閑さも魅力的で、山村とアルプスが同時に視界に入るところも虫倉山ならではの眺めです。
長野市街から登山口までの道程は、遠くはなくても幅員が狭く分かりづらいところが、虫倉山へ足を向かせない理由のひとつですが、逆に静かな山が楽しめるともいえ、ときどき人と擦れ違うぐらいがちょうど良いと思うところもあります。
まるで戸隠連峰の展望台のような位置にあるにも関わらず、厚い木々で覆われているので、ほとんど眺望が得られない荒倉山。
いくつかの峰が集まった総称で、もっとも高い地点は砂鉢山になります。
鬼無里村を代表する山なのですが、鬼女伝説でも知られている山で、登山口近くには鬼女の紅葉が巣食っていたという洞穴があります。
荒倉山を歩くシーズンにもよると思いますが、鬼女伝説を知っていると、山の雰囲気もなんだか物々しいようにも感じられ、細い尾根道のアップダウンが険しく人を遠ざけているようにも思えなくもないようです。
とはいえ、静かな山村の里山なので、集落からの高低差はそう大きくはなく、見下ろせばすぐ近くに家々が見えるのですが、ちょっと思いに浸りながら歩いたり、長閑な風景に触れたいときなどは、ふと思い浮かぶ山です。
長野県の北部にあって雪の深い飯山市の里山です。
万仏山という山名が表しているかのように、石仏などが多く立ち並び、のどかな集落は棚田とそば畑が広がります。
春には近隣で菜の花が一面に咲くために多くの人が訪れますが、この万仏山はとても静かです。
荒倉山と同じように集落からの高低差が少ないのですが、荒倉山以上の急登と細尾根、脆い足元が緊張感をそそる山でもあります。
ここ数年で登山道が整備されて、コースの選択肢が増えたために歩きやすくなったとはいえ、そもそもの険しさは変わらず、それが万仏山の魅力でもあります。
標高1200mを越えたほどで、周りにはさらに高い山が多く、なおかつ木々が茂った山なので、眺望が得られる場所は限られています。
ただ南峰からは近隣を一望して、頸城の山々が見渡せるほど。
いっぱいの緑の中を歩く楽しみと、ちょっとした緊張感が楽しめるという点ではとてもオススメです。
ただし1200mほどの標高という点で、夏はとても暑く、とにかく暑いさしか印象に残らないところが難点です。
パッと見で、とてもユーモラスに見える山名は「おめしだけ」。
こんな名前なのに信州百名山に数えられています。
登山口のある毛無峠は、グンマーのネタで知られる場所で、県境を示す標識とともに「この先危険地帯」と書かれた看板が建ち、その昔は硫黄が掘られていたために荒れてしまった山肌が特異な雰囲気を醸しています。
御飯岳はなだらかにアップダウンを繰り返すコースをピストンするしかないのですが、序盤のグンマーエリアがもっとも眺望の良い地点。
車を停めた毛無峠以上の眺めが得られるところはありません。
なにを楽しみに登るかといえば、毛無峠から10分ほどの毛無山山頂から見える破風岳への眺め、この先の登山道に見える笹原といった具合です。
そこから先は、ただただ森の中を歩きます。
そして山頂からはチラッと景色が見える程度。
そんな特徴の山でも、一度行けば手軽さと毛無峠の満足度の高さで、再訪したくなるのが不思議なところです。
根子岳といえば花の百名山に数えられるほどに初夏のツツジが有名なところですが、それ以外の季節では隣り合う四阿山からの縦走で登られる山です。
根子岳単体で登ると1時間から2時間程度で、半日もあれば往復が可能なために、ちょっと手応えが無いといった印象があるかと思います。
それだけに、四阿山の付属品的な印象も持ちやすいのですが、、、、木々の生えていない山頂からの眺めはとにかく素晴らしく、北アルプスから戸隠連峰や妙高山までが一望できます。
特に冬季は、青空に真っ白で乾いた雪が舞うところなども見られ、奥ダボススキー場から登れば、さらにその眺めが楽しめます。
四阿山との縦走を楽しむのであれば、鞍部の笹原がもっとも根子岳を格好よく見ることができるポイントでもあり、そこを見逃したら根子岳の魅力を十分に堪能したとはいえないと思います。