三股から常念岳、蝶ヶ岳へ
中央道安曇野ICから豊科駅方面へ。
国定アルプスあづみの公園へと方向を変え、公園を過ぎて林道へと入っていく。
狭くカーブの多い林道終点が三股登山口の駐車場となる。
平日にも関わらず朝早くから常念岳の駐車場には車が停まっている。
朝早くからの出発以外にも週末から月曜日に掛けての宿泊者も含まれるのだろうか。
駐車場で準備を整え、奥にあるゲートから登山口へと進む。
前回は入口が分からなくて駐車場で迷ったっけ・・・
登山口で義務化された登山届けを提出し、登山道へと入っていく。
川を渡ってすぐに蝶ヶ岳と常念岳との分岐になり、急な斜面の見える常念岳方面へと足を向ける。
ここから常念岳ってドキドキ感。
あの前常念を歩くんだ。
序盤から九十九折りに急坂を登っていくルートで、右へ左へと折り返しながら三股に流れる川の音を遠くしていく。
標高が高くない三股付近では花も豊富で、登山道の両脇には様々な色の花が見られた。
樹林帯を進んで行く登山道は、折り返しの急坂ではあるものの狭いところや段差の大きなところもなく、比較的歩きやすく、順調に高度を上げて行くことができる。
約1時間ほどで三股からの2キロ地点を通過。
木々の間からは蝶ヶ岳の北側にある縦走路のピークが見え隠れしている。
このへんでお腹が空きました。
やがて蝶ヶ岳の山頂も見えるようになり、1時間半ほど登ったところで残雪も多くなってきた。
ちょうどこの辺りでは尾根に出たようで、頭上にある枝葉からの陽の光も明るい。
冬の常念岳へと登る東尾根ルートとの合流地点もこの付近ではないか。
急登が緩まった安心感がすごい
登山道の左右が下り斜面に変わり、雪の残った尾根道を緩やかに登っていく。
このあたりから前方には前常念の岩斜面が見え隠れするようになり、遠いとも近いとも言えないような高さで目の前に聳えている。
雪の尾根道をいったん下り、再び登り返していくと周りを覆っていた木々が薄くなり雪の急斜面に差し掛かった。
クシャクシャに腐った雪に爪先を差し込み、踏み跡に乗りながら斜面を登ってすぐに樹林帯を抜けた。
あの木の間から見えた前常念は、すっごくぴょーんと尖った感じだった。
岩場へと続くハシゴを登り、前常念へと岩場を登っていく。
高い木々に囲まれていた登山道は、一転してハイマツと岩に覆われた登山道に変わり、眺望が一気に開けた。
あれ。前常念って意外と低いかも?
それにしても眺めが良い
左手側には蝶ヶ岳とその稜線。
振り返れば松本盆地と八ヶ岳、富士山もうっすらと見ることができる。
岩場の方向が変わると常念岳の山頂が見える。
前常念への岩場はなかなかに険しく、そう遠く高い距離にも見えなかったところが30分以上掛かって辿り着いた。
岩場に出たことで一気に高度感が増し、2800mを越える高山へと向かう雰囲気が一層高まっていく。
前常念の直下には岩室があり、その背後に回り込むようにして岩場が続いている。
前常念からの稜線
駐車場での登山開始から2時間56分。
前常念に到着した。
ここからいよいよ稜線パラダイスだと思うと胸が高鳴る
ここから眺める常念岳は鋭く尖り、そこへ向かって稜線がスロープのように続いている。
背後には穂高岳連峰が雪をたっぷりと残して聳えている。
標高は2600mを越え、景色を遮るもののない稜線を山頂へと進む。
この稜線を遠くから眺めていたときには、なだらかで平らな稜線のように見えていたが、実際にここを通ると意外と勾配があり、前常念まで登ってきた足にはジワジワと疲労感が溜まってくる。
けっこう登りがキツいじゃないか・・・
遮る物のない稜線というのは気持ちが良く、標高が高いほどにその有り難さも増すように感じる。
比較的、残雪も少ないため歩きやすく、岩場に足を取られないようにして常念岳へと近づいていく。
油断をするとハイマツの中にズボッとする感じ
常念乗越からの合流地点に到着すると、山頂へはもうひと息という距離。
稜線から本体の斜面へと取り付き、広くなった登山道を折り返しながら山頂へと近づいていく。
前常念からの稜線に隠れていた槍ヶ岳への眺望も良い。
