高社山へ十三仏を見に登る
高社山は長野県北信地域にある標高1351mほどの山。
周辺にはさらに標高の高い山々が並ぶ中で、街に近く、独立した特徴的な山容から信仰の山としても親しまれた。
地元では様々な歌詞に謳われ、特に飯山みゆき野地域では存在感も強い。
山頂へと続くルートは複数あり、その中でも西側の赤岩地区から登る登山道は最も高低差がある。
登山口にある谷厳寺からは、金色の大きな仏像が鎮座し、さらに登山道上には十三個の石仏が並んでいる。
里山と呼べる標高と街からの距離・・・でも高低差はそこそこ。
高社山の登山口は谷厳寺から
中野市街から県道292号線を通り、たかやしろ・見晴らし街道を北上する。
果樹畑に囲まれた見晴らしの良い道路を走って行くと高社山登山道入口の看板と谷厳寺が右手に見える。
谷厳寺が管理する墓地の横から登山道へと入っていく。
草木が繁った緑を潜ると、すぐに不動明王が祀られている。
1mもないほどの大きさの石碑に不動明王が刻まれ、看板が立て掛けられていた。
そのまま登山道を進んで行くとすぐに大きな金色の仏像が見えてきた。
数体の仏像が立ち並び、最初に見えるのは不動明王の立像。
脇に立ってみると不動明王の一段下には阿弥陀如来の仏像が鎮座し、不動明王の後ろの一段上には大日如来と勢至菩薩が鎮座していた。
阿弥陀如来の大きさは8mほどあるとのことで、緑の中にある金色の仏像は物静かで存在感があった。
あまり知られていないけれど、けっこう見応えはあると思う
登山道に戻って緩やかに登っていくとすぐに忠魂社があり、それを過ぎると左手側の緑の中に金色の普賢菩薩が見えた。
谷厳寺の金色の仏像は全部で8体あるそうで、十二支御守本尊として祀られている。
登山道の十三仏
深い樹林帯に覆われた登山道は、眺望も無く、ただ濃い緑の中を登っていく。
忠魂社から5分と掛からないところで、ふたつめの十三仏、釈迦菩薩が登山道の横に祀られていた。
左右から草の迫ってくるような登山道で、緑の光りが注いでいるような雰囲気の中を登っていく。
野生動物避けの電柵を開き、釈迦菩薩から10分ほどのところに3つめの十三仏、文殊菩薩があった。
電柵って「ここから獣がいるかもね」って言われているみたいでちょっと・・・
文殊菩薩からはいったん傾斜が緩まり、5分ほどで普賢菩薩。
普賢菩薩の横には天狗の飛び石という巨石があった。
飛び石は高社山に祀られる薬師の守護だった天狗が、天狗岩へと飛びつく際に踏んだ石とされ、足形が残っているといわれる。
落ち葉の乗った石の上は、実際に見てもどれが足形か分からないものの、そんな雰囲気が無いともいえない様子だった。
普賢菩薩からは勾配がキツく変わっていく。
細かな折り返しの登り坂になり、登山道上には岩も目立つようになった。
少し標高が高くなったせいかツツジが多く見られるようになった。
濃い緑に朱のツツジは目立って美しい。
登山道上の岩の影に5つめの十三仏、地蔵菩薩が置かれ、そこから5分ほど登ったところに薬師如来があった。
6つめの弥勒菩薩があるはずが、地蔵菩薩から薬師如来までの間で見落としていたらしく、分からないまま登ってきていた。
引き返して見に行くか迷うところ。。
意外と花が見られて良かった
木々の緑の中、ツツジを見ながらの登り坂が続く。
8つめの観音菩薩の前にはベンチがあり、高社山の西峰がチラリと見えて休憩しやすいポイント。
そこを過ぎるとすぐに、さらに急な登りに階段が整備されている。
深い緑の急勾配を折り返していくと、観音菩薩から10分ほどで9つめの勢至菩薩。
だんだんと上部を覆っていた濃い緑が明るく、葉の間から青空が見え始めると勾配は緩くなってきた。
登山口から1時間を過ぎたところで稜線上の鞍部にある胴結場へと到着した。
