参道から戸隠山へ
二百名山や北信五岳などに数えられている戸隠山。
市街地から近く、戸隠山のある連峰は長野県北部にある市街地のどこからでも眺められそうなほど、近い存在になっている。
峰を繋いだ北側には高妻山があり、その隣には黒姫山。
東側には飯縄山があり、どれも存在感のある山容で聳えている。
主な登山口は戸隠神社奥社の参道から。
山岳信仰が盛んだった歴史があり、今でも観光客や参拝者の多い杉並木を通り登山道へと入っていく。
戸隠神社の参道を歩く
3時間600円
車を停めたのは参道の横にある有料の駐車場。
3時間600円、1時間ごとに延長料金が加算される駐車場で、広くたくさんの車が停まることができる。
行き先が奥社なら3時間は十分。
参道の入口から、奥社へ向かって並木道を歩いて行く列があった。
歩いていく人のなかに混じって、ひとり登山装備で歩いていく。
ひとと擦れ違ったり、近い距離で追い越していくこともあるため、いちおうマスクを着けて。
なだらかな登りで、登山道とは比べられないほどに歩きやすい参道も、マスクをしているだけで息苦しく、とても歩き続けられる状態ではなかった。
蒸し暑い
鳥居から10分
参道の入口の鳥居から10分ほど進んだところで随神門を潜った。
鳥居と奥社のほぼ中間地点に建ち、深い緑の中で真っ赤な木壁、屋根には草や苔が生して趣深い。
随神門を潜った先は、参道の雰囲気がガラッと変わったように、背の高い杉並木が続く。
さらに10分ほど歩くと、なだらかな登りは石段が続くように変わった。
整備された歩きやすい石段とはいえ、蒸し暑さの中で高い段差は太ももに厳しい。
鳥居から25分
鳥居から25分ほど。
八方睨みコースの登山口に到着した。
奥社の手前、社務所の真下にあり、登山道の案内と注意喚起の案内が掲げられていた。
登山口からは、いよいよ登山道らしい急登が始まる。
八方睨みコース
社務所の裏側へ回り込むようにして登山道へと入る。
参道の穏やかな登りから一変して、人ひとり分の急激な登り坂。
右へ左へと折り返しながら、一気に高く登っていく。
ほんの10分ほどの登りで、汗が噴き出して顔を伝って落ちていく。
暑いことは分かっていても、標高1000m以上のところまできて、まさかこの熱さを体感するとも思ってもみなかった。
10分ほど登って足を停め、いったん荷物を下ろして水を補給する。
序盤からこの調子で大丈夫か?という不安を感じながら、とりあえず無理だと思うところまでは登ることにした。
諦めが肝心だと
足を停めたところから5分ほど登り、急登から尾根上に出た。
いったんは勾配が緩まるものの、このあとに再び急登が始まることも分かっているために油断もできなかった。
木々の間から空を見つけて見上げると、葉っぱの先には戸隠連峰の岩壁が見える。
斜面が緩まったのは、時間にして2・3分ほどのあいだ。
すぐに尾根を登る急勾配が始まった。
深い緑に覆われて意識することはなく、高度感も感じないものの、左右は切り立った岩壁のような崖。
暑いからと荷を下ろすにしても、登山道から外れた場所では斜面の下までザックが落ちていくよう。
参道を歩いているときから、そう遠くは感じなかった戸隠連峰の岩壁は、登山道を登ってきたこの時点でも、同じように遠くは感じず、なのになかなかに近づいてこない。
とにかく「暑い」としか思えない樹林帯の中で、ようやくひとつめの鎖場が見えた。
百間長屋
鎖場が見えると、百間長屋が近い。
百間長屋は刳り抜いたように岩壁がくぼみ、それが廊下のように長く続く。
高い岩壁の真下だけくぼんだ様子は不思議でもあり、地蔵が祀られているところは趣があるところでもあった。
そういえば、初めて来たときに熊を見た場所
鳥居から54分
登山道の最初の鎖場は、参道の鳥居から54分ほどでの通過だった。
鎖が掛けられていても、岩に段差があるため、自然に立って登っていくことができる。
木々の間からは、すぐ近くに高い岩壁が迫って見え、その真下が百間長屋だった。
岩壁の手前には、ふたつめの鎖場。
最初の鎖場と違って段差が高く角度もキツかった。
登ると岩壁の真下に出て、百間長屋の特徴的な岩のくぼみが続いていた。
まるで登山道がありそうな右手側は行き止まりで、左側へ続いている岩壁の真下をくぼみに沿って進んで行く。
鳥居から1時間7分
鳥居から百間長屋は1時間7分ほどだった。
岩壁で木々が生えないのか、百間長屋からは飯縄山や斑尾山をよく見ることができた。
暑い中を登ってツライだけだった登山道が、ここでようやく風に当たることができ、景色を見てリラックスすることができた。
百間長屋の岩壁を過ぎ、木々に覆われた登りに差し掛かったところで、腰を下ろして水を補給することにした。
風を受けることができたとはいえ、暑さは変わらず、まだ登山道のほとんどが樹林帯。
汗は滝のように流れるため、いくら飲んでも足りないくらいだった。
!
