硯川から横手山へ
硯川は志賀高原の1600mほどの標高に位置している。
ほたる温泉という名前でも知られ、近くには熊ノ湯、横手山熊ノ湯スキー場などがある。
群馬と長野を結ぶ国道沿いで、車を停められる場所も多い。
ほたる温泉のホテルが並ぶ前山リフト乗り場。
サマーリフトのほか、すぐ近くにスキー場もあるため、周囲には駐車できるスペースも多い。
夏の観光シーズンのためか、乗用車だけではなく観光バスも多く、駐車場が多いとはいえ車を停める場所に戸惑う。
リフト前を一度通り過ぎ、スキー場前に駐車しようとして観光バスに阻まれ、リフトの方へと戻ったところ、1台分のスペースが空いていた。
バスも乗用車もバイクも多い
駐車場の横にある標識から登山道へ入っていく。
広い斜面の道
リフト乗り場前から登山道へと入ってすぐは、まるで作業用道路のような広さが続く。
勾配はキツく、道路のような広さとはいえ足元も決して良くはない。
周囲には草木が多く、ちょうどアザミが多く咲いているところだった。
シーズンになれば、その季節の花が多く咲くことが想像できた。
ツツジも咲いていたのだよね。
7月は。
眺めの良い湿原
急斜面を登り、大きく曲がると緩斜面に変わり湿原が広がっていた。
台地のような地形で、その中の丘に前山リフト降り場が作られているようだった。
ここでもアザミが多く咲き、その中に混じって完全に季節を外したワタスゲが少しだけ揺れている。
左側には笠ヶ岳の荒々しい山壁が見え、その右側の奥に北アルプスが見えている。
山に登る目的でなければ、リフトだけを楽しむのも良さそうな場所だった。
リフトに乗ってのんびりきて花を見るとか良いな
リフト降り場に近づくと、コースは右へと折れる。
硯川からここまで16分ほど。
渋池へ向かって池巡りコースが続き、3分ほどで渋池に到着した。
花もないけれど水面に映る緑が綺麗
渋池には横手山が映り、これから向かう先の遠さが感じられる。
梅雨から初夏を迎える頃には、渋池の水面にはワタスゲが揺れていることもあり、ここはもっと早い季節に訪れてみたいところ。
リフトから歩きやすくベンチも備え付けられているため、観光客もここまではやってくることができる。
ここから先は歩きやすく整備されているとはいえ、大きな石のコースが続き、四十八池までは特に見どころもない。
大型の獣が出るんじゃないかと・・・
深い緑に囲まれたコースは湿度が高く、至るところに苔が茂り、ひとつひとつの様子を見ながら歩いていくのもおもしろい。
背の高い笹も多く、どこかから獣が出てきそうな雰囲気も漂っているような気がしてくる。
枯れ木や木の根の苔を見、周囲の様子を伺いながら進み、硯川から36分ほどのところで志賀山との分岐点に着いた。
左へ進めば志賀山。
右は四十八池という分岐点で、登山道らしいコースと、なだらかで歩きやすいコースとの分岐にもなっている。
10分ほど緩やかに登りながら左手側を見ていくと、木々の間からは志賀山が見える。
木の間から見る景色も良いなと思った
四十八池から横手山へ
さらに5分ほど歩いていくと四十八池が見えてきた。
四十八池の木道には、何人もの人たちが歩いているのが見える。
四十八池と横手山への分岐点に着いたのは硯川から51分ほどだった。
トイレと東屋を見ながら、ここから本格的な登山道へと入っていく。
ここのトイレは掃除中だった。
とてもありがたいなと思った。
笹に囲まれ木々に陰った登山道で、すぐに木段が始まる。
それまでのおだやかで歩きやすい緩斜面から一変して、高い段差と木段が連続する。
いくつか折り返しながら木段を登り、再び分岐点に到着した。
地図は頭に入っている。。。
という思い込み。
笹がいっぱいだし、獣がいるんじゃないかっていう不穏な気持ち。
分岐を間違えて赤石山方面へ
この分岐は横手山へと通じる鉢山と、赤石山へ続く登山道とに分かれている。
背の高い笹と木に囲まれているせいか、標識に進む方向が示されているのにも関わらず、ここで誤って赤石山方向へと進んでしまった。
右へ曲がって鉢山へ登るのが正しいと分かっていたはず。
ところが緩いアップダウンの登山道へと進んでしまい、しばらく気が付くこともないまま、赤石山へと進んでしまっていた。
間違いに気が付いたのは、分岐から10分ほど歩いてからだった。
空に広がってきた雲が横手山に掛かるのを見つけ、曇ってきたことを残念に思っていたところだった。
登山道が向かう方向と横手山が離れていっていることに気が付いた。
手元で現在地を確認して、慌てて分岐へと戻る。
このまま赤石山へ行くか??
いや予定と違うしけっこう距離もある。
分岐点で標識を確認すれば、間違うはずもないほどハッキリと鉢山と横手山が書かれていた。
往復20分のロスタイム
どうして間違えたのだろう
鉢山を越える
分岐点からは急な登り坂が続く。
木段は一段ずつが高い。
10分ほどの急な登り坂で、振り返ると岩菅山の尖った三角形や、赤石山を見渡すことができた。
あれ。鉢山って何もないのかな。。。?