だんだんと北アルプス感が高まってきて良かった。
合流地点から5分ほど登ったところで山頂が見えた。
岩場が積み重なったような山頂部へと近づき、今回ひとつめの山頂の常念岳に到着した。
常念岳山頂
登山開始から3時間41分。
長いルートの中で比較的予定に沿った時間で到着することができた。
こんにちは。また来ました。常念岳。
山頂からは間近に見える穂高岳連峰が大きく見え、槍ヶ岳の穂先も存在感があった。
北側に目を移せば大天井岳、裏銀座などの北アルプス奥部の山々が見渡せる。
常念岳は北アルプス南部の名だたる山が一望できるような山頂にも関わらず、厚い雲が穂高岳や槍ヶ岳に掛かり、時間が経つごとに眺望は無くなっていった。
気温が高めなのか湿度が高めなのか、モヤッとした天気で眺めはイマイチ
蝶ヶ岳への縦走路
常念岳から蝶ヶ岳へは大きなピークを3つ越えて行く。
山頂からも縦走路の様子は一望でき、越えて行く3つのピークの高さと鞍部の深さが見て取れる。
蝶ヶ岳までの距離は5キロほど。
連続する登り返しがキツいルートになる。
実は常念岳に着いたとき、もう帰ろうとも思ってた。
手元の水がね、思っていたより少なかったのだけど。
稜線の誘惑に負けてしまって・・・
常念岳の山頂から一気に高度を下げて鞍部へと下りていく。
樹林帯に入るまで大きな岩が目立つ急斜面で、高低差300mほどの高さにも関わらずそれなりに難易度は高い。
場所によっては足の置き場が狭いところや、高い段差のところもあり、十分に注意をしながら足を置いていく。
15分ほど下ったところで最初のピークを迎えた。
登り返しは5分ほど。
構えていたほどの高さも無く、それ以上にピークから見える蝶槍と蝶ヶ岳の遠さが気になった。
すぐ目の前に見える小さなピークと、その先にある高いピークへ目標時間を設定して目指す。
最初のピークを越えると、下りの斜面は雪だった。
腐って埋まりやすくなった雪に滑りながら、背の低い木の枝にはリュックや服を引っかけながら踏み跡に沿っていく。
踏み跡は明瞭で迷うようなところも少ないが、木々の間を縫うようなところもあり、歩きやすいところを探しながら付けられた跡のようにも感じた。
登り返しは無く、小さなピークを巻くようにして進み、2つ目の大きなピークへと近づいて行く。
これ。踏み跡が無かったら道が分からないな。
鞍部へと到着すると、雪の斜面が真っ直ぐに続き、それを直登するように付けられた踏み跡。
苦労しそうな急斜面ではあるものの、高さの加減からはそう遠くも感じられない。
雪が柔らかいおかげで滑り止めの必要も無く、足を差し込みながら真っ直ぐに登っていく。
登り切ったと思ったところで樹林帯に入り、木々の間を抜けると丸みを帯びた雪のピークに到着した。
まだまだ・・・ぜんぜんイケる。
常念岳を出発してから70分ほど経ったところだった。
蝶槍が意外と遠い気がする。
だからといって戻る気にもなれない場所。
ピークから見える蝶槍は、ここよりも遥かに高く、鞍部は深く長かった。
常念岳の山頂から見る印象とは違って、見えていない物ばかりがここから見ることができた。
振り返って常念岳を見れば、おそらくここが中間地点。
最低でもあと70分は下りと登り返しがある。
ここから見る限りは、今までよりもさらに高い登り返しになりそうだ。
そして水は尽きた・・・
蝶槍に向かって雪の斜面を下りていく。
斜面の勾配は急で、湿った雪はソールを滑らせてグリセードで下りていくのに都合が良い。
いくつもの踏み跡がある中で、登り返しが無さそうなところを選びながら、雪の斜面を滑り、ときにトラバースをして最下部へと下りていく。
鞍部から見上げると、2つめのピークほどの高さまで真っ直ぐに続く雪。
勾配はもっと高くキツいようにも見える。
さらにその上にはハイマツが厚く茂り、登山道はその中へ潜っていくようだった。
ここでの登り返しは思いのほかキツく、雪の斜面を登っては足を停めて呼吸を整え、振り返って2つめのピークからの距離が長かったことを確認しつつ、また上へと足を進めた。
まだ着かないよね。
そんな近くなわけないよね。