ただ暑いのは、昆虫にとっては好都合な季節らしく、腰を下ろしたところで大きなハチに付きまとわれた。
水に口を付けているときにはまったく気が付かず、なんだか大きな羽音がすると思う程度だった。
少し落ち着いて見渡すと、親指とは言わなくてもそれに近いサイズのハチで、2・3匹が身の回りを旋回しているようだった。
慌てて逃げてはいけないと思いながらも、羽音が間近に聞こえるのは気持ちの良いものではなく、下ろしていたザックを掴んで身をかがめたまま、そっとその場を離れた。
落ち着いて離れれば、危険は無いと思いながらも足は早くなる。
数メートル移動したぐらいでは羽音は遠ざかりもせず、うっとうしく感じながら身をかがめてザックを掴んだまま、斜面を登っていった。
なかなか、、、いなくなってくれない
時間にしておそらく1分か2分か。
ようやくうっとうしい羽音が聞こえなくなって、改めてザックを背負った。
登山道から5mほどの高さの岩壁が刳り抜かれ、中に祠のような物が造られているのがチラリと見えた。
百間長屋を過ぎてから、すこし落ち着こうとしたところが、ハチがいたおかげで、慌ただしく行程を進めてしまった。
岩壁の中ほどに見える祠も、一度は見てみたいと思っていたものの、暑さに参ってしまったことや思いがけず登場したハチで、また機会があれば見るくらいの気持ちになってしまった。
もうイイ
鎖場の連続
百間長屋を過ぎると、西窟というくぼみを過ぎて、山を回り込むようにして斜面へと取り付いていく。
見えていた飯縄山が隠れる代わりに、西岳が間近に見えるように景色が変わった。
西岳が見えると、本格的に鎖場が続くように登山道が変わる。
この地点では高さや急な勾配はなく、鎖があれば安心というぐらい鎖場だった。
まったくの序の口
鎖場を登り切ると、トンネルのような緑の中を潜り、つぎの鎖場へと差し掛かる。
まるでコンクリートのように固まった中に小石が埋められたような岩壁で、直登したあと、横へ移動して尾根上に登る。
手がかりや足を掛ける場所が多く、広さもあって鎖が掴みやすい。
鎖場を登り切ったところは狭い岩尾根の上で、細く登山道が先へ続いている。
回り込んで見えなくなっていた飯縄山もよく見え、一気に増した高度を感じられるようだった。
やっぱり景色が見えると高さを感じる
次の鎖場は10mほど進んですぐに角度のある岩壁を登る。
岩の壁面には小石が露出しているため、足や手を掛ける場所はいくつもあった。
片手で鎖を握り、片手で岩のくぼみに手を掛けながら、足が載せられるところを確認しながら登る。
足を差し込めるような大きなくぼみもあり、登ることには苦労はしなかった。
岩場が続くのは好きな人にはたまらないのだろうな
鎖場を登ったところは、狭く木々が茂った尾根だった。
少し歩いて頭の上の葉が開けているところまで来ると、すぐ間近の高いところに蟻の塔渡りの取り付きが見えた。
間近には見えるものの、横への距離も少なくあの高さまで登っていく。
間近に蟻の塔渡りを見ながら細い尾根の登山道を進み、段差を踏みながら鎖場が近づいた。
左手側は崖のように深く落ち、右側も木々の茂った急斜面。
いっぱいの緑に埋め尽くされているために高度感はないものの、間違いなく深く下へと落ちている。
まるで橋の上のように、両側が切れ落ちた鎖場を登った。
高度感は無いけれど実際高い
細い登りの鎖場の上には、岩の壁面に鎖が取り付けられ、張り付くようにして岩の段差を登るようになっていた。
木々の間から見える先には、この次に登る胸突岩が見える。
あの高さまでは確実に登る
戸隠山といえば蟻の塔渡りが難所として知られている中で、どちらかといえば胸突岩の方が緊張感を持って通過している。
