内山峠からの荒船山
長野から群馬へと抜ける峠道のひとつ内山峠。
佐久市から奇岩が立ち並ぶ内山峡を過ぎていくと、南北に長大な荒船山を見ることができる。
艫岩と経塚山との距離があまりに長く、それがひとつの山のようには思えないほど大きく特徴的な形が見える。
西上州の一帯から、特徴的な地形が並ぶなかで荒船山は一際大きく、内山峠に近づくほどその大きさが感じられる。
遠くから見てもでっかい山だなと思う
あの左側に見える絶壁の艫岩から右にある尖った経塚山まで歩くと思うと、その距離感から荒船山の大きさを実感できる。
荒船山を正面に見ながら、車道の長く勾配のきつい登り坂を上ってトンネルの手前から狭い旧内山峠へ。
峠道の一番高いところに駐車場があり、荒船山の登山口が設けられている。
すでにマイクロバスや何台もの乗用車が停まって、たくさんのひとが入山しているのだろう。
登りやすいし人気があるだろうとは思います
準備を整えている最中に簡易トイレが置かれているのを見つけた。
こんなところに親切なものがとドアを開けてみてそっと閉じる・・・。
そうだとは思っていました
登山口は駐車場の奥に。
熊や遭難などの注意喚起の看板が建てられ、その横から登山道へと入っていく。
斜面に作られた登山道は、ひとが擦れ違うのが難しそうなほどに狭い幅。
柔らかな質感の土は、斜面側に足を置いたら崩れた土と足を滑らせそうなほど。
周囲には落葉樹が多く、地面には太陽の光りが行き届いていた。
入ってすぐ
登山口から入ってすぐ、常緑樹の一帯があった。
常緑樹が生えたそこだけが濃い緑で、50mもないほどの一帯を過ぎると鮮やかな花が多く咲いているのが見えた。
斜面の一面にというほどではないものの、固まって咲いている様子は、なかなかに鮮やかで、まだ葉の無く落ち葉色の山肌の中では目立つ色合いだった。
狭い登山道を歩きながら谷側や山側に点在する花が綺麗で、そこまで期待をしていなかっただけに目を楽しませてくれた。
花は期待してなかっただけに意外な楽しみを見つけた感じ
登山道は序盤のなだらかな登りを過ぎると、登った分だけ下るようなアップダウンで、下りきると両側が切れ落ちた細い尾根を数メートル過ぎる。
そして山の形に合わせて大きく巻いて、登っては下りてを繰り返す。
標高1000mを越える登山口から山頂まで500mに満たない高低差でも、この登山道のアップダウンの繰り返しが激しく数字以上に登ることになる。
高い段差で急激に登って平坦になったかと思えば下り、緩やかに登ったり下ったり。
だんだんと荒船山の絶壁に近づいているのは分かっていても、ときどき見える経塚山はまだまだ遠い。
ツライ
35分
35分ほど登り降りを繰り返したところで、大きく窪んだ岩壁の前に出た。
鋏岩と呼ばれる岩壁で、小さな石を砂が繋いで固まり、ひとつの巨岩になったようなザラッとした質感がある。
その昔、ここには荒船山出世不動尊が祀られていたといい、窪みの中には朽ちた印が立て掛けられていた。
ちょっと雰囲気があるという感じ
鋏岩を右に巻くと、少し下りて急激な登りに変わる。
距離や高低差はそう高くはないものの、アップダウンの繰り返しの中で、またここでもと思うと辟易としてくる。
谷側の斜面は深く、崩落して登山道が変えられているところもあった。
まだ登って下りるのか・・・
登り切って平坦な登山道に変わると、遠く見えていた経塚山が近づいたように見える。
平坦な登山道の先には下りが続き、その向こうには高く岩壁が聳えていた。
その直下に登山道が続き、この急登を登れば艫岩まですぐといったところだった。
やっとここまで近づいた
両側が切れ落ちて橋のようになっている登山道を進むと緩やかに登っていく。
すると取り付きの箇所で、岩から水が染み出ているところに橋が架かっていた。
一杯水といわれる湧き水で、建っている案内板を見る限り、飲むことができるようだった。
ただ橋から斜面に下りてまで飲みたいほど水を欲しているわけでも無かったので、染み出してくる様子だけを見て橋を渡った。
危ない要注意
橋からは岩の斜面を九十九折りに登っていく。
急峻ですれ違えるほどの幅も無く、ギザギザした岩の窪みに足を掛けて登っていく。
要所要所に鎖やロープが張られて安全策があるものの、谷側にバランスを崩そうものなら、数メートルは落下して地面に落ちるか、そのまま谷側へと滑っていきそうだった。
比較的手軽に登ることのできる内山峠からのコースでも、この岩場の緊張感は高かった。
10分ほどの岩場を登ると、ようやく荒船山の台地の上に立つことができた。
