万仏山の登山道
万仏山といえば登山道にならぶ石仏と、その行き先にある万仏岩。
巨岩の影に弘法大師の像が祀られる。
瑞穂地区の登山口から万仏岩を経由して山頂へ向かう登山道が一般的で、北側の岩岳尾根から三界峰を経由する登山道と、南側の木島平村から登る登山道がある。
谷筋の万仏岩を経由する登山道を見下ろすように、尾根上を歩くバリエーションルートの行者尾根がある。
里山とはいってもルートが興味をそそるルートが多い
万仏山の行者尾根へ
万仏山の一般的な登山口にあたる飯山市瑞穂地区は、野沢温泉へ向かう15分ほど手前にある。
4月下旬から5月にかけて菜の花が一面に咲く地域で、菜の花祭り会場になっている東小学校に向かって進む。
東小学校から見える集落を上り、阿弥陀堂へ向かっていく。
阿弥陀堂から林道を通った先の登山口へ。
万仏岩経由の登山口と岩岳尾根との分岐点で、林道脇の広くなっているところに車を停めた。
特に駐車場などはなく、車3台ほどが停められる程度の空き地。
林道で車がけっこう泥だらけになった
準備を整えて登山口へ。
「万佛山入口」と書かれた標の脇から沢に架かる橋を渡り、まるで参道のような登山道を登っていく。
左右に石仏が並び、真っ直ぐに続く登山道の先にも石仏が見える。
登山口から5分
登山口から5分ほど。
振り返れば、まだすぐ近くに入口が見えるほどのところに26番目の石仏があり、その向かい側に行者尾根へと分かれる分岐があった。
まっすぐに進めば万仏岩という登山道を、行者尾根への矢印に沿って左に曲がる。
行く先には壁のように高い尾根が立っているのが見える。
行者尾根って板が山肌に突き刺さってるみたい
尾根といえば緩やかに盛り上がっていくように思えるところが、この行者尾根はいきなり立ち上がる板壁のような形状で、「行者」という名前の通りの修行に使いそうな雰囲気が伺える。
行者尾根
行者尾根は、緩やかな傾斜から一気に角度をあげて尾根へと登っていく。
ロープの架けられた斜面に取り付く。
木が生えた段差に足を掛け手を掛けて急斜面を登っていく。
高さにして、そう高い段差ではない尾根ではあるものの、落ち葉の積もった柔らかな土は踏み込むと滑るような感触で頼りない。
高い。高いよ。ここ。。。ホントに。
手を伸ばして石やロープを頼りに尾根へ登り切ると、斜面の反対側は高く切れ落ちた崖になっていた。
かなり下の方で沢が流れる音が聞こえる。
枝や木が茂っているため高さは感じないものの、里山とは思えないほどの尋常ではない高さがあった。
モフモフがかえって不安。
だって崩れそうだし。
登ってきた急斜面を見ても、沢の音がする方を見ても振り返っても、細い尾根上は高さがあり、柔らかな土の足元に不安定さを感じる。
崖の上に続く細尾根は木の枝が左右に広がり、根が張り出していているところもあった。
軟らかな土を歩くよりは、根があった方が足が掛けやすく歩きやすい印象もあり、つまずくことのないように気をつけながら尾根を登っていく。
周りの斜面にはヤマザクラが咲いているのも見え、振り返って瑞穂地区を見下ろすと菜の花の黄色が広がっていた。
横から見る桜も、上から見下ろす菜の花も良い
行者尾根に登って20分
行者尾根に登って20分ほどのところで、ほんの50センチほど、尾根が切れた場所に出た。
傾斜は平坦に変わり細尾根とはいえ歩きやすい状態、そこで突然に尾根上の岩が切れて2mほど窪んでいた。
飛び越えるようにして窪みを通過すると、急斜面に差し掛かった。
行者尾根といえば、イワウチワが多く咲くことも見どころのひとつ。
細尾根に目一杯に咲くイワウチワは今にも踏みしめそうなほど。
小さな花を踏むのは忍びない
細尾根と急勾配とを繰り返して、だんだんと周りの景色が視界の高さに変わっていく。
馬曲山からも登ってみたい
行者尾根の一番の難所は、万仏岩からのルートとの合流地点が近くなったころだった。
両足を置けるほどの幅で、左側は深く落ちた崖。
右側の岩壁は盛り上がるようにして登山道に迫り出している。
身をよじるようにして岩を避けると、崖側に身を乗り出すようで恐怖心をそそられる。