その一帯がいよいよ近づいてきたと思うと、いよいよ登山道の終盤という思いと、気が抜けないという思いが強くなった。
前方に胸突岩を見上げながら斜面を登り、垂れ下がっている鎖に手を掛けて段差を登る。
胸突岩の直下まで登り、ひと息入れてから岩に取り付いた。
ここからが本番という感
鎖が取り付けられているものの、鎖よりも岩に手を掛けた方が登りやすく、段差もしっかりしているために足を掛けやすい。
ただ高さと角度があり、また視界を遮るものがなく、どこまでも見渡せるような景色が緊張させる。
上へと登るほどに高さを感じ、最上部では数メートルほど横へと移動して尾根上に立つ。
この横への動きが苦手で、登ることは苦にしなくても、ほんのわずかな距離の水平移動に緊張感が高まる。
鎖場の横移動って嫌だなと思う
胸突岩の上は、登ってきたときから見えていた景色が安心して眺められる場所で、わずかなスペースではあるもののひと息ついて飯縄山や荒倉山を眺めることができた。
蟻の塔渡りへは高い岩場を登る。
左側の眺望が良すぎるため、高さを意識すると足がすくむようだった。
蟻の塔渡り
鳥居から1時間35分
鳥居での登山開始から1時間35分、蟻の塔渡りの取り付きに着いた。
左前方には西岳、細いナイフリッジが続く先には八方睨みの存在感が際立っていた。
山頂は右側にふたつめほど。
八方睨みに比べると地味で見た目に山頂とは思えない。
取り付きからの眺めをひととおり楽しみ、いよいよ蟻の塔渡りへと進んで行く。
キタ
蟻の塔渡りの序盤、右側へ下りるエスケープルートがある。
エスケープルートとはいっても鎖を伝っていく必要がある岩場で、途中から蟻の塔渡りへと戻ることになる。
はじめのうちは高度感があるのは左手側で、右手側はエスケープルートもあって緊張感も高くはない。
足場の幅も擦れ違うことはできなくても、歩くには支障の無いほど。
ただ小石が露出したようなゴツゴツとした足元に、躓かないように注意をして歩いていく。
エスケープルートとの地点、2mほどの高さを登る。
左側は何十メートルも落ちている細尾根で、手を使わなければ登れないような段差は緊張感が高い。
高度を感じなかった右側も、数メートル高くなっただけで高度感が増した。
2・3年振りで記憶が薄くなってるみたい
切れ落ちた向こうには西岳。
遮るものの無い眺望に山肌の険しさが際立って見える。
狭く、決して平坦ではないナイフリッジの上で、ここまでの暑さのせいか太ももにはピクピクとした感覚がやってきていた。
小石が浮き出したような、数センチの小さな段差でも、つまづいてよろめくだけで只事では済まないことになりそうな予感がある。
視界を遮るものが無いから眺めは良い
2mの下り
蟻の塔渡りを中ほどまで進むと2mほどの下りになる。
登りならば見上げて渡ることのできる細尾根も、下るとなると切れ落ちた左右が視界に入り、難しさが増したように感じられる。
下りきったところは若干の広さがあり、ひとりが立つには余裕のある踊り場のような広さ。
腰をかがめて手を付いて下りることもできるところではあるが、ここは飛んだ方が楽という話しもあり、着地でよろめくことがなければ、段差に掴まって一歩ずつ下りるよりは安全な方法でもある。
下りるのは難しい
蟻の塔渡りの高さを感じる場所
蟻の塔渡りでも最も高さを感じる場所で、ただここまで来くれば残りは登りになるので、比較的歩きやすさがある。
足を置ける場所はますます狭くなってきているが、さすがに中ほどまで歩いた慣れもあり、ゆっくりと登ってゆくだけで良いという気楽さもある。
