北八ヶ岳シャクナゲ尾根
南北に30キロ近く伸びる八ヶ岳。
南八ヶ岳と北八ヶ岳に大別され、その境に近い位置にエリアににゅうがある。
八ヶ岳の中ではそう高い標高ではなく初心者向けで、どちらかといえば華やかさに欠けるイメージもある。
ただ周辺に広がる苔の森は美しく、岩稜とは違った奥行きのある景色と静けさに魅力を感じる。
地味だと思うのだけど、でもここは良いんだ
白駒池と合わせて楽しまれるコースが一般的で、にゅうといえば白駒池という連想も自然に思われる。
そんな中、稲子湯から登るシャクナゲ尾根で花を見たいと思い、あえてシャクナゲ尾根の登りと、にゅうの眺望を楽しもうとした。
登山口は稲子湯から
小海町から松原湖を過ぎて稲子湯へ向かう。
稲子湯旅館から数百メートル登ったところに、20台ほどの車が停められるスペースがある。
みどり池へと向かう登山口でもあり、天狗岳や本沢温泉といった人気のエリアへ向かう人が多く、この日は朝6時ごろでもすでに満車状態だった。
みどり池へ向かう登山口は、駐車スペースの奥にあるゲートを避けて橋を渡る。
準備を整えてゲートへ向かって行く人たちを見ながら、シャクナゲ尾根の登山口に立つと「積雪期立ち入り禁止」という看板が掛けられていた。
この立ち入り禁止は焦る
シャクナゲ尾根を登る
登山口からは折り返しの急斜面を登る。
石の段差があり、適度な高さは歩きやすい。
朝陽の差し込む樹林帯の中を10分ほど登ると林道に出た。
みどり池の登山口から繋がっている林道で、八ヶ岳の東側をなぞるように続いている。
200mほど林道を歩くとシャクナゲ尾根へと入って行く入口に着いた。
来たぞ。シャクナゲ。
林道から緑の深い尾根へ。
なだらかな尾根道を折り返しながら徐々に標高を上げ、巨岩の埋まった急斜面を過ぎていく。
登山口から30分
登山口から30分ほど登ったところで、シャクナゲの葉が見え始めた。
期待に胸が高鳴り、テンションを上げながら尾根を登っていく。
登るほどにシャクナゲは増え、視界にはシャクナゲの特徴的な葉が広がる。
花が無いじゃないか
ところがどのシャクナゲの葉を見ても、中心に尖ったツボミがあるだけで、花が咲きそうな雰囲気はない。
花弁の色が見られたり、膨らんでいたりするどころか、爪楊枝のようなものがあるだけ。
これは花が咲く前なのか?そもそも咲かない花なのか?という疑惑を持ちながらも、きっと上へ登れば多少は咲いているだろうと希望を持って歩いていく。
登りの傾斜はキツいところも無く、滑落をするような危険な場所も無い。
花が咲いていれば、観賞に集中して登ることができただろうと。。。
シャクナゲの葉が多く茂っているのが見えるほど、思うことは強く、また時季を選んで来なければならない気持ちにもなる。
見上げれば空は青く、シャクナゲの葉が一面に覆っている。
花・・・
傾斜が緩く変わって、尾根からの上を歩く登山道から、斜面の中ほどをトラバースするように変わった。
相変わらずのシャクナゲの葉の中で、苔も多く見えるように変わってきた。
北八ヶ岳らしい鬱蒼とした暗さと深い緑の森に変わったようだった。
苔キタ
まだ雨が足りないような、少し湿度が抜けて色褪せたような苔で、それでも倒木や岩にびっりしりと茂っている様子は八ヶ岳らしさが溢れていた。
1時間も経たない
登り始めて1時間も経っていないほどの地点で、木々の間からはにゅうらしい岩峰が上に見える。
もうあの距離まで近づいたのかと思えた。
近い
なだらかな登りを歩いていくと、左側には硫黄岳が見えた。
深い森の上に突き出した岩壁は、地層のような縞模様が印象的で、緑の中から垣間見る程度でも存在感が強かった。
