阿弥陀堂から万仏山へ登る
上信越自動車道を豊田飯山ICから野沢温泉方面へと進む。
国道117から県道419へと入り、雪ん子そばの工場を横目に瑞穂地区福島へ。
傾斜地の集落を抜け、狭い農道を通って阿弥陀堂まで来ると、5台ほどの車が停められるスペースがある。
瑞穂地区福島にある万仏堂は、20年ほど前に映画「阿弥陀堂だより」で使われたセットが残る。
棚田に蕎麦が咲く長閑なところで、千曲川越しに斑尾山や妙高山を見ることができる。
地区の最上部に観光用の駐車場があり、そこから10分ほど歩いて阿弥陀堂へと向かうことができるが、阿弥陀堂の近くにも5台ほどが駐車できるスペースがあり、今回はそこに車を停める。
阿弥陀堂から登山口へ林道が続いているため、雪などの状況が良ければさらに車を乗り入れることはできるが、積雪が残っていることや、雪が無くても擦れ違いがしづらいほどの幅員の狭さ、土砂などを思うと阿弥陀堂から歩いていくのが安心感がある。
山開きするまでは状態は悪い物だっていう前提。
登山口へと向かう林道から思っていたとおりの積雪で、ザラメ状の固い雪が20〜30センチほど残っている。
流出した土砂や、冬の間に落ちた枝葉も多く、乗用車が乗り入れられる状況では無かった。
登山口から万仏岩
ココに来たのは何度目か・・・
駐車場から20分ほどかけて登山口に到着した。
万佛山入口と書かれた小さな立て札があるのみで、登山口とも分かりづらい。
登山口から小川を渡り、石仏に沿って杉林を登っていく。
積雪でハッキリとした踏み跡がなくテープがところどころにチラりと見える中、等間隔で規則的に植わっている杉はどこでも登山道のようにも見え、気が付くと登山道の石仏から離れてしまっているようなこともあった。
段差の上に積もったままの雪は、空洞化しているところも多く、何気なく置いた足が膝や股下まで踏み抜くことも多く、足の置き場を疑いながらの登りが続く。
たくさんの石仏を見に来た
登山口から20分ほど登ったところで、杉林を過ぎ斜面が急傾斜に変わった。
落ち葉がいっぱいで湿った傾斜は滑りやすく、階段のように段差のあるところに足を置いていく。
万仏岩には登山口から30分ほどで到着した。
大きな岩の下にお堂が建てられた万仏岩。
お堂の横には大日如来座像と弘法太師座像が祀られ、立ち並んでいた石仏の最終三十三番が置かれている。
万仏岩の左側から登山道が続き、万仏岩の上部にある稜線へと急登が続いている。
やわらかな土の急斜面で、山開き後にはロープが張られるほどの登り坂。
草や木の根元を手がかりに急傾斜を登り、上部まで登ったところで鎖に手を掛けることができた。
知っている場所だけどロープが無いのはひと苦労。
蟻の戸渡りから屏風岩
万仏岩の急斜面を登ると切り立った尾根上に立つ。
狭い板状の岩尾根で、登った向こう側は数十メートルの崖になっている。
木が茂っているので高度感はそう感じられないが、確かに高さはあり、さらに進む方向を見ると、まるで崖のような高さを折り返しながら登山道が続いている。
擦れ違うこともできないような狭さで、草や木の生えたやわらかな土の登山道。
右側の崖を見下ろしながら、山側に左手を突いて段差を折り返して登っていく。
土の狭い道って崩れそうな気がして怖い
登り切った上も岩尾根で、相変わらずの高さと狭さが続く。
木々の隙間からは岩峰が立ち上がっているのが見え、山頂の稜線が近くなった様子も見えた。
ただただ岩尾根が続く登山道で、当初は焦っていた高度感も徐々に麻痺していく。
「蟻の戸渡り」「窓岩」と名付けられた地点も、岩尾根が続いていく中ではどこなのかも分からないまま、周囲の木が開けた場所に出た。
振り返ると福島の集落は遠く下に見える。
妙高山への眺めも良い。
まだ上へと続く落ち葉の上を歩くと、山頂直下に出たようで、山の斜面に突き刺さるように岩尾根が狭く続いていた。
落ち葉の積もった岩尾根は脆さがあるようにも見え、木の根をよけながら端に寄らないようにして進んだ。
尾根の右側には、いくつもの細かな板が張りついたような巨岩壁があり、これが「屏風岩」と名付けられているようだった。
ようやく岩尾根が終わり、山頂稜線を間近に見ながら急登に取り付く。
ロープが張られた岩の急登で、岩と木の根の段差を踏み分けながら登っていく。
万仏山の山頂
岩の急登を登ると、山頂はすぐそこだった。
登山口から1時間12分。
大きなブナの木にテープが巻き付けられた山頂に到着した。
水ヶ沢山や北峰へと続く登山道は足を踏み入れた跡も無く、山があるという様子だけが山頂から見ていた。
この眺めの悪さは知ってはいたけれど。
山頂から稜線を戻って分岐を過ぎ、さらに5分ほど進むと万仏山の南峰に到着する。
南峰の先端部には山伏像が書かれた石碑が建ててあり、展望台のように周囲の眺めが良い。
万仏山の南側の眺望が良く、高社山や黒姫山などの北信の山々を見ることができる。
すぐ真下には木島平村の馬曲地区があり、そこにある林道の近さにも驚く。
稜線を繋ぐ馬曲山やその先にある犬飼城趾は木島平のどこからでも見られるような山のひとつで、登山道が不明瞭なそちら側も魅力的に見える。
里が近いのか、それとも里が高いのか。。
下山
万仏山からの下山は登りと同じ岩尾根を戻る。
登りでは視界に入らなかった尾根下の様子が見え、登り以上に緊張感を持って下りていく。
蟻の戸渡りまで下りたところで、岩の真下が空洞化した「窓岩」に立ち寄る。
窓岩はトンネルのようにアーチ状の岩になっており、その上が登山道になっている。
特に看板があるわけでもないため気付きにくい場所で、窓岩を覗いたからといって何かが見えるわけでもなかった。
行者尾根を下りる
万仏岩の上部まで下りたところで、ルートを行者尾根を下山路として選んだ。
万仏岩へ下りる順当なルートではなく、行者尾根は岩尾根を延々と歩き続ける。
明らかに人は少ないだろうと思えるルートで、登山道上にもたくさんの花が咲いている。
ロープの無い万仏岩を下りるよりはと思ったけれど・・・。
各所の狭さと高さに驚きながら、尾根の登り降りを繰り返して標高を下げていく。
たくさんのイワウチワを楽しみながら、ようやく行者尾根の終点へ。
尾根から登山道へと戻るには、ロープが架けられた崩れやすい急勾配を下りていく。
たくさんの落ち葉は滑りやすく、手が掛けられるようなところも少ない。
尾根を下りてから見上げると、行者尾根が唐突に始まっているようで、まるで山の斜面に板が建てられたように見えた。
石仏が並ぶ登山道に戻り、雪を踏みしめながら登山道へと戻る。
行者尾根は下りよりも登りに使いたい登山道で、石仏は見られない中でも万仏山らしさを楽しめそうな雰囲気だった。