エスケープルートとの合流地点に差し掛かり、蟻の塔渡りも最終盤、剣の刃渡りを残すところとなった。
この一帯でもっとも細く、幅40センチもないほどの岩の細尾根。
数メートルほどの距離ではあるものの、さすがにバランスを崩すことのできない場所で、慎重に歩みを進める。
剣の刃渡りを歩くのが難しい場合、左側に足を降ろせるほどの段差があり、いったんそこを踏んで通過するほうが遥かに楽なので、危険を感じる場合は左側へ一歩下りることがおすすめできる。
思い切って左の段差へ下りた方が良い
剣の刃渡りを通過して蟻の塔渡りを振り返る。
わずかな距離の核心部で、このコース上で最も注意喚起される場所。
浮きあがるようで蛇行した尾根は景色としても楽しめ、歩いたあとだと思い入れも加わって感慨深くも見られる。
足の塔渡りを振り返ったのはネットでよく見かける
八方睨み
蟻の塔渡りを過ぎると、右側に深く落ちた崖を見ながら急斜面を登っていく。
岩の突き出た赤い土の斜面。
飯縄山や眼下に参道並木が見え、少し登ると蟻の塔渡りも全景が見えた。
八方睨みの直下まで登ると、岩の隙間を登るような狭い鎖場になった。
段差が高く、太ももを持ち上げる手助けに鎖を掴む。
ザックを岩に擦りながら体を持ち上げて登り切った。
段差が高いのがやっかい
鳥居から1時間49分
鳥居から1時間49分での到着だった。
八方睨みは西岳へ向かう登山道の分岐点で、コース上では最も長めが良い。
間近に見える西岳の背後に白馬岳が見え、さらに西側へと視線を移すと北アルプスが長く連なっている。
暑さのせいか飯縄山は霞んで見え、蟻の塔渡りも強い陽射しを反射しているようだった。
戸隠山の北側に隠れていた高妻山も、ここまで登ったことで全容が見えた。
高妻山はひときわ存在感があるように見える
八方睨みから戸隠山の山頂までは、いったん八方睨みを下りて、ピークをひとつ過ぎて行く。
時間にして僅かなものでも、ここまで登ったあとのアップダウンは、歩いていくのに若干気持ちが下がる。
それでもここまで登って山頂を踏まないというのも満足できないため、山頂へと向かって歩いた。
右手眼下には杉並木と、その周囲に広がる森の緑。
木々の茂った中、葉を潜りながら登山道を下りては登り、緩やかなピークをひとつ越えた。
振り返ると蟻の塔渡りを横から見ることができる。
上から見下ろしたり、間近で見ると意識しないようなアップダウンが見える。
細いし、登ったり下りたりするし、大変だ
少し歩いてみては振り返り、蟻の塔渡りを確認して進む。
この形を見るために、このコースを選んだといっても過言ではなく、満足いくまで十分に眺めた。
戸隠山山頂
鳥居から1時間58分
参道の鳥居から1時間58分ほどで戸隠山の山頂に着いた。
頭上には青空が広がっているものの、木々に囲まれているために眺望はあまり得られず、間近に見える高妻山の他には、木々の隙間から北アルプスが少し見える程度。
ただ八方睨みの特徴的な形状がよく見え、それを楽しむにも山頂は良い。
そう広い場所ではなく、腰を下ろして休憩をするには、他の登山者の邪魔になりそうなほど。
山頂は狭いし眺めはアレだし、いろいろな意味で八方睨みがイイと思う
特に眺めていたい景色も無く、ふたたび蟻の塔渡りを歩くため八方睨みへ戻った。
下山
戸隠山からの下山は、登ってきたコースをピストンすることにしていた。
山頂から来た道を戻り、小さなピークをひとつ越えて八方睨みへ。
これから向かう蟻の塔渡りを眺めると、登りで追い越した登山者のひとりが、ちょうど剣の刃渡りに差し掛かるところだった。
