鍋倉山のブナの森を歩く
長野県飯山市の西側に連なる関田山脈。
斑尾山から始まり、飯山市を覆うようにして新潟県へ繋がっていく。
標高が高いエリアでも1300m付近と、夏は非常に気温が高く、植生も豊かで深い緑に覆われている。
長野県側の鍋倉高原ではブナの巨木の森が広がる。
光ヶ原高原へ続く県道を上っていくと中ほどに10台ほどの車が止められるスペースがあった。
県道最上部の関田峠までは車で5分ほど。
駐車ができるスペースからもその稜線が良く見える。
これか!
準備を整えて県道を少し下ると藪の枝にピンクのテープが見えた。
緑の壁にトンネルのような穴が空き、中を覗いて見ると奥へと続いている。
あまりの緑の深さに不安を覚えつつも、このエリアの土地勘で目星をつけていた場所、あらかじめ地図で知った場所と考えてもこのリボンと一致する。
身を屈めて緑の中へと入っていくと、すぐにブナの巨木の谷の案内板が建っていた。
森を大切にするための注意喚起で、森太郎を指す道標も一緒に建っていた。
トンネルだ
登山道は緩やかに緑のトンネルが続いていく。
頭よりも低い位置に迫り出している枝が多い。
気持ち良く視界いっぱいに広がる緑を見つつ、枝を潜るたびに頭を下げる。
周囲を見上げると背の高いブナが立ち並ぶ。
空を覆うような緑から陽が射して気持ちが良い。
静かなところで緑が見たかった
10分ほど歩いたところで、大きく左へと折れ曲がった。
なだらかに登っていた登山道は、急斜面を横切るようになり、さらになだらかに変わった。
1人が歩ける程度の幅で、なだらかに登りながらもところどころで木々が斜面から迫り出し、それを跨いだり潜ったり。
狭い登山道を歩きながら、何度も足を上げたり身を屈めたりで体勢を変えるのはなかなかに辛い。
木を潜ったり跨いだり
尾根の直登
登山開始から20分
登山開始から20分ほど、森太郎と山頂への分岐点に着いた。
直進をすると森太郎、鍋倉山の山頂へは右へ尾根を直登する。
尾根の左右にはブナの森が広がる。
葉の間から陽が射して緑が鮮やかに感じられる。
左側にチラリと見える葉の間からは、山肌を覆うブナの森。
緑がいっぱい
接続道
直登10分
10分ほどの直登で、森太郎と接続道の分岐点に着いた。
登山道の端に建てられた道標には、信越トレイル1.6kmを指していた。
接続道は森の斜面を横切りながら、稜線上の久々野峠まで続く。
ここから先、たしか高低差はゆるめだったと思う
接続道は左右の緑が深いものの踏み跡がハッキリと付いているように見える。
なだらかそうに見え、緑を楽しみながら歩けるつもりでいたところ、すぐに直ぐに登山道を枝がふさいでいた。
頭を下げて枝を避ける。
斜面の登山道はとても細く、谷側は木々が茂っているもののとても深い。
狭い道の上で足を上げたり頭を下げたりの体勢も厳しい。
屈んだり足を上げたり疲れました
厚い森のおかげで、まわりの眺望もなく、見えるものは緑ばかり。
陽が当たりやすい場所では、草が生い茂って狭い登山道を隠している。
おだやかな登りも、体勢を変えたりバランスを保ったりの繰り返しで、地味に疲労感が募る。
登山口から52分
登山口から52分ほどで久々野峠に到着した。
序盤の緑の美しさを楽しむ気分は、接続道の地味な大変さで一気に萎えてしまった。
当初、想定していた以上に接続道は長かった。
ものすっごく長かった
接続道の緩やかな登りと、木々を避けるためにかなり疲労感があった。
久々野峠から鍋倉山の山頂へは角度を変えて登っていく。
登山道はまた緑のトンネルが続く。
接続道のような狭さはなく、登りの角度がきつく木や根の段差を越えることが多い。
木を跨ぐのも疲れました
鍋倉山山頂
1時間2分
登山口から1時間2分ほどで山頂に着いた。