それまでの尾根の登り降りの激しさや、岩の急登とは打って変わっての穏やかさ。
たくさんの木々が乱立し、そのなかに登山道が続いていた。
ここまできた安心感
艫岩展望台
1時間
内山峠から1時間ほどで艫岩まで来ることができた。
とても良い陽気で、霞みがあるものの浅間山も佐久平も見渡すことができた。
ただ内山峠の手前に見えたソーラーパネルの大群が山肌の中で存在感を放っていた。
ソーラーも大事なのかもしれないけど、ここからは見たくない眺め
艫岩は荒船山の特徴的な地点のひとつ。
もともと地盤から浸食によって固い部分だけが残った結果、この台地ができたようで、地震や火山で迫り上がったり、なにかが組み合わさってできたものではないようだ。
高さは200・300mほどあるといい、山頂台地の北端にあたる。
過去には墜落事故も起きており、注意喚起の案内板も目につく。
絶壁のギリギリまで近づくことができるほどで、手摺りのようなものもなく、足元に草が茂っていれば地面の有無に気が付かずに足を落としてしまいそうな雰囲気があった。
眺めを見るために近づくっていうのもあると思うけど、どこまで近づける?的な度胸試しみたいなのもあるのかな
艫岩から少し離れたところには東屋が建てられており、昔は物販営業でもしていたかのような雰囲気。
ベンチと窓ガラスのカウンターは、建物の提供がしやすそうで、そんな様子を想像しながら艫岩をあとにした。
艫岩から経塚山
艫岩から離れるとすぐに相沢からの登山道と合流した。
荒船山の東側から登る登山道で、群馬県側の登山口になる。
遠くからは平坦に見えるこの台地も、実際に歩くと緩やかに下り、小さな窪みのようなものを繰り返し、だんだんと南端に向かっていく。
途中、祠や石碑が置かれているものの地形的に目立つものもなく、ただ似たような木々が林を作っている。
時季的にも天候的にも良いせいか、シジュウカラやカシラダカが多く、四方から鳴き声が聞こえては飛び交うところが目についた。
暖かいし長閑だし平らだし
展望台から30分
展望台から30分ほど歩いたところで、星尾からの登山道と合流した。
荒船不動尊から木段を上った先に、この合流地点がある。
ここからが荒船山最高峰の経塚山への登りの取り付きになる。
ツアーの一群がおしゃべりをしている間に追い越した
繰り返すアップダウンと、艫岩に登る岩場と、登山道の変化を楽しみながら残す経塚山まで10分ほど。
この登りが最も辛く、体力的にも負担が大きな急登になっている。
何度目かの荒船山で、何度来てもこの登りは辛い。
ほんの10分と分かっていて、すぐそこに登りの終わりが見えていても、なかなかに辿り着かない印象だった。
最後のコレは本当にツライ
荒船山山頂
1時間35分
内山峠から1時間35分で荒船山の山頂部、経塚山に着いた。
南北に長い尾根のような形で、全体が木々に覆われているため眺望も得られない。
一番高いところに祠が建ち、石碑と山頂標が建てられていた。
無事に到着して良かった
特に見えるものもないと、山頂に長居をしたいという木にもならず、早々に下りることにした。
ちょうど登ってきた一群と山頂で一緒になってしまい、少し賑やかな雰囲気になってしまったことも、気持ちを急かした理由だった。
ちょっと賑やかだった
下山
経塚山から折り返して内山峠へ戻る。
山頂から下りようとすると、木々の間から艫岩の影が見える。
直線にして約2キロほど。
数字で聞けばそう遠くはない距離も、まっすぐに見通すとなかなかの距離に感じられる。
緩やかで平坦な登山道は歩きやすいとはいえ、変化の少ない登山道を戻るのは億劫でもあった。
見るからに遠いしめんどうくさい
経塚山から遠く見えた艫岩まで30分と掛からずに戻ってくることができた。
緩やかな下りは歩きやすく、登りはさして苦にはならなかった。
ここからの核心部は台地から下りる岩の急斜面。
10分ほどの短い距離でも足を引っかけて躓くことのないように、足元に気をつけて下りていく。
スッ転んだらひとつ下の登山道に落ちる感じか・・・
岩場を過ぎるとひたすらにアップダウンの登山道。
序盤で楽しめた花も多く、飛び交っている野鳥も多く見られた。
ツライ
ただ下り一辺倒ではなく下りたらそのぶん登るような、繰り返されるアップダウンに太モモも呼吸も限界を感じるようだった。
数年前、この登山道をピストンしたときにはここまでの辛さは感じられなかった。
苦労しながらなんとか内山峠まで戻ると、出発時にはたくさん停まっていた車も半分ほどになっていた。
辛かった・・・とっても・・・