八方睨みへ登り返して鎖場を下り、少し進むと蟻の塔渡りを歩き終えた表情を見ることができ、感想を聞くと「二度と来ない」と話していた。
初めて来たけれど・・・だそうで。
蟻の塔渡りの下り
蟻の塔渡りの下りは、ほんの少しの傾斜でも登るより下る方が難易度が高く、変わった雰囲気に緊張感が高まる。
体を持ち上げるよりも、重力に耐えながらゆっくりと下ろす方が筋力を使い、加えてバランスを崩してはいけないという思いで、余計に力がこもるようだった。
想像はしていたけれど下りの方が難しい
尾根から外れたところの段差を利用して剣の刃渡りを過ぎ、エスケープルートを見ながら下り口を過ぎて行く。
中ほどにあった踊り場のような場所まで下り、そこからの2mほどの登りが最も緊張感が高く、手を使って蟻の塔渡りの上に立つ。
真下に広がる森が視界に入るところや、飯縄山などの遠くの景色までも蟻の塔渡りを歩きながら見えてしまうため、余計に高度を感じるようにも思えた。
狭いよりも下る方が緊張する
岩の表面に突き出た石のような小さな段差に気を配りながら、蟻の塔渡りを歩き終盤に差し掛かった。
大きく登っていた蟻の塔渡りのアップダウンの一部分、下山では大きな下りに変わった。
登るのと違い前方には掴まれるものがないため、腰をかがめて後ろ手に手を突きながら慎重に下りた。
蟻の塔渡りと呼ばれる細尾根は残っていたものの、ここまで来ると気を遣うところも終わり、ひといきといったところだった。
油断はできない
蟻の塔渡りの直下には胸突岩という角度にきつい岩場があり、登りでも注意を払っていた場所だった。
蟻の塔渡りから2・3mほど岩場を下り、胸突岩の下り口に立つ。
岩壁を真横に数歩進んで、鎖に沿って下りていく。
鎖場は登るよりも下りる方が難しいことが多く、胸突岩も下りる方が気を遣う場所だった。
片手で岩に手を掛け、鎖を掴み、足が置ける場所を探りながら、一歩ずつ慎重に下りる。
急な岩場って足元が見えないこともあるから踏み外さないように。。。
登ってきたひとつひとつの鎖場を慎重に下りながら西窟まで下り、ようやく緊張感が高まる地点は通過した。
百間長屋に差し掛かるところでハチに追われた通るため羽音に注意をしてみたところ、特に気になることも無かったため足早に通り過ぎた。
ハチ怖いから
百間長屋から下の尾根は、厚い木々に覆われていることもあって風の通りが悪かった。
登りでも暑さに苦しみながら、ようやく風の当たるところまで登ってきていた。
下りになれば快適に変わっているというわけでもなく、昼下がりの温まった空気の樹林帯は、下りでも籠もるような暑さだった。
下りるほど暑さが戻ってくる
早く傾斜のなだらかな参道まで下りたい一心で、尾根の急坂を下りていく。
標高が下がるほどに暑さが増すようで、汗が滝のように流れる。
ときどき足を留めて水分を取り、登山道にそって標高を下げていく。
厳しい
山頂から1時間を過ぎ、戸隠神社奥社の社務所まで下りてきた。
八方睨みコースの登山口で、ここからは参拝社も多く、その中に混じって鳥居へと下りていく。
傾斜はなだらかで、広く歩きやすく、ただ身につけたマスクが汗を吸い、まるで濡れたティッシュを口に当てているかのように呼吸ができなかった。
マスクをして運動をしている人は、いったいどうやって呼吸をしているのだろうかと不思議に思うほど。
擦れ違う参拝社の中には、マスクをしていないひともおり、その様子を見ながらマスクをして呼吸困難になっているのが馬鹿馬鹿しくも思えた。
息苦しいを通り越して窒息しそう
なだらかな参道を下りて鳥居に到着した。
山頂からの下りは1時間26分ほど。
登りも下りも体感が長く大変な行程だった。
とにかく大変だった