霧氷の光る根子岳へ
すっかり紅葉の季節が終わり、冬を迎える季節に変わった上信越の山々。
天候は安定せず、いつ雪が降ってもおかしくない状況の中、四阿山と根子岳の縦走路へと入った。
四阿山へ登るのは5回目で、その全てが菅平高原から。
今回も定番の駐車場に車を停め、登山をするには少し遅い時間帯から根子岳へと向かった。序盤は階段が整備されている根子岳への登山道。
左右には牧場があり、シーズンには牛が闊歩する様子も見ることができる。
牧場の様子と登山口から1500mを越えている景色を楽しみながら登るのが、根子岳の定番となっているが、今回はあいにくの曇り空。
厚い雲が北アルプスや戸隠連峰を隠している。
登山口から15分ほどで東屋に到着。
ここまで続く階段が意外ときつく、呼吸や整え体調の様子を見ながら登る場所としてはちょうど良い。
すでに下山をしてきた登山者と東屋ですれ違いざまに会話を交わし、登山道上で熊が出たことを耳にする。
熊鈴を出してザックに括り付け、周辺に用心しながら登山道へと入っていく。
白樺は葉が落ちて見晴は良くなっているものの、いつ周りの笹藪から熊が出てきても・・・と思うと気が気でない。
根子岳への登山道は高低差も距離も無いわりに意外と急勾配の登り坂が続き、呼吸は整わず冷たい風が肺を冷やす。
と樹林帯から山頂近くの笹藪が視界に入ってくる頃、徐々に足元には先頃降ったと思われる雪も見えてくる。
登山開始から40分ほど。
すれ違う人には熊が出たのでという注意を促されるが、ここまで熊の姿も気配も無く無事に登ってくることができた。
樹林帯を抜けると、根子岳の傾斜には一面の笹藪が広がっている。
ところどころに生えている樹木には霧が染みついて見事な霧氷を作っていた。
青空であれば、さぞ美しいだろうと思いながら流れの速い雲を見上げて山頂へと近づく。
登山開始から1時間7分。
根子岳の山頂に到着した。目指す四阿山は厚い雲の中に山頂を隠し、斜面にはびっしりと霧氷が付いているのが見えた。
根子岳から四阿山へ
根子岳の山頂には小さな祠の禰子岳神社が祀られている。
根子岳からは上田平への眺望が良く、丸みを帯びて広々としているので休憩にも都合が良い。
山頂を過ぎていったん鞍部へと下りていく。
四阿山へと続く根子岳東側は、山体が崩れている上に登山道があり、大きな岩を巻くようにする箇所もあるため、足元には注意をしたいところ。
この縦走路の中で数少ない注意が必要なポイントになっている。
岩を巻くように登山道を進むと目の前には四阿山とその下に笹平が広がる。
もっとも良く四阿山を眺められるポイントで、岩の上に立って山容を堪能できる。
上からは平らに見えた笹平も、実際にそこに立つと緩やかな勾配で下りきると四阿山への取り付きが始まる。
樹林帯の中に入っていくと勾配は一気にきつくなり、中には足を高く上げて登るようなところも。
ちょうど日影になり雲が溜まりやすい場所のため、乾燥した氷や雪で滑りやすい場所でもある。
この四阿山への急登を嫌い、縦走路でも先に四阿山へと登り根子岳へと向かう反時計回りが一般的になっている。
木々に囲まれ急登を登ること約20分。
四阿山へと向かう分岐点に出た。
眺望も無くひたすらに登る坂道に体感時間は長く感じられた。
霧氷の輝く四阿山
根子岳との分岐点からは緩やかで登りやすい登山道が続く。
木々に囲まれ、天候が良ければ枝葉の間から浅間山や富士山を望むことができる。
今回は天候は荒れ気味で流れの速い雲が目の前を通り過ぎていくような状況。
霧氷が固く枝に付いているのが美しかった。
山頂直下の階段を登るとさらに霧氷は多くなり、真っ白な枝に囲まれながら山頂へと近づいた。
四阿山山頂
根子岳の登山口から四阿山へ。
2時間6分ほどでの到着だった。
風に煽られてパラパラと壊れる霧氷が美しく、周辺の山並みを楽しむことができない代わりに冬の始まりの景色を堪能できた。
西側にあたる長野県の様子は雲で見ることができなかったが、反対側の群馬県は快晴だったようで浅間山や遠く富士山が見えた。
山頂滞在中に八ヶ岳の山頂部も徐々に雲が取れ、真っ白になっている様子を見ることができた。
四阿山の山頂に祀られる祠と石壁に影に身を潜めて風を避け、少し景色を楽しんでから下山した。
四阿山から中四阿、菅平へ
下山ルートは根子岳との分岐を左へ取り、アップダウンのある中四阿の登山道を下る。
根子岳からの登りのような厚い雲は無く、青空と霧氷を楽しみながらの下山路。
鳥井峠の分岐あたりでは青空も広がり振り返れば霧氷と空とのコラボレーションを楽しむことができた。
下山する視線の先には上田市の街が見え、左手には浅間山がくっきりと見える。
中四阿のあたりまで下りてくると、根子岳の山頂よりも少し低いくらいの標高になる。
両側が切れ落ちているため眺めが良く、すぐ近くに見える根子岳と浅間山の展望が良い。
晴れていれば北アルプスや八ヶ岳も美しく見えたはず。
中四阿を過ぎると四阿高原との分岐もすぐに過ぎ、10分と掛からずに中尾根を通過。
ここまでくると周辺の笹も多くなり、菅平高原が近い雰囲気が漂ってくる。
足元の緩い笹の間を下り、突然、登山道が広くなると勾配も緩くなる。
矢印で指し示されたとおりに登山道を進み川を渡り、少しだけ登ると牧場の隣を歩くルートに変わった。
四阿山からの下山には1時間7分ほどだった。
ちょうど笹の色も青く、晴れてさえいればこれ以上無い霧氷を見るコンディションになっていた。
四阿山に本格的な雪が訪れるにはもう少し時間の余裕もありそうな雰囲気だった。