硫黄岳はカッコイイ
1時間
登山口から1時間ほど登ってきたところで、尾根の森は深くなり、高い段差を下りて登り返す。
登山道の周辺に茂っている苔は濃くなり、木肌も白いものが多く見える。
5分進む
5分ほど進むと、倒木のために森が開けて崩落した場所に出た。
2年ほど前の台風の影響で、一時は通行止めにもなった場所。
整備されて難なく歩くことができるものの、災害の様子が見てとれる。
崩れたときは通行止めになっていた気がする
登山道を進んでいく傾斜はなだらかで、歩きやすい尾根道が続く。
ところどころで倒木を踏み、苔の茂る森の中を眺めて歩く。
木に掛けられた看板は、どこまで歩いても「白駒池・ニュウ←⇒稲子湯」といった記載で、同じものが続いていく。
頭上の森の木々は徐々に薄くなり、空が近く感じられるように変わっていく。
もうじきにゅうが近いのだろうという雰囲気を感じながら、木々が開けたところでは硫黄岳を眺めた。
硫黄岳はイイ
登山口から2時間
登山口から2時間ほど登ってきたところで、白樺尾根との合流地点に着いた。
シャクナゲ尾根の登りは、ここまででほとんどが終わり、にゅうまでの高低差は僅か。
平坦で広い森を見渡すような登山道が続き、いっぱいの緑が目を楽しませてくれた。
足を停めて景色を眺め、カメラを向けて楽しんだ。
苔イイ
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木の間を縫って歩く -
白樺尾根から先は緑が多い印象 -
平坦な森 -
苔がいっぱい -
ニュウは近い -
平らな森の中 -
背の高い木の下で背の低い木がいっぱいに生えてる -
まるでとぐろを巻いているような -
苔がモコモコしてる -
木の根がいっぱいな坂を登る -
登ったら平ら
白樺尾根との合流地点から30分ほどして、白駒池からの登山道と合流した。
登山道が平坦だということに加えて、ペースを落として景色を楽しんだこともあり、かなり余裕を持った時間で歩いた。
だって森を見るのは楽しいし
にゅう
登山口から2時間37分
登山口からシャクナゲ尾根を登って2時間37分、にゅうに到着した。
苔の厚い森は美しく、にゅう間近での岩の段差も楽しめた。
ここを目当てに来る日があるとは・・・
木々が開けて、目の前には岩が積み重なったピークが見えた。
そう広くはない場所ながらも、腰を掛けて休みやすい場所が多く、ひとりも登山者を見なかったシャクナゲ尾根に対して、このあたりでは何人も通りかかっていた。
さすがに人が来る
にゅうの上に立つと、北側には白駒池とそれを囲む森。
その先には縞枯山や北横岳、その影からチラリと蓼科山の山頂部が見えた。
東側には金峰山と甲武信ヶ岳といった秩父の山々。
御座山などの南佐久の山が聳え、そこまで続く森の緑が綺麗だった。
南八ヶ岳の方向には、大きな山体の硫黄岳。
天狗岳の険しい岩峰が見え、すぐ間近には稲子岳のなだらかな山頂部が見えた。
稲子岳っていうのもちょっとソソられる
中山峠
にゅうからは中山峠を経てみどり池へと下りる行程。
岩の上から森の中へ戻り、緩やかな登りを歩いていく。
木々の合間から左手を見ると稲子岳が間近に見え、ときどき天狗岳を見ることができた。
厚い樹林帯のために登山道上では意識することが少ないのの、登山道と稲子岳の間は深い谷になっており、特に登山道側は切れ落ちたような崖だった。
見えないけれど左が崖っていうのは意外と危ない
登山道は細かく登り下りを繰り返し、場所によっては一気に登るような急斜面もあった。