何度目かの鍋倉山山頂は相変わらず何の景色も無い。
特に見たいものもなく、山頂の真ん中に置かれた祠を見ながら、端に腰を掛けて休憩を取った。
着いて良かった
山頂から南へは仏ヶ峰や戸狩スキー場へと続く信越トレイルコース。
山頂の南側のコース上には、木々が開けて眺望が楽しめる場所もあるという。
来た道を帰る
下山
下山は久々野峠から接続道を下り、森太郎を見て登山口へ戻る。
山頂直下の下りは木々が迫り出している部分もあるものの、そう気になるようなところもなく、比較的歩きやすい印象で下りていくことができた。
10分も掛からずに久々野峠に着き、核心部の接続道。
登りでも山側から迫り出してくる木々には苦労した接続道、下りでもそれは変わらず、くわえて草が茂っていて足元が見えづらい。
体重を預ける下りの方が足元が見えない嫌らしさがあった。
足元が悪いのに葉っぱで見えないっていう意地の悪さ
登りでは30分以上を掛けて苦労した一帯は、下りでも気を遣う場所で、角度の緩さに反して大変な思いをした。
久々野峠から20分ほど掛けて接続道を下り、直登の分岐に到着した。
このまま狭い斜面の登山道を直進すると森太郎。
巨木の谷を歩くからには、森太郎と森姫を見るつもりでいたので、迷いもなく真っ直ぐに進むことにした。
疲れたけれど森太郎を見ておきたい
接続道から一般的な登山道へと戻ってきたつもりで、分岐点からは歩きやすくなると考えていた。
実際、森太郎と森姫のエリアに入っても歩きづらさは変わらない。
それどころか涸れ沢の湿り気で滑りやすそうな雰囲気すら感じる。
狭い場所に草が茂って足元が見えないことや、枝を潜るようなところも変わらず。
藪感
森太郎
斜面をトラバースするように真っ直ぐに続いていた登山道を5分あまり、唐突に折れ曲がって斜面を下りる。
反対側へ向きを変えて下っていくと、森太郎と書かれた立て看板を見つけた。
登山道の反対側には樹齢や大きさを書いた鉄板が置かれている。
看板の向こうには5mほどの高さのところで折れた巨木が見える。
樹齢400年で幹の周囲は6m近くあるという。
残念なことに2022年に折れてしまい、見ることができるのはその面影だけだった。
折れてしまったのは残念だ
森太郎から広い斜面のなか、藪につけられた踏み跡に沿って行く。
周りがまったく見えず、踏み跡が無ければ自分の位置が分からなくなりそうなほどに草木が茂っている。
現在地も分からず、体感時間を長く感じながら、唐突に森姫と書かれた道標を見つけた。
ここから斜面を下りて100mほどで森姫を見ることができるという。
見下ろすと道も分かりやすそうだった。
正直なところ気が進まない
森姫
藪の中に踏み跡が続く。
それを見ながら下りていくと、周りには大きなブナが立ち並ぶ沢に出た。
沢の向こうには踏み跡は無さそうで、登山道は行き止まりになっているようだった。
森姫らしい巨木は見当たらなかった。
そう呼ばれても良さそうな大きなブナはある。
森姫どこ?
森姫ははっきりと分からないと思いつつ、戻ろうと振り向くと、テープがたくさん見えた。
そんなにしつこく印を付ける物かと思うほど、枝に括り付けられているので興味本位に近づいてみる。
すると森姫と書かれた看板が建っていた。
森姫も倒れてしまってるのか・・・
森姫は樹齢300年を越える巨木。
残念ながら2011年に枯死してしまったそうで、根元から倒れてしまっていた。
幹や根から、森姫の大きさを感じることはできた。
県道へ戻る
森姫から登山道へ戻り、県道へと戻る。
いったん分岐まで登り返して、尾根の直登地点へ。
すっかり曇ってしまったおかげで、登りのような陽が射すところもなく、鮮やかさが無くなったように感じた。
疲れました