無心で登っていくと思いのほか足が進んでいることが早く、気が付くとあんなに高い場所に見えたハイマツが目の前に見える。
登山道がどこへ続いているのかすぐに見つけることができないまま、右へ左へと視線を移し、ハイマツの中へ潜るような登山道を見つけた。
雪から砂地の登山道に変わって歩きやすくなった上に、樹林帯を抜けたことで穂高岳の眺望が開けた。
もう余計なことは考えない。
蝶槍
常念岳で見ていたような厚い雲はなくなり、ボンヤリとした状態ながらも連峰の全てと槍ヶ岳へと続く稜線を眺めることができた。
景色を眺めながら九十九折りに続く蝶槍への登り坂。
2つめのピークから50分ほど掛かって蝶槍に到着した。
蝶槍から先は穏やかな斜面が続く。
まるで裏銀座の稜線を歩いているような緩やかさで、右手側に見える北アルプスの眺めと左手側に見える安曇野の眺めがひと息付くようだった。
蝶槍まで来れば平らだけど、でも蝶ヶ岳まではそこそこ距離がある。
蝶槍から蝶ヶ岳へは約1.6キロ。
急斜面や岩場が無く、ハイマツの間を縫うようにして緩斜面が続く。
このあたりではライチョウが見られるようで、鳴き声が周囲に響いていると思えば、目の前を羽ばたく様子が見えた。
目の前で雷鳥が飛び交ってたけど、気分的にそれどころじゃない・・・
周りにある物は腰の高さほどのハイマツばかりで遮るものがないので、陽射しが強く、風が強く当たる。
蝶ヶ岳に近づいて行くと徐々に展望指示盤の尖った棒が見え始めた。
展望指示盤まで登ると蝶ヶ岳ヒュッテへと緩く下り、その背後にある山頂へ3分ほど登り返す。
広々として穏やかな山頂部は、常念岳の岩が重なった狭い山頂と対照的だった。
蝶ヶ岳ヒュッテで水を買うために、自動販売機でコーラを買って両替しました。
初めて山でコーラを買った瞬間です。
蝶ヶ岳山頂
登山開始から6時間21分。
常念岳からは2時間40分ほどでの蝶ヶ岳到着だった。
途中、水の準備が足らずに水筒の中を切らしてしまったために、思わぬ苦労を強いられた行程だった。
登山道は常念岳直下にある岩場の難易度が高いと感じたが、それ以外は体力がものをいいそうな長さだった。
すっごく長くて疲れたけれど、コーラを飲めば大丈夫だから。
蝶ヶ岳からは、ガレ場の緩やかな斜面の先に槍ヶ岳や穂高岳。
山頂の先には霞沢岳への縦走路が続いている。
安曇野への眺めも良く、広い山頂部は休憩にもちょうど良い。
三股への下山
蝶ヶ岳からは登山口の三股へ下りる。
山頂直下から雪が多く残り、冬道は急斜面をまっすぐに踏み跡が付けられていた。
夏道であれば木々の間を九十九折りに登山道が付けられているところを、真下の沢まで続くような雪の斜面を見下ろしながら下りていかなければならない。
場所によってはソールを滑らせてグリセードをし、カカトを差してステップを作りながら下山をして行く。
こんな急だとは思わなかったっていうのが正直なところ
まっすぐに雪の斜面を下りているところと、夏道に沿って折り返しているところとを繰り返しながら、踏み跡は下へ下へと続いている。
場所によっては雪の急斜面をトラバースするところもあり、どちらかといえば下りよりも登りに使いたいルートだった。
残雪は標高2000m付近まで豊富に残り、踏み跡に沿って登山道を辿る状態だった。
大事な大事なマイクロバリオを木の根に引っかけて曲げてしまいました。
まめうち平を過ぎると、緑も豊富になり、だんだんと三股を流れる沢の音も大きく聞こえるようになった。
左手側には常念岳と、そこから続く稜線が高く険しく聳え、つい数時間前までいたのが嘘のように高く見えた。
ゴジさんはまだか・・・?
登山道に一定間隔に建てられている標識に沿って下り、ゴジラに見える木を過ぎ、階段を下りて残り1キロを過ぎてから登山道の左右には花が豊富に見られるようになった。
登山道を囲むように咲く花を見ながら、三股へと下りていく。
こんなに花が咲いているなんて。
花だけを見に来ても良いなと思った。
常念岳との分岐点を過ぎ、すぐに登山口に出た。
ここから三股の駐車場までは800m。
長い縦走路の終点だった。