前穂高岳へ岳沢から重太郎新道を登る
マイカー規制のためシャトルバスで向かう上高地。
夏山シーズンは朝4時台からバスが発着している。
駐車場に車を停めると、バス待ちの登山者に声を掛ける乗り合いタクシーと、バス停でチケットを購入する人たちに会った。
人数が合えばタクシーで向かうのも時間が短縮できて良い。
どちらも一律料金で松本市の沢渡の駐車場から30分ほど、朝靄に霞む緑を眺めながら揺られていく。
上高地のバスターミナルではすでに到着した人たちが荷物を整えていた。
たくさんの人たちに混じりながら5分ほど歩くと河童橋へ。
橋から穂高岳を見上げると雲に覆われた中にうっすらと影が見える。
梓川の流れを見ながら河童橋を渡り、岳沢への登山口を目指して遊歩道を進んでいく。
岳沢へ
水の流れを聞きながら遊歩道を進むこと15分。
登山口に到着した。ここから本格的な登山道へと入っていく。
周りには深い緑、足元には大きな石が転がっている。
綺麗に整備されているので、その石段のように登山道に埋まり浮き石も無く歩きやすい。
枝の合間のところどころから穂高岳の稜線が見え、振り返ると河童橋のある小梨平を覆う雲海を見下ろした。
20分ほどで岳沢名物の風穴を通過した。
ここは岩の隙間から噴き出る冷たい風が気持ちが良い。
風穴を過ぎると5分ほどで上へと続くカールの岩場に出た。
この岩場は河童橋から見える景色の特徴的な場所。
このカールの上に岳沢がある。
見上げるとピークの連続する西穂高岳の稜線。
右へと標高が上がって奥穂高岳が見える。
岩場から登山道は再び木のトンネルの中に入っていく。
だいたいこのあたりが上高地と岳沢との中間地点。
標高が上がってくると徐々に身の回りに花もチラホラと見えてきた。
紫の花が多くついたトリカブトが印象的な登山ルート。
再びカールを渡ると岳沢小屋に到着した。
河童橋のスタートから1時間45分ほど。
予定よりも早い時間に到着したせいか張られたままのテントも多く見られた。
重太郎新道を登る
岳沢を過ぎると登山道の周りにはたくさんの花が咲いていた。
右へ左へと折れる斜面を登りながら見渡す花が綺麗で気持ちが良い。
だんだんと岳沢小屋が低く見えるようになり、登山ルートは土から岩が目立つようになり高い段差を登る。
小さな虫も目立つようになり、顔の周りを飛び回るのが癪に障る。
油断をすると耳や口に入りそうになる。
最初の梯子は岳沢小屋から約30分。
狭く急な岩場をよじ登ったあとにやってくる。
30段ほどあるような梯子は真下の崖。
足元を確認しながら梯子を登ると、続く岩場のあとに木製の梯子。
岳沢から岩場を登ること40分ほど。カモシカの立場に到着した。
天候が良ければ上高地を見渡すことができ、焼岳や乗鞍岳などの山並みも楽しめる。
再び大きな岩の転がる急勾配を登っていく。
見上げていた西穂高岳の稜線はだんだんと視線の高さに近づき、明神岳の険しい岩壁も間近に見える。
カモシカの立場から30分ほどで森林限界に出た。
ここまで登って周りを飛んでいた小さな虫も減った。
さらに登ること30分で雷鳥広場。虫が減った代わりにガスが出てきた。
見上げる先は真っ白で、稜線の眺めも無くなった。
雷鳥広場を過ぎると木が敷かれたガレ場を通過。
崩れやすいガレ場も木で整備されているので歩きやすい。
するとすぐに長い鎖場を登る。
長く連続する鎖場を登り切ると奥穂高岳との分岐点の紀美子平に到着した。
紀美子平から前穂高岳山頂へ
奥穂高岳からの合流地点になっている紀美子平は、岩場が広く平らになっていることもあり、休憩をする人も多い。
ここで荷物をデポして前穂高岳へ登る人も多い。
紀美子平と書かれた標の後ろから山頂への岩場を登っていく。
勾配がきつく落石の可能性もあるので注意をしながら。
登山ルートの幅は狭いが高度感はあまり無いので歩きやすい。
ただ捕まる場所の少ない岩場も多いので、十分に足元に注意をしていく。
たまに雲が切れて見晴しが良くなると、すぐ近くに聳える奥穂高岳が高く壁のように見えた。
前穂高岳山頂
紀美子平から30分。上高地からは4時間15分。
前穂高岳の山頂に到着した。
山頂は一面の岩。
厚く流れる雲の中で眺望は少ないので、見えるはずの槍ヶ岳や眼下の景色を楽しむことはできないが、たまに見える涸沢カールや、涸沢岳から奥穂高岳への稜線の迫力が感じられた。
前穂高岳へと向かってくる登山者には奥穂高岳からの縦走が多いようで、話を聞くと前日の様子やこれからの予定が伺える。
天候のために眺望は無くてもここまで登った達成感で気持ちが良く、ガスが晴れるかもしれないという期待感でしばらく山頂でゆっくりしたい気持ちになる。
重太郎新道を下山
下山ルートは登りと同じ重太郎新道をピストン。
鎖場は登りよりも下りの方が気を遣い、浮き石に注意を払って歩いてく。
何人かで歩くグループも目立つので、鎖場や梯子では前の人が通過するまで近づかないように待つことも多い。
11時や12時を過ぎてからも岳沢に近い場所を登ってくる人も多く見られ、予定を聞くとこれから奥穂高岳を経由して山小屋に泊まるとか。
時間を計算すると夕方や日没を過ぎてからの到着になることも考えられ心配せずにはいられなかった。
岳沢小屋までは英語の案内もあるようで、外国からの観光客と多くすれ違った。
前穂高岳からの下山は岳沢まで1時間45分ほど。
上高地までは合計2時間ほどでの到着だった。さほど距離は長くないので高低差と岩場に気をつければ順調に日帰りできる。