登山道がなだらかに変わると、鉢山の山頂を通ることなく下り坂へと変わっていく。
そこまでの登り坂が急斜面だったように、鉢山からの下り坂も急で段差が高い。
湿気を含んだ地面は滑りやすく、転倒に気をつけながら下りて行くと10分ほどで再び分岐点に到着した。
横手山と硯川の分岐点
今度の分岐は間違えない
右側は硯川、左は横手山へ。
横手山へと続く登山道はなだらかで歩きやすく、周りには笹が高く茂っている。
ときどき視界を遮るような高さで登山道上にまで笹の葉が迫り出してくる。
志賀高原で笹と言えば、大型の獣が出没するイメージが強く、不穏な雰囲気を感じるところ。
草木で見えはしないものの国道やゲレンデからも近く、車やバイクの音が響いて聞こえた。
この音が響いているうちは、きっと心細いようなできごともないだろうと思い、先に見えてきた横手山へと向かう。
熊怖い。ほんとに。
志賀高原といえば熊。
横手山のゲレンデに出る
木段の急斜面と緩斜面を繰り返し、だんだんと横手山が近づいて行く。
硯川と横手山との分岐点から40分ほど歩いたところで、ようやくゲレンデに出た。
ゲレンデの斜面は横手山山頂への取り付きともいえ、ゲレンデを辿っていくことで山頂へ登ることができる。
逆にいえば、ゲレンデを下っていくことで登山口の硯川へ戻ることもできる。
帰りはゲレンデを下りるんだ
雪のないスキー場って急なだけでおもしろみがない
雪のないゲレンデは急で陽を遮る草木もなく、ただただ暑い。
いったん離れていた笠ヶ岳が近くに見える。
ひたすらに急勾配と暑さに耐える登りを続け、ようやく右手側にリフトが見えてきた。
リフトのアナウンスが大きく聞こえ、すぐ近くにある国道を走る音も大きい。
夏の横手山といえば、リフトを利用して山頂へ向かうことができる観光地というイメージが強い。
ただニッコウキスゲが咲く山でもあるため、リフトから離れれば花々を楽しむことができる。
単調な急斜面のゲレンデ登りも、花が残っていると思えば気持ちも変わり、リフトに乗らない良さを感じながら歩いているような気持ちになれる。
みんなリフトに乗って登るから、花を楽しむことができないだろう!
ときどき山頂からゲレンデを下りてくる観光客と擦れ違いながら登る。
登山開始前は雲が多いながらも青空に覆われていた空は、道を間違えたときにはかなり雲が増え、山頂に近づいているこの時点では、ほとんど山頂が雲に覆われてしまっていた。
午前中のうちは晴れるというつもりで登っていたため、ここでの曇りは残念で、ただ志賀高原が見渡せる程度には晴れているので、まだ間に合うと思いながら登った。
登山装備がひとりきり。
とても心細い。
横手山の山頂部
だんだんと賑やかな声が大きく聞こえ始め、横手山山頂ヒュッテが見えてきた。
建物を見ると動物園や遊園地へ行くような服装の人たちが大勢見える。
その中で、ただひとり登山装備で歩くのは場違いのような気持ちになる。
広く、大きな建物が並ぶ山頂部はどこが最高地点かも分からず、あちこちと周りを見渡してみる。
ひとりで地べたに座っていたのだけど所在もないし。。。
リフト乗り場の周りにはそれらしいものがないことが分かり、横手山神社の文字を見つけて、その側に三角点があることが分かった。
最高地点かは分からないものの、三角点は見ておいても良いと思い、賑やかなところを離れて鳥居を潜って行く。
この矢印とか、今日はもうイジワルとしか思えない
横手山山頂
案内の矢印に沿って進み、行き止まりで横手山神社の小さな祠と、横手山山頂の標を見つけた。
硯川から道迷いを含めて2時間52分での到着だった。
この時点で山頂は雲の中に隠れてしまい、見えるはずだった景色は全く見ることができなかった。
渋峠を見下ろし、その先に草津白根山や四阿山を見るつもりでいたので、この真っ白さは残念としか言いようもなかった。
山頂が分かりづらい。
きっとどうでも良いんだろうな。
サンダルの人とか。。。
サッカーをしている子とか。。。
のぞきからゲレンデを下りる
山頂部でしばらく時間を過ごし、下山はヒュッテの裏から、のぞき方面へ下りることにした。
のぞきは、国道に面したドライブインがあり、笠ヶ岳をはじめとして志賀高原を一望する眺望のポイントにもなっている。
木々に囲まれた九十九折りの下り坂で、下から一直線に敷かれているリフトの真下を縫うように続いている。
リフトの真下を通るときに景色が見える程度で、特になにも見えるものもなく、足元の巨石をまたぎながら坂道を下りていく。
こうなったらガツガツ下りてやるんだ
のぞきが近づくと、崩落した斜面に出る。
足元は安定しないガレ場で、何も考えずに足を置くと石ごと崩れてバランスを崩す。
代わりに眺めが良く、真下に国道とドライブインを見下ろしながら、景色を楽しむことができた。
眺めが良いのだけど、足元は崩れやすくて。
たとえるなら白出沢。
車が速いし、バイクは音が大きいし。
道を渡るとか、端を歩き続けるとか無理だから。
早々にゲレンデへ避難しよう。
苔がすっごく歩きやすかった。
まるで新雪の上を歩いているかのよう。
のぞきの到着は、山頂から25分ほど。
ドライブインは賑わい、たくさんの車が国道を上ってくる。
道には歩道もないので、できるだけ端を通りながらゲレンデへと戻っていく。
車が多く走る道を歩くよりゲレンデの急斜面の方が安全に下りられる。
しかもゲレンデの苔が厚く、フカフカとしていたため膝にも優しかった。
のぞきからまっすぐに下り続け、1時間と掛からずに硯川へと戻ってきた。