広がる森を見ながら中山峠への登山道が続く。
中山峠へと近づくほどに登りはなだらかになり、視界に集中ができるような行程だった。
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一気に登るようなところも -
登ったら平坦 -
ゆるく登っていく -
苔も生えてる -
景色を楽しむには良いなだらかさ -
気持ちが良い -
シャクナゲの葉が少し・・・切られてる -
歩きやすい -
緑が綺麗 -
射し込む陽が明るくなってきた
にゅうから45分
にゅうから45分を過ぎたあたりで、中山と中山峠との分岐点に着いた。
右へ進めば中山を経由して高見石小屋、白駒池へと続く。
この分岐を左へと進み、木々の中に敷かれた木道を歩いて行く。
楽でイイ
左側に見える眺めの良さと、垣間見える硫黄岳や森の眺めを楽しみながら中山峠へ。
途中、木々が開けた展望台で立ち止まり、間近に見える天狗岳と硫黄岳を改めて楽しんだ。
中山峠からみどり池へ
にゅうから1時間
にゅうから1時間ほど進んで、中山峠へと到着した。
そのまま進むと天狗岳。
右手側には黒百合平があり、黒百合ヒュッテが建っている。
今回は中山峠からみどり池へと下り、稲子湯へ戻っていく。
下りるぞ
中山峠直下は鎖の張られた急な下り坂になっている。
九十九折りに急斜面を下りて行く登山道が続き、上からその様子を見ると険しさが際立って見えるようだった。
急な坂を下りる際に誤って石を落としてしまわないように注意をしながら下へ下へと歩いていき、急斜面が終わると平坦な森の中を歩くように変わった。
時間が経ったし、明るすぎるかなっていうのもちょっと思った
このあたりでも苔は多く、ところどころで足を停めて苔が生している様子を眺める。
眺望がない分、手元や足元の眺めは楽しく、北八ヶ岳エリアへ来てこその楽しみだった。
にゅうから1時間45分
にゅうから1時間45分ほどで、本沢温泉との分岐に着いた。
ほぼ傾斜の無い平坦で広い登山道に変わり、散歩のような気軽さのある雰囲気だった。
あの激坂を下りるのは嫌なのだけど、平らな森は好き
この雰囲気の中を5分ほど歩くと、みどり池に到着した。
池の水は比較的少なく、水面が天狗岳の方へ引いているよう。
池の畔にはしらびそ小屋があり、落ち着いた雰囲気を醸していた。
なかなかここに立ち寄るチャンスが無い
みどり池からの下山
みどり池から標高を下げていくと、北八ヶ岳の苔の緑というよりは、落葉松の新緑といった森だった。
鮮やかなイエローグリーンで視界が覆われ、あちこちで鳥の鳴き声が大きく聞こえる。
特に見たいものもなく、登山道に沿って歩みを進めていく。
40分ほど下りたところで、林道へ戻ってくることができた。
何度目かのこの登山道は慣れた感じ
稲子湯へと続く林道はシャクナゲ尾根や白樺尾根ともつながり、この林道の位置を分かっていれば、道に迷うことも無く稲子湯へ戻れるという安心感がある。
林道を歩くとすぐにショートカットをするように森の中へ入り、登山口へ近づいていく。
鮮やかな緑と、シダ植物が茂った景色が広がり、登りのシャクナゲ尾根とはまた違った明るい雰囲気だった。
もう初夏だねって言いたくなる
にゅうから2時間43分
にゅうから2時間43分、稲子湯の駐車スペースに到着した。
朝にはいっぱいだった車も何台か減り、混み合った雰囲気は無くなっていた。
目当てだったシャクナゲの花を見ることのできなかったシャクナゲ尾根。
6月上旬だと思い込んでいた時季を外したが分かり、また来なければならないのかと。
正直なところ、また来るのはちょっと気が進まない