一杯清水、赤岩口近道、山頂稜線へと三つの分岐になる胴結場には、十三仏が三つ置かれ、阿弥陀如来、阿閦如来、大日如来が並ぶように立っている。
木々が開けた場所でもあり、その先に志賀高原が見える。
ここからが熊注意という感じ。
胴結場からの稜線上もトンネルのように木々が茂っている。
急斜面と緩斜面を細かく繰り返し、5分ほどで最後の十三仏、虚空蔵菩薩を過ぎた。
木陰はあるけど陽射しもそこそこ当たる
稜線上の登山道
高社山の稜線は、下から見上げた以上の急斜面を歩く。
距離は長くはないものの、繰り返す登り坂と視界の悪さが体力的にも精神的にもキツく、見えそうで見えない眺望が憎らしい。
山頂に近づいていくほどに、足元には徐々にイワカガミが目立つようになり、登山道の脇にいっぱいに咲いているところも見られた。
一杯清水から15分ほど登ったところのピークには、八幡神社の小さな社殿が祀られ、先には高社山の西峰が見えた。
頭と同じくらいの高さの草木が茂る稜線上で、細かくアップダウンを繰り返し、八幡神社から5分ほど歩いたところで岩室に着いた。
このあたり、熊いるんじゃない?ってソワソワする
岩室は巨岩の窪みを利用して作られたもので、高社山を薬師如来として、岩室を奥の院として祀っていたという。
岩室から右側の斜面をトラバースすると、天狗岩の上へ行くことができ、高度感のある眺望が楽しめる。
天狗岩は遥か下まで見下ろせる場所で、遮るものが全くなく、黒姫山や妙高山、戸隠連峰、その先の北アルプスなど、周囲の景色が一望できた。
足元に鎖が括り付けていたが、鎖を使って下りることも登ることもする気持ちにはならない場所で、景色を楽しんだあと岩室へと折り返した。
とにかく高い。眺めよりも足元が気になる。
岩室からは高さ5mほどの鎖場を登る。
ふたたび稜線上に出て西峰へと近づくと、このルートで一番の急登が始まる。
ロープの架けられた直登ルートと、それを縫うように折り返すルートとがあり、長く時間の掛かる場所ではないものの終盤での急登がキツい。
ほんの少しの鎖場だけど、これだけを知ってる人もいる不思議。
高社山西峰
赤岩の登山口から1時間39分、西峰に到着した。
南西側の眺めが良く北アルプスや善光寺平を見渡せる。
大きな石造の社殿があり、ペンキが落ちかけた看板には「頂上御嶽を祀る」と書かれていた。
西峰から山頂の東峰は5分ほど。
志賀高原の稜線を見ながら山頂へと鞍部を下りて登り返していく。
高社山山頂
高社山の山頂には1時間45分で到着した。
広く眺めの良い山頂で、様々な碑や社殿が置かれている。
南側は木々が開けて眺めやすく、北側にはテラスがあり眺望が楽しめるようになっていた。
周囲の山々や、眼下の街の様子を見渡すことができ、眺望を楽しめた。
木島平スキー場にも下りられるし夜間瀬にも下りられるし、そんな楽しみも良いなと思う。
高社山からの下山
山頂からは西峰へと戻り、登ってきた稜線上を下っていく。
急斜面は下りるのに滑りやすく、歩くのにも苦労する。
山頂から25分ほどで一杯清水へと戻ると、そこからは赤岩口近道を通って下りることに。
「赤岩口近道」と書かれた傾いた看板と、細い踏み跡に繁った緑が、いかにもひとけの無さを感じさせる登山道で、分け入って行くには一抹の不安を感じる。
10mほど入ってみると、リボンが付けられ、しっかりと踏み固められた跡もあり、迷うような難しさもない雰囲気だった。
長い。とにかく。
急斜面を折り返して下りていくルートで、クモの巣を払いながら15分ほど下りると、荒れた林道に出た。
車が入り込んだ跡はあるものの、とても乗用車が走れるような状況ではなく、両側から草木が迫り出したような林道だった。
木々が厚いため周りの景色は見えず、ただ轍に沿って林道を下りていく。
近道の登山口に着くまで林道に出てから25分ほど。
谷厳寺の上に続く農道に下りてきた。