ロープが架けられているため手を掛け、枝に掴まり、再び尾根上へと登る。
尾根上は狭く、右手下の急斜面には万仏岩からのロープが見える。
ちょっとホッとした
山頂へ
万仏岩からの登山道と合流すると、すぐに急斜面が始まる。
まるで土の壁のような斜面に取り付き、土の段差に足を掛けて登っていく。
急斜面は登山道の下まで続き、下を向いた高度感は行者尾根なみに感じられる。
足を踏み外せば50mくらいは落ちるんじゃないかと。。。
急斜面の上は岩の細尾根で、段差を左右に縫うようにして登っていく。
岩尾根を越えると、イワウチワの咲く土の斜面に変わる。
蟻の塔渡りが見渡せるのもこのあたり。
戸隠山の蟻の塔渡りが知られるなかで、万仏山にも蟻の塔渡りと呼ばれる岩の細尾根がある。
横に移動する戸隠山に比べて、万仏山は傾斜のある岩尾根で短い上に木々が茂っているため高度も感じられない。
蟻の塔渡りといえば戸隠だけど、ここも蟻の塔渡り
蟻の塔渡りの下は窓岩と呼ばれ、岩が橋のようになっている。
窓岩へと下りてみると大日如来が置かれ、橋のような岩は向こう側には南側の馬曲山が見える。
窓岩を過ぎ、少し登ったところで見晴岩に到着した。
万仏山の中で、もっとも眺めの良い場所のひとつで、山頂よりも眺望を楽しむことができる。
遠くに霞んで見える妙高山、その左手前に斑尾山があり、千曲川を挟むようにして菜の花が咲いている。
左側には馬曲山。
見晴岩は思い入れのある場所。
眺めも良い。
見晴岩からは再び細尾根に戻る。
万仏岩との合流地点から山頂までの間で、おそらくもっとも細い尾根で、左右に高さを感じながら山頂に向かって水平に移動していく。
細尾根の右側には平たい岩が重なったような屏風岩が見える。
細尾根を渡り山頂へ登りに取り付くと、最後の奇岩の梯子岩へと続く。
梯子というよりは階段のようで、土の急斜面の上に置かれたような見た目だった。
梯子岩は段差が高く勾配も急なため、木に手を掛け、ロープに掴まって登っていく。
梯子岩って踏み台みたいな見た目だなと思いました。
梯子岩を登ると、山頂への稜線に到着した。
南峰と山頂との分岐点でもあり、左側の山頂へ向かっていく。
万仏山山頂
1時間10分
登山口から行者尾根を登って1時間10分ほど、万仏山の山頂に到着した。
山頂の大木にはテープが巻かれ、標高を記した看板が建てられている。
樹林帯に囲まれた山頂は特に変わった眺望も無く、遠くに妙高山、周囲の山塊の峰々が見えた。
遠景を楽しむというよりは残雪と地形を楽しむといった雰囲気ともいえた。
北峰側は雪が残り、その先に見える三界峰まで雪を踏みそうな雰囲気だった。
青空と残雪と山のデコボコが綺麗だった
眺めの良い南峰
万仏山の山頂をあとにして南峰へと向かう。
山頂から10分ほどの南峰は、少し先にある展望台まで足を伸ばすと木島平側の眺望が得られ高社山への眺めが楽しめる。
眼下には馬曲地区が見え、ちょうど馬曲からの登山道上にも位置している。
雪の残りやすい場所ではあるものの山頂からは歩きやすく、万仏山へ来たら南峰と展望台もあわせて楽しみたい。
馬曲からの登山道が見えていたのが珍しい感じ
下山
南峰からは再び山頂方面へと戻り、細尾根を下りて行く。
梯子岩の段差は登るよりも下りるのに気を遣う。
ロープと木を頼りながら梯子岩を下りて細尾根へ。
登りでは平気だった尾根も、下りになると見える景色が変わって高度感が煽られるところもあり、緊張の高い尾根道だった。
特に蟻の塔渡りは下りが怖い
高いのは苦手で・・・
行者尾根との分岐点では万仏岩へと下りていく。
ロープを頼りにできるとはいえ、湿気を含んで柔らかく崩れやすい急斜面は下りるのには歩きづらい。
万仏岩まで下りると、そこから下は歩きやすい登山道。
両側に石仏を見ながら杉林の中へと下りて行く。
まだたくさんの人が入った形跡も少なく、僅かな踏み跡を見ながら登山口へ。
岩岳尾根や三界峰など、万仏山の山塊を見る興味を持てた行者尾根だった。
万仏岩から登山口へは安心感満載な下山でした